高可用性
適用先: Exchange Server 2007 SP3, Exchange Server 2007 SP2, Exchange Server 2007 SP1, Exchange Server 2007
トピックの最終更新日: 2009-04-01
この高可用性に関するコンテンツ領域には、Microsoft Exchange Server 2007 の RTM (Release To Manufacturing) 版および Exchange 2007 Service Pack 1 (SP1) に基づいた高可用性メッセージング システムの設計、構築、および運用に役立つトピックが表示されます。次のドキュメントが含まれます。
- 高可用性戦略
- Site Resilience Configurations
- ローカル連続レプリケーション
- クラスタ連続レプリケーション
- スタンバイ連続レプリケーション
- シングル コピー クラスタ
- クラスタ化メールボックス サーバーの委任セットアップ
- Exchange 2007 SP1 または SP2 へのクラスタ化メールボックス サーバーのアップグレード
- クラスタ化メールボックス サーバーへの Exchange 2007 更新プログラムのロールアップの適用
- クラスタ化メールボックス サーバーのアンインストール
- 連続レプリケーションの監視
- 高可用性展開のトラブルシューティング
Exchange 2007 SP1 に基づく高可用性メッセージング ソリューションを設計および展開する前に、該当するドキュメントを参照することをお勧めします。
ここで示すドキュメントは更新されており、Windows Server 2008 での Exchange 2007 SP1 および Windows Server 2003 Service Pack 2 (SP2) を展開するための最新の推奨事項およびベスト プラクティスが含まれています。
Exchange Server 2007 の高可用性
稼働時間の最小要件は組織によって異なりますが、すべての組織が高レベルの稼働時間の実現を望んでいます。メッセージングがビジネスに不可欠な組織の多くは、この稼働時間を実現するために高可用性を備えたメッセージング システムの設計を行います。
Exchange 2007 RTM と Exchange 2007 SP1 には、Exchange 2007 メールボックス サーバーに対して迅速な回復、高可用性、およびサイトの復元を可能にする次の機能が組み込まれています。
- ローカル連続レプリケーション (LCR) LCR は、組み込みの非同期のログ配布テクノロジを使用して、運用ストレージ グループと同じサーバーに接続される 2 番目のディスク セット上でストレージ グループのコピーを作成および保持するシングルサーバー ソリューションです。LCR では、ログ配布、ログの再生、およびデータのセカンダリ コピーへの手動による迅速な切り替えが可能です。
- クラスタ連続レプリケーション (CCR) CCR は、非共有記憶域フェールオーバー クラスタ ソリューションであり、Exchange 2007 で使用可能な 2 種類のクラスタ化メールボックス サーバー (CMS) の展開方法の 1 つです。CCR は、組み込みの非同期ログ配布テクノロジを使用して、フェールオーバー クラスタ内の 2 番目のサーバー上で各ストレージ グループのコピーを作成および維持するクラスタ化ソリューションです (CCR 環境と呼ばれます)。CCR は、1 つまたは 2 つのデータセンターのソリューションになるように設計されており、高可用性とサイトの復元の両方を実現します。CCR は、以前のバージョンの Exchange Server でのクラスタ化とは非常に異なります。この違いの詳細については、「クラスタ化メールボックス サーバー用の Exchange クラスタ リソース」および「クラスタ連続レプリケーションの回復動作」を参照してください。
- スタンバイ連続レプリケーション (SCR) SCR は Exchange 2007 SP1 に導入された新機能です。名前が示すとおり、SCR は、待機している (スタンバイ) 回復用サーバーを使用する、またはその使用を可能にするシナリオのために設計されています。SCR は既存の連続レプリケーション機能を拡張し、Exchange 2007 メールボックス サーバーに対して、新しいデータ可用性シナリオを有効化します。SCR は、LCR および CCR で使用されるのと同じログ配布および再生テクノロジを使用して、追加の展開オプションと構成を提供します。管理者は、追加のストレージ グループ コピーを作成できます。SCR はスタンドアロン メールボックス サーバーおよびクラスタ化メールボックス サーバーからのデータのレプリケートに使用できます。
- シングル コピー クラスタ (SCC) SCC は、共有記憶域フェールオーバー クラスタ ソリューションであり、Exchange 2007 で使用可能な 2 種類のクラスタ化メールボックス サーバーの展開方法の 1 つです。SCC は、クラスタ内のノード間で共有される記憶域でストレージ グループのコピーを使用するクラスタ化ソリューションです。SCC は以前のバージョンの Exchange Server のクラスタ化に似ていますが、多数の改善が行われ、大幅に変更されているものもあります。この変更の詳細については、「シングル コピー クラスタ リソース モデル」および「シングル コピー クラスタの回復動作」を参照してください。
