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メッセージ ルーティングについて

 

適用先: Exchange Server 2010 SP2, Exchange Server 2010 SP3

トピックの最終更新日: 2016-11-28

組織内のハブ トランスポート サーバーとエッジ トランスポート サーバーの主なタスクは、ユーザーや外部ソースから受信したメッセージを最終的な送信先にルーティングすることです。ここでは、Microsoft Exchange Server 2010 が組織内のメッセージをルーティングする方法について説明します。

トランスポート サーバーの管理に関連する管理タスクについては、「トランスポート サーバーの管理」を参照してください。

目次

Exchange 2010 のメッセージ ルーティングの概要

ルーティング コンポーネント

ルーティング用の Active Directory サイトの使用

Exchange 2010 ルーティング テーブル

ルーティングのためのメッセージの受信

メッセージのルーティング

再ルーティングと到達不能キュー

Exchange 2010 のメッセージ ルーティングの概要

ルーティングの決定は、メッセージの分類時に行われます。カテゴライザーは、Microsoft Exchange Transport サービスのコンポーネントで、すべての受信メッセージを処理し、指定された受信者に関する情報に基づいてメッセージに対する処理を決定します。カテゴライザーは、いくつかの従属する段階にわたってメッセージを処理し、メッセージの処理中に Microsoft Exchange Transport サービスの他のコンポーネントも使用します。メッセージが Exchange 2010 トランスポート サーバーで受信され、SMTP 受信時に発生する予備処理が完了した後で、メッセージは発信キューに配信されます。メッセージは、次の段階でカテゴライザーを介して発信キューから移動されます。

  1. **送信されたメッセージのエージェントによる処理   **分類するメッセージを受信するときに、ハブ トランスポート サーバー上でエージェント処理が発生します。この段階で適用されるエージェントには、オプションの Microsoft Forefront Protection for Exchange Server ウイルス対策エージェントとジャーナリング エージェントがあります。

  2. **受信者の解決   **この段階では、受信者の電子メール アドレスが解決され、受信者が Exchange 組織内のメールボックスを持つのか、外部の電子メール アドレスを持つのかが判断されます。

  3. **ルーティング   **受信者に関する情報が解決された後で、カテゴライザーのルーティング コンポーネントは、メッセージの最終的な送信先とその送信先へのルートを決定し、メッセージ中継のために次のセグメント (ホップ) を選択し、次ホップ情報を物理的なサーバーおよび IP アドレスの一覧に解決します。

  4. コンテンツ変換   メッセージが次ホップに中継される前に、受信者の読みやすい形式でメッセージが送信されるように、コンテンツ変換が行われます。コンテンツ変換では、メール フローまたはストレージのために (MAPI から MIME、UUEncode から base64 エンコードなど)、または電子メール クライアントに固有の適切な表示のために (HTML、リッチ テキスト形式 (RTF)、プレーン テキストなど)、電子メール メッセージをある形式から別の形式に変換します。

  5. ルーティングされたメッセージのエージェントによる処理   特定のメッセージのルーティングが決定された後で、トランスポート ルール エージェントとジャーナリング エージェントがハブ トランスポート サーバーに適用されます。ジャーナリング エージェントは、メッセージの送信時とルーティング時の両方に適用されます。これにより、たとえば、配信先アドレスを変更するか、メッセージ固有のジャーナリングの要件を適用する場合に、トランスポート ルール エージェントによってメッセージに加えられたすべての変更が、ジャーナリング エージェントをバイパスしないようにできます。

  6. メッセージのパッケージおよび DSN の生成   最終的な分類されたメッセージが構築され、配信キューに移動されます。この段階で、配信状態通知 (DSN) も生成される場合があります。

メッセージは、次に、SMTP 送信、ストア ドライバー、配信エージェント、または外部のゲートウェイ接続ハンドラーによって処理されます。使用されるコンポーネントは、最終的な送信先に依存します。配信キューは、ホップごとに動的に生成されます。ルーティングが決定された後で、これらの配信キューにメッセージが入れられます。受信者へのルートが見つからない場合、メッセージは配信不能キューに置かれます。

次の図は、ルーティングの各段階でメッセージの処理がどのように発生するのか、また次ホップに送信されるメッセージがどのようにキューに入れられるのかを示しています。

メール フローのルーティング コンテキスト

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ルーティング コンポーネント

ルーティングを決定するために、Exchange 2010 は Active Directory に格納されている構成情報にアクセスする必要があります。エッジ トランスポート サーバーでは、この構成情報は、ローカル サーバーの Active Directory ライトウェイト ディレクトリ サービス (AD LDS) インスタンスに格納され、このインスタンスからアクセスされます。MicrosoftWindows および Exchange 2010 サービスは連携して、構成データのマッピングを作成します。これらのマッピングはルーティング テーブル内にキャッシュされます。Exchange 2010 はルーティングを決定する際にこれらのテーブルを参照します。ルーティング トポロジが変更されるとキャッシュは更新されます。メッセージ転送時に使用される Exchange サービスは、ハブ トランスポート サーバーの役割とエッジ トランスポート サーバーの役割で共通です。ただし、エッジ トランスポート サーバーの役割は、Active Directory トポロジに関する情報をキャッシュしません。

次の構成およびサービス コンポーネントは、メッセージ ルーティングにとって重要です。

  • Active Directory サイト   Active Directory サイトは、ハブ トランスポート サーバーのルーティング境界を表します。ハブ トランスポート サーバーは、メールボックス サーバー、配布グループの展開サーバー、ローカル Active Directory サイト内のコネクタの送信元サーバーとそのサイトで購読されているエッジ トランスポート サーバーに直接配信します。ただし、ハブ トランスポート サーバーは、リモート Active Directory サイトにある受信者の別のハブ トランスポート サーバー、展開サーバー、およびコネクタにメッセージを中継する必要があります。ハブ トランスポート サーバーの役割は、他の Exchange 2010 サーバーを含む各 Active Directory サイトに展開する必要があります。

  • Active Directory IP サイト リンク   Active Directory IP サイト リンクは、Active Directory サイト間の論理パスを定義します。Exchange 2010 は、IP サイト リンク オブジェクトを参照して、リモート Active Directory サイトの最小ルーティング パスを決定します。

  • 送信コネクタ   送信コネクタは、他の SMTP ホストにメッセージを送信するために使用されます。送信コネクタのアドレス スペース構成は、ルーティングを決定するために使用されます。メッセージが外部ドメインに送信される場合、通常、ルーティングの送信先は送信コネクタになります。複数の電子メール ドメインのメッセージを受け付ける Exchange 組織では、各アドレス スペース専用の送信コネクタを作成することが適切な場合があります。メッセージを外部ドメインにルーティングするための送信コネクタの選択の詳細については、「外部メッセージのルーティング」を参照してください。

  • 配信エージェント   配信エージェントは、メッセージ転送に SMTP プロトコルを使用しない外部システム宛てのメッセージをルーティングするために使用されます。配信エージェントのアドレス スペースとプロトコルの構成は、ルーティングの決定時に使用されます。

  • 外部コネクタ   外部コネクタは、ドロップ ディレクトリを使用して、メッセージ転送に SMTP プロトコルを使用しない外部システム宛てのメッセージを送信します。Exchange は、ルーティングを決定するときに外部コネクタの構成を使用します。

  • ルーティング グループ   ルーティング グループは、Exchange Server 2003 のルーティング境界を表します。Exchange 2010 が既存の Exchange 2003 組織内に展開されている場合、ルーティングでは、Exchange 2003 に存在するメールボックスまたはコネクタにメッセージを送信するために、ルーティング グループ内のサーバーの場所を考慮する必要があります。Exchange 2003 との互換性を確立するために、組織内に展開された Exchange 2010 を実行しているすべてのコンピューターは単一のグローバル ルーティング グループに属します。

  • ルーティング グループ コネクタ   ルーティング グループ コネクタは、Exchange ルーティング グループ間の論理パスを定義します。Exchange 2010 が既存の Exchange 2003 組織内に展開されている場合、メッセージはルーティング グループ コネクタを介してサーバーのバージョン間でルーティングされます。最初のハブ トランスポート サーバーが展開されると、セットアップ プロセスによって、グローバル Exchange 2010 ルーティング グループから従来のルーティング グループへのルーティング グループ コネクタを作成するよう求められます。Exchange の複数のバージョンが展開されている環境でのメッセージ ルーティングの詳細については、「内部のメッセージ ルーティング」を参照してください。

