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Windows Phone Silverlight プロジェクトを UWP プロジェクトに移植する

前のトピックは、「名前空間とクラス マッピング」でした。

Visual Studio で新しい Windows 10 プロジェクトを作成し、そのプロジェクトにファイルをコピーすることにより、移植プロセスを開始します。

プロジェクトを作成し、ファイルをコピーする

  1. Microsoft Visual Studio 2015 を起動し、"新しいアプリケーション (Windows ユニバーサル)" プロジェクトを新規作成します。 詳細については、テンプレート (C#、C++、Visual Basic) を使った Windows ランタイム 8.x アプリ開発の開始に関する記事を参照してください。 新しいプロジェクトによって、すべてのデバイス ファミリで実行される 1 つのアプリ パッケージ (appx ファイル) が構築されます。
  2. Windows Phone Silverlight アプリ プロジェクトで、すべてのソース コード ファイルと再利用するビジュアル アセット ファイルを確認します。 エクスプローラーを使って、データ モデル、ビュー モデル、ビジュアル アセット、リソース ディクショナリ、フォルダー構造、および再利用するその他すべての要素を、新しいプロジェクトにコピーします。 必要に応じて、ディスクにサブフォルダーをコピーするか、作成します。
  3. 新しいプロジェクト ノードに、ビュー (たとえば MainPage.xaml、MainPage.xaml.cs など) もコピーします。 ここでも、必要に応じて新しいサブフォルダーを作成し、プロジェクトから既にあるビューを削除します。 ただし、Visual Studio が生成したビューを上書きまたは削除する前に、後で参照するときに役立つ場合があるため、コピーを保存しておきます。 Windows Phone Silverlight アプリを移植する最初のフェーズでは、1 つのデバイス ファミリでアプリが適切に表示され機能することを重視します。 その後で、すべてのフォーム ファクターに対してビューを適切に対応させることに重点を置きます。必要に応じて、特定のデバイス ファミリを最大限に活用できるように、アダプティブ コードを追加します。
  4. ソリューション エクスプローラーで、 [すべてのファイルを表示] がオンであることを確認します。 コピーしたファイルを選択して右クリックし、[プロジェクトに含める] をクリックします。 これによって、含まれるフォルダーが自動的に取り込まれます。 後で必要に応じて、[すべてのファイルを表示] をオフに切り替えることができます。 代替ワークフローとして、[既存項目の追加] コマンドを使って Visual Studio ソリューション エクスプローラーで必要なすべてのサブフォルダーを作成することもできます。 ビジュアル アセットで、[ビルド アクション][コンテンツ] に設定されており、[出力ディレクトリにコピー][コピーしない] に設定されていることを確認します。
  5. 名前空間とクラス名の違いにより、このステージでは多くのビルド エラーが生成されます。 たとえば、Visual Studio が生成したビューを開くと、型 PhoneApplicationPage ではなく型 Page であることがわかります。 XAML マークアップと命令型コードには多くの違いがあり、この移植ガイドの次のトピックで詳細に取り上げます。 ただし、次の一般的な手順に従うことでプロセスを速めることができます。まず、XAML マークアップで名前空間のプレフィックス宣言を "clr-namespace" から "using" に変更します。次に、「名前空間とクラス マッピング」トピックを参考に、Visual Studio の [検索と置換] コマンドを使って、ソース コードに一括変更を加えます (たとえば "System.Windows" を "Windows.UI.Xaml" に置換します)。そして Visual Studio の命令型コード エディターで、コンテキスト メニューの [解決] および [using の整理] コマンドを使ってよりターゲットを絞った変更を行います。

拡張 SDK

移植したアプリによって呼び出されるユニバーサル Windows プラットフォーム (UWP) API のほとんどは、ユニバーサル デバイス ファミリと呼ばれる一連の API に実装されています。 ただし、一部の API は拡張 SDK に実装されており、Visual Studio で認識されるのは、アプリのターゲット デバイス ファミリによって実装された API、または参照している拡張 SDK によって実装された API のみです。

検出できなかった名前空間、型、メンバーについてのコンパイル エラーが発生した場合は、上記のことが原因となる可能性があります。 API リファレンス ドキュメントで API のトピックを表示し、要件に関するセクションに移動します。このセクションでは、どのようなデバイス ファミリが API を実装するかが示されています。 ターゲット デバイス ファミリが示されていない場合は、プロジェクトで API を利用できるようにするために、そのデバイス ファミリ用の拡張 SDK に対する参照が必要になります。

[プロジェクト]>[参照の追加]>[Windows ユニバーサル]>[拡張機能] の順にクリックし、適切な拡張 SDK を選びます。 たとえば、呼び出す API がモバイル デバイス ファミリでのみ利用可能であり、それらの API がバージョン 10.0.x.y で導入されている場合は、[Windows Mobile Extensions for the UWP] を選びます。

