トランスポート ルールを Exchange 2007 組織に適用する方法について
適用先: Exchange Server 2007 SP3, Exchange Server 2007 SP2, Exchange Server 2007 SP1, Exchange Server 2007
トピックの最終更新日: 2010-02-11
ここでは、トランスポート ルールが Microsoft Exchange Server 2007 組織全体に適用されるしくみについて説明します。トランスポート ルールの詳細については、「トランスポート ルールの概要」を参照してください。
トランスポート ルールのスコープ
ハブ トランスポート サーバーの役割またはエッジ トランスポート サーバーの役割がインストールされているコンピュータに構成されているトランスポート ルール エージェントと共に使用するトランスポート ルールを構成できます。各サーバーの役割にトランスポート ルールを構成するための手順は同じですが、各サーバーの役割に対するトランスポート ルールの適用範囲は非常に異なります。
トランスポート コンポーネント | ハブ トランスポート サーバーの役割 | エッジ トランスポート サーバーの役割 |
---|---|---|
エージェント |
トランスポート ルール エージェント |
エッジ ルール エージェント |
トランスポート イベント |
OnRoutedMessage |
EndOfData |
ルールの保存場所 |
Active Directory ドメイン コントローラ |
Active Directory Lightweight Directory サービス (AD LDS) (ローカル) |
ルール レプリケーション |
Active Directory レプリケーション |
エッジ トランスポート サーバー間の自動レプリケーションなし |
ルールの範囲 |
Exchange 組織全体 |
各エッジ トランスポート サーバーに対してローカル |
メッセージの種類 |
システム メッセージを除くすべてのメッセージ |
システム メッセージを除くすべてのメッセージ |
配布グループのメンバシップの参照 |
可 |
不可 |
Active Directory の属性の参照 |
可 |
不可 |
Information Rights Management (IRM) によって保護されているメッセージのコンテンツの検査または変更 |
可 (トランスポートの解読が必要) |
不可 |
ルールの保存場所とレプリケーション
あるハブ トランスポート サーバーに構成したトランスポート ルールは、Active Directory ディレクトリ サービスを経由して Exchange 2007 組織内の他のすべてのハブ トランスポート サーバーに適用されます。つまり、組織内の各ハブ トランスポート サーバーには同じ一連のトランスポート ルールが適用され、組織内で送受信されるすべての電子メール メッセージにも同じトランスポート ルールが適用されます。ハブ トランスポート サーバーのトランスポート ルールは、以下の条件を満たすすべてのメッセージを評価します。
- 会議出席依頼、通常のメッセージ、暗号化されたメッセージ、認証されたユーザー間で送信する権限で保護されたメッセージ
- メッセージの種類、送信者、受信者に関係なく、匿名で送信されるすべての電子メール メッセージ
注 : |
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Exchange 2007 は、Active Directory を使用して、組織全体にトランスポート ルールをレプリケートします。詳細については、このトピックの「トランスポート ルールのレプリケーション」を参照してください。 |
エッジ トランスポート サーバーに構成したトランスポート ルールは、その特定のエッジ トランスポート サーバーを経由する電子メール メッセージにのみ適用されます。各エッジ トランスポート サーバー上で実行されるトランスポート ルール エージェントは、他のエッジ トランスポート サーバー上で実行される他のトランスポート ルール エージェントとは通信しません。したがって、エッジ トランスポート サーバーは、そのエッジ トランスポート サーバーが管理する電子メール メッセージング トラフィックに応じた個別のトランスポート ルールを適用するように構成することができます。エッジ トランスポート サーバーのトランスポート ルールは、受け取るすべてのメッセージを評価します。
Exchange 2007 RTM のトランスポート ルールによって処理されるメッセージの種類
次の種類のメッセージは、Exchange 2007 の RTM (Release To Manufacturing) 版のトランスポート ルールで処理されます。
