Office 365 と Outlook.com の違いは?
マイクロソフトが提供しているメールのクラウドサービスには、Office 365 (Exchange Online) と Outlook.com という 2 つのサービスがあります。過去には Hotmail、Outlook Live などいくつかのバリエーションがありましたが、現在はこの 2 つのサービスのいずれかに統合されています。これらのサービスについて「何が違うの!?」という質問をうけることがよくありますので、今回は両者の違いについて解説します。
Outlook.com とは?
Outlook.com はマイクロソフトが提供している一般消費者向けの無料メールサービスです。マイクロソフトでは、もともと Hotmail と呼ばれるメールサービスを長年提供してきましたが、2012 年夏にブランド、デザイン、機能を一新させました。Outlook.com は単なるメールサービスだけではなく、写真やビデオをより簡単に共有したり、受信トレイを簡単に管理したり、ほかのユーザーどこにいても近況を確認したりできる機能が実装されています。Exchange ActiveSync や IMAP プロトコルにも対応しているので、スマートフォンからのアクセスにも対応し、複数のデバイスからアクセスしても、全く同じメールや予定表を閲覧することができます。
マイクロソフト アカウントを取得して https://www.outlook.com にそのアカウントでログインすることで、アカウントに紐づいた Outlook.com のメールサービスを無料で利用することができます。無料のクラウド ストレージである SkyDrive も同じマイクロソフト アカウントに紐づいているので、ファイルを添付する代わりに SkyDrive に置いた大容量ファイルや写真を共有することで、スムーズに共有を行うことができます。
画像や Office ファイルが添付されたメールを受信すると、ブラウザー上でスライドショーで表示させたり、Office を持っていなくてもブラウザー上で Office Web Apps で表示させたり、SkyDrive にシームレスにアップロードしてそのまま添付ファイルをOffice Web Apps で編集したり、といった操作を簡単に行うことができます。
Outlook.com は、マイクロソフトが元々メールクライアントのブランド名として持っていた Outlook を、そのまま一般消費者向けのクラウドサービス化したような位置づけとなっています。昔は Windows XP 上で Outlook Express を使ってメールをしていたのが、いまは Windows 8.1 をはじめとして様々なデバイス上から Outlook.com を使う、といった構図になります。
また、ユーザーは共通のマイクロソフト アカウントを使って、以下の消費者向け無料サービスの間を行き来してお互いに連携させながら利用することができます。
Office 365 の Exchange Online との違いは?
このように、Outlook.com では、個人で利用する分にはいろいろな便利な機能がついています。そこで出てくるのが、Outlook.com は有料のマイクロソフトのメールサービスである Office 365 の Exchange Online と何が違うのか、なぜ Exchange Online を有料で使わなければならないのか、といった質問です。機能だけ比較表で見てみると、Outlook.com の基本的な使い勝手が決定的に劣っているわけではないようです。
では、なぜ有料サービスがあるのかというと、ブログ記事「一般消費者向けクラウドと企業向けクラウドの本質的な違い」に記載されている通り、企業での利用については一般消費者向けのサービスにはない重要な機能がついていて組織での利用に欠かせないからです。一番大きいのは、管理者のロールを持った人がほかのユーザーの使い方を管理、制御、制限、監視できる、ということです。これによって組織としてクラウドサービスを利用する際に、特定のユーザーが期待にそぐわない使い方をしないように組織として対処することが可能になります。
加えて、グループで利用する際に便利な機能が充実している、たとえば組織のディレクトリや共有予定表などがついている、とか、アーカイブ関連機能や地理的冗長性のあるバックアップ、稼働率保証など、セキュリティ、コンプライアンス、信頼性関係の機能が充実していることが挙げられます。
企業向けのサービスである Office 365 では、マイクロソフト アカウントではなく Microsoft Online ID (または Office 365 ID) を利用します。この ID はクラウド上の Active Directory (Windows Azure Active Directory) 上に作成される ID であり、組織のローカルにある Active Directory とも連携して、情報をクラウド上に同期したり、AD FS と呼ばれる手法で認証を連携したりすることができます。
細かい機能の差異については、以下に比較表を用意してみました。少しややこしいのは、ドメイン名や過去のサービス名について、"Outlook" という名前が両方に使われていたり、"Outlook.com" というドメイン名が共通で使われていたりする部分があることです。一般消費者向けの Outlook.com にしても企業向けの Exchange Online にしても、もともとはマイクロソフトのメールソフトのブランド名である "Outlook" という名前を何らかの形で使おうと考えられていたために、現在のような形になっています。下記の表を見て、現在の状況を整理するのに役立ててください。
項目 | Office 365 | Outlook.com |
---|---|---|
サービスの基本仕様 | ||
サービス開始日 | 2011/6/28 | 2012/7/31 |
過去に統合されたサービス名 | BPOS、Outlook Live、Live\@Edu | Windows Live Hotmail、MSN Hotmail、Hotmail |
サインインに使う ID | 管理者から配られた Microsoft Online ID | 個人が無料で個別に取得する Microsoft アカウント |
メールアドレスに指定可能なドメイン | 任意の独自ドメイン または *.onmicrosoft.com | outlook.com, outlook.jp, hotmail.co.jp, live.jp から選択 ※注 |
ブラウザーアクセスでログイン時のドメイン | mail.office365.com または portal.microsoftonline.com | outlook.com |
ブラウザーアクセスで利用時のドメイン | *.outlook.com または outlook.office365.com | *.live.com |
利用のための費用 | 企業・官公庁向けは有料、NPO、教育機関向けは無料 | 無料 |
広告 | なし | あり (メールスキャンなし) |
サポートされているアクセス方法 | ||
Outlook Anywhere | あり | なし |
Exchange ActiveSync | あり | あり |
POP3 | あり | あり |
IMAP4 | あり | あり |
ブラウザーアクセス | あり | あり |
Exchange Web Service | あり | なし |
メール機能 | ||
メールボックス容量 | 50GB | 無制限 |
他の電子メールボックスの統合 | あり | あり |
他のユーザーのメールボックスの表示 | あり | なし |
共有メールボックス | あり | なし |
アーカイブ機能 | あり | なし |
訴訟ホールド | あり | なし |
連絡先機能 | ||
組織の連絡先ディレクトリの表示 | あり | なし |
他の連絡先サービスとの接続 | Facebook, LinkedIn | Facebook, Twitter, LinkedIn, Google など |
予定表機能 | ||
自分の予定表管理 | あり | あり |
他のユーザーの予定表を並べて表示 | あり | なし |
会議室などのリソース予定表管理 | あり | なし |
会議出席依頼 | あり | あり |
自分の予定の共有 | あり | あり |
チャット機能 | ||
チャットの接続 | Lync Online、Skype (Lync を通して) | Skype, Facebook |
その他 | ||
稼働率保証 | 99.9% SLA | なし |
データの地理的冗長性 | 2 拠点 4 クラスター構成 | 非公開 |
※ 2014/4/12 注: Outlook.com で独自ドメインを扱っていたアドミンセンターと呼ばれるサービスの廃止が正式にアナウンスされました。
Exchange Online と Outlook.com は、元々別々のチームで個別に開発されていましたが、現在は一般消費者向けサービスと企業向けサービスの開発チームがより近くで開発をするようになり、機能や開発コンセプトも、より密接に連携して開発されるようになりました。両者とも今後も引き続き頻繁に進化を遂げていく予定ですので、ご期待ください。