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SharePoint Server で RBS の使用を決める

適用対象:yes-img-13 2013yes-img-162016 yes-img-192019 yes-img-seSubscription Edition no-img-sopSharePoint in Microsoft 365

この記事では、SharePoint Server 環境でリモート BLOB ストレージ (RBS) を使用するかどうかを判断する上で役立つ情報を提供し、RBS を使用する際の利点とコストについて説明します。

重要

RBS によってコンテンツ データベースの記憶域の制限が上がることは ありません。 すべての制限が、RBS 対応のコンテンツ データベースに依然として適用されます。 RBS の目的は、低価格のドライブに、読み取り中心でサイズの大きな BLOB を格納することにより、ストレージのコストを抑えることです。 たとえば、150 GB の RBS データがあるのに対し、コンテンツ データベースは 70 GB の場合には、やはり制限を超えてしまいます。

SharePoint Server では、バイナリ ラージ オブジェクト (BLOB) は、Microsoft Office ドキュメント、ビデオ ファイルなどのファイルです。 既定では、非構造化データとも呼ばれるこれらの BLOB が、メタデータ、つまり構造化データと共に、SharePoint コンテンツ データベースにインラインで格納されます。 BLOB は非常に大きくなる可能性があるため、BLOB データを SQL Server データベースから、コンテンツのアドレス指定が可能なストレージ製品に移動することは有用です。 これを行うには、RBS を使用します。

注:

特に指定のない限り、この記事の情報は、FILESTREAM プロバイダーを使用する RBS にのみ適用されます。 他のプロバイダー固有のガイダンスについては、プロバイダーのメーカーに問い合わせてください。

RBS プロバイダーに関する情報を含めて、RBS の詳細については、「SharePoint Server での RBS の概要」を参照することを強くお勧めします。

RBS の制限事項

各 RBS プロバイダーには、それぞれ異なる機能と制限事項があります。 FILESTREAM プロバイダーの制限事項は、次のとおりです。

  • RBS は、特定のシナリオで特定のコンテンツ データベース サイズ制限があります。 これらの制限の詳細については、「ソフトウェアの境界と制限 (SharePoint 2013)」の「コンテンツ データベースの制限」セクションと、「コンテンツ データベースの制限」を参照してください。

  • 透過的なデータ暗号化が有効であっても、BLOB での暗号化はサポートされません。

  • RBS では、データ圧縮の使用はサポートされません。

  • データベース ミラーリングおよびログ配布のサポートは変更されています。 詳細については、この記事の「プロバイダーのオプションを評価する」を参照してください。

サード パーティのプロバイダーの機能と制限事項を判断するには、プロバイダーのメーカーに問い合わせてください。

RBS の最適な使用方法

RBS は特定の条件の組み合わせに合うように作成されるソリューションなので、RBS の利点がコストを上回る条件が存在します。 以下が該当する環境で、RBS の使用が最適となります。

  • 読み取りが多い、または読み取り専用でアクセスされる、少数の大きな BLOB (256 KB 以上) を格納する。

  • SQL Server を実行しているコンピューター上のリソースが、パフォーマンスのボトルネックになる可能性がある。

  • 高価なドライブ領域に関する費用が、RBS の使用によって生じる可能性のある IT 運用の複雑さの増加に伴う費用を上回る。

RBS の不適切な使用方法

RBS は、特定の環境ではコストがメリットを上回るため、すべての環境に適したソリューションではありません。 RBS を使用するための最もメリットの少ない環境は、次の条件が満たされる環境です。

  • 書き込み中心でアクセスされる、多数の小さな BLOB (256 KB 以下) を格納する。

  • SQL Server を実行しているコンピューター上のリソースが、パフォーマンスのボトルネックでない。

  • RBS の使用によって生じる可能性がある、IT 運用の複雑さの増加に伴う費用が、高価なドライブ領域の費用を上回る。

このような条件の下では、200 GB 未満のコンテンツ データベースであっても、小さな BLOB が頻繁に書き込みアクセスされるため、著しいパフォーマンスのボトルネックが引き起こされます。 ボトルネックは、データベースに BLOB のメタデータが含まれているために生じます。 メタデータが変更されると、データベース内のテーブルに新しい行が追加されます。 このため、テーブルが急激に増大することがあり、大きなテーブルはパフォーマンスを低下させることがあります。