- 匿名の電子メール メッセージ 匿名の電子メール メッセージとは、認証されていない送信者またはサーバーによってハブ トランスポート サーバーまたはエッジ トランスポート サーバーに送信されたメッセージです。
- 個人間の電子メール メッセージ 個人間の電子メール メッセージとは、単一のリッチ テキスト形式 (RTF)、HTML、またはプレーン テキストのメッセージ本文、あるいはマルチパートまたはメッセージ本文の代替セットを含むメッセージです。
- 不明瞭な電子メール メッセージ 不明瞭な電子メール メッセージとは、暗号化され、署名も入っている場合のあるメッセージです。
- 明確な署名入りの電子メール メッセージ 明確な署名入りの電子メール メッセージとは、署名入りで暗号化されていないメッセージです。
Exchange 2007 SP1 のトランスポート ルールによって処理されるメッセージの種類
次の種類のメッセージは、Exchange 2007 Service Pack 1 (SP1) のトランスポート ルールで処理されます。
- 匿名の電子メール メッセージ 匿名の電子メール メッセージとは、認証されていない送信者またはサーバーによってハブ トランスポート サーバーまたはエッジ トランスポート サーバーに送信されたメッセージです。
- 個人間の電子メール メッセージ 個人間の電子メール メッセージとは、単一の RTF、HTML、またはプレーン テキストのメッセージ本文、あるいはマルチパートまたはメッセージ本文の代替セットを含むメッセージです。
- 不明瞭な電子メール メッセージ 不明瞭な電子メール メッセージとは、暗号化され、署名も入っている場合のあるメッセージです。トランスポート ルールは、暗号化されたメッセージ内のエンベロープ ヘッダーにアクセスし、それらを検査する述語に基づいてメッセージを処理することができます。メッセージ コンテンツの検査を必要とする、述語を使用したルール、またはコンテンツを変更する可能性のあるアクションを処理することはできません。
- 明確な署名入りの電子メール メッセージ 明確な署名入りの電子メール メッセージとは、署名入りで暗号化されていないメッセージです。
- ユニファイド メッセージング電子メール メッセージ ユニファイド メッセージング電子メール メッセージとは、ボイス メール、ファックス、不在着信通知、および Outlook Voice Access を使用して作成、または転送されたメッセージなど、ユニファイド メッセージング サーバーの役割によって作成、または処理されたメッセージです。
- IPM.Note の電子メール メッセージ
IPM.Note.
というメッセージ クラスのプレフィックスがある電子メール メッセージは、アプリケーション、カスタム フォーム、または両方を使用して作成されたメッセージです。
トランスポート ルールのレプリケーション
ハブ トランスポート サーバーに構成されたトランスポート ルールは、エッジ トランスポート サーバーを除く、Exchange 2007 組織全体に適用されます。ハブ トランスポート サーバー上で新しいトランスポート ルールが作成されるか、既存のトランスポート ルールが変更または削除されると、変更内容は組織内のすべての Active Directory サーバーにレプリケートされます。次に、組織内のすべてのハブ トランスポート サーバーは、Active Directory サーバーから新しい構成を読み取り、新しいトランスポート ルールや変更されたトランスポート ルールをハブ トランスポート サーバーを経由する電子メール メッセージに適用します。組織全体にすべてのトランスポート ルールをレプリケートすることによって、Exchange 2007 では組織全体に一貫性のある一連のトランスポート ルールを提供することができます。Exchange 2007 組織に渡されたり、Exchange 2007 組織を経由するすべての電子メール メッセージに、同じトランスポート ルールが適用されることになります。
重要 : |
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組織全体へのトランスポート ルールのレプリケーションは、Active Directory レプリケーションに依存しています。Active Directory ドメイン コントローラ間のレプリケーション時間は、組織内のサイト数、低速リンク、および Exchange の管理外の要素によって異なります。組織内にトランスポート ルールを構成する場合は必ず、レプリケーションの遅延を考慮に入れておく必要があります。Active Directory レプリケーションの詳細については、Active Directory のレプリケーション テクノロジについてのページを参照してください (このサイトは英語の場合があります)。 |
