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インターンシップ体験記:「ビジネスとしての戦略を考える視点」

こんにちは。

日本マイクロソフトインターンシップ生の宮地歩美です。私は、高専の専攻科で情報科学を学んでいます。大学生のようなものです。私は、このインターンシップを通して、 『ビジネスとしての戦略を考える視点』 の重要性を強く認識しました。

 

1日目 ビジネスプランを考えることの重要性を発見

 はじめに驚かされたのは、Imagine Cupの本選では「ビジネスプラン」が問われる、ということです。Imagine Cup日本代表に選ばれた鳥羽商船の「かぞくぐるみ」は、孫と離れて暮らしている祖父母の交流を目的としたシステムであり、ターゲットや使用場面が明確に提示されています。鳥羽商船「かぞくぐるみ」の事例を通して、プロコン出場時の自分たちに欠けていたものは『長期的な視点にもとづく具体的なビジネスプラン』であったことに気づきました。機能の充実・面白さ・使いやすさ――といった開発者としての視点にとらわれ、当時の私たちの頭には「どのように利益を上げるか?」という発想が存在していませんでした。

普段、高専の授業では、主に製品を作る技術を学んでいます。どのようなものを作るか、あるいは、どんな人に使ってもらうか、という発想にとどまり、その先の『売る』というプロセスを考える機会はほとんどありません。そのため、マーケティングの基礎講習でうかがった「良いものを作るだけでは売れない」という言葉に、ハッと気づかされました。『製品を売る』ためには、製品の性能をアピールするだけでなく、対象者を絞った効果的なアプローチを考える必要性があります。どれだけ良いものを生み出したとしても、ユーザーまで届かなければ意味がない――そして、会社のビジネスとして製品を出す以上、利益を上げなければならない。製品開発とマーケティングの間にある深い結びつきを、始めて認識しました。

マーケティング講習で与えられた課題は、「Surface Pro3を日本の学生に売るマーケティング戦略を考える」というものでした。私は、日本の学生のなかでも『大学入学を控えた女子学生』にターゲットを絞った提案を行いました。意外性に欠ける無難な回答になってしまったことが、自分でも納得できず、悔しさを感じました。思うような回答にたどりつけなかった原因のひとつには、地方の高専というマイノリティな環境に身を置いている私には都会の大学生の実態がまったく見えていなかった、という点もあるのではないかと思います。

 

2日目 意外性のある戦略的アプローチ

今回のインターンシップに参加するまで、私はマイクロソフトが提供するクラウドサービスの存在を知りませんでした。しかし、一通りのMicrosoft Azure の解説を受けたあとには、「使ってみたい」と感じるようになりました。

大手町のMIC(Microsoft Innovation Center)を見学した際に、マイクロソフトが『学生やスタートアップ企業を支援する狙い』についてうかがいました。まず、若い人に技術を活用してもらうことで、製品を気に入って長期ユーザーになってもらうこと。そのなかの何人かが起業して成功した場合、MS製品を使ってもらえる可能性が高いこと。そして、さらにその一部が、将来のビジネスパートナーに成長することが期待できること。『学生とマイクロソフトの間にwin-winの関係性をつくるもの』であるというお話から、一方的な支援のように見える裏には、マイクロソフトが他社と協力していく企業であるからこその戦略性が存在していたことに気づきました。

 

3日目 フィールドワークから見えたもの

フィールドワークとして、東京大学を見学しました。そこから見えた実態は、想像していたものとは異なるものであり、直接現場へ赴く意義を感じました。構内の書店では、棚を埋める専門書の量に圧倒されました。Office関連の書籍も、情報系の書籍も、壁一面にぎっしりと詰まっていました。一定以上の処理能力をもつパソコンの需要はあるように見えます。生協におかれていたカタログは、研究室用に特化したもので、かなり大型の製品まで掲載されていました。「個人の持ち物」としてだけでなく「研究室に置くもの」として購入されることがわかります。また、Apple製品に割かれるページ数が多く、目に入りやすいことも驚きでした。私の暮らしている地方、とくに校内では、首都圏とは対照的にWindowsユーザーが圧倒的に多く、Mac bookを選択する層は限られていたためです。このことから、都市部と地方の間にある地域差の大きさを実感しました。