多数の小さな BLOB があるとパフォーマンスが低下しますが、RBS を評価するとき注目すべき検討事項は、通常、ストレージのコストです。 予想されるパフォーマンスの低下は、通常、ストレージ ハードウェアのコスト削減効果に十分見合うものです。

さまざまなシナリオで RBS を使用する場合の影響

異なるサイト シナリオで RBS を使用する場合の影響を評価する必要があります。 RBS は特定の問題を解決するために作成されたものなので、すべての状況に同じように適しているとは限りません。 次のセクションでは、いくつかの状況の例を示します。

チーム サイト

チーム サイトのように共同作業が多く行われるサイト、および、通常、256 KB 未満のドキュメントが含まれるサイトで RBS の使用を検討している場合、RBS を使用しても大きなメリットはありません。 さらに、バージョン管理を使用すると、ドキュメントが頻繁に変更される場合は、コンテンツ データベースの急激な増大を引き起こします。

重要

グループ作業サイトでの 200 GB を超える RBS 対応コンテンツ データベースの使用はサポートされていません。 2 GB を超えるいかなるドキュメントも RBS 対応コンテンツ データベースにはアップロードできません。 RBS に関する制限の詳細については、「ソフトウェアの境界と制限 (SharePoint 2013)」の「コンテンツ データベースの制限」セクションと、「コンテンツ データベースの制限」を参照してください。

レコード センター

RBS は、レコード センターなどのアーカイブ サイトに適しています。 これらのサイトはほとんどが読み取り専用であり、バージョン管理を使用しないため、多くのデータを RBS ストアに格納できます。

RBS を使用するメリットとコスト

ここでは、RBS を使用するメリットとコストについて説明します。 このメリットとコストは、通常、使用するプロバイダーの種類にかかわらず該当します。 FILESTREAM RBS プロバイダーを使用する方法の詳細については、この記事の「FILESTREAM プロバイダーで RBS を使用する場合のメリットとコスト」を参照してください。 サード パーティの RBS プロバイダーを使用する方法の詳細については、プロバイダーのメーカーに問い合わせてください。

メリット

RBS は、BLOB のストレージを、データベース サーバー上のデータベースからストレージ ソリューション製品上のディレクトリに移動するために設計されました。 このため、RBS の使用が想定された特定の環境では、パフォーマンスやコストのメリットを受けられます。 データベース サーバー上の高価なストレージではなく、安価なストレージを使用することで、コストを削減できます。 少数の大きな BLOB がある場合、RBS はストレージ リソースを節約します。 多数の小さなファイルがある場合、メリットはありません。

コスト

RBS を使用すると、IT スタッフがコンテンツをバックアップまたは復元するときに追加の作業を実行する必要があるため、運用コストは増加します。 大きな RBS ストアの場合、バックアップや復元、環境の更新、SharePoint Server の新バージョンへのアップグレード、SharePoint サイトの別の環境への移行などの作業速度が低下することがあります。 RBS を使用するかどうかを評価する際は、これらのコストを検討する必要があります。

FILESTREAM プロバイダーで RBS を使用する場合のメリットとコスト

ここでは、FILESTREAM プロバイダーを使用する場合のメリットとコストについて説明します。 これらのメリットとコストは、別のプロバイダーには関係しない可能性があります。 サード パーティの RBS プロバイダーを使用する方法の詳細については、プロバイダーのメーカーに問い合わせてください。

メリット

SharePoint Server で現在サポートされているのは、FILESTREAM RBS プロバイダーだけです。 このプロバイダーを使用すると、SharePoint Server のバックアップ機能と復元機能で、追加の作業を必要とせずに、コンテンツ データベース内の BLOB と構造化データもバックアップおよび復元できます。 また、FILESTREAM プロバイダーは、iSCSI (Internet Small Computer System Interface) 接続のストレージ デバイスもサポートします。 詳細については「FILESTREAM と SQL Server のその他の機能との互換性」をご覧ください。

