SafeInt クラス
整数プリミティブを拡張して、整数オーバーフローを防止すると共に、異なる型の整数を比較できるようにします。
template<typename T, typename E = _SAFEINT_DEFAULT_ERROR_POLICY>
class SafeInt;
パラメーター
テンプレート |
説明 |
---|---|
T |
SafeInt によって置き換えられる整数パラメーターまたはブール値パラメーターの型。 |
E |
エラー処理ポリシーを定義する列挙型。 |
U |
2 番目のオペランドの整数パラメーターまたはブール値パラメーターの型。 |
パラメーター |
説明 |
---|---|
[入力] rhs |
複数のスタンドアロン関数で演算子の右側の値を表す入力パラメーター。 |
[入力] i |
複数のスタンドアロン関数で演算子の右側の値を表す入力パラメーター。 |
[入力] bits |
複数のスタンドアロン関数で演算子の右側の値を表す入力パラメーター。 |
メンバー
パブリック コンストラクター
[名前] |
説明 |
---|---|
既定のコンストラクターです。 |
代入演算子
[名前] |
構文 |
---|---|
= |
template<typename U> SafeInt<T,E>& operator= (const U& rhs) |
= |
SafeInt<T,E>& operator= (const T& rhs) throw() |
= |
template<typename U> SafeInt<T,E>& operator= (const SafeInt<U, E>& rhs) |
= |
SafeInt<T,E>& operator= (const SafeInt<T,E>& rhs) throw() |
キャスト演算子
[名前] |
構文 |
---|---|
bool |
operator bool() throw() |
char |
operator char() const |
signed char |
operator signed char() const |
unsigned char |
operator unsigned char() const |
__int16 |
operator __int16() const |
unsigned __int16 |
operator unsigned __int16() const |
__int32 |
operator __int32() const |
unsigned __int32 |
operator unsigned __int32() const |
long |
operator long() const |
unsigned long |
operator unsigned long() const |
__int64 |
operator __int64() const |
unsigned __int64 |
operator unsigned __int64() const |
wchar_t |
operator wchar_t() const |
比較演算子
[名前] |
構文 |
---|---|
< |
template<typename U> bool operator< (U rhs) const throw() |
< |
bool operator< (SafeInt<T,E> rhs) const throw() |
>= |
template<typename U> bool operator>= (U rhs) const throw() |
>= |
Bool operator>= (SafeInt<T,E> rhs) const throw() |
> |
template<typename U> bool operator> (U rhs) const throw() |
> |
Bool operator> (SafeInt<T,E> rhs) const throw() |
<= |
template<typename U> bool operator<= (U rhs) const throw() |
<= |
bool operator<= (SafeInt<T,E> rhs) const throw() |
== |
template<typename U> bool operator== (U rhs) const throw() |
== |
bool operator== (bool rhs) const throw() |
== |
bool operator== (SafeInt<T,E> rhs) const throw() |
!= |
template<typename U> bool operator!= (U rhs) const throw() |
!= |
bool operator!= (bool b) const throw() |
!= |
bool operator!= (SafeInt<T,E> rhs) const throw() |
算術演算子
[名前] |
構文 |
---|---|
+ |
const SafeInt<T,E>& operator+ () const throw() |
- |
SafeInt<T,E> operator- () const |
++ |
SafeInt<T,E>& operator++ () |
-- |
SafeInt<T,E>& operator-- () |
% |
template<typename U> SafeInt<T,E> operator% (U rhs) const |
% |
SafeInt<T,E> operator% (SafeInt<T,E> rhs) const |
%= |
template<typename U> SafeInt<T,E>& operator%= (U rhs) |
%= |
template<typename U> SafeInt<T,E>& operator%= (SafeInt<U, E> rhs) |
* |
template<typename U> SafeInt<T,E> operator* (U rhs) const |
* |
SafeInt<T,E> operator* (SafeInt<T,E> rhs) const |
*= |
SafeInt<T,E>& operator*= (SafeInt<T,E> rhs) |
*= |