  • Microsoft Exchange Transport サービス   Microsoft Exchange Transport サービスは、Exchange 2010 の SMTP プロバイダーで、SMTP IN から SMTP OUT まで、メッセージ処理のすべてのコンポーネントを制御します。一連の構成可能な SMTP 受信エージェントは、さまざまな SMTP イベントによって開始されます。Microsoft Exchange Transport サービスは、これらのエージェントを有効にして、メッセージが SMTP トランスポートを通過し、カテゴライザーに送信される前にスパム対策、ウイルス対策、およびその他のタスクを実行することによってメッセージを処理します。Microsoft Exchange Transport サービスは、Exchange トポロジ検出用のトポロジ検出モジュールも使用します。

  • Microsoft Exchange Active Directory トポロジ サービス   Microsoft Exchange Active Directory トポロジ サービスは、Exchange 2010 が Active Directory から構成および受信者データを取得するために使用できる、ドメイン コントローラーとグローバル カタログ サーバーを見つけます。また、Microsoft Exchange Active Directory トポロジ サービスは、Active Directory サーバーを最新の状態に保つために Exchange 2010 サイトの類似性を保持します。

  • ルーティング テーブル   ルーティング テーブルは、ルーティング コンポーネントがルーティングを決定するために使用する情報を保持します。ルーティング テーブルには、トポロジ コンポーネントのマップとそれらの相互関係が含まれています。

  • DNS   Exchange 2010 は、MicrosoftExchange Transport サービスのコンポーネントである、拡張ドメイン ネーム システム (DNS) クライアントを使用して、次のホップの選択を接続先サーバー名の一覧に解決します。サーバー名の一覧を IP アドレスに解決するために、標準の DNS クライアントが使用されます。拡張 DNS は、ラウンド ロビンを使用して Exchange 2010 トランスポート サーバーの負荷分散機能を提供します。

  • SMTP SMTP は、メッセージが SMTP サーバー間で中継される場合に通信のために使用されます。ハブ トランスポート サーバー、エッジ トランスポート サーバー、Exchange 2003 サーバー、またはスマート ホストを SMTP サーバーとして使用できます。ハブ トランスポート サーバーは、リモート プロシージャ コール (RPC) を使用して、そのハブ トランスポート サーバーと同じ Active Directory サイト メンバーシップを持つメールボックス サーバーに直接メッセージを配信します。

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ルーティング用の Active Directory サイトの使用

Active Directory サイトは、ネットワークの物理面に基づいた論理的な構成コンポーネントです。Active Directory サイトを作成する主な目的は、Active Directory レプリケーション トラフィックの制御が最適化されるように、ネットワーク内のサブネット接続を定義することです。Active Directory サイトは、Exchange 2010 のルーティング境界を表します。ハブ トランスポート サーバーの役割がインストールされているコンピューターは、Active Directory サイト トポロジに基づいてルーティングを決定します。

サイト メンバーシップの確認

既定では、Active Directory フォレストには Active Directory サイトが 1 つのみ含まれます。この Active Directory サイトの既定の名前は、Default-First-Site-Name です。Active Directory サイトをこれ以外に作成しない場合、フォレスト内のすべてのドメイン メンバー コンピューターは、Default-First-Site-Name のメンバーになります。この場合、サブネットとサイトの関連付けを構成する必要はありません。追加の Active Directory サイトを作成する場合は、その Active Directory サイトに割り当てるサブネットを指定する必要があります。

各 Active Directory サイトは、1 つ以上の IP サブネットに関連付けられます。管理者は Active Directory サイト メンバーシップを、ドメイン コントローラーおよびグローバル カタログ サーバーとして構成されているコンピューターに割り当てます。Exchange サーバーなどの他のドメイン メンバー コンピューターは、Active Directory サイトに関連付けられている IP サブネット内にある IP アドレスを使用するように構成されると、自動的に Active Directory サイト メンバーシップが割り当てられます。同じ Active Directory サイト メンバーシップを持つコンピューターは、ネットワーク接続が良好であると仮定されます。常に、サーバーは単一の Active Directory サイトのメンバーになります。

アプリケーションが、インストールされているコンピューターおよびフォレスト内にある他のコンピューターの Active Directory サイト メンバーシップを確認し、通信フローを制御するために情報を使用できる場合、それはサイト対応のアプリケーションです。サイト対応のアプリケーションがドメイン コントローラーやグローバル カタログ サーバーなどの別のサーバーのサービスを使用する必要がある場合、それらのサービスを要求しているコンピューターと同じ Active Directory サイト メンバーシップを持つサーバーが優先されます。

Exchange 2010 は、サイト対応のアプリケーションであり、Active Directory トポロジを使用して、メッセージ ルーティングや、他の Exchange 2010 サーバーの役割がインストールされているコンピューターで実行されているサービスとの通信を行います。Active Directory サイトは、ルーティング境界であるだけではありません。サービス検出の境界でもあります。

ドメイン メンバー コンピューターのサイト メンバーシップの確認は、ローカル IP アドレスと定義されたサブネットを比較してから、適切なサイト メンバーシップの関連付けを確認するため、一連の DNS クエリによって異なります。DNS クエリに関連するオーバーヘッドを減らすために、Exchange 2010 Active Directory スキーマの追加には Exchange サーバー オブジェクトの msExchServerSite 属性が含まれています。この属性の値は、Exchange サーバーの Active Directory サイトの識別名です。この属性は、各 Exchange サーバー オブジェクトのプロパティです。サイト メンバーシップの類似性がサーバー オブジェクトの属性として格納されている場合、DNS クエリに依存するのではなく、現在のトポロジを Active Directory から直接読み取ることができます。また、サイト メンバーシップの関連付けは、購読済みエッジ トランスポート サーバーなどのドメイン以外のコンピューターに対して有効になります。

msExchServerSite 属性の値は、Microsoft Exchange Active Directory トポロジ サービスによって入力され、最新の状態に保たれます。Windows ベースのコンピューターが起動されると、Net Logon サービスはそのコンピューターのサイト メンバーシップを確認します。Net Logon サービスはこの情報を使用して、ローカル コンピューターと同じ Active Directory サイト内にあるドメイン コントローラーを見つけ、それらのサーバーに対して承認および認証要求を発行します。Microsoft Exchange Active Directory トポロジ サービスは、DsGetSiteName API 呼び出しを使用して、Net Logon サービスからサイト メンバーシップの値を取得し、Active Directory サイトの識別名を、Active Directory 内の Exchange サーバー オブジェクトの msExchServerSite 属性に書き込みます。

次の表に、組織で Active Directory サイトを定義する方法を示します。この例では、3 つの Active Directory サイトが定義され、各 Active Directory サイトは複数の IP サブネットに関連付けられます。

Active Directory サイトとサブネットの関連付けの例

Active Directory サイト名 関連付けられた IP サブネット

サイト A

192.168.1.0/24

192.168.2.0/24

サイト B

192.168.3.0/24

192.168.4.0/24

サイト C

192.168.5.0/24

192.168.6.0/24

HubTransportA という名前のサーバーの IP アドレスが 192.168.1.1 である場合、このサーバーはサイト A のメンバーになります。サーバーの IP アドレスを変更することにより、サイトのメンバーシップを変更できます。HubTransportA の IP アドレスを 192.168.2.1 に変更した場合、このサブネットもサイト A に関連付けられているため、サーバーの Active Directory サイト メンバーシップは変更されません。ただし、サーバーを移動し、IP アドレスを 192.168.3.1 に変更した場合、サーバーはサイト B のメンバーであると見なされます。

サブネットと Active Directory サイトの関連付けを変更した場合にも、サイト メンバーシップに変化が生じる可能性があります。たとえば、サブネット 192.168.3.0 をサイト B との関連付けから削除し、サイト A に関連付けると、IP アドレスが 192.168.3.1 のサーバーのサイト メンバーシップもサイト A に変わります。サイト メンバーシップの変化が生じた場合は、Exchange 2010 がルーティングを決定する際にこれらの変更が考慮されるように、常に Exchange 2010 で構成データを更新する必要があります。Active Directory サイト メンバーシップの変更が生じてから、トポロジの変更が完全に伝達されるまでに、待ち時間が生じる可能性があります。次の通信は、トポロジの変更を伝達するために次の順序で行われる必要があります。

  1. サイト メンバーシップの変更はドメイン コントローラーに書き込まれます。更新された情報は、フォレスト内の各 Active Directory サイトのドメイン コントローラー間でレプリケートされます。フォレスト全体に変更が伝達されるまでに要する時間は、サイト リンクによって定義される Active Directory レプリケーション トポロジとスケジュールによって異なります。

  2. Net Logon サービスは、すべての Windows ベースのコンピューター上で実行され、Active Directory サイト メンバーシップの変更を定期的にポーリングします。Net Logon サービスは、5 分間隔でポーリングを実行します。したがって、ローカル ドメイン コントローラーが更新を受信してから 5 分以内に、Net Logon サービスによって変更が検出されます。

