Excel オブジェクトモデルの概要

[アーティクル]
04/28/2010

更新 : 2007 年 11 月

対象
このトピックの情報は、指定された Visual Studio Tools for Office プロジェクトおよび Microsoft Office のバージョンにのみ適用されます。プロジェクトの種類ドキュメントレベルのプロジェクトアプリケーションレベルのプロジェクト Microsoft Office のバージョン Excel 2003 Excel 2007 詳細については、「アプリケーションおよびプロジェクトの種類別の使用可能な機能」を参照してください。

このトピックの情報は、指定された Visual Studio Tools for Office プロジェクトおよび Microsoft Office のバージョンにのみ適用されます。

プロジェクトの種類

ドキュメントレベルのプロジェクト
アプリケーションレベルのプロジェクト

Microsoft Office のバージョン

Excel 2003
Excel 2007

詳細については、「アプリケーションおよびプロジェクトの種類別の使用可能な機能」を参照してください。

Microsoft Office Excel を使用したソリューションを開発するには、Excel オブジェクトモデルで提供されるオブジェクトを操作する必要があります。ここでは、最も重要な次のクラスについて説明します。

オブジェクトモデルは、ユーザーインターフェイスとほとんど同じです。Application オブジェクトはアプリケーション全体を表し、Workbook オブジェクトにはそれぞれ Worksheet オブジェクトのコレクションが含まれています。その中でも、セルを表す主要な抽象層は Range オブジェクトです。このオブジェクトを使用して、個々のセルまたはセルのグループを操作できます。

Visual Studio Tools for Office では、これらのネイティブなオブジェクトの多くをホスト項目とホストコントロールに拡張し、ドキュメントレベルのカスタマイズで使用することができます。これらのコントロールは、データバインディング機能やイベントなどの追加機能を備えています。たとえば、ネイティブな Excel の Microsoft.Office.Interop.Excel.Range オブジェクトを Microsoft.Office.Tools.Excel.NamedRange コントロールに拡張すると、データにバインドしたり、イベントを公開したりできるようになります。ホスト項目とホストコントロールの詳細については、「ドキュメントレベルのプロジェクト内の拡張されたオブジェクト」を参照してください。

ここでは、Excel オブジェクトモデルの概要を簡単に説明します。Excel オブジェクトモデル全体への理解を深めるのに役立つ資料については、「Excel オブジェクトモデルドキュメントの使用」を参照してください。

Excel プロジェクトのオブジェクトへのアクセス

Visual Studio Tools for Office を使用して Excel 用のアプリケーションレベルのプロジェクトを新しく作成すると、Visual Studio によって ThisAddIn.vb または ThisAddIn.cs というコードファイルが自動的に作成されます。アプリケーションオブジェクトにアクセスするには、Me.Application または this.Application を使用できます。

Visual Studio Tools for Office を使用して Excel 用のドキュメントレベルのプロジェクトを新しく作成する場合は、Excel ブックプロジェクトまたは Excel テンプレートプロジェクトのどちらを新しく作成するかを選択できます。ドキュメントプロジェクトとテンプレートプロジェクトのどちらを作成した場合も、Visual Studio Tools for Office によって自動的に新しい Excel プロジェクトに次のコードファイルが作成されます。

Visual Basic	C#
ThisWorkbook.vb	ThisWorkbook.cs
Sheet1.vb	Sheet1.cs
Sheet2.vb	Sheet2.cs
Sheet3.vb	Sheet3.cs

グローバルクラスの Globals を使用して、各クラスの外部から ThisWorkbook、Sheet1、Sheet2、または Sheet3 にアクセスできます。詳細については、「Visual Studio Tools for Office プロジェクト内のオブジェクトへのグローバルアクセス」を参照してください。次の例では、コードが Sheet クラスまたは Workbook クラスのどちらに含まれていても、Sheet1 の PrintPreview メソッドが呼び出されます。

Globals.Sheet1.PrintPreview()

Globals.Sheet1.PrintPreview(missing);

Excel ドキュメントのデータは高度に構造化されているため、オブジェクトモデルは階層的で単純明快です。Excel には、操作可能なオブジェクトが多数用意されていますが、使用できるオブジェクトのうち、非常に小さいサブセットに焦点を絞ることで、オブジェクトモデルを理解しやすくなります。これらのオブジェクトには、次の 4 つが含まれます。

アプリケーション
ブック
ワークシート
範囲

Excel に対して行うほとんどの作業では、これらの 4 つのクラスとそのメンバを使用します。

Application オブジェクト

Excel の Application オブジェクトは、Excel アプリケーション自体を表します。Application オブジェクトは、実行中のアプリケーション、そのインスタンスに適用されるオプション、およびインスタンス内で開いている現在のユーザーオブジェクトに関する多くの情報を公開します。

メモ :
Excel の Application オブジェクトの EnableEvents プロパティを false に設定しないでください。false に設定すると、Excel でイベント (ホストコントロールのイベントなど) が生成されなくなります。

Workbook オブジェクト

Microsoft.Office.Interop.Excel.Workbook クラスは、Excel アプリケーション内の 1 つのブックを表します。

Visual Studio Tools for Office に用意された Microsoft.Office.Tools.Excel.Workbook クラスによって Microsoft.Office.Interop.Excel.Workbook クラスが拡張されます。これにより、データバインディング機能や追加のイベントに加え、Workbooks コレクションのすべてのメンバにアクセスできます。