template<typename U> SafeInt<T,E>& operator*= (U rhs) |
*= |
template<typename U> SafeInt<T,E>& operator*= (SafeInt<U, E> rhs) |
/ |
template<typename U> SafeInt<T,E> operator/ (U rhs) const |
/ |
SafeInt<T,E> operator/ (SafeInt<T,E> rhs ) const |
/= |
SafeInt<T,E>& operator/= (SafeInt<T,E> i) |
/= |
template<typename U> SafeInt<T,E>& operator/= (U i) |
/= |
template<typename U> SafeInt<T,E>& operator/= (SafeInt<U, E> i) |
+ |
SafeInt<T,E> operator+ (SafeInt<T,E> rhs) const |
+ |
template<typename U> SafeInt<T,E> operator+ (U rhs) const |
+= |
SafeInt<T,E>& operator+= (SafeInt<T,E> rhs) |
+= |
template<typename U> SafeInt<T,E>& operator+= (U rhs) |
+= |
template<typename U> SafeInt<T,E>& operator+= (SafeInt<U, E> rhs) |
- |
template<typename U> SafeInt<T,E> operator- (U rhs) const |
- |
SafeInt<T,E> operator- (SafeInt<T,E> rhs) const |
-= |
SafeInt<T,E>& operator-= (SafeInt<T,E> rhs) |
-= |
template<typename U> SafeInt<T,E>& operator-= (U rhs) |
-= |
template<typename U> SafeInt<T,E>& operator-= (SafeInt<U, E> rhs) |
論理演算子
[名前] |
構文 |
---|---|
! |
bool operator !() const throw() |
~ |
SafeInt<T,E> operator~ () const throw() |
<< |
template<typename U> SafeInt<T,E> operator<< (U bits) const throw() |
<< |
template<typename U> SafeInt<T,E> operator<< (SafeInt<U, E> bits) const throw() |
<<= |
template<typename U> SafeInt<T,E>& operator<<= (U bits) throw() |
<<= |
template<typename U> SafeInt<T,E>& operator<<= (SafeInt<U, E> bits) throw() |
>> |
template<typename U> SafeInt<T,E> operator>> (U bits) const throw() |
>> |
template<typename U> SafeInt<T,E> operator>> (SafeInt<U, E> bits) const throw() |
>>= |
template<typename U> SafeInt<T,E>& operator>>= (U bits) throw() |
>>= |
template<typename U> SafeInt<T,E>& operator>>= (SafeInt<U, E> bits) throw() |
& |
SafeInt<T,E> operator& (SafeInt<T,E> rhs) const throw() |
& |
template<typename U> SafeInt<T,E> operator& (U rhs) const throw() |
&= |
SafeInt<T,E>& operator&= (SafeInt<T,E> rhs) throw() |
&= |
template<typename U> SafeInt<T,E>& operator&= (U rhs) throw() |
&= |
template<typename U> SafeInt<T,E>& operator&= (SafeInt<U, E> rhs) throw() |
^ |
SafeInt<T,E> operator^ (SafeInt<T,E> rhs) const throw() |
^ |
template<typename U> SafeInt<T,E> operator^ (U rhs) const throw() |
^= |
SafeInt<T,E>& operator^= (SafeInt<T,E> rhs) throw() |
^= |
template<typename U> SafeInt<T,E>& operator^= (U rhs) throw() |
^= |
template<typename U> SafeInt<T,E>& operator^= (SafeInt<U, E> rhs) throw() |
| |
SafeInt<T,E> operator| (SafeInt<T,E> rhs) const throw() |
| |
template<typename U> SafeInt<T,E> operator| (U rhs) const throw() |
|= |
SafeInt<T,E>& operator|= (SafeInt<T,E> rhs) throw() |
|= |
template<typename U> SafeInt<T,E>& operator|= (U rhs) throw() |
|= |
template<typename U> SafeInt<T,E>& operator|= (SafeInt<U, E> rhs) throw() |
解説