コスト

FILESTREAM プロバイダーを使用すると、IT スタッフは追加の作業を実行する必要があるため、運用コストが増加する可能性があります。 大きな RBS ストアの場合、バックアップや復元、環境の更新、SharePoint Server の新バージョンへのアップグレード、SharePoint サイトの別の環境への移行などの作業速度が低下することがあります。 RBS を使用するかどうかを評価する際は、これらのコストを検討する必要があります。

IT ライフ サイクルで RBS を使用する場合の影響

環境のライフ サイクル全体で RBS を使用する場合の影響を評価する必要があります。 大きな BLOB ストアなど、通常の運用では適切なものが、バックアップと復元や、アップグレードの際には、問題になることがあります。 ライフ サイクル全体での RBS の使用や BLOB ストア サイズの効果を評価することで、後で発生する可能性がある問題を回避できます。

たとえば、リモート RBS プロバイダーを使用すると、IT 運用の複雑さが増し、コストも増大します。 これは、参照の整合性を保持するために、コンテンツ データベースと BLOB ストアを同期してバックアップする必要があるためです。

また、場合によっては、アップグレード作業で、BLOB の格納場所にかかわらず、各 BLOB を列挙し、変更する可能性もあります。

セットアップ

RBS を使用する場合は、ファーム内のすべての Web サーバーで RBS プロバイダーのインストールと構成を行う必要があるため、セットアップが多少複雑になります。 RBS をセットアップする方法の詳細については、「SharePoint Server ファームで FILESTREAM を使用する RBS をインストールおよび構成する」を参照してください。

通常の運用

通常の運用における、平均的なファイル サイズとファイル アクセスの種類を考慮する必要があります。 1 MB を越えるファイルで RBS を使用すると、I/O とプロセッサのパフォーマンスは向上しますが、256 KB 未満のファイルで RBS を使用すると、全体のパフォーマンスが低下する可能性があります。 サイズが小さなファイルの場合は、コンテンツ データベースに BLOB をインラインで格納する方が効率的です。

BLOB コンテンツがどのような使われ方をするかについても、考慮する必要があります。 コンテンツの読み取りが大半で、変更が行われない場合、RBS によってパフォーマンスが向上する可能性があります。 しかし、コンテンツの変更が多く行われる場合は、RBS の使用によってパフォーマンスは低下します。 これは、バージョン管理が多く行われることで、コンテンツ データベース内のメタデータと、BLOB ストアのサイズが極端に大きくなるためです。

ストレージ コストのメリットと、運用コストの増大の可能性を、比較検討してください。

監視と最適化

RBS を使用する場合、RBS を監視するために追加されたいくつかのパフォーマンス カウンターがあるため、運用上のオーバーヘッドも増加します。 各種オプションを使用して、RBS のパフォーマンスを調整できます。 詳細については、「SharePoint Server で RBS のメンテナンスを行う」を参照してください。

データベースのメンテナンス

RBS を使用すると、断片化したデータベース インデックスの最適化と統計情報に関する作業を、効率的に、高速に実行できます。 また、DBCC チェックなど、通常の整合性チェックも、RBS を使用すると、ずっと高速に実行できます。

しかし、RBS Maintainer を構成および使用して、メタデータと BLOB ストア間のリンク レベルの整合性を維持し、孤立した BLOB のクリーンアップを実行する必要があるため、通常のデータベース メンテナンスが複雑になります。 詳細については、「SharePoint Server で RBS のメンテナンスを行う」を参照してください。

バックアップと復元

ローカルの FILESTREAM プロバイダーと RBS を使用する場合は、組み込みの SharePoint ツールを使用してバックアップと復元を実行できます。 この操作によって、メタデータと BLOB ストアの両方のバックアップと復元が行われます。 リモートの RBS プロバイダーを使用する場合は、バックアップと復元のプロセスを注意して調整する必要があります。 バックアップと復元のプロセスが、メタデータと BLOB ストアの両方に関係するためです。 RBS 構成を計画する場合は、この点を考慮してください。 すべての RBS プロバイダーが、BLOB データのバックアップと復元をサポートしているわけではありません。 サポートしているかどうか、プロバイダーのメーカーに確認する必要があります。

Microsoft System Center Data Protection Manager を使用して、RBS ストアに格納されているコンテンツをバックアップおよび復元することはできません。

