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マイクロソフトが真にスケーラブルな汎用量子コンピューター実用化への取り組みを加速

[2016 年 11 月 20 日]

[写真] マイクロソフトのエグゼクティブ、Todd Holmdahlは、スケーラブルな量子ハードウェアとソフトウェアを開発するための科学技術的な取り組みをリードしていきます。

 

マイクロソフトは、量子コンピューター分野へのコミットメントを倍増させ、トポロジカル量子ビットと呼ばれるものを使ってスケーラブルな量子コンピューターを作成することが可能であると確信しています。

長年にわたるマイクロソフトのエグゼクティブを務めるTodd Holmdahlは、魔法のような研究プロジェクトの製品化を成功させてきた経歴を持ち、スケーラブルな量子ハードウェアとソフトウェアを開発するための科学技術的な取り組みをリードしています。

マイクロソフトの量子プログラム担当コーポレートバイスプレジデントであるHolmdahlは、「私たちは研究段階から実用段階に移行する準備が整う変曲点にいると考えている」と言います。

以前はXbox、Kinect、HoloLensの開発において重要な役割を果たしていたHolmdahlは、成功は決して保証されないと指摘しました。しかし、同氏は、同社の量子研究への長年の投資は実りあり、スケーラブルな量子コンピューターへの明確なロードマップがあると考えています。

「これらのものはどれも与えられたものではありません」とHolmdahlは言います。「しかし、世界に大きな影響を与えるためには、ある程度のリスクを負わなければならない。私たちは今、そうするチャンスがある。」

マイクロソフトは、量子コンピューター分野のリーダーであるLeo KouwenhovenとCharles Marcusを雇用しました。同社はまた、すぐに同分野の他の2人のリーダー、Matthias TroyerとDavid Reillyを雇用します。 Marcusは、コペンハーゲン大学のニールス・ボーア研究所のVillum Kann Rasmussen教授と、デンマーク国立研究財団が主催する量子デバイスセンターのディレクターです。 Kouwenhovenはオランダのデルフト工科大学の著名な教授であり、量子技術先端研究センターであるQuTechの創設者でもありました。

左から、Leo KouwenhovenとCharles Marcus。2人は、カリフォルニア州サンタバーバラで開催される2014年のマイクロソフトのStation Qカンファレンスに参加しました。

 

MarcusとKouwenhovenはマイクロソフトの量子チームと長年にわたり協力してきました。マイクロソフトでは、研究室におけるトポロジカル量子ビットの研究を加速​​しています。マイクロソフトに参加した後も、彼らは所属大学における職位と関係性を維持し、大学の研究グループを継続して運営し、それぞれの大学に専用のマイクロソフトの量子ラボを構築することに貢献します。

2名の研究者は、マイクロソフトに参加することが、スケーラブルな量子コンピューターの作成に役立つことを保証する最善の道だと言います。

「非常にエキサイティングです。」とKouwenhovenは言います。「私は学生時代からこの研究をしています。その時は、これが実用化されるかどうか確信がありませんでした。」

Kouwenhovenがサンフランシスコのサンタバーバラ(カリフォルニア州)のマイクロソフトの研究所を訪問し、研究所のディレクターで位相幾何学の専門家であるMichael Freedmanと「ビーチ沿いで素敵な散歩」をした後、Kouwenhovenとマイクロソフトとの共同研究はカジュアルな形で始まりました。

数年にわたる学術的な共同研究を経て、Kouwenhovenは、開発者の観点から量子コンピューターの研究成果の実用化で恩恵を受けられる点に達したと述べました。

「開発チームは量子コンピューターの研究を前進させるのにも役立つだろう。」とKouwenhovenは言います。

これは重要なことです。マイクロソフトは、Marcus が「量子情報のデモ環境」と呼ぶ、完全な状態下の1つの研究室で1つの量子ビットを作ることに興味があるわけではないからです。

その代わり、同社は量子力学の知識がない科学者が世界で最も困難な問題のいくつかを解決するために使用できる信頼できるツールを作りたいと考えています。そうすることで、医学や材料科学などの産業に革命をもたらす「量子経済」を導くご支援になると信じています。

数年前にマイクロソフトのFreedmanの隣に座ったときに、マイクロソフトとの共同研究がほぼ偶然に始まったMarcusは、科学者と開発者がより密接に提携しなければ、量子経済が実現することはないと気づいたと言いました。

「以前は存在していなかったマシンを作ることができるようになった時点で、私たちがビジネスのやり方を変える必要があることを知っていました」とMarcusは言います。「科学者、あらゆる種類のエンジニア、技術者、プログラマーなどが、同じチームで作業する必要があります。」

それには、他の長期にわたる協力者と協調することも含まれます。 Troyerは現在、世界有数の大学の一つであるスイスのETH Zurichで計算物理学の教授を務めています。彼の専門分野には、量子材料のシミュレーション、量子デバイスのテスト、量子アルゴリズムの最適化、量子コンピュータのソフトウェア開発などがあります。 実験物理学者であるReillyは、オーストラリアのシドニー大学で量子マシンセンターの教授とディレクターを務めています。量子システムのスケールアップの課題に取り組む物理学者とエンジニアのチームを率いています。