これにより、次の参照がプロジェクト ファイルに追加されます。

<ItemGroup>
    <SDKReference Include="WindowsMobile, Version=10.0.x.y">
        <Name>Windows Mobile Extensions for the UWP</Name>
    </SDKReference>
</ItemGroup>

名前とバージョン番号は、SDK がインストールされている場所にあるフォルダーと一致します。 たとえば、上記の情報は次のフォルダー名と一致します。

\Program Files (x86)\Windows Kits\10\Extension SDKs\WindowsMobile\10.0.x.y

API を実装するデバイス ファミリがアプリのターゲットではない場合は、ApiInformation クラスを使って、API を呼び出す前に API の有無をテストする必要があります (これはアダプティブ コードと呼ばれます)。 このテストの条件は、アプリの実行時に必ず評価されますが、API が存在するデバイスに対してのみ true と評価され、呼び出しが可能になります。 ユニバーサル API が存在するかどうかを最初に確認した後では、拡張 SDK とアダプティブ コードのみを使います。 次のセクションで、例をいくつか示します。

アプリ パッケージ マニフェスト」もご覧ください。

マークアップとコードを最大限に再利用する

若干のリファクタリングを行い、アダプティブ コード (後で説明します) を追加することで、すべてのデバイス ファミリで動作するマークアップとコードを最大限に活用することができます。 詳しい説明を次に示します。

  • すべてのデバイス ファミリに共通するファイルについては、特に考慮する必要はありません。 これらのファイルは、実行対象となるすべてのデバイス ファミリで、アプリが使うファイルです。 これには、XAML マークアップ ファイル、命令型ソース コード ファイル、アセット ファイルが含まれます。
  • 実行されているデバイス ファミリをアプリで検出し、そのデバイス ファミリ専用に設計されたビューに移動させることができます。 詳しくは、「アプリが実行されているプラットフォームの検出」をご覧ください。
  • プラットフォームを検出するための代替方法がない場合に役立つと考えられる同様の手法として、マークアップ ファイルや ResourceDictionary ファイル (またはこのファイルが保存されているフォルダー) に対して特殊な名前を設定する方法があります。この特殊な名前によって、アプリを特定のデバイス ファミリで実行する場合、実行時に自動的に読み込まれるようになります。 この手法については、「Bookstore1」のケース スタディをご覧ください。
  • 一部のデバイス ファミリでのみ利用できる機能 (プリンター、スキャナー、またはカメラのボタンなど) を使うには、アダプティブ コードを記述します。 このトピックの「条件付きコンパイルとアダプティブ コード」に記載されている 3 番目の例をご覧ください。
  • Windows Phone Silverlight と Windows 10 の両方をサポートする場合は、プロジェクト間でソース コード ファイルを共有できます。 Visual Studio でこのような処理を行うには、ソリューション エクスプローラーでプロジェクトを右クリックして [既存項目の追加] を選択し、共有するファイルを選択して [リンクとして追加] をクリックします。 リンクしたプロジェクトを確認できるファイル システム上の共通のフォルダーにソース コード ファイルを格納します。また、ソース コントロールに追加することを忘れないでください。 すべてではないにしても、大半のファイルが両プラットフォームで機能するように命令型ソース コードをファクタリングできる場合は、ファイルのコピーを 2 つ持つ必要はありません。 可能な場合は条件付きコンパイル ディレクティブ内、または必要であれば実行時条件付きで、ファイル内の任意のプラットフォーム固有ロジックを含めることができます。 次のセクションおよび「C# プリプロセッサ ディレクティブ」をご覧ください。
  • ソース コード レベルではなく、バイナリ レベルで再利用するために、Windows Phone Silverlight で利用できる .NET API のサブセットおよび Windows 10 アプリ用のサブセット (.NET Core) をサポートするポータブル クラス ライブラリがあります。 ポータブル クラス ライブラリ アセンブリは、これらの .NET プラットフォームおよびその他のプラットフォームとバイナリ レベルで互換性があります。 Visual Studio を使って、ポータブル クラス ライブラリをターゲットとするプロジェクトを作成します。 「汎用性のあるクラス ライブラリを使用したプラットフォーム間の開発」をご覧ください。

条件付きコンパイルとアダプティブ コード

必要に応じて、1 つのコード ファイルで Windows Phone Silverlight と Windows 10 の両方をサポートすることもできます。 プロジェクトのプロパティ ページで Windows 10 プロジェクトを確認すると、プロジェクトで条件付きコンパイル シンボルとして WINDOWS_UAP が定義されていることがわかります。 一般的に、次のロジックを使って条件付きコンパイルを実行できます。

