質の高いコミュニケーション

原文の記事の投稿日: 2010 年 2 月 25 日 (木曜日)

1872 年 10 月、メリーランド州ボルチモアでモントリオールの建築家 Windsor Station (英語) とその妻 Josephine の間に一人娘 Emily が誕生しました。彼女は最高レベルの教育を受け、大切に育てられました。月日は流れて 1922 年、彼女は著書『Etiquette (英語)』を出版しました。やがて "Emily Post によれば" というフレーズは、社会的作法を説く際の決まり文句になりました。
 
多大な影響を及ぼしたこの著作の冒頭には、"エチケット" という言葉の語源を説明する Richard Duffy の文章が引用されています。この言葉の起源は、"芝生立ち入り禁止" というよく見かけるありふれた立て札にあります。ルイ 14 世統治下のフランスで、ベルサイユ宮殿の庭園造成時に首席庭師だったスコットランド人の老人が、新しく種をまいた芝生がいつも踏みつけられるので、試しに用意したのがこの立て札でした。芝生への立ち入りを防ぐために、彼はこの注意書きの立て札 (フランス語で etiquette) を通路の脇に立てました。しかし、宮廷に仕える人々がこの注意書きを無視したので、意を決した首席庭師は必死の思いでルイ 14 世に直訴しました。その結果、ルイ 14 世から宮廷内のすべての者に "立て札 (etiquette) の内側への立ち入り禁止" を命じる勅令が下されたのです。

新しい千年紀に入って 10 年が過ぎ、テクノロジによってコミュニケーション能力を支援する機能は、人類史上前例のないものになっています。こうした進化が続くデジタルの世界で、"芝生立ち入り禁止" の立て札に相当するものは何でしょうか。"HTTP_403 (英語)" のエラー メッセージでしょうか (こちらのデモ (英語)をご覧になってお考えください)。デジタル世界のセキュリティは、ルイ 14 世の時代のものより優れており、現在では匿名性を高めることもずっと容易ですが、問題がすべて解決されたわけではありません。人間には理想とする基本的な道徳観と価値観が存在し、社会は主としてコミュニケーションによって進化しますが、私たちはテクノロジの発展による変化のペースと範囲に対応できているのでしょうか。それが芝生の "立て札" であれ、サーバーのログ ファイル、社会的な規範、トレーニング講習、403 エラー メッセージ、法廷での議論のいずれであろうと、社会の構成員である私たちは自らの行動を自己監視すると共に、自分たちが期待する行動や尊重する行動を他者に伝えるための安全策を設ける必要があります。デジタル コミュニケーション テクノロジの支援を受けて社会が進化するにつれ、こうした法律、道徳観、および価値観が見直されることになります。たとえば、まだ朝の身支度も終わっていない午前 7 時に Web で上司とチャットをしたいと思いますか。遅い時間に疲れた状態で 100 人もの部下に手短な叱責のメールを送る必要があるでしょうか。週 1 回の会議に直接出席する代わりに電話で参加するとキャリアに傷が付くでしょうか。自分の都合でインスタント メッセージを送信した後、すぐに返事がこないからといって腹を立てる必要があるでしょうか。これらはテクノロジの発展によって現実化している社会的問題であり、そこには私たちのツールの質が影響しています。
 
Emily Post は、著書『Etiquette』の第 27 章でコミュニケーシの質の重要性について次のように記しています。

あなたが書く手紙には、あなたにその認識があるかどうかに関係なく、あなたの身なり、好み、および人格が常に鏡のように映し出されます。

私たちは、このことを念頭に置いて Office Communicator テスト チームが抱えている課題のいくつかを紹介しようと考えました。Office Communicator の普及に伴い、ユーザーがメッセージの配信で私たちのソフトウェアに依存する度合いも高まっています。ソフトウェアの品質が、質の高いメッセージをユーザーが配信 (および受信) できるかどうかを左右する重要な要因になっているのです。

