拡張 DLL の初期化
拡張 DLL には、CWinApp 派生オブジェクトがないため、MFC DLL ウィザード が生成する DllMain 関数に対する初期化コードと終了コードを追加する必要があります。
ウィザードは、拡張 DLL 用に次のコードを提供します。 次のコードにある PROJNAME は、プロジェクト名のプレースホルダーです。
#include "stdafx.h"
#include <afxdllx.h>
#ifdef _DEBUG
#define new DEBUG_NEW
#undef THIS_FILE
static char THIS_FILE[] = __FILE__;
#endif
static AFX_EXTENSION_MODULE PROJNAMEDLL = { NULL, NULL };
extern "C" int APIENTRY
DllMain(HINSTANCE hInstance, DWORD dwReason, LPVOID lpReserved)
{
if (dwReason == DLL_PROCESS_ATTACH)
{
TRACE0("PROJNAME.DLL Initializing!\n");
// Extension DLL one-time initialization
AfxInitExtensionModule(PROJNAMEDLL,
hInstance);
// Insert this DLL into the resource chain
new CDynLinkLibrary(Dll3DLL);
}
else if (dwReason == DLL_PROCESS_DETACH)
{
TRACE0("PROJNAME.DLL Terminating!\n");
}
return 1; // ok
}
初期化時に新しい CDynLinkLibrary オブジェクトを作成することによって、拡張 DLL は CRuntimeClass オブジェクトやリソースをクライアント アプリケーションにエクスポートできます。
拡張 DLL を 1 つ以上のレギュラー DLL から使う予定がある場合、CDynLinkLibrary オブジェクトを作成する初期化関数をエクスポートする必要があります。 初期化関数の呼び出しは、拡張 DLL を使う各レギュラー DLL から行います。 初期化関数の呼び出しに適した場所は、拡張 DLL のエクスポート クラスまたはエクスポート関数を使う前の、レギュラー DLL の CWinApp 派生オブジェクトの InitInstance メンバー関数の中です。
MFC DLL ウィザード が生成する DllMain では、CDynLinkLibrary が作成されたときのために、AfxInitExtensionModule を呼び出すと、オブジェクト ファクトリ (COleObjectFactory オブジェクト) とモジュールのランタイム クラス (CRuntimeClass 構造体) がキャプチャされます。 また、AfxInitExtensionModule の戻り値を調べる必要があります。AfxInitExtensionModule から値 0 が返されると、DllMain 関数から 0 を返します。
拡張 DLL が実行形式と明示的にリンクされる場合 (つまり、実行形式が AfxLoadLibrary を呼び出して DLL にリンクする場合)、DLL_PROCESS_DETACH には AfxTermExtensionModule の呼び出しを追加する必要があります。 MFC はこの関数を使って、各プロセスが拡張 DLL からデタッチするときに、拡張 DLL をクリアします。プロセスのデタッチは、AfxFreeLibrary によって DLL がアンロードされるときか、プロセスが終了するときに発生します。 拡張 DLL がアプリケーションと暗黙的にリンクされる場合、AfxTermExtensionModule への呼び出しは不要です。
DLL と明示的にリンクするアプリケーションは、DLL を解放する時点で AfxTermExtensionModule を呼び出す必要があります。 また、これらのアプリケーションが複数のスレッドを使う場合は、Win32 関数の LoadLibrary と FreeLibrary ではなく、AfxLoadLibrary と AfxFreeLibrary を使います。 AfxLoadLibrary と AfxFreeLibrary を使用することによって、拡張 DLL の読み込みまたはアンロード時に実行されるスタートアップ コードと終了コードが、グローバルな MFC の状態を破損するのを防ぎます。
16 ビット版の MFC とは異なり、DllMain が呼び出される時点までに MFCx0.dll は完全に初期化されているので、DllMain でメモリの割り当てや MFC 関数の呼び出しを行うことができます。
拡張 DLL は、DllMain 関数内で DLL_THREAD_ATTACH と DLL_THREAD_DETACH の分岐を処理することによって、マルチスレッドを扱うことができます。 これらの分岐は、スレッドと DLL のアタッチ/デタッチ時に DllMain に渡されます。 DLL のアタッチ時に TlsAlloc を呼び出すことによって、DLL は、アタッチされる各スレッドの TLS (スレッド ローカル ストレージ) インデックスを管理します。
ヘッダー ファイル Afxdllx.h には、AFX_EXTENSION_MODULE や CDynLinkLibrary などの拡張 DLL で使われる構造体の特別な定義が含まれています。 このヘッダー ファイルを拡張 DLL にインクルードする必要があります。
注意
Stdafx.h 内の _AFX_NO_XXX マクロについては、定義/定義解除を行わないことが重要です。 詳細については、サポート技術情報の「PRB: Problems Occur When Defining _AFX_NO_XXX (Q140751)」を参照してください。 サポート技術情報の文書は、MSDN ライブラリまたは https://support.microsoft.com/ で参照できます。
マルチスレッドを処理する初期化関数のサンプルは、Windows SDK の「Using Thread Local Storage in a Dynamic-Link Library」に含まれています。 このサンプルでは、LibMain というエントリ ポイント関数が使われていますが、MFC および C ランタイム ライブラリで実行するためには、この関数を DllMain と置き換える必要があります。
MFC のサンプル DLLHUSK では、初期化関数の使い方が説明されています。