  3. Microsoft Exchange Active Directory トポロジ サービスは、15 分間隔で Net Logon サービスを照会して、ローカル Exchange サーバーの Active Directory サイト メンバーシップを確認します。変更が検出されると、Microsoft Exchange Active Directory トポロジ サービスは MsExchServerSite 属性を更新します。

  4. Exchange サーバー構成オブジェクトの変更されたサイト属性値は、続いて組織全体にレプリケートされます。組織内の Exchange サーバーはこの変更を検出します。次に、新しい Active Directory サイト メンバーシップ属性値によってルーティング テーブルが更新されます。

Active Directory サイト メンバーシップの変更が有効になってから、更新された情報が別の Exchange 2010 サーバーで使用可能になるまでに、待ち時間が生じる可能性があります。Exchange 2010 でこのような構成の変更が処理される方法の詳細については、このトピックで後述する「再ルーティングと到達不能キュー」を参照してください。

IP サイト リンク

サイト リンクは、Active Directory サイト間の論理パスです。サイト リンク オブジェクトは、指定したサイト間トランスポートを通じて均一なコストで通信できるサイトのセットを表します。サイト リンクは、物理的なネットワーク上のネットワーク パケットによって選択される実際のパスには対応していません。ただし、管理者によってサイト リンクに割り当てられるコストは、通常、基盤となるネットワークの信頼性、速度、および使用可能な帯域幅に関連しています。たとえば、Active Directory 管理者は、速度が 10 Mbps のネットワーク接続よりも、速度が 100 Mbps のネットワーク接続に低いコストを割り当てます。

既定では、すべてのサイト リンクは推移的です。つまり、サイト A にサイト B へのリンクがあり、サイト B にサイト C へのリンクがある場合、サイト A は推移的にサイト C にリンクされます。サイト A とサイト C の間の推移的なリンクは、サイト リンク ブリッジとも呼ばれます。

Active Directory サイト リンクは、通信のトランスポート プロトコルとして IP または SMTP のどちらかを使用して構成できます。SMTP サイト リンクは、プロトコルを使用してレプリケートできるデータの種類に制限があり、信頼性の高いネットワーク リンクのない Active Directory サイト間のレプリケーションのためにストア アンド フォワード機構を提供するように設定されています。IP サイト リンクでは、レプリケートできるデータの種類に制限がありません。Exchange 2010 では、ルーティング トポロジを確認するために IP サイト リンクのみを使用します。IP サイト リンクに割り当てられているコストは、ルーティング テーブルを計算する際に、Exchange 2010 のルーティング コンポーネントによって考慮されます。これらのコストは、メッセージの最終的な送信先への最小コストのルーティング パスを計算するために使用されます。

すべての Active Directory サイトは、少なくとも 1 つの IP サイトリンクに関連付ける必要があります。DEFAULTIPSITELINK という名前の既定の IP サイト リンクが 1 つあります。Active Directory サイトを作成する場合は、サイトを IP サイト リンクと関連付ける必要があります。追加の IP サイト リンクを作成して目的のトポロジを実装するか、すべての Active Directory サイトを DEFAULTIPSITELINK に関連付けることができます。IP サイト リンクの一部になっているそれぞれの Active Directory サイトは、均一なコストでそのリンク内の他のすべてのサイトと直接通信できます。

次の図では、フォレスト内に 4 つの Active Directory サイトが構成されています。すべてのサイトは、DEFAULTIPSITELINK に関連付けられています。したがって、各 Active Directory サイトは、同じコスト メトリックを使用して、他のすべてのサイトと直接通信します。複数の通信パスが示されていますが、定義されている IP サイト リンクは 1 つだけです。

単一の IP サイト リンクによるフル メッシュ トポロジ

次の図では、フォレスト内に 4 つの Active Directory サイトが構成されています。このトポロジでは、管理者は IP サイト リンクを構成して、Active Directory サイトのハブとスポークのトポロジを作成しています。それぞれのスポーク サイトは、中央のサイトと直接通信でき、推移的な IP サイト リンクを使用して相互に通信することができます。

Active Directory IP サイト リンクのハブとスポークのトポロジ

Exchange は、最小コストのパスを決定する際にのみサイト リンクを使用しますが、常に送信先のハブ トランスポート サーバーに直接メッセージを配信しようとすることに注意しなければなりません。たとえば、前の図に示したトポロジでサイト B のユーザーがメッセージをサイト C の別のユーザーに送信した場合、サイト B のハブ トランスポート サーバーは、サイト C のハブ トランスポート サーバーに直接接続します。メッセージを強制的にサイト A 経由にする場合は、そのサイトをハブ サイトとして有効にする必要があります。ハブ サイトの詳細については、後の「ハブ サイトの実装」を参照してください。

Active Directory 管理者は、フォレストの接続および通信要件に最も対応したトポロジを実装します。同じトポロジが Exchange 2010 によって使用されるため、現在のトポロジが効率的なメッセージング通信に対応していることを確認する必要があります。

サイト リンクの既定のコストは 100 です。有効なサイト リンクのコストは、1 から 99,999 までの数字で指定できます。冗長なリンクを指定した場合、低いコストが割り当てられているリンクが常に優先されます。Exchange 組織管理者は、Exchange 固有のコストを IP サイト リンクに割り当てることができます。Exchange コストが IP サイト リンクに割り当てられている場合、このコストが Exchange 2010 によって使用されます。コストが割り当てられていない場合は、Active Directory コストが使用されます。IP サイト リンクに Exchange コストを設定する方法の詳細については、このトピックで後述する「IP サイト リンクのコストの制御」を参照してください。Enterprise Administrators グループのメンバーシップを持つ管理者は、追加の IP サイト リンクを作成できます。

Active Directory サイト構成の詳細については、サイト トポロジの設計についてのページを参照してください (このサイトは英語の場合があります)。

IP サイト リンクのコストの制御

Active Directory IP サイト リンクのコストは、WAN 内のすべてのネットワーク速度と比較した相対的なネットワーク速度に基づいており、信頼性が高く効率的なレプリケーション トポロジが得られるように設計されています。そのため、ほとんどの場合、既存の IP サイト リンクのコストは、Exchange 2010 のメッセージ ルーティングでも適切に動作します。ただし、既存の Active Directory サイトおよび IP サイト リンクのトポロジを文書化した後に、その Active Directory IP サイト リンクのコストおよびトラフィック フローのパターンが Exchange 2010 に最適でないことが確認された場合は、Exchange によって評価されたコストに調整を加えることができます。Active Directory ツールを使用して IP サイト リンクに割り当てられたコストを変更すると、環境全体に影響を与える可能性があります。代わりに Exchange 管理シェルで Set-AdSiteLink コマンドレットを使用して、Exchange 固有のコストを IP サイト リンクに割り当てます。たとえば、メッセージ ルーティング用に IP サイト リンク SITELINKAB に別のコストを設定するには、シェルで次のコマンドを実行します。

Set-AdSiteLink -Identity SITELINKAB -ExchangeCost 25

Exchange コストが IP サイト リンクに割り当てられている場合、メッセージ ルーティングについては Exchange のコストよりも Active Directory のコストが優先され、最小コストのルーティング パスを評価する際には Exchange のコストのみがルーティングで考慮されます。

メッセージ ルーティング トポロジを Active Directory レプリケーション トポロジに分岐させる必要がある場合には、IP サイト リンクのコストの調整が役立ちます。Exchange コストは、ハブ サイトを使用するようにすべてのメッセージのルーティングを強制するために使用できます。Exchange コストは、Active Directory サイトへの通信が失敗した場合にどのキューにメッセージを入れるかを制御するためも使用できます。次の図は、4 つのサイトによる Active Directory トポロジを示します。

IP サイト リンク上で構成された Exchange のコストによるトポロジ

上の図では、サイト C とサイト D の間のネットワーク接続は、Active Directory レプリケーション用にのみ使用される帯域幅の狭い接続で、メッセージのルーティングには使用するべきではありません。ただし、Active Directory IP サイト リンクのコストによって、他のすべての Active Directory サイトからサイト D への最小コストのルーティング パスにそのリンクが含まれます。そのため、メッセージはサイト C 内のサイト D のキューに配信されます。一方、Exchange 管理者は、サイト D が利用できなくなった場合にメッセージがサイト B でキューに入るように、最小コストのルーティング パスにサイト B を含めるように設定します。サイト C とサイト D の間の IP サイト リンク上で Exchange のコストを高くして、サイト D への最小コストのルーティング パスに IP サイト リンクが含まれないように構成することができます。