重要 : |
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各ハブ トランスポート サーバーは、受信者および配布リストの情報の検索に使用される受信者キャッシュを保持します。受信者キャッシュにより、各ハブ トランスポート サーバーが Active Directory ドメイン コントローラに対して行う必要のある要求の数が低減します。受信者キャッシュは 4 時間ごとに更新されます。受信者キャッシュの更新間隔は変更できません。したがって、配布リストのメンバを追加または削除するなど、トランスポート ルールの受信者の変更は、受信者キャッシュが更新されるまでトランスポート ルールに適用されない可能性があります。直ちに受信者キャッシュの更新を強制するには、Microsoft Exchange Transport サービスを停止してから開始する必要があります。受信者キャッシュを強制的に更新する各ハブ トランスポート サーバーに対してこの操作を行います。 |
注 : |
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ハブ トランスポート サーバーが新しいトランスポート ルール構成を取得するたびに、イベント ビューアのセキュリティ ログにイベントが記録されます。 |
エッジ トランスポート サーバーに構成されたトランスポート ルールは、トランスポート ルールが作成されたローカル サーバーにのみ適用されます。新しいトランスポート ルールや既存のトランスポート ルールに対する変更は、その特定のエッジ トランスポート サーバーを経由する電子メール メッセージにのみ影響を与えます。複数のエッジ トランスポート サーバーがあって、すべてのエッジ トランスポート サーバーに一貫した一連のルールを適用する場合は、各サーバーを手動で構成するか、または 1 つのサーバーからトランスポート ルールをエクスポートして、そのルールを他のすべてのエッジ トランスポート サーバーにインポートする必要があります。
述語
述語は、条件と例外で使用されます。述語とは、トランスポート ルールを電子メール メッセージに適用する必要があるかどうかを判断するときに、条件と例外によってそのメッセージのどの部分が確認されるかを定義するのに使用されるものです。述語によっては、メッセージの [宛先] フィールドと [差出人] フィールドを確認するものも、件名、本文、または添付ファイルのサイズを確認するものもあります。メッセージにトランスポート ルールを適用する必要があるかどうかを判断するため、ほとんどの述語では、メッセージのテストに使用する値を指定する必要があります。
条件
トランスポート ルールの条件を使用して、トランスポート ルールのアクションが適用される電子メール メッセージを識別するために、電子メール メッセージの属性、ヘッダー、受信者、送信者、またはメッセージの他の部分のどれを使用するかを指定します。大部分の条件は、条件がメッセージ内で検索する必要のある値を使用します。条件が検査している電子メール メッセージの対象部分のデータが条件の値と一致した場合、そのメッセージはその条件と一致します。
トランスポート ルールに複数の条件を構成し、トランスポート ルールのスコープを絞り込んで、非常に特別な条件を満たすメッセージにのみ操作を適用するように構成することができます。または、条件をまったく適用しないと決めることもできます。トランスポート ルールに条件をまったく含めない場合は、トランスポート ルールが検出したすべてのメッセージにトランスポート ルールが適用されます。1 つのトランスポート ルールに適用できる条件の数に制限はありません。ただし、適用する条件の数を多くするほど、指定された各条件を満たす電子メール メッセージの数は少なくなります。
重要 : |
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同じトランスポート ルールに複数の条件を構成した場合、トランスポート ルールが構成された操作を特定の電子メール メッセージに適用するには、すべての条件が満たされる必要があります。 1 つの条件に複数の値を指定したときは、1 つでも値が一致すれば、条件は満たされます。たとえば、電子メール メッセージの件名が株価情報で、トランスポート ルールの SubjectContains 条件が Contoso という単語と株という単語に一致するよう構成されていたとすると、件名に条件の値が少なくとも 1 つは含まれているので、条件は満たされています。 |