SP1 に導入された他の高可用性機能の詳細については、「Exchange 2007 SP1 の高可用性新機能」を参照してください。
メールボックス サーバーの高可用性
メールボックス サーバーの高可用性は、サービスの可用性とデータの可用性という 2 つの形で提供されます。サービス可用性は、Windows Server フェールオーバー クラスタを使用することで実現します。データ可用性は、連続レプリケーションという組み込み機能により実現します。
クラスタ化メールボックス サーバー
CCR と SCC は、両方とも Windows Server フェールオーバー クラスタで展開されるソリューションです。フェールオーバー クラスタには、メールボックス サーバーの役割のみをインストールできます。その他の役割をインストールすることはできません。フェールオーバー クラスタで展開されるメールボックス サーバーは、クラスタ化メールボックス サーバーと呼ばれます。CCR 環境で稼働しているクラスタ化メールボックス サーバーは、SCC 環境で稼働しているクラスタ化メールボックス サーバーとは非常に異なります。また、Exchange 2007 RTM および Exchange 2007 SP1 のクラスタ化メールボックス サーバーは、以前のバージョンの Microsoft Exchange でのクラスタ化メールボックス サーバーとは非常に異なります。
Exchange 管理シェルで Get-MailboxServer <CMSName> | fl Name, ClusteredStorageType
を使用して、クラスタ化メールボックス サーバーが CCR 環境内または SCC 内でホストされているかどうかを確認できます。値 NonShared は、クラスタ化メールボックス サーバーが CCR 環境内にあることを示し、値 Shared は、クラスタ化メールボックス サーバーが SCC 内にあることを示します。値 Disabled は、メールボックス サーバーがスタンドアロン サーバーであることを示します。
クラスタ化メールボックス サーバーが CCR 環境内または SCC 内でホストされているかどうかは、Active Directory で、メールボックス サーバー オブジェクトの msExchClusterStorageType 属性の値を調べて確認することもできます。msExchClusterStorageType 属性の値が 1 の場合は、クラスタ化メールボックス サーバーが CCR 環境内でホストされていることを示し、値が 2 の場合は、クラスタ化メールボックス サーバーが SCC 内にあることを示します。値 <設定されていません> は、メールボックス サーバーがスタンドアロン サーバーであることを示します。
CCR 環境
Exchange 2007 RTM および Exchange 2007 SP1 は、CCR 環境にメールボックス サーバーの役割がインストールされたノードを最大で 2 つサポートします (一方はアクティブ、もう一方はパッシブ)。投票者ノードおよび従来のマジョリティ ノード セット クォーラムを使用する 3 つのノード フェールオーバー クラスタもサポートされますが、推奨されるクラスタ モデルではありません。ただし、多くの場合で、2 つのノードのみ、1 つのノードとファイル共有マジョリティ クォーラム (Windows Server 2008) またはファイル共有監視付きのマジョリティ ノード セット クォーラム (Windows Server 2003) のいずれかを使用する CCR 環境を展開することをお勧めします。そのため、CCR に関するドキュメントは、これらのクォーラム モデルのいずれかを使用する 2 つのノード フェールオーバー クラスタを対象としています。
注 : |
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CCR 環境で展開された単一ノード フェールオーバー クラスタもサポートされますが、この場合はクラスタ内に冗長性を実現できないため、高可用性ソリューションとは考えられません。CCR 環境で展開された単一ノード フェールオーバー クラスタを使用する場合、マジョリティ ノード セット クォーラム (ファイル共有監視なしの従来のもの) を使用する必要があります。 |
シングル コピー クラスタ
Exchange 2007 RTM および Exchange 2007 SP1 は、SCC 内で最大 8 個のノードをサポートします。Exchange 2007 SP1 SCC の Windows Server フェールオーバー クラスタ上での有効な組み合わせは、次のとおりです。
- 7 アクティブ/1 パッシブ
- 6 アクティブ/1 または 2 パッシブ
- 5 アクティブ/1、2、または 3 パッシブ
- 4 アクティブ/1、2、3 または 4 パッシブ
- 3 アクティブ/1、2、3、4 または 5 パッシブ
- 2 アクティブ/1、2、3、4、5 または 6 パッシブ
- 1 アクティブ/0、1、2、3、4、5、6 または 7 パッシブ
注 : 64 ビット版の Windows Server 2008 は、単一フェールオーバー クラスタ内で最大 16 個のノードをサポートしますが、Exchange 2007 はクラスタ内で最大 8 個のノードをサポートします。フェールオーバー クラスタで 16 個のノードを使用することはできますが、Exchange 2007 をインストールするフェールオーバー クラスタ内のノードは 8 個以下にする必要があります。