Exchange 2010 では、Active Directory IP サイト リンクに対する最大メッセージ サイズ制限を構成できます。既定では、Exchange 2010 では、異なる Active Directory サイトにあるハブ トランスポート サーバー間で中継されるメッセージに対して最大メッセージ サイズは制限されません。Set-AdSiteLink コマンドレットを使用して Active Directory IP サイト リンクに最大メッセージ サイズを構成した場合、メッセージが最もコストの低いルーティング パスの Active Directory サイト リンクに構成されている最大メッセージ サイズ制限を越えると、そのメッセージに対して配信不能レポート (NDR) が生成されます。これは、帯域幅が狭い接続を介して通信する必要があるリモート Active Directory サイトに送信されるメッセージのサイズを制限するのに有効です。詳細については、「メッセージ サイズの制限について」を参照してください。

ハブ サイトの実装

Exchange 組織において、すべてのメッセージ配信を特定の Active Directory サイトで強制的に中継する必要があるかもしれません。このシナリオでは、接続性の関係で、サイト間での直接の SMTP 中継ができない場合があります。このため、メッセージを送信先に送信する前に中間サイトで中継する必要があります。また、管理者は Exchange 組織の内部ポリシーに従うために、すべてのメッセージを特定のサイトで中継する必要があるかもしれません。シェル コマンドレットを使用して、Active Directory サイトをハブ サイトとして指定することができます。Active Directory サイトをハブ サイトに指定すると、メッセージ配信に関係するサーバーの数が増えるためオーバーヘッドが増加します。たとえば、サイト A からサイト E に送信されるメッセージを考えます。最小コストのルーティング パスがサイト A - サイト B - サイト C - サイト D - サイト E であり、サイト C をハブ サイトとして指定する場合、メッセージはサイト A からサイト C に中継されてから、サイト C からサイト E に中継されます。

Active Directory サイトをハブ サイトとして指定するには、Set-AdSite コマンドレットを使用します。メッセージ配信の最小コストのルーティング パス上にハブ サイトが存在する場合、メッセージは、最終的な送信先に中継される前にキューに入れられ、ハブ サイトのハブ トランスポート サーバーによって処理されます。

最小コストのルーティング パスが選択された後で、ルーティング パス上にハブ サイトがあるかどうかが確認されます。ハブ サイトが構成されている場合、メッセージは宛先へ中継される前にハブ サイトのハブ トランスポート サーバーを通過します。最小コストのルーティング パス上に複数のハブ サイトがある場合、メッセージはルーティング パス上の各ハブ サイトを通過します。

このような中継のルーティングは、ハブ サイトが最小コストのルーティング パスに存在する場合にのみ有効です。次の図に、ハブ サイトの正しい使用方法を示します。この図で、サイト B はハブ サイトとして構成されています。サイト A からサイト D に中継されるメッセージは、サイト D に配信される前にサイト B に中継されます。

ハブ サイトによるメッセージの配信

次の図は、IP サイト リンクのコストがハブ サイトへのルーティングにどのように影響するかを示します。このシナリオで、サイト B はハブ サイトとして指定されています。ただし、サイト B は他のサイト間の最小コストのルーティング パス上に存在していないため、送信先に配信される前にサイト B でメッセージがキューに格納されることはありません。Active Directory サイトは、他の 2 つのサイト間の最小コストのルーティング パス上にない場合、ハブ サイトとして使用されません。

誤って構成されたハブ サイト

すべての Active Directory サイトをハブ サイトとして構成できます。ただし、この構成が正しく機能するためには、ハブ サイト内の少なくとも 1 つのハブ トランスポート サーバーで展開する必要があります。

トポロジ検出

Exchange 2010 トポロジは、Active Directory サイト トポロジに依存しており、自身の構成はありません。Active Directory トポロジは、次の必要な要素によって Exchange 2010 で使用可能になります。

  • Microsoft Exchange Active Directory トポロジ サービス 

  • Microsoft Exchange Transport サービス内のトポロジ検出モジュール

Microsoft ExchangeActive Directory トポロジ サービスは、エッジ トランスポート サーバーの役割を除くすべての Exchange 2010 サーバーの役割で実行されます。これらの Exchange 2010 サーバーは、Microsoft ExchangeActive Directory トポロジ サービスを使用して、Exchange サーバーが Active Directory データの読み取りおよび書き込みに使用できるドメイン コントローラーとグローバル カタログ サーバーを検出します。Exchange が Active Directory での読み取りおよび書き込みの必要がある場合、Exchange 2010 は識別されたディレクトリ サーバーにバインドします。

トポロジ検出モジュールは、Microsoft Exchange Transport サービスの一部で、Active Directory トポロジに関する情報を Exchange サーバーに提供します。この API は、組織内の Exchange サーバーと役割を検出し、Active Directory 構成オブジェクトとの関係を確認します。構成データは、Active Directory から取得され、そのコンピューターで実行されている Exchange サービスがアクセスできるようにキャッシュされます。

トポロジ検出モジュールは、次の手順を実行して、Exchange ルーティング トポロジを生成します。

  1. データが Active Directory から読み取られます。次のすべてのオブジェクトが取得されます。

    • Active Directory サイト。

    • IP サイト リンク。

    • すべての Exchange サーバー。これらのサーバーに展開されている Exchange 2010 サーバーの役割に関する情報が含まれます。

  2. 手順 1. で取得されるデータは、初期トポロジを作成し、関連する構成オブジェクトのリンクおよびマッピングを始めるために使用されます。

  3. Exchange サーバーは、Active Directory に格納されている Exchange サーバー オブジェクトからサイト属性値を取得することにより、Active Directory サイトと整合されます。

  4. ルーティング テーブルは、取得された情報の集合によって更新されます。

この処理によって、すべての Exchange 2010 サーバーは、組織内の他の Exchange サーバーを認識し、Exchange サーバーの互いの距離を把握します。

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Exchange 2010 ルーティング テーブル

Microsoft Exchange Transport サービスは起動時に、Active Directory から取得される情報のスナップショット、または AD LDS からエッジ トランスポート サーバーに基づいて一連のルーティング テーブルを計算します。AD LDS に格納されている構成情報には、使用可能なコネクタと承認済みドメインが含まれますが、トポロジ データは含まれません。

ルーティング コンポーネントは、ルーティング テーブルを参照し、メッセージを受信者にルーティングする方法を決定します。構成が変更されると、ルーティング テーブルは再構築されます。新しいルーティング テーブルは、新しい受信メッセージをルーティングするために使用されます。ルーティング コンポーネントが構成の変更によって影響を受けることを確認すると、リモート配信キュー内のメッセージも再ルーティングされます。メッセージ ルーティングに関する詳細については、後の「再ルーティングと到達不能キュー」を参照してください。

次の構成データは、Active Directory から取得され、ハブ トランスポート サーバーのルーティング コンポーネントで使用できるようになります。

  • Active Directory サイト

  • Active Directory IP サイト リンク

  • Exchange サーバーおよび Active Directory サイトとそれらの関係

  • SMTP コネクタ

  • SMTP 以外のコネクタ

    注意

    SMTP 以外のコネクタには、Exchange 2010 配信エージェント コネクタ、外部コネクタ、また共存シナリオでは、Exchange 2003 によってホストされている SMTP 以外のコネクタが含まれます。

  • ルーティング グループ

  • ルーティング グループ コネクタ

  • メールボックス ストア (プライベート メッセージ データベース (MDB))

  • パブリック フォルダー ストア (パブリック MDB)

  • パブリック フォルダー階層

このデータに基づいて、Microsoft Exchange Transport サービスのルーティング コンポーネントは、ルーティング テーブルの値を設定し、ルーティングの決定を効率化します。ルーティング テーブルは、データを相互に関連付けて、トポロジ マップを作成します。このトポロジ マップには、次の要素が含まれます。

  • リンクされたコネクタのマップ   このマップは、ローカル サーバー上の受信コネクタの ID をリンクされた送信コネクタと関連付けます。

  • サーバー マップ   サーバー マップには、組織内のすべての Exchange 2010 および Exchange 2007 のハブ トランスポート サーバー、エッジ トランスポート サーバー、メールボックス サーバー、および Exchange 2003 サーバーが含まれます。このマップは、各 Exchange サーバーの識別名をサーバー ルーティング データと関連付けます。これには、サーバーに到達するための総コストが含まれます。

  • 従来のサーバー マップ   従来のサーバー マップには、組織内のすべての Exchange Server 2007 ハブ トランスポート サーバー、エッジ トランスポート サーバー、メールボックス サーバー、および Exchange 2003 サーバーが含まれます。このマップは、各 Exchange サーバーの従来の識別名をサーバー ルーティング データと関連付けます。これには、サーバーに到達するための総コストが含まれます。このマップは、ストア優先機能をサポートします。ストア優先機能は、パブリック フォルダーに固有です。詳細については、「内部のメッセージ ルーティング」の「パブリック フォルダーへのルーティング」を参照してください。