条件は、トランスポート ルールが操作を適用する場合に対象に含める電子メール メッセージを判断するために使用されますが、トランスポート ルールは例外を使用して、メッセージがすべての条件を満たしている場合でも、操作の適用から除外する電子メール メッセージを判断することもあります。例外の詳細については、このトピックの「例外」を参照してください。
トランスポート ルールの条件を構成するために使用できる述語の一覧を表示するには、「トランスポート ルールの述語」を参照してください。
例外
トランスポート ルールの例外は、トランスポート ルールの条件の作成に使用される述語と同じ述語に基づいています。ただし、トランスポート ルールの条件と異なり、例外はトランスポート ルールの操作を適用する必要のない電子メール メッセージを識別します。トランスポート ルールの例外は条件より優先され、電子メール メッセージが構成されているすべてのトランスポート ルールの条件に一致していても、その電子メール メッセージにトランスポート ルールの操作が適用されないようにします。
大部分の例外は、例外がメッセージ内で検索する必要のある値を使用します。例外が検査している電子メール メッセージの対象部分のデータが例外の値と一致した場合、そのメッセージはその例外と一致します。
トランスポート ルールに複数の例外を構成して、トランスポート ルールの操作を適用する必要のない電子メール メッセージを識別するために使用する基準を拡大することができます。または、例外をまったく適用しないと決めることもできます。トランスポート ルールに例外をまったく含めない場合、メッセージが構成されているすべてのトランスポート ルールの条件に一致するかどうかに基づいてトランスポート ルールが適用されます。1 つのトランスポート ルールに適用できる例外の数に制限はありません。
重要 : |
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同じトランスポート ルールに複数の例外を構成する場合、ただ 1 つの例外が一致すれば、電子メール メッセージへのトランスポート ルールの操作の適用は除外されます。 1 つの例外に複数の値を指定したときは、1 つでも値が一致すれば、例外は満たされます。たとえば、電子メール メッセージの件名が株価情報で、トランスポート ルールが使用する SubjectContains 例外が Contoso という単語と株という単語と一致するよう構成されていたとすると、件名に例外の値が少なくとも 1 つは含まれているので、例外は満たされています。 |
トランスポート ルールの例外を構成するために使用できる述語の一覧を表示するには、「トランスポート ルールの述語」を参照してください。
アクション
トランスポート ルール エージェントに構成されたトランスポート ルールに存在する条件と一致し、どの例外とも一致しない電子メール メッセージに対して、アクションが適用されます。各アクションは、電子メール メッセージを別のアドレスにリダイレクトすることからメッセージの破棄まで、さまざまな方法で電子メール メッセージに影響を与えます。
使用するアクションを選択した後は、それらのアクションに値を割り当てることができます。アクションの値は、特定のアクションが電子メール メッセージに適用されたときに、そのアクションの動作を変更します。
トランスポート ルールのアクションを構成するために使用できる述語の一覧を表示するには、「トランスポート ルールのアクション」を参照してください。
トランスポート ルールが適用される順序
トランスポート ルールは次の順序で適用されます。
- **ルールが有効か無効か :**有効なルールのみが適用されます。ルールが無効であっても、そのルールの優先度は維持されます。ただし、無効なルールは評価プロセスには含まれません。
- **メッセージの範囲 :**ルール エージェントは最初に、メッセージがエージェントの範囲内であるかどうかをチェックします。トランスポート ルールは、全種類のメッセージには適用されません。
- **優先度 :**ルール エージェントの範囲内のメッセージに対して、エージェントはルールの優先度に基づいて昇順でルールの処理を開始します。優先度の低いルールが最初に適用されます。トランスポート ルールの優先度は 0 から n-1 の値で指定します。n は、トランスポート ルールの合計数です。優先度に関係なく、有効なルールだけが適用されます。ルールの優先度は、Exchange 管理コンソールまたは Exchange 管理シェルを使用して変更できます。
参照している情報が最新であることを確認したり、他の Exchange Server 2007 ドキュメントを見つけたりするには、Exchange Server TechCenter を参照してください。