WikiHow (英語) では、コミュニケーションを "送り手と受け手の間でさまざまな手段 (書き言葉、非言語的手がかり、話し言葉など) によって信号やメッセージを伝えるプロセス。また、関係を確立および修正するために使用されるしくみ" と定義しています。

テクノロジが統合コミュニケーションの領域に収束していくと、音声、ビデオ、およびテキストによるコミュニケーションの組み合わせを自在に使いこなせるようになります。メッセージの信頼性や整合性、またその配信の成功率は、送り手と受け手を結ぶソフトウェア ツールの機能に依存しています。
 
私たちのチームでは、それが音声によるものか、インスタント メッセージの配信か、会議に参加する機能かにかかわらず、エクスペリエンスの質に注目します。コミュニケーションは重要です。人間は、幼少期に文字どおり泣いて助けを求め、そこから効果的なコミュニケーションが持つ力を学び始めます。私たちの社会は、人間のコミュニケーション能力をデジタル機能によって強化するという新しい時代に移行しつつあります。言葉の通じない原始人を相手に文句を言ったり、のろしを上げて近くの部族に合図を送ったりする必要はありません。私たちが直面しているのは、たとえば、バイオニクスによってサイボーグ化された Steve Austin (英語) (詳細については、新しい Fast Company のバイオニクス関連記事 (英語)を参照してください) のようなまったく新しい現実です。コミュニケーションに関するこれらの強力な新しいツールや機能によって人間はより偉大で、力強く、敏捷になりますが、提供者である私たちは、これらのツールが透過的で "ただ動作する" だけで送り手と受け手がメッセージに意識を集中できることが重要だと考えています。
 
伝言ゲームという遊びは、質の低いコミュニケーションの危険性について教えてくれます。地球上のあちこちを結ぶリアル タイムのコミュニケーションが今では現実のものになっており、私たちは社会に及ぼし得る影響力の大きさに胸を躍らせる一方で、そうしたエクスペリエンスの整合性と質を確保するうえで自分たちが果たす役割の重さも認識しています。また、セキュリティやプライバシー、メディアの影響力についても検討が必要です。メッセージを受け取る人数が増えていくなかで、どのようにツールを構築すればメッセージの送り手に自己監視と自己評価のための安全策を提供できるのでしょうか。私たちは、代替の技法 (英語)を探索すると共に、信頼できるコミュニケーションを支える信頼できる製品を開発する方法のヒントになることを期待して当社に対する信頼 (英語)の構築にも注力しています。
 

多くの場合、メッセージの質とその目的に対して最大の影響力を持つのは送り手です。そんな送り手の自由な表現を私たちは手助けできるでしょうか。また、Outlook の Forgotten Attachment Detector (英語) のようなツールから、欠陥予防 (英語)の技法についてどんな教訓が得られるでしょうか。
 
Philip B. Corbett 氏は New York Times (英語) 紙のサイトに「After Deadlines (英語)」という定例ブログを投稿しており、このブログは "New York Times 紙のニュース編集室による文法、用法、および文体に関する批評" として位置付けられています。

これを踏まえると、このブログでのコミュニケーションの目的は、品質改善への取り組みによって Office Communicator 使用時のエクスペリエンスを最大化できる領域を読者の皆さんから学ぶことにあるといえます。私たちは、デジタル コミュニケーションの将来に影響を与える機会に恵まれたことに感謝し、当社の製品の品質とユーザー エクスペリエンスの向上のために皆さんと協力できることを嬉しく思います。
 
私たちが注力および改善できる領域について、皆さんのご意見や見通しをぜひお聞かせください。
 
ご精読ありがとうございました。
 
Ross Smith

テスト ディレクター、Office Communicator and Design Group
 投稿日: 2010 年 2 月 24 日 (水曜日) 午後 5:24 投稿者: octeam

これはローカライズされたブログ投稿です。原文の記事は、「High Quality Communications」をご覧ください。