  • MDB マップ   組織内のすべての MDB は、MDB マップに含まれます。このマップは、各 MDB サーバーの識別名をサーバー ルーティング データと関連付けます。これには、サーバーに到達するための総コストが含まれます。

  • Active Directory サイト マップ   このマップは、各 Active Directory サイトを、ローカル サイトからすべての他のサイトへの最小コストのルーティング パスを含む構造に関連付けます。マップには、最小コストのルーティング パス上にあるすべてのハブ サイトが含まれます。各ルーティング パス ホップは、拡張 DNS コンポーネントによって使用されるサイト内のすべてのハブ トランスポート サーバーも識別します。

  • ルーティング グループ マップ   このマップは、Exchange 2010 ルーティング グループから従来のルーティング グループそれぞれへの最小コストのルーティング パスに、総コストと最初のホップ ルーティング グループ コネクタを関連付けます。

  • 送信コネクタ マップ   このマップは、組織内で構成されている送信コネクタと、各コネクタの送信元サーバーを識別します。

ルーティング テーブルは、トランスポート サーバーが起動されるたびに構築され、構成の変更を受信したときに再計算されます。構成の変更は、次のいずれかの方法で検出できます。

  • Active Directory 変更通知   通知が受信されてから、変更がルーティング テーブルに書き込まれるまでに遅延時間があります。この遅延時間によって、ルーティング コンポーネントは複数の変更を 1 つにまとめ、1 回の操作で処理できます。既定では、1 つの通知を受信してからルーティング コンポーネントによる処理が行われるまでに、5 秒間の遅延が発生します。たとえば、1 秒間隔で 5 つの通知を受信する場合、ルーティングの変更処理が行われるまでに合計で 9 秒感の遅延が発生します。

  • サービス管理コマンドによる構成の再読み込み ルーティング コンポーネントは、Microsoft Exchange Transport サービスが再起動されると、構成データを再読み込みします。

  • Active Directory の通知によってサポートされない変更を追跡するための定期的な再読み込み   既定では、ルーティングは、すべての変更を確実に追跡するために、構成データを定期的に再読み込みします。構成の再読み込みは、6 時間間隔で実行されます。

ルーティング テーブル内の情報は、ルーティング ログに記録されます。既定では、これらのログは C:\Program Files\Microsoft\Exchange Server\V14\TransportRoles\Logs\Routing フォルダーにあります。ルーティング テーブルが計算されるたびに、新しいログが生成されます。何らかの理由でハブ トランスポート サーバーが Active Directory と通信できない場合、データが最新のものではない可能性があるとしても、現在キャッシュされているデータに基づいてルーティングが決定されます。詳細については、「ルーティング テーブル ログ出力について」を参照してください。

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ルーティングのためのメッセージの受信

メッセージは次の経路でハブ トランスポート サーバーに到着します。

  • Exchange 組織内の受信者または内部中継の承認済みドメイン内の受信者に配信する場合、電子メールは、インターネットに直接接続された SMTP サーバーから受信されます。

  • Exchange 組織の Active Directory サイト内のメールボックス サーバー上の受信者メールボックスに配信する場合、電子メールは、組織内の別のハブ トランスポート サーバーから受信されます。

  • 電子メールが SMTP クライアントから受信されます。これらは、通常、ユーザー環境内に存在する可能性がある POP3 または IMAP4 のユーザーです。

  • 電子メールは、ハブ トランスポート サーバー上のピックアップ ディレクトリと再生ディレクトリから受信されます。これらのディレクトリは、通常、メッセージを Exchange インフラストラクチャに送信するために外部コネクタによって使用されます。

  • 電子メールは、Exchange 2010 メールボックス サーバーからハブ トランスポート サーバーによって受信されます。

  • Exchange 2010 メールボックス サーバー上の受信者メールボックスに配信する場合、電子メールは、Exchange 2007 または Exchange 2003 サーバーから受信されます。

ハブ トランスポート サーバーで受信された電子メールの分類処理は、発信キュー内で開始されます。

エッジ トランスポート サーバー、他の Exchange ハブ トランスポート サーバー、および SMTP クライアントからのメッセージの受信

このシナリオでは、メッセージは、標準の SMTP 接続を使用して、エッジ トランスポート サーバー、ハブ トランスポート サーバー、または他のサードパーティ製 SMTP ホストから受信されます。リモート ホストが SMTP 接続を開始し、メッセージをハブ トランスポート サーバーに転送します。ハブ トランスポート サーバーは、受信 SMTP 接続を受け付けるために受信コネクタを使用します。各ハブ トランスポート サーバーには、セットアップ中に作成された 2 つの受信コネクタがあります。これらのコネクタの 1 つは、他の Exchange サーバーから認証済みの SMTP 接続を受信するために使用されます。もう 1 つのコネクタは、組織内の POP3 または IMAP4 のユーザーが使用する SMTP クライアントから SMTP 接続を受信するために使用されます。これら 2 つの受信コネクタには、使用目的に合った異なるアクセス許可が構成されています。受信コネクタの詳細については、「受信コネクタについて」を参照してください。

既定では、ハブ トランスポート サーバーは、認証されていない匿名接続を受け付けません。この機能を有効にする必要がある場合、匿名接続を処理するための別の受信コネクタを作成することをお勧めします。詳細については、「受信コネクタの匿名の中継を許可する」を参照してください。

ピックアップ ディレクトリおよび再生ディレクトリからのメッセージの収集

転送プロトコルとして SMTP を使用しないメッセージング システムは、外部コネクタを使用して Exchange 組織に接続できます。メッセージをリモート システムから Exchange ユーザーに送信する場合、外部コネクタは、ピックアップ ディレクトリと呼ばれるハブ トランスポート サーバー上の特別なディレクトリにメッセージを書き込みます。ハブ トランスポート サーバーは、ピックアップ ディレクトリに新規メッセージがあるかどうかを定期的に確認します。新規メッセージが検出された場合、ハブ トランスポート サーバーは、そのメッセージを Exchange 電子メール メッセージに変換して、通常のメッセージとしてルーティングします。ピックアップ ディレクトリと再生ディレクトリの使用方法の詳細については、「ピックアップおよび再生ディレクトリについて」を参照してください。

メールボックス サーバーからのメッセージの取得

このシナリオでは、メールボックス サーバー上で動作する Microsoft Exchange メール発信サービスが、同じ Active Directory サイトにあるハブ トランスポート サーバーに対して、送信者の送信トレイからメッセージを取得する準備ができたことを通知します。各メールボックス サーバーは、同じ Active Directory サイトにあるハブ トランスポート サーバーの一覧を維持します。ハブ トランスポート サーバーのこの一覧は、発信サーバー一覧と呼ばれます。10 分ごとにサーバー検出処理が繰り返され、一覧が最新の状態に保たれます。

メールを取得する準備ができたことを通知するメールボックス サーバーと同じ Active Directory サイトに、複数のハブ トランスポート サーバーがある場合、サーバーの選択に次の処理が使用されます。

  • ローカル メールボックス サーバーがハブ トランスポート サーバーの役割も実行しているが、データベース可用性グループ (DAG) に参加していない場合、そのローカル サーバーに通知されます。ローカルの Microsoft Exchange Transport サービスが実行されていない、またはローカル ハブ トランスポート サーバーがバック プレッシャのため新しいメール発信を処理できない場合、利用可能な別のハブ トランスポート サーバーに通知されます。バック プレッシャの詳細については、「バック プレッシャについて」を参照してください。

  • ローカル メールボックス サーバーがハブ トランスポート サーバーの役割も実行していて、データベース可用性グループ (DAG) にも参加している場合、そのローカル ハブ トランスポート サーバーに通知する前に、まずサイト内の任意のハブ トランスポート サーバーへの通知を試みます。これは、同じサーバー ハードウェアでのメッセージの冗長なコピーを避けるために行われます。DAG の使用時にメールボックス サーバーとハブ トランスポート サーバーの役割が共存する場合の詳細については、「DAG を使用する場合の、ハブ トランスポートとメールボックス サーバーの役割の共存」を参照してください。

  • ローカル メールボックス サーバーが、ハブ トランスポート サーバーの役割を実行していない場合、通知はラウンドロビン方式でハブ トランスポート サーバー間で負荷分散されます。

  • 選択されたハブ トランスポート サーバーに接続できない場合、Microsoft Exchange メール発信サービスは、同じ Active Directory サイト内の別のハブ トランスポート サーバーにフェールオーバーします。接続できなかったサーバーには非アクティブのマークが付き、発信サーバー一覧の次のハブ トランスポート サーバーが選択されます。ローカル Active Directory サイトで利用できるハブ トランスポート サーバーがない場合、発信サーバー一覧は空です。この場合、イベントがログに記録され、メール発信通知は一時的に停止されます。非アクティブとしてマークされたハブ トランスポート サーバーは、5 分後に再試行されます。