 

量子コンピューターの構成要素を作る

量子コンピュータを構築するためのマイクロソフトのアプローチは、量子ビットの一種である、トポロジカル量子ビットと呼ばれる量子情報の単位を用いることです。

量子ビットは、量子コンピューターの重要な構成要素です。研究者らは、量子ビットを用いることで量子コンピューターはひとつひとつでなく同時に複数の問題を超高速に対処できると考えています。

実際に動作する量子コンピューターを構築する上での最大の課題の1つは、量子ビットの扱いにくさです。量子システムは外部のゆらぎを受けない環境下でしか量子状態を保てないため、量子コンピューターは超低温の独特な環境に構築する必要があります。

マイクロソフトのチームは、トポロジカル量子ビットであれば、熱や電気ノイズなどの課題にさらに耐えることができ、量子状態をより長く維持でき、それによりはるかに実用的で効果的なものを作ることができると考えています。

「トポロジカルな設計は、環境の変化の影響を受けにくい」とHolmdahlは語ります。

マイクロソフトが量子コンピューターを開発するのと同時に、それを実行できるソフトウェアも作成しています。目標は、複雑な問題を最初から効率的に解決できるシステムを構築することです。

「従来の高性能コンピューティングと同様に、ハードウェアだけでなく最適化されたソフトウェアも必要です。」とTroyerは言います。

チームにとっては、それは意味があることです。2つのシステムは、特定の問題を解決するために共同研究ことができ、それぞれからの研究はもう一方を助けることができます。

「量子コンピューターは単なる量子ビットの構築ではない」とReillyは語ります。「これには、古典的なハードウェアシステム、インターフェイス、外部世界との接続がすべて含まれています。」

 

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よりスマートなクラウドが一見難しい問題を解決する

効果的な量子ハードウェアとソフトウェアによって、気候変動や飢餓から多数の医学的課題に至るまで、世界で最も緊急の問題に取り組むことができる膨大な計算パワーを生み出すことができると量子コンピューターの専門家は言います。

それは、コンピューターが物理系を模倣し、薬の開発や植物の生命の理解を加速することができるからです。研究者たちは、インテリジェントクラウドは、携帯電話がスマートフォンに進化したのと同様に、指数関数的に強力なものになる可能性があると言います。

「これらのコンピューターを物理系の材料科学と呼ぶようなものに適用する本当の機会がある」とHolmdahlは語ります。「これらの問題の多くは、古典的なコンピューターでは扱いにくいものですが、量子コンピューターでは、合理的な期間内で扱いやすいと考えています。」

Kouwenhovenは、暗黒物質の研究や宇宙そのものの理解に関する他の根本的な問題など、量子物理学そのものに当てはまると言いました。

「私が科学者に戻って、量子コンピューターを使って量子問題を解決するのは興味深いことだ」と彼は語りました。

 

トランジスタと灰吸引器

まだまだ大きな未知の領域があります。科学者が最初のトランジスタを発明したとき、コンピュータ科学者は、スマートフォンのようなアプリケーションを想像する方法がありませんでした。

「1940~1950年代に、最初のトランジスタについて考えていたときに、これがどのように使われるのか必ずしも理解していなかったと私は推測しています。そしてちょうど今の私たちがそれにあたる思います」とHolmdahlは語ります。

トランジスタの発明者の1人はWalter Brattainでした。彼はHolmdahlと同じワシントン州トナスケットの小さな町で育ちました。Holmdahlは技術に関する歴史通として、長い間 Brattain の人生に魅了されてきました。

Holmdahlは、量子コンピューターが、Brattain と同じ足跡をたどっていると語っています。

「次のトランジスタにあたるものが私の目の前にあるのです。」

彼がこの役職に就いたとき、Holmdahlは自分の人生に大きな影響を及ぼしている別の人物のことを考えていました。それは彼の 20歳の息子で、Holmdahlに自分がテーブルの中で一番賢い人だと思ったら、新しいテーブルを見つけろと言ったのです。

「これは間違いなく私の新しいテーブルだ」と Holmdahl は言います。彼はスタンフォード大学で教育を受けたエンジニアですが、現在、自由時間に量子物理学や量子もつれの読書をしています。

Marcus が量子コンピューターができることを考えるとき、彼はしばしば家族がかつて持っていた古い車について考えます。それは、タバコから直接灰を吸うように設計されたダッシュボードガジェットを含む、最新の技術を駆使した当時の最上級車でした。

当時、Marcusはしばしば、その車は技術的に考えられる最高のものに違いないと考えていました。

「灰吸引器を設計していたときは誰も自動運転車については考えていなかった。」

同じことが計算パワーにも言えることは明白です。

「コンピューターの技術が完成したと考えている人は、灰吸引器を考えていた時の技術者のようだ」と彼は語った。

 

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この文章は以下の原文を要約したものです: