_control87、_controlfp、__control87_2
浮動小数点制御ワードの取得および設定を行います。_controlfp のセキュリティが強化されたバージョンについては、「_controlfp_s」を参照してください。
unsigned int _control87(
unsigned int new,
unsigned int mask
);
unsigned int _controlfp(
unsigned int new,
unsigned int mask
);
int __control87_2(
unsigned int new,
unsigned int mask,
unsigned int* x86_cw,
unsigned int* sse2_cw
);
パラメーター
new
新しい制御ワードのビット値mask
新しく設定する制御ワード ビットのマスク。x86_cw
x87 浮動小数点ユニットの制御ワードが格納されます。SSE2 制御ワードのみを設定する場合は、0 (NULL) を渡します。sse2_cw
SSE 浮動小数点ユニットの制御ワード。x87 制御ワードのみを設定する場合は、0 (NULL) を渡します。
戻り値
_control87 と _controlfp の戻り値のビットは浮動小数点のコントロールの状態を示します。_control87 関数から返されるビットの定義の詳細については、FLOAT.H を参照してください。
__control87_2 では、戻り値 1 は成功したことを意味します。
解説
_control87 関数は、浮動小数点制御ワードの取得と設定を行います。浮動小数点制御ワードを使用すると、プログラムで使用する浮動小数点演算パッケージの精度、丸め、および無限大の各モードを変更できます。_control87 を使用して、浮動小数点例外のマスクの設定および解除を行うこともできます。mask の値を 0 にすると、_control87 は浮動小数点制御ワードを取得します。mask の値を 0 以外にすると、制御ワードに新しい値が設定されます。mask のビットのいずれかを ON (つまり 1) にすると、new の対応するビットが制御ワードの更新に使用されます。つまり、fpcntrl= ((fpcntrl& ~mask) | (new & mask)) で、fpcntrl は浮動小数点制御ワードです。
[!メモ]
既定では、ランタイム ライブラリは、すべての浮動小数点例外をマスクします。
_controlfp は、_control87 の移植性の高いバージョンで、プラットフォームに依存しません。Intel (x86) プラットフォームでは _control87 関数と同じです。MIPS と ALPHA の各プラットフォームでサポートされています。浮動小数点コードを MIPS または ALPHA に確実に移植するには、_controlfp を使用します。x86 プラットフォームを対象とする場合は、_control87 または _controlfp 関数を使用します。
_control87 関数と _controlfp 関数の違いは、DENORMAL 値の扱い方です。Intel (x86) プラットフォームでは、_control87 によって DENORMAL OPERAND 例外マスクの設定および解除を行うことができます。ALPHA プラットフォームでは、この例外がサポートされていないため、_controlfp では DENORMAL OPERAND 例外マスクが変更されません。違いは、次のとおりです。
_control87( _EM_INVALID, _MCW_EM );
// DENORMAL is unmasked by this call
_controlfp( _EM_INVALID, _MCW_EM );
// DENORMAL exception mask remains unchanged
マスク定数の対象となる値 (mask) および新しい制御値 (new) を以下の「16 進数の値」の表に示します。2 つの関数の引数には、16 進数値を明示的に指定せずに、表に示すような移植性の高い定数 (_MCW_EM、_EM_INVALID など) を使用します。
ALPHA プラットフォームでは、DENORMAL 入出力値がソフトウェアでサポートされています。これらのプラットフォーム上の Windows NT の既定の動作では、DENORMAL 入出力値がゼロにフラッシュされます。_controlfp 関数では新しいマスクを使用して、DENORMAL 入出力値の保持およびフラッシュを行います。
Intel (x86) プラットフォームでは、DENORMAL 入出力値がハードウェアでサポートされています。このプラットフォームでは DENORMAL 値を保持するように動作します。_control87 関数はこの動作を変更するマスクを使用しません。次の例に、この違いを示します。
_controlfp(_DN_SAVE, _MCW_DN);
// Denormal values preserved by software on ALPHA. NOP on x86.
_controlfp(_DN_FLUSH, _MCW_DN);
// Denormal values flushed to zero by hardware on ALPHA and x86
// processors with SSE2 support. Ignored on other x86 platforms.
_control87 関数と _controlfp 関数はどちらも、x87 および SSE2 の制御ワードがある場合、その両方に影響します。__control87_2 関数では、x87 と SSE2 の両方の浮動小数点ユニットを一緒に制御することも、個別に制御することもできます。両方のユニットに影響を与える場合は、x86_cw と sse2_cw に対して 2 つの整数アドレスを渡します。1 つのユニットにのみ影響を与えるには、影響を与えるパラメーターにはアドレスを渡し、他方には 0 (NULL) を渡します。いずれかのパラメーターに対して 0 が渡されると、関数はその浮動小数点ユニットには影響しません。この機能は、コードの一部では x87 浮動小数点ユニットを使用し、別の部分では SSE2 浮動小数点ユニットを使用する場合に役立ちます。__control87_2 関数をプログラムの一部で使用し、さまざまな値を浮動小数点制御ワードに設定した後、さらに制御ワードを操作するために _control87 関数または _controlfp 関数を使用すると、_control87 と _controlfp は両方の浮動小数点ユニットの状態を表す単一の制御ワードを返すことができない場合があります。このような場合、これらの関数は EM_AMBIGUOUS フラグを整数の戻り値に設定し、2 つの制御ワードの間に矛盾があることを示します。これは、返された制御ワードが両方の浮動小数点制御ワードの状態を正確に表していない可能性があるという警告です。
x64 アーキテクチャでは、浮動小数点の精度の変更はサポートされていません。そのプラットフォームで精度の制御マスクが使用されている場合は、「パラメーターの検証」に説明されているように、アサーションと無効なパラメーター ハンドラーが呼び出されます。
[!メモ]
__control87_2 は、x64 アーキテクチャではサポートされていません。__control87_2 関数を使用して x64 アーキテクチャのプログラムをコンパイルした場合、コンパイラでエラーが生成されます。
共通言語ランタイムは浮動小数点の既定の精度のみをサポートするので、/clr (共通言語ランタイムのコンパイル) または /clr:pure を使用してコンパイルする場合、これらの関数は使用しないでください。
16 進数の値
_MCW_EM マスクに関しては、マスクを解除すると例外が設定されてハードウェア例外が許可されます。マスクを設定すると例外は無効になります。_EM_UNDERFLOW または _EM_OVERFLOW が発生した場合は、次回の浮動小数点命令が実行されるまで、ハードウェア例外はスローされません。_EM_UNDERFLOW または _EM_OVERFLOW の発生後すぐにハードウェア例外を生成するには、FWAIT MASM 命令を呼び出します。
マスク |
16 進値 |
定数 |
16 進値 |
---|---|---|---|
_MCW_DN (DENORMAL 制御) |
0x03000000 |
_DN_SAVE _DN_FLUSH |
0x00000000 0x01000000 |
_MCW_EM (割り込み例外マスク) |
0x0008001F |
_EM_INVALID _EM_DENORMAL _EM_ZERODIVIDE _EM_OVERFLOW _EM_UNDERFLOW _EM_INEXACT |
0x00000010 0x00080000 0x00000008 0x00000004 0x00000002 0x00000001 |
_MCW_IC (無限制御) |
0x00040000 |
_IC_AFFINE _IC_PROJECTIVE |
0x00040000 0x00000000 |
_MCW_RC (丸め制御) |
0x00000300 |
_RC_CHOP _RC_UP _RC_DOWN _RC_NEAR |
0x00000300 0x00000200 0x00000100 0x00000000 |
_MCW_PC (精度制御) |
0x00030000 |
_PC_24 (24 ビット) _PC_53 (53 ビット) _PC_64 (64 ビット) |
0x00020000 0x00010000 0x00000000 |
必要条件
ルーチン |
必須ヘッダー |
---|---|
_control87, _controlfp, _control87_2 |
<float.h> |
互換性の詳細については、「C ランタイム ライブラリ」の「互換性」を参照してください。
使用例
// crt_cntrl87.c
// processor: x86
// This program uses __control87_2 to output the x87 control
// word, set the precision to 24 bits, and reset the status to
// the default.
//
#include <stdio.h>
#include <float.h>
#pragma fenv_access (on)
int main( void )
{
double a = 0.1;
unsigned int control_word_x87;
// Show original x87 control word and do calculation.
control_word_x87 = __control87_2(0, 0,
&control_word_x87, 0);
printf( "Original: 0x%.4x\n", control_word_x87 );
printf( "%1.1f * %1.1f = %.15e\n", a, a, a * a );
// Set precision to 24 bits and recalculate.
control_word_x87 = __control87_2(_PC_24, MCW_PC,
&control_word_x87, 0);
printf( "24-bit: 0x%.4x\n", control_word_x87 );
printf( "%1.1f * %1.1f = %.15e\n", a, a, a * a );
// Restore default precision-control bits and recalculate.
control_word_x87 = __control87_2( _CW_DEFAULT, MCW_PC,
&control_word_x87, 0 );
printf( "Default: 0x%.4x\n", control_word_x87 );
printf( "%1.1f * %1.1f = %.15e\n", a, a, a * a );
}
出力
Original: 0x0001
0.1 * 0.1 = 1.000000000000000e-002
24-bit: 0x0001
0.1 * 0.1 = 9.999999776482582e-003
Default: 0x0001
0.1 * 0.1 = 1.000000000000000e-002
同等の .NET Framework 関数
該当なし標準 C 関数を呼び出すには、PInvoke を使用します。詳細については、「プラットフォーム呼び出しの例」を参照してください。