通常、クラスタ内の各アクティブ ノードに対して 2 つ以上のパッシブ ノードは不要です。結果として、1 つのアクティブ ノードと 1 つのパッシブ ノードの方が、1 つのアクティブ ノードと複数のパッシブ ノードよりも望ましい構成であるといえます。単一ノード SCC を使用する場合、共有記憶域クォーラムまたはマジョリティ ノード セット クォーラム (ファイル共有監視なしの従来のもの) のいずれかを使用できます。単一ノード SCC はサポートされますが、この場合はクラスタ内に冗長性を実現できないため、高可用性ソリューションとは考えられません。
ストレッチ クラスタ
ストレッチ クラスタは、地理的に分散されているクラスタとも呼ばれます。ストレッチ クラスタは、複数の物理的なデータセンターにまたがるフェールオーバー クラスタです。ストレッチ クラスタは、Exchange 組織のサイト復元設計の一部として利用できます。CCR は共有記憶域を使用しないため、Windows Server 2008 上の複数サブネット ストレッチ クラスタを含む、地理的に分散されているフェールオーバー クラスタに容易に展開できます。ストレッチ クラスタでは SCC もサポートされますが、SCC のストレッチには、サード パーティの同期レプリケーション テクノロジが必要になります。ストレッチ クラスタの詳細については、「Site Resilience Configurations」を参照してください。
スタンバイ クラスタ
Exchange 2007 および Exchange 2007 SP1 でサポートされるもう 1 つのクラスタの種類は、スタンバイ クラスタと呼ばれます。スタンバイ クラスタは、Windows Server フェールオーバー クラスタであり、クラスタ化メールボックス サーバーは存在しませんが、災害、運用フェールオーバー クラスタの別の障害、またはその他の回復シナリオにおいて、代替クラスタ化メールボックス サーバーを持つクラスタとして迅速に準備することができます。
連続レプリケーション
ログ配布とも呼ばれる連続レプリケーションは、運用ストレージ グループから、ローカル コンピュータまたは別のサーバー上の 2 番目のディスク セット上にある該当ストレージ グループのコピーへの、閉じられたトランザクション ログ ファイルのレプリケーションを自動化するプロセスです。2 番目の場所にコピーされると、ログ ファイルはデータベースのコピー内に再生されます。これにより、ストレージ グループは、わずかな時間差で整合性を維持することができます。
連続レプリケーションは、Exchange 2007 RTM では 2 つの形式 (LCR と CCR)、Exchange 2007 SP1 では 3 つの形式 (LCR、CCR、および SCR) で使用可能です。
その他のサーバーの役割に関する高可用性
ハブ トランスポート、エッジ トランスポート、クライアント アクセス、およびユニファイド メッセージングの各サーバーの役割の高可用性は、サーバー、サービス、およびインフラストラクチャの予防的な管理と、サーバーの冗長性、ネットワーク負荷分散 (NLB)、ハードウェア負荷分散、ドメイン ネーム システム (DNS) ラウンド ロビンとを組み合わせることで実現します。通常、クライアント アクセス、ハブ トランスポート、エッジ トランスポート、およびユニファイド メッセージングの各サーバーの役割の高可用性は、以下の戦略やテクノロジを使用することで実現できます。
- エッジ トランスポート 複数のエッジ トランスポート サーバーを展開して複数の DNS メール エクスチェンジャ (MX) レコードを使用することにより、これらのサーバー間で処理の負荷を分散できます。また、NLB を使用してエッジ トランスポート サーバーの負荷分散と高可用性を実現することもできます。
- クライアント アクセス NLB またはサード パーティのハードウェア ベースのネットワーク負荷分散デバイスを使用することで、クライアント アクセス サーバーの高可用性を実現できます。NLB の詳細については、Windows Server TechCenter (英語) を参照してください。
- ハブ トランスポート 複数のハブ トランスポート サーバーを展開することで、内部トランスポートの高可用性を実現できます。ハブ トランスポート サーバーの役割に対する復元性の設計は、次の方法で行われています。
- ハブ トランスポート サーバーからハブ トランスポート サーバーへ (組織内) 組織内のハブ トランスポート サーバーからハブ トランスポート サーバーへの通信は、ターゲット Active Directory ディレクトリ サービス サイト内で使用可能なハブ トランスポート サーバー間で自動的に負荷分散されます。
- メールボックス サーバーからハブ トランスポート サーバーへ (Active Directory サイト内) メールボックス サーバーでの Microsoft Exchange メール発信サービスは、同じ Active Directory サイト内で使用可能なすべてのハブ トランスポート サーバー間で自動的に負荷分散されます。
