プライベートクラウド 4つの要素における”サービス”と”リソースの自動管理”
先日、プライベートクラウドの目的に続いて、プライベートクラウド構築のための4つの要素 についても投稿させていただきました。
あらためて、こちらが4つの要素です。
さて今回は、4つの要素の内、右の2つについて解説します。
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これも一番右側から見ていくとわかりやすいのですが、「提供サービス(リソース)」は社内に提供するサービスそのものですから、アイデア次第でさまざまなものがサービス化できます。
仮想化に特化したものを並べるだけでも、
・仮想サーバー
・VDI をベースとした仮想デスクトップ
・App-V 等の仕組みを使った仮想アプリケーション
・リモートデスクトップサービス(旧ターミナルサービス) RemoteApp のリモート実行可能なアプリケーション
他にもいろいろとあります。
・メールボックス (メールボックス容量や利用者数による課金)
・共有フォルダ (容量 クォータで制御)
・情報ポータル
・Webサーバー
・データベース
・アプリケーションサーバー
・チーム開発用のサービス
・トレーニングリソース
・印刷やコピー
どうでしょう?
なんでこれがプライベートクラウド?と思う方もいるでしょう。
しかし、これこそが、仮想化の呪縛からのがれ、社内のために「サービス化を意識する」ということなんです。
自分たちが当たり前のように自社内に提供してきた IT を、サービスという言葉の意味と照らし合わせながら見直していくわけです。
(プライベートクラウドとは呼んでいませんが、マイクロソフトのプリントアウトの環境は、品川への移転によるシステム見直しで随分と利用者にやさしいものになりました。)
ここで重要なのは、
・提供しようとしているリソースを、利用者がサービスだと感じることができかどうか?
もう少し簡単に言うと、
・お金(社内課金)を払ってでも使いたいと思ってもらえるものかどうか?
です。
ここが崩れると、利用者は社内のIT部門ではなく外を向くでしょう。
そして IT 部門は、部門存続の危機から自分を守るために、ガバナンスという名の”押さえ付け”で、使い勝手の悪い IT を強制的に使わせるしかなくなります。
利用者も、提供する側も不幸せな状況・・・もう最悪です。
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やっぱり、両方が幸せになるサービスを提供したいものですよね!?
なので、ポジティブな話をしましょう!
IT 部門にアイデアマン(もしかしたら通常業務で浮いてしまっている人かもしれません(笑)がいて、サービスとして提供するリソースについての良い案が出てきたとしましょう。
そこで考えないといけないのは、最初に書いた通り、プライベートクラウドの目的の1つにコスト削減があるということです。
要は、自動化や標準化を進め、徹底的に運用のコストを下げる努力が必要となります。
そこの担い手は、プライベートクラウドの4つの要素の内、右から2番目の「管理基盤(自動処理)」です。
管理基盤はリソースによって変わるわけですから、この要素は、運用管理機能がついている製品そのものかもしれませんし、仮想化のように管理専用のツールかもしれません。
最適な運用基盤を選ぶポイントとして、
・柔軟に意図したとおりのリソース管理ができること
・運用コストを抑えられること
・自動化や省力化に貢献すること
・安定した運用を実現できること
などがあげられます。
運用コストを削減しながらも、利用者が必要だと思った時に迅速に確実にリソースを提供しなければならないわけですから、重要です。
もちろん完璧はありえないので、自動化できないからといって駄目と言い切るわけにもいかないのですが、プライベートクラウド化の目的から反するようなコスト高なサービス提供になる場合は、根本から見直すことをお勧めします。
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さあ、概念的な話しはこれくらいにして、具体的にマイクロソフト製品の管理の自動化の話をしておきましょう。
去年(2010)の1月、SharePoint Server 2010 という新しい製品(多機能なので一言では言えませんが、SharePoint を情報ポータルとして聞いてください)のインフラ系セッションを担当しました。
そこで強調したのは、SharePoint そのものの機能というよりも、SharePoint がいかに管理の自動化を意識した製品になっているか・・・でした。
SharePoint を聞きに来た人は違うと思ったかもしれません。
しかし、もしそこにプライベートクラウドを推進しようとしている人がいたとしたら、私の言葉に若干なりともヒントがあったのではないかと思います。
なにせ、今まではインターネットエクスプローラを起動して設定をしたり、専用のコマンドツールを駆使して管理をしていたのが、PowerShell でポータルなんかを簡単に作れるようになったのですから。
PowerShell そのものはスクリプティングのベースでしかありませんが、そこに SharePoint 開発者が作った 専用のコマンドレットが用意されているので、運用管理者の作業、特に繰り返し実行が必要になるポータルの作成などはどんどん自動化していくことができるわけです。
たとえばこれです。
New-SPSite コマンドですから、新しくSharePointのサイトを作ろうとしているわけですね。
(PowerShell の特徴の1つなのか、開発者のセンスなのかわかりませんが、PowerShell は視覚的にもわかりやすいものが多いですね・・・)
さて、PowerShell に慣れ始めている運用管理者にとって、SharePoint がすごく身近に感じられるのではないでしょうか?
なぜなら、いつもの運用のパターンに SharePoint が組み込めるわけですし、自分で管理できる・制御できるというのは運用管理者にとってこれほど安心できるものはありません。
さらに、ここまでくればトリガーは何でもいい。
メールでも社内文書でも、きっかけがあれば上記のスクリプトの変数だけ修正して実行するだけなのですから。
ちなみに、PowerShell による管理基盤を最初に導入したのは Exchange です。 Exchange の開発チームは Active Directory 統合といい、ほんとに新し物好きというか、先進性があるというか、最初ということで開発の苦労はあるでしょうが充実した仕事なのではいかなと想像してしまいます。
他にも、複数 Hyper-V の集中管理を行う System Center Virtual Machine Manager (SCVMM)は完全に PowerShell ベースですから仮想マシンはスクリプトで簡単に作れます。
Citrix さんと一緒にやっている VDI の中で、Citrix さんの管理ツールが Hyper-V 上に仮想デスクトップを作る際、PowerShell を使ってSCVMMとの連携をしています。
いろんなリソース、いろんな管理ツールが出てくる IT において、複数のツールがPowerShellという同じテクノロジーで標準化され、ツールの違いをPowerShellが吸収してくれるわけですね。
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話をプライベートクラウドに戻しましょう。
さて、ここまでを簡単にまとめると、
”良いサービス” を ”徹底したコスト削減努力” によって ”低価格” で ”安定的に提供する”
ために、どんなテクノロジーを選択するか。。。
プライベートクラウド構築に向け、しっかりと考えていただければと思います。
さて、次回は、正しいテクノロジーの選択によって自動管理ができるようになったITリソースを、プライベートクラウドとしてどのように提供するか?
そのために必要になる UI や ワークフローについてみていくことにしましょう。
マイクロソフト 高添