アップグレードと更新

状況によっては、アップグレードや、ソフトウェア更新プログラムの適用であっても、各オブジェクトを列挙および繰り返し処理して、BLOB データの格納場所にかかわらず、そのデータを含めることができます。 したがって、インライン BLOB が使用されている場合でもリモート BLOB が使用されている場合でも、かかる時間は同様です。

プロバイダーのオプションを評価する

RBS では、RBS API と SQL Server を接続するプロバイダーが必要になります。 SQL Server 2014 Service Pack 1 (SP1)、SQL Server 2008 Express および Microsoft SQL Server 2008 R2 Express には、FILESTREAM プロバイダーが含まれています。

重要

RBS は、SQL Server 2014 (SP1)、SQL Server 2008 R2、SQL Server 2008、または SQL Server 2008 R2 Express を実行しているローカル コンピューター上で実行できます。 RBS をリモート サーバーで実行するには、SQL Server 2008 R2 Enterprise を実行している必要があります。 SharePoint Server 2016 では、SQL Server 2014 (SP1) に含まれているバージョンの RBS を使用する必要があります。 それよりも前のバージョンの RBS は SharePoint Server 2016 では機能しません。

重要

SharePoint Server 2013 では、SQL Server 2008 R2 用 Feature Pack に含まれる SQL Server リモート BLOB ストア インストール パッケージ に含まれている RBS のバージョンを使用する必要があります。 それよりも前のバージョンの RBS は SharePoint 2013 では機能しません。 また、SQL Server 2005 では RBS はサポートされていません。

BLOB は、プロバイダーがサポートしている、直接接続ストレージ (DAS)、ネットワーク接続ストレージ (NAS) などのストレージ製品に保持できます。 SharePoint Server 2016 が FILESTREAM プロバイダーをサポートするのは、ローカル ハード ディスク ドライブまたは iSCSI ドライブ上で使用する場合に限られます。 FILESTREAM を使用して RBS を NAS のようなリモート ストレージ デバイス上で使用することはできません。

次の表に、FILESTREAM のメリットと制約を要約します。

操作要件 FILESTREAM プロバイダーを使用する場合 FILESTREAM プロバイダーを使用しない場合
SQL Server に統合された BLOB ストアのバックアップと復元機能
はい
使用する RBS プロバイダーによってサポートされている場合に限られます。
スクリプトによる BLOB への移行
あり
あり
ミラーリングのサポート
なし
なし
ログの配布
あり
あり (プロバイダーの実装を使用する場合)
データベース スナップショット
不要*
不要*
地理的なレプリケーション
あり
なし
暗号化
NTFS のみ
使用する RBS プロバイダーによってサポートされている場合に限られます。
サポートされているローカル ドライブ
あり
あり (プロバイダーの実装を使用する場合)
ネットワーク接続ストレージ (NAS)
iSCSI を使用する SharePoint Server によってサポートされ、先頭バイト受信時間が 20 ミリ秒未満の場合に限られます。
あり (プロバイダーの実装を使用する場合)
直接接続ストレージ (DAS)
SharePoint Server ではサポートされません
あり (プロバイダーの実装を使用する場合)
iSCSI (Internet Small Computer System Interface)
あり
あり (プロバイダーの実装を使用する場合)

*使用している RBS プロバイダーがスナップショットをサポートしていない場合、コンテンツの展開やバックアップでスナップショットを使用することはできません。 FILESTREAM プロバイダーは、スナップショットをサポートしていません。

FILESTREAM プロバイダーが環境に適していない場合は、サポートされているサード パーティのプロバイダーを購入する方法もあります。 この場合は、プロバイダーを評価するときに次の条件を使用してください。

  • バックアップおよび復元の能力

  • 障害復旧機能がテスト済みか

  • 展開とデータの移行

  • パフォーマンスへの影響

  • 長期の管理コスト

重要

ストレージ ソリューションの設計に関して十分な開発経験がある独立ソフトウェア ベンダー (ISV) 以外には、プロバイダーを開発することはお勧めしません。

関連項目

その他のリソース

リモート BLOB ストア (RBS) [SQL Server]

SQL Server のリモート BLOB ストアと FILESTREAM 機能の比較