IDispEventSimpleImpl クラス

[アーティクル]
09/17/2008

更新 : 2007 年 11 月

このクラスは IDispatch メソッドの実装を提供しますが、タイプライブラリからはタイプ情報が取得されません。

template <
   UINT nID,
   class T,
   const IID* pdiid
>
class ATL_NO_VTABLE IDispEventSimpleImpl :
   public _IDispEventLocator<nID, pdiid>

パラメータ

nID
ソースオブジェクトの一意の識別子。IDispEventSimpleImpl が複合コントロールの基本クラスの場合は、必要なコンテナ内のコントロールのリソース ID を使用します。それ以外の場合は、任意の正の整数を使用します。
T
IDispEventSimpleImpl から派生されるユーザーのクラス。
pdiid
このクラスで実装されるイベントのディスパッチインターフェイスの IID へのポインタ。

解説

IDispEventSimpleImpl では、インターフェイスのメソッドやイベントごとに実装コードを指定せずにイベントのディスパッチインターフェイスを実装する方法が用意されています。IDispEventSimpleImpl は IDispatch メソッドの実装を提供します。指定する必要があるのは、処理の対象となるイベントの実装だけです。

IDispEventSimpleImpl はクラスのイベントシンクマップと連動し、適切なハンドラ関数にイベントをルーティングします。このクラスを使用するには、次の手順に従います。

処理する各オブジェクトのイベントごとに、イベントシンクマップに SINK_ENTRY_INFO マクロを追加します。
各エントリのパラメータとして _ATL_FUNC_INFO 構造体へのポインタを渡すことによってイベントごとに型情報を指定します。x86 プラットフォームでは、_ATL_FUNC_INFO.cc の値を CC_CDECL とし、コールバック関数で __stdcall のメソッドを呼び出す必要があります。スマートデバイスの開発者の方は、以下の「スマートデバイス開発者のためのメモ」を参照してください。
DispEventAdvise を呼び出して、ソースオブジェクトと基本クラス間の接続を確立します。
接続を解除するには、DispEventUnadvise を呼び出します。

イベントを処理する必要のあるオブジェクトごとに、nID に一意の値を指定して IDispEventSimpleImpl から派生させる必要があります。あるソースオブジェクトに対するアドバイズを中止してから別のソースオブジェクトに対してアドバイズすることによって基本クラスを再利用できますが、一度に 1 つのオブジェクトで処理できるソースオブジェクトの最大数は IDispEventSimpleImpl 基本クラスの数によって制限されます。

IDispEventSimplImpl の機能は IDispEventImpl と同じですが、IDispEventSimplImpl ではタイプライブラリからインターフェイスの型情報を取得しません。ウィザードでは IDispEventImpl だけに基づいてコードを生成しますが、手動でコードを追加すると IDispEventSimpleImpl を使用できます。イベントインターフェイスを記述するタイプライブラリがない場合、またはタイプライブラリの使用に関連するオーバーヘッドを回避する場合は、IDispEventSimpleImpl を使用します。

メモ :
IDispEventImpl と IDispEventSimpleImpl には、IUnknown::QueryInterface の独自の実装が用意されています。この実装により、IDispEventImpl 基本クラスまたは IDispEventSimpleImpl 基本クラスは別個の COM ID として機能する一方で、メイン COM オブジェクトのクラスメンバに直接アクセスできます。

ActiveX イベントシンクの CE ATL 実装は、HRESULT の戻り値またはイベントハンドラからの void のみをサポートします。その他の戻り値はサポートされていないため、動作は定義されません。

詳細については、「IDispEventImpl のサポート」を参照してください。

必要条件

ヘッダー : atlcom.h

スマートデバイス開発者のためのメモ

IDispEventSimpleImpl では、_ATL_FUNC_INFO.cc メンバを CC_STDCALL にする必要がありますが、CE では CC_CDECL しかサポートされません。この点は、Pocket PC の場合と明らかに矛盾しますが、コールバックは _ATL_FUNC_INFO.cc の値 (コールバックメソッドの呼び出し規約) に関係なく機能します。次の例は、Pocket PC のサンプルイベントハンドラです。

_ATL_FUNC_INFO Event1Info1 = { CC_CDECL, VT_EMPTY, 1, { VT_I4 } };

class CEventHandler :
   public IDispEventSimpleImpl<1234, CEventHandler, &__uuidof(DMyEventMakerEvents)>
{
public:
   BEGIN_SINK_MAP(CEventHandler)
      SINK_ENTRY_INFO(1234, __uuidof(DMyEventMakerEvents), 1, 
         &CEventHandler::OnEvent1, &Event1Info1)
   END_SINK_MAP()

   void __stdcall  OnEvent1(LONG l)
   {
      if (l != 445533)
      {
         OutputDebugString(L"l is not 445533\n");
      }
   }

   HRESULT Advise1234(IUnknown * punk) 
   {
      return IDispEventSimpleImpl<1234, CEventHandler, 
         &__uuidof(DMyEventMakerEvents)>::DispEventAdvise(punk);
   }
};