既定では、Microsoft Exchange メール発信サービスによって、サイト内のハブ トランスポート サーバー間で通知イベントが負荷分散されるので、それぞれのハブ トランスポート サーバーが受け取って処理する通知イベントは均等に配布されます。ただし、状況によっては均等な配布が最適とはいえないことがあります。すべてのハブ トランスポート サーバーが同じ処理能力を持つわけではありません。また、メッセージによっては通常より多くの処理が必要になることがあります。たとえば、大容量のファイルが添付されたメッセージや多数の送信先が設定されたメッセージを処理するには、短いメッセージや送信先が 1 つだけのメッセージを処理するより時間が長くかかります。メールボックス サーバーが通知する必要があるハブ トランスポート サーバーの静的一覧を作成するには、シェルで Set-MailboxServer コマンドレットを使用できます。取得するメールがある場合にローカル メールボックス サーバーが通知する必要があるハブ トランスポート サーバーの一覧を指定するには、SubmissionServerOverrideList パラメーターを使用します。この設定を構成する方法の詳細については、「Set-MailboxServer」を参照してください。

ハブ トランスポート サーバーがメールボックス サーバーからメール発信通知を受け取った後、ハブ トランスポート サーバーはストア ドライバーを使用して、メールボックス データベースからメッセージを取得し、ハブ トランスポート サーバーの発信キューに配置します。メールボックス サーバーからハブ トランスポート サーバーへのメッセージの転送には、Exchange RPC が使用されます。

従来の Exchange サーバーからのメッセージの受信

Exchange 2010 では Exchange Server オブジェクト (XSO) モデルが変更されたため、Exchange 2010 ハブ トランスポート サーバーは Exchange 2007 メールボックス サーバーからメッセージを取得したり、このメールボックス サーバーにメッセージを配信したりすることができません。同様に、Exchange 2007 ハブ トランスポート サーバーも、Exchange 2010 メールボックス サーバーと通信することはできません。Exchange 2007 受信者から送信されたすべてのメッセージは、最初に Exchange 2007 ハブ トランスポート サーバーによってメールボックス サーバーから取得され、次に Exchange 2010 ハブ トランスポート サーバーに中継されます。Exchange 2007 と共存する場合のメッセージ ルーティングの詳細については、「Exchange 2007 トランスポートからのアップグレード」を参照してください。

Active Directory サイトとは対照的には、Exchange 2003 では、メッセージのルーティングにルーティング グループを使用します。ルーティング グループは、ルーティング グループ コネクタを使用して相互に接続されます。この 2 つのルーティング トポロジの共存をサポートするために、すべての Exchange 2010 サーバーは、Exchange 2010 の Exchange 2003 組織へのインストール時に 1 つのルーティング グループに自動的に追加されます。Exchange 2003 メールボックスから発信されたすべてのメッセージは、Exchange 2010 ルーティング グループと Exchange 2003 ルーティング グループ間のルーティング グループ コネクタを介して Exchange 2010 環境に配信されます。Exchange 2003 と共存する場合のメッセージ ルーティングの詳細については、「Exchange 2003 トランスポートからのアップグレード」を参照してください。

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メッセージのルーティング

メッセージを受信した後、ハブ トランスポート サーバーまたはエッジ トランスポート サーバーは、最終的な送信先を決定し、Exchange トポロジとコネクタ構成を使用して最小コストのルーティング パスを決定します。ルーティング パスが決定されたら、メッセージはそのルーティング パスの次のホップに配信されます。

ここでは、Exchange における全般的なルーティングの決定方法について説明しますが、後に続く 2 つのトピックでは、特定のルーティング シナリオの詳細について説明します。「内部のメッセージ ルーティング」では、メールボックス サーバー、パブリック フォルダー、および従来のサーバーへのメッセージ配信について説明します。「外部のメッセージ ルーティング」では、Exchange 組織外の受信者へのメッセージのルーティングについて説明します。このトピックでは、送信コネクタ、配信エージェント コネクタ、および外部コネクタの役割についても説明します。

最終的な送信先の確認

前のセクションでは、ハブ トランスポート サーバーがメッセージを受信できるさまざまなソースについて説明しました。メッセージがハブ トランスポート サーバーによって受信されると、メッセージは分類される必要があります。メッセージの分類の最初の段階は、受信者の解決です。受信者が解決された後に、最終的な送信先を決定できます。次の段階のルーティングでは、送信先への最適な到達方法を決定します。単一の確定的なルートが選択されます。このルートは、ルーティングの構成が変更されない限り、再計算されることはありません。

送信側サーバーの観点からすると、各配信キューは特定のメッセージの送信先を表します。ハブ トランスポート サーバーまたはエッジ トランスポート サーバーがメッセージの送信先を選択すると、送信先は受信者に NextHopSolutionKey 属性としてスタンプされます。単一のメッセージが複数の受信者に送信されている場合、各受信者は NextHopSolutionKey 属性を持ちます。受信側サーバーでもメッセージの分類を実行し、メッセージを配信用のキューに入れます。メッセージがキューに入れられた後には、特定のキューの配信の種類を確認して、次ホップの送信先への到達時にメッセージが再度中継されるかどうかを確認できます。

メッセージの送信先は、次の配信の種類のいずれかに分類されます。

  • DNS コネクタ配信   ローカル サーバーが送信元サーバーである SMTP 送信コネクタを使用して、外部の受信者に送信するキューにメッセージが入れられます。コネクタは、DNS を使用して受信者のアドレスを解決するように構成されます。

  • スマート ホスト コネクタ配信   ローカル サーバーが送信元サーバーである SMTP 送信コネクタを使用して、外部の受信者に送信するキューにメッセージが入れられます。コネクタは、スマート ホストを使用して配信するように構成されます。

  • Active Directory サイトでのエッジ トランスポート サーバーへの SMTP 中継   送信元サーバーがローカルの Active Directory サイトで購読されているエッジ トランスポート サーバーである SMTP 送信コネクタを使用して、外部の受信者に配信するキューにメッセージが入れられます。

  • Active Directory サイトでのハブ トランスポート サーバーへの SMTP 中継   同じ Active Directory サイトにローカル サーバーとして存在しているハブ トランスポート サーバーに配信するキューにメッセージが入れられます。送信先サーバーには、Exchange 2007 のハブ トランスポート サーバー、送信コネクタ、配信エージェント コネクタまたは外部コネクタの送信元サーバー、ルーティング グループ コネクタの送信元、または配布グループの展開サーバーを指定できます。

  • リモート Active Directory サイトへの SMTP 中継   リモート Active Directory サイト内にあるハブ トランスポート サーバーに配信するキューにメッセージが入れられます。リモート Active Directory サイト内の最終的な送信先サーバーは、次のいずれかです。

    • 外部の受信者にメッセージを転送するように構成されたコネクタの送信元サーバー

    • ルーティング グループ コネクタの送信元サーバー

    • 配布グループの展開サーバー

    • リモート Active Directory サイト内にあるメールボックス サーバー

    メッセージは、送信先サイトのハブ トランスポート サーバーのいずれかに配信されます。受信側サーバーは、必要に応じて Active Directory サイト内でメッセージを中継します。

  • 従来のルーティング グループへの SMTP 中継   Exchange 2003 ルーティング グループに到達するために使用される、最初のホップ ルーティング グループ コネクタに配信するキューにメッセージが入れられます。最終的な送信先サーバーは次のいずれかです。

    • コネクタの送信元サーバー

    • 展開サーバー

    • ルーティング グループ内に存在するメールボックス受信者宛てのメッセージを配信する Exchange 2003 ブリッジヘッド サーバー

  • MAPI 配信 ローカルの Active Directory サイト内のメールボックス サーバー上にある受信者のメールボックス、パブリック フォルダー、またはパブリック フォルダー ストアに配信するキューにメッセージが入れられます。 

  • SMTP 以外のゲートウェイ配信   ローカル サーバーが送信元サーバーである配信エージェント コネクタまたは外部コネクタを使用して、外部の受信者に送信するキューにメッセージが入れられます。この配信の種類は、メッセージがローカル サーバーの配信エージェント コネクタまたは外部コネクタ ドロップ ディレクトリに配信されている場合にのみ使用されます。

  • 到達不能 受信者へのルートを決定できませんでした。メッセージは到達不能キューに入れられます。

最小コストのルーティング パスの決定

リモート Active Directory サイトへの最小コストのルーティング パスは、2 つのサイト間に存在する Active Directory IP サイト リンクに割り当てられたすべてのコストを計算することで決定されます。リンクはブリッジされ、直接接続されます。Exchange 2010 ハブ トランスポート サーバーでは、常に 1 つの確定的な最小コストのルーティング パスが選択されます。ルーティング パスを選択するにあたって、基盤となる接続や送信先サーバーの可用性はまったく考慮されず、代替ルーティング パスは検討されません。