SafeInt クラスを使用することで、数値演算での整数オーバーフローを防止できます。 たとえば、2 つの 8 ビット整数を追加します。1 つの値は 200 で、2 番目の値は 100 です。 正しい数値演算は 200 + 100 = 300 です。 ところが、8 ビット整数の制限により上位ビットが削除されるため、コンパイラが返す結果は 44 (300 - 28) になります。 この数式に依存する演算を使用した場合、常に予期しない動作が発生します。
SafeInt クラスは、算術オーバーフローが発生するかどうか、またはコードで 0 除算が試行されるかどうかを検証します。 どちらの場合においても、このクラスは、エラー ハンドラーを呼び出し、問題が発生する可能性があることをプログラムに警告します。
また、このクラスを使用することで、型の異なる 2 つの整数が SafeInt オブジェクトである限り、その 2 つの整数を比較することができます。 通常、比較を行う際には、最初に数値を同じ型に変換する必要があります。 多くの場合、ある数値を別の型の数値と比較する際、データの損失がないかどうかを確認する必要があります。
このトピックの演算子の一覧に、SafeInt クラスでサポートされる数値演算子と比較演算子を示しています。 ほとんどの数値演算子は、T 型の SafeInt オブジェクトを返します。
SafeInt と整数型の比較演算は、どちらの方向にも実行することができます。 たとえば、SafeInt<int>(x) < y と y > SafeInt<int>(x) はどちらも有効であり、同じ結果が返されます。
2 つの異なる SafeInt 型を使用することは、ほとんどの二項演算子においてサポートされていません。 この例の 1 つとして、& 演算子があります。 SafeInt<T, E> & int はサポートされていますが、SafeInt<T, E> & SafeInt<U, E> はサポートされていません。 2 番目の例の場合、コンパイラが返されるパラメーターの型を判別できないためです。 この問題を解決する方法の 1 つとして、2 番目のパラメーターを基本型にキャストできます。 同じパラメーターを使用してこれを行うには、SafeInt<T, E> & (U)SafeInt<U, E> を使用します。
注意
ビットごとの演算を実行するには、2 つの異なるパラメーターのサイズが同じであることが必要です。 サイズが異なる場合、コンパイラは ASSERT (MFC) 例外をスローします。 この演算の結果は、正確性が保証されません。 この問題を解決するには、小さい方のパラメーターが大きい方のパラメーターと同じサイズになるまで、小さい方のパラメーターをキャストします。
シフト演算子の場合、テンプレートの型に存在するビットよりも多くのビットをシフトすると、ASSERT 例外がスローされます。 リリース モードでは、これによる影響はありません。 シフト演算子の場合、戻り値の型が元の型と同じであるため、2 種類の型の SafeInt パラメーターを組み合わせることができます。 演算子の右側の数値は、シフトするビット数を示すのみです。
SafeInt オブジェクトで論理比較を実行するとき、厳密に算術的な比較が実行されます。 たとえば、次の式について考えてみます。
SafeInt<uint>((uint)~0) > -1
((uint)~0) > -1
1 番目のステートメントは true に解決されますが、2 番目のステートメントは false に解決されます。 0 のビットごとの否定は 0xFFFFFFFF です。 2 番目のステートメントでは、既定の比較演算子により 0xFFFFFFFF と 0xFFFFFFFF が比較され、この 2 つが等しいと判断されます。 SafeInt クラスの比較演算子によって、1 番目のパラメーターが符号なしであるのに対し、2 番目のパラメーターが負の値であることが判明します。 そのため、ビット表現が同一であっても、SafeInt の論理演算子によって、符号なし整数が -1 より大きいことがわかります。
SafeInt クラスを ?: 三項演算子と同時に使用する際には注意が必要です。 次のコード行があるとします。
Int x = flag ? SafeInt<unsigned int>(y) : -1;
コンパイラはこのコード行を次のように変換します。
Int x = flag ? SafeInt<unsigned int>(y) : SafeInt<unsigned int>(-1);
flag が false の場合、コンパイラは x に値 -1 を代入する代わりに例外をスローします。 このような動作を回避するための正しいコードは次のとおりです。
Int x = flag ? (int) SafeInt<unsigned int>(y) : -1;
T と U には、ブール型、文字型、または整数型を割り当てることができます。 整数型は、signed 型であるか unsigned 型であるかを問わず、8 ~ 64 ビットまでの任意のサイズに設定できます。
注意
SafeInt クラスでは任意の種類の整数を使用できますが、unsigned 型の方が効率的に実行できます。
E は、SafeInt で使用されるエラー処理機能です。 SafeInt ライブラリには 2 つのエラー処理機能が用意されています。 既定のポリシーは SafeIntErrorPolicy_SafeIntException であり、エラー発生時に SafeIntException クラス例外をスローします。 もう一方のポリシーは SafeIntErrorPolicy_InvalidParameter であり、エラー発生時にプログラムを停止します。
エラー ポリシーをカスタマイズする方法は、2 つあります。 1 つは、SafeInt を作成する際に E パラメーターを設定する方法です。 この方法は、1 つの SafeInt のみに対してエラー処理ポリシーを変更する場合に使用します。 もう 1 つは、SafeInt ライブラリを含める前に、カスタマイズしたエラー処理クラスとして _SAFEINT_DEFAULT_ERROR_POLICY を定義する方法です。 この方法は、コード内のすべての SafeInt クラス インスタンスに対して既定のエラー処理ポリシーを変更する場合に使用します。
注意
SafeInt ライブラリのエラーを処理するカスタマイズ クラスがエラー ハンドラーを呼び出したコードに制御を返さないようにしてください。 エラー ハンドラーが呼び出された後では、SafeInt 操作の結果は信頼できません。
必要条件
**ヘッダー:**safeint.h
**Namespace:**msl::utilities