新元号への対応に向けた検証とテスト ケースについて
皆さまこんにちは。弊社サポート部門では、来年 5 月に控えた改元に向け、さまざまなお客様からお問い合わせを頂戴することが増えてまいりました。
現時点では、改元に対する Microsoft の対応方針、それに基づいた Windows API や OS に含まれるコンポーネント、影響を受ける製品群一覧や改元の対応対象製品等についてお伝えすることは難しい状況でございます。
しかしながら、弊社では、以前の投稿でもお伝えしております通り、弊社製品の対応方針や具体的に対応を行う製品の検討等を急ピッチで進めております。情報の公開まで今しばらくお待ちくださいますようお願い致します。
また、去る 4 月 20 日には、弊社オフィスへパートナー様にお越しいただき改元に向けた説明会を開催させていただきました。大変ご好評をいただきましたため、今後の追加開催を検討しております。こちらは別途ご案内をさせていただきます。
なお、上述の情報公開を待たずとも、ユーザー様、開発者様におかれましては、今すぐにでも、改元の影響を受ける可能性のあるシステムやアプリケーションの棚卸しを開始していただくことが可能です。
今回は、改元の影響を受ける可能性のあるシステムやアプリケーションの棚卸しをご実施いただく際、一般的にまずご確認をいただきたいテスト項目についてお伝えいたします。
大きく分けて、検証を行うべき項目としては下記の 2 点がございます。
・ 日付関連
・ フォント (合字) 関連
上記を踏まえ、アプリケーションごとの主なチェック項目としては下記のようなものが挙げられます。
・ 日付関連
- 日付の表記を和暦に設定できる、または Windows OS の表示形式設定を参照し、和暦が設定されている場合にはアプリケーション上も和暦表記になる
- 和暦を選択できる機能がある
- カレンダーやスケジュール機能がある
- 祝日や六曜といった表記がある
- 日付を挿入できる (当日の日付、カレンダーから選択等)
- 日付で並べ替え、フィルターができる
- レポート、グラフ機能がある
- 西暦 ⇔ 和暦変換ができる
- 他システムや他アプリケーションと和暦でデータ交換を行っている
・ フォント (合字) 関連
- 合字の入力、表示を確認する
- 合字の正規化を行っている
まず、日付の処理に関連した部分から詳細にご説明いたします。
Windows OS の既定の設定では、日本語版をご利用いただいていても和暦を表示することはありません。また、Windows OS としては和暦を使用するよう設定いただく項目は下記以外にございません。
下記の設定をご実施いただくことにより OS が日付を表示する際に使用される既定の表示形式が和暦に変更されます。
Windows 7 / Windows Server 2008 R2 以降の Windows では、この際使用される元号名や日付の範囲は、先日の記事にてご紹介いたしましたレジストリ値が使用されます。
[コントロール パネル]
- [時計、言語、および地域]
- [地域と言語]
- [形式] タブ
- [追加の設定] ボタン
- [日付」タブ
- [カレンダーの種類]
- "和暦"
このような表示形式の設定は、API を使用しアプリケーションから取得することができます。そのため、OS の言語設定や表示形式に従い既定の表示を変えているアプリケーションが少なからず存在いたします。
一方、Microsoft Excel のように OS の設定とは無関係に和暦を使用できるアプリケーションも存在します。
例えば、セルの書式設定や連続データを自動的に入力するオートフィル機能がそれに該当します。お使いのアプリケーションが和暦に対応しているか、または OS の言語設定に従い和暦を表示する機能があるか、ご確認ください。
次に、Microsoft Outlook のようにカレンダー、スケジュール機能を持つアプリケーションでは、改元以降の祝日や六曜の表示や、うるう年等、特殊な日付が正しく表示できるかご確認いただくことをお勧めいたします。
また、MonthCalendar コントロールのようにカレンダー形式で UI を表示する場合も、元号の切り替わりの表示等にご注意ください。
最後に、和暦 ⇔ 西暦変換を行う場合の動作のご確認についてお伝えいたします。例として、MS IME では "きょう" や "2018ねん" 等を予測変換した場合、候補として和暦が表示されます。現時点では、ここで使用される元号名は前述いたしましたレジストリ値と連動しません。このように、和暦 ⇔ 西暦変換のロジックがどのように実装されているか、また Windows が提供する方法を使用しているのか独自に実装いただいているのかをご確認いただくことが必要と想定されます。
それでは、フォント (合字) 関連についてもご説明してまいります。
MS IME では、"へいせい" を変換した際 "平成" と "㍻" が候補として表示されます。後者の 1 文字分のコードで元号を表現しているものを合字と呼びます。
現時点で新元号は発表されておりませんが、新元号に対しても合字を用意すべく、弊社では Unicode コンソーシアムや日本政府、業界団体とともに Unicode 上の文字コードの確保や新しい字形の作成、フォントの更新について準備を進めております。
新しい合字のコード ポイント等については未確定の状況でございますが、今一度、下記のような合字の表示、入力に問題がないかご確認ください。また新元号の発表後に追加される合字を正しく表示するためにはフォントの更新 (合字のグリフの追加) が必要となりますため、アプリケーションにてご使用のフォントについても確認が必要と想定されます。
- ㍻ (U+337B)
- ㍼ (U+337C)
- ㍽ (U+337D)
- ㍾ (U+337E)
また、合字を含めた検索や並べ替えについては、少々考慮が必要です。弊社の Web 検索 "Bing" では、"㍻" を検索した際 ”㍻” と ”平成” の両方が検索されます。一方、Word では "㍻" の検索の際には "㍻" のみが検索されます。
検索や並べ替えの動作についても正規化処理の状況によって異なる結果となることが予想されますため、ご確認をいただくことをお勧めいたします。