ライフサイクル管理の導入は難しいのか
先日の Tech・Ed でのセッションにて ご参加いただいた多くの方々から、Team System を導入したくなった、導入したいけどいろいろと大変というご意見をいただきました。その場で簡潔には、お答させていただきましたが、導入に際しては以下のことがいえます:
- 簡単に導入しようと思えば簡単にできる
- しっかりやりたければそれなりに時間もかかる
どういうことかというと、前者は、Team System の機能をデフォルトのまま、使うだけに終始する・・・それだけであれば、比較的簡単に導入できます。ただし条件として、チームメンバーが全員ツールを覚えてることが必要ですね。その反面、きちんとした使い方をしないと意味をなさない、個々人が好き勝手に使うと Team System の利点を享受できないこともありえる、ということになります。とはいえ、Team System の個々の機能も強力ですので、これでもかなりの効果は見込めます。
後者は、チームの現状を把握し、改善すべきポイントを整理し、改善策を設定します。そして改善策に妥当な優先順位を決定し、ステップ バイ ステップで改善を実施していきます。そして改善策の中で Team System の機能が助けになる部分を Team System のカスタマイズも含めて実践していきます。この場合の利点は、チームとしてフルにパフォーマンスを発揮する環境が手に入り、メンバーの入れ変わりがあっても生産性を阻害せずに、安定したパフォーマンスを維持することができ、かつ、よりさらに改善していくためのベースをアップし続けることができるという点です。すなわち、Team System の機能にフォーカスが当たっているわけではなく、まずそのチームに最適なプロセスが確立され、そのプロセスを Team System が支援する、そのプロセスの中で Team System の機能を活用するという感じが濃くなります。その反面、問題の分析から開始するため、時間がかかります。1つのプロジェクト内で実践しようとするとかなりの負担になる可能性が高くなります(組織としてプロセスを改善していくことの意義についてはまたの機会に書こうかと思います)。
上記を読んでいただければ特に後者は、Team System の導入という小さな枠内に収まった話ではないことを感じていただけるのではないでしょうか。これは、皆さんが日々実施しているシステムの開発と動機が一緒なのです。皆さんが開発している業務システムは、業務を効率化するために開発されているケースが多いと思いますが、やみくもに業務をシステム化しているわけではないですよね。ビジネスの課題があり、それを解決するための方策があり、それを実現、実践するためにシステムがあり、それまたは、その一部を開発しているということになります。
Team System は、ソフトウェア開発というビジネスにおける業務システムと考えていただければより想像しやすくなるのではないでしょうか。
簡単に導入し、もっている機能をピックアップして利用するだけであれば今すぐにでも使っていただけます。それなりの効果もでます。ただし、属人性の排除などができないため、あくまで個人レベルでの生産性の向上度合が増した程度になってしまうこともあります。しっかりと現状を把握し、改善するためのステップを設定して導入すれば、一見時間がかかっているように思えても、着実に全体のパフォーマンスレベルを向上していくことができます。
とはいえ、そんなに簡単にできるわけではありませんよね。だってチームは、いろいろな意識や価値観を持った方々の集合体ですから。
ただし、何もやらなければ、現状を打破することはできません。現状で本当に何も問題がなければ*よいのですが、よりビジネスとして予測可能にするには・・・、よりクリエイティブな開発業務に専念するには・・・など考えると、問題がないわけではないはずです。改善できる機会を逸すること・・・すなわち、機会損失があるともったいないですよね。
* 問題があっても問題が見えないってことがやっぱり多いですね。ROI を考えようとしても、そもそも現状を表す数値データが何もない(または不正確で役に立たない)ということもよくあります。それ自体がそもそもビジネスとして考えると大きな問題なんですよね。
Team System とは、単なるツールでもあり、チームでの開発を根本から見直し、よりパフォーマンスをアップさせるためにフル活用できるシステムであることをご理解いただければ幸いです。
導入には、いろいろな障壁もあります。それらについては、ご相談いただければいろいろな手立てをお答することもできます(プロセス改善のコンサルの半分以上は、こういった泥臭い導入障壁の排除ですから(^^))。
「Team System」という出だしで書いてしまいましたが、別に他のツールであっても基本は一緒です。それともうひとつ、ツールに踊らされないように気を付けてください。一つ一つの機能に目がいきすぎてしまうと本質を見失ってしまうので。まぁ、それだけ面白い機能が多いのですが・・・。
ながさわ
Comments
Anonymous
August 26, 2007
先日の Tech・Ed でのセッションにて ご参加いただいた多くの方々から、Team System を導入したくなった、導入したいけどいろいろと大変というご意見をいただきました。その場で簡潔には、お答させていただきましたがAnonymous
December 19, 2007
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