最小コストのルーティングパスの計算は、次ホップへのメッセージ配信が失敗した場合にバックオフ パスを決定するために使用されます。Exchange 2010 のバックオフは、ネットワークの問題やサーバーがオフラインになったなどの理由で直接の中継ができなくなった場合に、最小コストのルーティング パス上の中間ホップでメッセージを配信するために使用されるメカニズムです。ルーティング コンポーネントは、接続が確立されるまで最小コストのルーティング パス上で 1 ホップずつバックオフして、できるだけ宛先の近くへメッセージを配信しようと試みます。最初は、送信先の Active Directory サイトにある各ハブ トランスポート サーバーに対して接続が試みられます。Active Directory サイト内のどのハブ トランスポート サーバーも応答しない場合は、配信サイトからバックオフを開始する方法を特定するために、最小コストのルーティング パスが確認されます。この目的は、送信先のできるだけ近くにメッセージを配信し、その Active Directory サイト内のハブ トランスポート サーバーでメッセージをキューに入れることです。

個々のメッセージ ルーティング シナリオによっては、次の要因が最小コストのルーティング パスの選択に影響を与える可能性があります。

  • リンクされたコネクタ   メッセージを受信する受信コネクタが送信コネクタにリンクされている場合、コストに関係なくその送信コネクタにメッセージがルーティングされます。この構成は、常に優先されます。

  • 送信先に到達するために通過する必要のある IP サイト リンクとルーティング グループ コネクタに割り当てられるコスト 送信元サーバーと送信先サーバーの間に複数のルーティング パスが存在している場合、総コストが最も低いルーティング パスが選択されます。

  • 送信コネクタに割り当てられたアドレス スペース   送信先と最も一致する特定のアドレス スペースを持つ送信コネクタが選択されます。

  • 送信コネクタで構成されているアドレス スペースに割り当てられたコスト 複数の送信コネクタが同じアドレス スペースに割り当てられている場合、ルーティング コンポーネントは、アドレス スペースに割り当てられているコストを比較します。最もコストの低い送信コネクタが選択されます。

  • コネクタのスコープ   コネクタの使用を、コネクタの送信元トランスポート サーバーと同じ Exchange 2010 サイト内にある Active Directory サーバーに限定することができます。以前のバージョンの Exchange では、コネクタのスコープを、同じルーティング グループ メンバーシップを持つサーバーに限定することができました。

  • メッセージ サイズの制限   コネクタで指定されるメッセージ サイズの制限は、ルーティングされるメッセージのサイズよりも大きく設定する必要があります。メッセージ サイズの制限がメッセージのサイズよりも小さく設定されているコネクタは、ルーティングで考慮されません。

  • 送信側サーバーへの送信先の近さ   ルーティングでは、次の順で最も近いサーバーが優先されます。ローカル サーバー、同じ Active Directory サイト内のサーバー、またはリモート Active Directory サイトやルーティング グループ内のサーバー。

  • Active Directory サイトに割り当てられる名前 複数のルーティング パスが同じ総コストになる場合、ルーティング コンポーネントでは、各ルーティング パス上で送信先サイトの前にある Active Directory サイトの名前の英数字を比較します。送信先に最も近い Active Directory サイトの名前が英数字順で最下位になるルーティング パスが使用されます。

  • ルーティング グループ コネクタに割り当てられる名前   複数のルーティング パスが同じ総コストになる場合、ルーティング コンポーネントでは、各ルーティング パス上で目的の送信先の前にあるルーティング グループ コネクタの名前の英数字を比較します。送信先に最も近いルーティング グループ コネクタの名前が英数字順で最下位になるルーティング パスが使用されます。

  • コネクタの状態   Exchange 2010 ルーティング コンポーネントは、ルーティング パスを計算するときに有効になっているコネクタのみを考慮します。ただし、以前のバージョンの Exchange はコネクタの状態を考慮しません。

次のロジックによってルーティング パスが選択されます。

  1. まず、送信先に到達するために通過する必要のある IP サイト リンクおよびすべてのルーティング グループ コネクタのコストを追加して、最小コストのルーティング パスを計算します。送信先がコネクタである場合、選択されたコネクタに到達するために、アドレス スペースに割り当てられたコストが追加されます。複数のルーティング パスが考えられる場合、総コストが最も低いルーティング パスのみが使用されます。

  2. 複数のルーティング パスが同じ総コストになっている場合、各パスのホップ数が評価され、ホップ数の最も少ないルーティング パスが使用されます。

  3. それでも複数のルーティング パスが使用可能である場合、送信先の前にある Active Directory サイトまたはルーティング グループ コネクタに割り当てられている名前が考慮されます。送信先に最も近い Active Directory サイトの名前が英数字順で最下位になるルーティング パスが使用されます。評価されたすべてのルーティング パスで送信先に最も近いサイトが同じであった場合、さらに前のサイトの名前が考慮されます。

次の図に、Exchange 組織のルーティング トポロジを示します。このトポロジは次の例で、最小コストのルーティング パスを選択するルーティング アルゴリズムで使用されるロジックを示すために使用されています。

Exchange 2010 ルーティング トポロジ

例 1   サイト A からサイト D に中継されるメッセージは、次の 2 つの考えられるルーティング パスに従います。サイト A - サイト B - サイト D およびサイト A - サイト C - サイト D というルーティング パスです。メッセージのルーティングの総コストを判断するために、IP サイト リンクに割り当てられているコストが追加されます。この例では、サイト A - サイト B - サイト D というルーティング パスは、総コストが 20 です。サイト A - サイト C - サイト D というルーティング パスは、総コストが 10 です。サイト A - サイト C - サイト D のルーティング パスが選択されます。

例 2   メッセージはサイト B からサイト D に中継されます。考えられるルーティング パスは 3 つあります。コストが 15 になるサイト B - サイト D、コストが 15 になるサイト B - サイト E - サイト C - サイト D、コストが 15 になるサイト B - サイト A - サイト C - サイト D というルーティング パスです。複数のルーティング パスが同じコストになっているので、サイト B - サイト D というルーティング パスが選択されます。このルーティング パスはホップ数が最も少なくなります。

例 3   メッセージはサイト A からサイト E に中継されます。考えられるルーティング パスは 2 つあります。コストが 10 になるサイト A - サイト B - サイト E と、コストが 10 になるサイト A - サイト C - サイト E というルーティング パスです。どちらのルーティング パスも同じコストで、同じホップ数になっています。サイト E の直前にある Active Directory サイトの英数順が比較されます。サイト B はサイト C よりも英数字順が低くなります。したがって、サイト A - サイト B - サイト E というルーティング パスが選択されます。

最小コストのルーティング パスが決定された後、Exchange 2010 ルーティング コンポーネントは代替ルーティング パスを考慮しません。

次ホップの選択

Exchange 2010 ハブ トランスポート サーバーは、最小コストのルーティング パス上の各 Active Directory サイトに中継しません。ルーティング パスが決定された後、メッセージは送信元サーバーから次ホップに直接中継されます。次ホップの選択では、最終的な送信先のできるだけ近くにメッセージを配信しようと試みます。最終的な送信先に到達するために、さらにサイト内での中継が必要になる場合があります。従来のルーティング グループにルーティングする場合、最初のホップ ルーティング グループ コネクタの送信元サーバーのある Active Directory サイトへの直接中継が発生します。メッセージが従来の環境に中継された後、標準的な従来のルーティングが発生します。

次の図は、単純な Exchange トポロジと、多くの Exchange ルーティング コンポーネントを示します。

Exchange トポロジとルーティング コンポーネント

前の図を参考にすると、サイト A のメールボックス 1 から外部の受信者 joe@contoso.com に送信されるメッセージは、次のように処理されます。

  1. メールボックス 1 で実行されている Microsoft Exchange メールボックス発信サービスは、同じ Active Directory サイト内にある Exchange 2010 ハブ トランスポート サーバーに新しいメール アイテムのトランスポートについて通知します。

  2. RPC を使用して、同じ Active Directory サイト内の Exchange 2010 ハブ トランスポート サーバー上にあるストア ドライバー コンポーネントは、メッセージを取得し、ローカル サーバー上の発信キューに置きます。

  3. メッセージは、発信キューから分類に進みます。カテゴライザーは、まず、受信者の解決を行い、joe@contoso.com が外部の受信者であることを確認します。

  4. ルーティング コンポーネントは、メッセージをルーティングするのに最も適したコネクタを選択し、そのコネクタへの最小コストのルーティング パスを計算します。この例では、送信コネクタはアドレス スペース *.contoso.com を持ち、ルーティング コンポーネントによって選択されたコネクタです。この送信コネクタのすべての送信元サーバーは、サイト B 内にあります。