カタログにはSurfaceが載っていませんでした。そもそもSurfaceは選択肢に上っていないのかもしれない、という疑問が湧き、大型家電店を見学してみることにしました。売り場の方にうかがったお話から、タブレット端末とノートパソコンのあいだには明確なユーザー層のちがいがあるようだ、という実態がみえてきました。しかし、タブレット端末について尋ねても、ノートパソコンについて尋ねても、Surfaceの名前が上がることはありませんでした。初日のマーケティングプランでは、競合製品として「Mac book Air」「iPad」「Windows タブレット」「ウルトラブック」などを予想していましたが、実際にはこれらの製品と同等のものとして認識されておらず、Surfaceは、現状とても曖昧な立場にある製品のようでした。

 

4日目 ニーズに応える提案=マーケティングの一種

3日目に提示された『IT技術をつかった中学校理科の授業を提案し、10分間のデモ授業を行う』という課題に対して、マーケティングの視点を生かして提案を行いました。

授業を考案する際、私の頭にあったのは、初日の反省をふまえて意外性のある提案を行いたい、という思いでした。今回の課題であれば、教科書の内容にとらわれず、『IT技術でなければできない体験』を積極的に取り入れることでニーズに応えられるのではないかと考えました。そこで、USB顕微鏡を使って、身近なものと微生物の大きさを比べてみることにしました。中学生にとって、定規で測れない1㎜以下の単位は未知のものです。顕微鏡を通さなければ確認できないミクロの世界で、倍率を考慮しながら具体的なサイズ感をつかむことは難しいですが、髪の毛など、身近なものを実際に計測した数値と比べることで、㎜以下の大きさ(μm)のちがいを実感させられるのではないかと考えました。

この提案をするにあたって、初日に学んだマーケティングの視点を生かしました。今回のデモ授業のターゲットは中学生ですが、提案する相手は、IT技術の授業への導入を検討している立場の人と見ることもできます。「IT技術を導入していきたい」と感じさせるためには、既存の授業との差別化が重要になるだろうと考えました。できるだけ多くの『IT技術を使わなければできない体験』を取り入れることで、このニーズに応えられると考え、このような提案を試みました。実際に「おもしろい」という言葉をお聞きすることができ、初日に叶えられなかった『意外性のある提案』ができたのではないかと思います。

 

5日目 全体を通して学んだこと

インターンシップ期間を通し、『ビジネスとしての戦略を考える視点』を学びました。

  • 一見、意外性のあるアプローチの裏にも戦略がある (ビジネスにおいて無意味な試みは存在しない)
  • 現地に赴くことで見えてくるものがある (実態がわからなければ的確な提案はできない)
  • マーケティング視点の応用 (ニーズを読んだ提案をすることもマーケティングのひとつ)

いずれも、学内では体感することのない貴重な気づきであり、これからの学生生活はもちろん、近い将来、企業に就職した際にも生きてくる経験だと思います。とくに、理系の学校に通っていますが、常々「考え方が文系的だ」と言われている私にとっては、本当の文系的な視点というものを知るという意味で、とても興味深い体験でした。また、それに加え、最終日の発表を通して、要旨を伝えるプレゼンの方法を学ぶこともできました。人見知りであがり症の私は、じつはプレゼンのたびに足を震わせている有様なのですが、なんとか取り繕った語りができるようになったのも、いままで場数を踏んで得てきた慣れと、フィードバックを通して持つことができた発表内容への自信のおかげだと思います。発表経験まで含めて、よい成長の場になりました。

とても充実した5日間を過ごさせていただき、渡辺さんを始めとする日本マイクロソフト社員のみなさんには、大変お世話になりました。貴重なお時間を割いて対応してくださり、ありがとうございました!

東京大学ダイワユビキタス学術研究館内(高専インターンシップ生4名・筆者左端)