#if WINDOWS_UAP
    // Code that you want to compile into the Windows 10/11 app.
#else
    // Code that you want to compile into the Windows Phone Silverlight app.
#endif // WINDOWS_UAP

Windows Phone Silverlight アプリと Windows ランタイム 8.x アプリの間で共有しているコードがある場合は、このようなロジックを含むソース コードが既にある可能性があります。

#if NETFX_CORE
    // Code that you want to compile into the Windows Runtime 8.x app.
#else
    // Code that you want to compile into the Windows Phone Silverlight app.
#endif // NETFX_CORE

その場合、必要に応じて、さらに Windows 10 をサポートすることもできます。

#if WINDOWS_UAP
    // Code that you want to compile into the Windows 10/11 app.
#else
#if NETFX_CORE
    // Code that you want to compile into the Windows Runtime 8.x app.
#else
    // Code that you want to compile into the Windows Phone Silverlight app.
#endif // NETFX_CORE
#endif // WINDOWS_UAP

ハードウェアの "戻る" ボタンの処理を Windows Phone に制限するために、条件付きコンパイルを使っている場合がありました。 Windows 10 では、"戻る" ボタンのイベントはユニバーサルな概念です。 ハードウェアまたはソフトウェアに実装されているすべての "戻る" ボタンでは BackRequested イベントが発生するため、このイベントを処理します。

       Windows.UI.Core.SystemNavigationManager.GetForCurrentView().BackRequested +=
            this.ViewModelLocator_BackRequested;

...

    private void ViewModelLocator_BackRequested(object sender, Windows.UI.Core.BackRequestedEventArgs e)
    {
        // Handle the event.
    }

ハードウェアの "カメラ" ボタンの処理を Windows Phone に制限するために、条件付きコンパイルを使っている場合がありました。 Windows 10 では、ハードウェアの "カメラ" ボタンはモバイル デバイス ファミリに固有の概念です。 1 つのアプリ パッケージがすべてのデバイスで実行されるため、アダプティブ コードと呼ばれる手法を使って、コンパイル時の条件を実行時の条件に変更します。 そのためには、ApiInformation クラスを使って、実行時に HardwareButtons クラスの有無を照会します。 HardwareButtons は、モバイル拡張 SDK で定義されているため、その SDK への参照をプロジェクトに追加して、このコードをコンパイルする必要があります。 ただし、ハンドラーはモバイル拡張 SDK で定義されている型を実装するデバイスでのみ実行されることに注意してください。このようなデバイスは、モバイル デバイス ファミリに該当します。 次のコードでは存在する機能のみを使うように注意しています。ただし、条件付きコンパイルとは別の方法でこれを実現しています。

       // Note: Cache the value instead of querying it more than once.
        bool isHardwareButtonsAPIPresent = Windows.Foundation.Metadata.ApiInformation.IsTypePresent
            ("Windows.Phone.UI.Input.HardwareButtons");

        if (isHardwareButtonsAPIPresent)
        {
            Windows.Phone.UI.Input.HardwareButtons.CameraPressed +=
                this.HardwareButtons_CameraPressed;
        }

    ...

    private void HardwareButtons_CameraPressed(object sender, Windows.Phone.UI.Input.CameraEventArgs e)
    {
        // Handle the event.
    }

アプリが実行されているプラットフォームの検出」もご覧ください。

アプリ パッケージ マニフェスト

プロジェクトの設定 (すべての拡張 SDK の参照を含む) により、アプリが呼び出すことができる API サーフェス領域が決定されます。 ただし、ユーザーがアプリをストアからインストールできる実際のデバイスのセットを決定するのは、アプリ パッケージ マニフェストです。 詳しくは、「TargetDeviceFamily」の例をご覧ください。

この後のトピックでは、一部の機能で必要になるさまざまな宣言、機能、その他の設定に対してアプリ パッケージ マニフェストを使う方法について説明するため、アプリ パッケージ マニフェストを編集する方法を理解しておいてください。 Visual Studio アプリ パッケージ マニフェスト エディターを使って、編集できます。 ソリューション エクスプローラーが表示されていない場合は、[表示] メニューから選択します。 Package.appxmanifest をダブルクリックします。 マニフェスト エディター ウィンドウが開きます。 適切なタブを選んで変更し、変更を保存します。 移植先のアプリ マニフェスト内の pm:PhoneIdentity 要素が、移植元のアプリのアプリ マニフェスト内の要素と一致していることを、必要に応じて確認できます (詳しくは、「pm:PhoneIdentity」トピックをご覧ください)。

Windows 10 のパッケージ マニフェスト スキーマ リファレンス」をご覧ください。

次のトピックは「トラブルシューティング」です。