  5. ルーティング コンポーネントは、送信コネクタの送信元サーバーに到達するために必要な次ホップを決定します。サイト A 内のハブ トランスポート サーバーは、サイト B への SMTP 配信用のキューにメッセージを入れます。

  6. サイト B の受信側のサーバーが送信コネクタの送信元サーバーである場合、送信コネクタに配信するキューにメッセージを入れます。受信側のサーバーが *.contoso.com 送信コネクタの送信元サーバーではない場合は、SMTP を使用して、コネクタの送信元サーバーであるサイト B のハブ トランスポート サーバーにメッセージが中継されます。

次の表に、前の図で示したトポロジに基づく複数の受信者用の次ホップの選択例を示します。これは、考えられるすべてのルーティング方法の完全な一覧ではありません。前の図で示したようなトポロジで最も一般的な例を示しているだけです。

前の図での次のホップの選択例

受信側サーバー 最終的な送信先 次ホップ キュー配信の種類

ハブ 1

メールボックス 1

メールボックス 1

MAPI 配信

ハブ 1

メールボックス 2

ハブ 3

Active Directory サイトでの SMTP 中継

ハブ 1

メールボックス 3

サイト B

リモート Active Directory サイトへの SMTP 中継

ハブ 1

メールボックス 4

ルーティング グループ コネクタ

従来のルーティング グループへの SMTP 中継

ハブ 1

Recipient@fourthcoffee.com

エッジ 1

エッジ トランスポートへの SMTP 中継

ハブ 3

メールボックス 1

ハブ 1 または ハブ 2

Active Directory サイトでの SMTP 中継

ハブ 4

メールボックス 1

サイト A

リモート Active Directory サイトへの SMTP 中継

ハブ 4

メールボックス 4

サイト A

リモート Active Directory サイトへの SMTP 中継

ハブ 4

Recipient@contoso.com

Contoso SMTP ホスト

スマート ホスト配信

ハブ 4

Recipient@fourthcoffee.com

サイト A

リモート Active Directory サイトへの SMTP 中継

エッジ 1

Recipient@fourthcoffee.com

Fourth Coffee SMTP ホスト

DNS 配信

最小コストのルーティング パスが計算され、次ホップの送信先が選択された後、ハブ サイトが最小コストのルーティング パスに沿って構成されていない限り、Exchange 2010 ルーティングはメッセージを送信先に直接中継しようと試みます。

障害点におけるキュー

最小コストのルーティングパスの計算は、次ホップへのメッセージ配信が失敗した場合にバックオフ パスを決定するために使用されます。Exchange 2010 は、接続が確立されるまで最小コストのルーティング パス上で 1 ホップずつバックオフして、できるだけ送信先の近くにメッセージを配信しようと試みます。この動作は、障害点におけるキューと呼ばれます。通信に障害が発生した配信パスのポイントでメッセージがキューに入れられている場合、このことは、問題解決後の配信を速めるだけでなく、メッセージの配信が失敗した理由を特定するためにも役立ちます。

次の図に示すトポロジでは、メッセージがサイト A からサイト D に配信される場合、最小コストのルーティング パスはサイト A - サイト B - サイト C - サイト D である可能性があります。最初に、サイト A からサイト D に直接配信しようとします。サイト D のハブ トランスポート サーバーが応答しない場合、サイト C のハブ トランスポート サーバーへの配信が試みられます。この処理は、ハブ トランスポート サーバーがメッセージを受け付けるまで続けられます。すべての中間サイトが利用できない場合、メッセージは送信元サイトでキューに入れられます。メッセージがサイト C 内でキューに入れられている場合、まずは、サイト D のハブ トランスポート サーバーまたはサイト C とサイト D の間の接続に障害がないかどうかを調べることができます。

障害点におけるキュー

メッセージが障害点でキューに入れられている場合、キューは再試行状態に置かれ、配信が成功するかメッセージの有効期限が切れるまで、メッセージの再試行の間隔に基づいて引き続き配信が試行されます。既定の間隔である 12 時間後に、キューは再分類のために自動的に再送信されます。次ホップの送信先としてコネクタを持つキューは、再送信を引き起こす構成の変更が生じない限り、自動的に再送信されることはありません。詳細については、「メッセージの再ルーティングと到達不能キュー」を参照してください。

メール フローの問題を診断するために、メール フロー トラブルシューティング ツールを使用できます。このツールは、Microsoft Exchange トラブルシューティング アシスタントのコンポーネントで、Exchange 管理コンソールのツールボックスから実行できます。

より複雑なトポロジでは、2 つの Active Directory サイト間の最小コストのルーティング パスに、多くの中間 Active Directory サイトが存在する可能性があります。ルーティング パスの初期のある地点で新しいネットワークの問題が発生した場合、終端からサイトごとにバックオフし、すべての中間サイトへの配信を試みることはあまりにも非効率です。ルーティング パスのホップ数が 4 よりも多い場合、残りのサイトが 4 以下になるまでバイナリ バックオフが実行されます。バイナリ バックオフとは、ルーティング パスの中間点で、次の接続試行が行われることです。たとえば、Active Directory サイト A からサイト G への最小コストのルーティング パスが A - B - C - D - E - F - G である場合、サイト B とサイト C 間のリンクでネットワーク障害が発生すると、最初の接続試行はサイト G のすべてのハブ トランスポート サーバーに対して試行されます。この接続の試行が失敗した場合は、次にサイト D のすべてのハブ トランスポート サーバーに対して試行されます。これはサイト G への中間点です。この接続の試行が失敗した場合は、送信元サイトまでのリンク数が 4 よりも小さいため、サイト C およびサイト B に対して接続の試行が行われます。メッセージは最終的に、B - C リンクの接続が復元されるまで、サイト B のハブ トランスポート サーバーのキューに入れられます。

遅延ファンアウト

単一の電子メール メッセージに、複数の受信者を指定することができます。これらの受信者は、内部メールボックスを持つ受信者か、外部の受信者になります。単一のメッセージを複数の受信者にルーティングするには、次の手順が行われます。

  1. 受信者の解決   メッセージの各受信者は、配信先に解決されます。

  2. ルーティング   各受信者の最小コストのルーティング パスが決定されます。これにはハブ サイトが構成されているかどうかが含まれます。

  3. メッセージの分割   配信場所の異なる受信者にメッセージをルーティングするには、メッセージを複数のコピーに分割する必要があります。

各受信者が解決され、それぞれの配信先のルーティング パスが決定されると、Exchange 2010 は各受信者のルーティング パスを比較します。帯域幅を維持するために、ルーティング パスの分岐点に達するまで、分割 (メッセージの複数のコピーへの分割) は行われません。

たとえば、単一のメッセージの複数の受信者が、最小コストのルーティング パスの一部またはすべてを共有している場合は、ルーティング パス上で分岐が生じるポイントにメッセージが達するまで、メッセージの単一のコピーが送信されます。ルーティング パス上で分岐が発生すると、メッセージは分割され、各受信者用に別々のコピーが作成されます。

次の図では、単一のメッセージがサイト A からサイト C、サイト D、およびサイト E 内の受信者に送信されています。メッセージがサイト B に達するまでは、最小コストのルーティング パスが共有されます。このシナリオでは、すべての受信者を含むメッセージの単一のコピーがサイト B に中継されます。これは、ルーティング パスの最初の分岐点を表します。サイト B から、単一のメッセージ コピーがサイト D の受信者にルーティングされ、単一のコピーがサイト C に中継されます。サイト C で、メッセージが再度分割されます。メッセージのコピーはサイト C の受信者に配信されます。また、メッセージのコピーがサイト E に中継され、サイト E 内の受信者に配信されます。

遅延メッセージ ファンアウト

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再ルーティングと到達不能キュー

何らかの理由により、有効な受信者へのルートを決定できなかった場合、メッセージは到達不能キューに置かれます。構成の変更が処理され、ルーティング テーブルが再計算されると、到達不能キュー内のメッセージは再ルーティングされます。メッセージは、次のシナリオではルーティングされません。代わりに、NDR が送信者に返されます。次のシナリオでは、メッセージが到達不能キューにルーティングされます。

  • 受信者が SMTP 以外のアドレスを持っており、アドレス スペースに適したコネクタが見つからない。

  • メッセージが一致するコネクタのメッセージ サイズの制限を満たしていない。

すべての構成の変更でキュー内のメッセージの再送信が必要になるわけではありません。たとえば、コネクタのスマート ホストの一覧を変更しても、メッセージはルーティングされません。メッセージの再ルーティング方法の詳細については、「メッセージの再ルーティングと到達不能キュー」を参照してください。

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