- ユニファイド メッセージング サーバーからハブ トランスポート サーバーへ ユニファイド メッセージング サーバーでは、同じ Active Directory サイト内で使用可能なすべてのハブ トランスポート サーバー間の接続が自動的に負荷分散されます。
- エッジ トランスポート サーバーからハブ トランスポート サーバーへ エッジ トランスポート サーバーでは、エッジ トランスポート サーバーを購読する Active Directory サイト内のすべてのハブ トランスポート サーバーに対する受信 SMTP (簡易メール転送プロトコル) トラフィックが自動的に負荷分散されます。
さらに冗長性を必要とする場合 (SMTP 中継が必要なアプリケーションなど)、新しい DNS レコード (relay.company.com など) の作成、IP アドレスの割り当て、およびハードウェア負荷分散装置の使用などにより、該当 IP アドレスを複数のハブ トランスポート サーバーにリダイレクトします。Exchange 2007 SP1 では、ハブ トランスポート サーバーのクライアント コネクタに NLB を使用することもできます。ハードウェア負荷分散装置を使用する場合、前述したように組織内トラフィックでは組み込みの負荷分散アルゴリズムが使用されるため、組織内 Exchange 2007 トラフィックがハードウェア負荷分散装置を通らないことを確認する必要があります。負荷分散およびトランスポート サーバーの詳細については、「ハブ トランスポート サーバーの展開オプション」および「トランスポート サーバーの負荷分散とフォールト トレランス」を参照してください。
- ユニファイド メッセージング ユニファイド メッセージングの展開では、複数のユニファイド メッセージング サーバーを展開し、そのうち 2 つ以上のサーバーを 1 つのダイヤル プラン内に構成することで、復元性を高めることができます。ユニファイド メッセージングでサポートされる VoIP (Voice over IP) ゲートウェイを構成することで、ユニファイド メッセージング サーバーに対する呼び出しをラウンド ロビン方式でルーティングすることができます。さらにこれらのゲートウェイでは、DNS からダイヤル プランのサーバーの一覧を取得できます。いずれの場合も、VoIP ゲートウェイは呼び出しをユニファイド メッセージング サーバーに転送します。呼び出しが受け付けられない場合、その呼び出しが別のサーバーに転送されることで、呼び出し確立時の冗長性が確保されます。
データおよびサービスの冗長性による高可用性の実現
Exchange 2007 の高可用性アーキテクチャでは、展開に冗長性を与えることが基本的な前提になっています。障害の回復は、残りのコンピューティング リソースを使用して Exchange サービスをサポートすることによって行われます。障害が修復されると、Exchange およびクライアントは、再びコンピューティング リソースを使用できるようになります。この説明におけるコンピューティング リソースとは、コンピュータの場合もあれば、メールボックスまたはその他の Exchange データ用の記憶域の場合もあります。
1 つのデータセンター内で冗長性を確保することができます。これは一般的に、個々のサーバーの障害からの保護を目的に行われます。たとえば、組織のプライマリ データセンターに 2 番目のハブ トランスポート サーバーを導入することで、2 つのサーバーのいずれかに障害が発生しても、メール フローを継続することができます。
また、セカンダリ データセンターを用意することで冗長性を確保する場合もあります。データセンターを 2 つ構成することで、1 つのデータセンターに障害が発生しても、サービスの継続性が維持されます。セカンダリ データセンターにハブ トランスポート サーバーを追加することによって、プライマリ ハブ トランスポート サーバーに障害が発生した場合、またはメインのデータセンターを使用できない場合のいずれでも、この 2 番目のハブ トランスポート サーバーでメール フローを処理できるようになります。3 つのハブ トランスポート サーバーを展開する場合もあります。この場合、そのうち 2 つをメインのデータセンターに配置し、3 番目をセカンダリ データセンターに配置することができます。
展開において考慮する必要のある重要な点は、冗長性がない場合に生じるさまざまな障害を、冗長性を持たせることによって食い止めることです。障害が発生してもデータまたはサービスの可用性に影響が出ないようにする場合、コンピュータやサービスを展開する冗長性のレベルによって、対応できる障害の程度も決定されます。組織における要件を理解し、運用上の問題を見極めることによって、どのソリューションが最良であるかを判断する必要があります。たとえばある組織では、メインのデータセンターに障害が発生してから 20 分以内にバックアップ データセンターをアクティブにするとします。この場合、バックアップ データセンターのアクティブ化と運用を定期的に検証するために、組織は必要なプロセスを確立している必要があります。別の組織では、運用を成功させるためには、バックアップ データセンターを継続的に検証することが重要であると判断した結果、別の方法で展開を構成する可能性があります。
参照している情報が最新であることを確認したり、他の Exchange Server 2007 ドキュメントを見つけたりするには、Exchange Server TechCenter を参照してください。