Worksheet オブジェクト

Microsoft.Office.Interop.Excel.Worksheet オブジェクトは、Worksheets コレクションのメンバです。Microsoft.Office.Interop.Excel.Worksheet オブジェクトのプロパティ、メソッド、およびイベントの大半は、Application クラスや Microsoft.Office.Interop.Excel.Workbook クラスが提供するメンバとまったく同じか、または同様のものです。

Excel には、Microsoft.Office.Interop.Excel.Workbook オブジェクトのプロパティとして Sheets コレクションが用意されていますが、Sheet クラスはありません。Sheets コレクションの各メンバは、Microsoft.Office.Interop.Excel.Worksheet オブジェクトと Microsoft.Office.Interop.Excel.Chart オブジェクトのいずれかです。

ドキュメントレベルのカスタマイズには、Visual Studio Tools for Office によって Microsoft.Office.Tools.Excel.Worksheet ホスト項目が提供され、Sheet1、Sheet2、Sheet3 という 3 つのインスタンスが新しいプロジェクト内に作成されます。シートへのアクセスは Globals 参照によって行います。Visual Studio Tools for Office は Microsoft.Office.Interop.Excel.Worksheet オブジェクトを拡張して、Microsoft.Office.Tools.Excel.Worksheet ホスト項目を提供します。

Range オブジェクト

Microsoft.Office.Interop.Excel.Range オブジェクトは、Excel アプリケーション内で最も使用されるオブジェクトです。Excel 内の任意の範囲を操作するには、まず、目的の範囲を Range オブジェクトとして表現し、その範囲のメソッドとプロパティを操作する必要があります。Range オブジェクトは、セル、行、列、1 つ以上のセルのブロックを含むセルの選択範囲 (連続または非連続)、または複数のシートにまたがるセルのグループを表します。

ドキュメントレベルのカスタマイズについては、Visual Studio Tools for Office に Microsoft.Office.Tools.Excel.NamedRange と Microsoft.Office.Tools.Excel.XmlMappedRange という 2 つの範囲ホストコントロールが導入されています。ホストコントロールの詳細については、「ホスト項目とホストコントロールの概要」を参照してください。

ドキュメントレベルのプロジェクト内の拡張されたオブジェクト

Excel オブジェクトモデルによって提供されるネイティブオブジェクトと、Visual Studio Tools for Office によって提供される拡張されたオブジェクト (ホスト項目やホストコントロール) との違いを理解することは重要です。どちらのオブジェクトもドキュメントレベルのプロジェクトで使用できます。

相違点は、次の 4 つに分類されます。

デザイン時。拡張された Excel オブジェクトをデザイン時に追加すると、ホスト項目およびホストコントロールとして自動的に作成されます。たとえば、デザイナでワークシートにリストを追加した場合、コードが自動的に生成されて、リストが Microsoft.Office.Tools.Excel.ListObject コントロールに拡張されます。
実行時。ホスト項目は実行時には自動的に作成されません。ブック、ワークシート、またはグラフシートを実行時に追加した場合、これらはネイティブな Excel オブジェクトであり、ホスト項目で提供される追加の機能は備わっていません。ホストコントロールの大半はプログラムによって追加できます。詳細については、「ホスト項目とホストコントロールの概要」を参照してください。
データバインディングとイベント。ホスト項目およびホストコントロールは、ネイティブオブジェクトが持っていないデータバインディング機能およびイベントを備えています。
型。ネイティブな Excel オブジェクトは、Microsoft.Office.Interop.Excel の名前空間で定義された型を使用します。ホスト項目とホストコントロールは、Microsoft.Office.Tools.Excel の名前空間で定義された集約型を使用します。

Excel オブジェクトモデルドキュメントの使用

Excel オブジェクトモデルで使用できるクラスの詳細については、以下のドキュメントを参照してください。

最初のリンク先では、Excel のプライマリ相互運用機能アセンブリのクラスやインターフェイスに関する情報を提供しています。その他のリンク先では、Visual Basic for Applications (VBA) コードに公開される Excel オブジェクトモデルに関する情報を提供しています。Visual Studio Tools for Office を使用している開発者にとって、各資料には一長一短があります。

プライマリ相互運用機能アセンブリのリファレンス

この資料には、Visual Studio Tools for Office プロジェクトで使用できる、Excel のプライマリ相互運用機能アセンブリにあるすべての型についての説明が記載されています。ただし、この資料には次のようなデメリットがあります。

説明で取り上げられているのは、Excel 2003 のプライマリ相互運用機能アセンブリの型だけです。Excel 2007 のプライマリ相互運用機能アセンブリで導入された新しい型やメンバについては、Excel 2007 用の VBA リファレンスを参照する必要があります。
現時点では、コード例は提供されていません。

VBA リファレンス

VBA リファレンス内のオブジェクトとメンバはすべて、Visual Studio Tools for Office プロジェクトで使用するプライマリ相互運用機能アセンブリのクラスとメンバに対応します。たとえば、Excel VBA ドキュメントに記載されている Worksheet オブジェクトは、プライマリ相互運用機能アセンブリの Microsoft.Office.Interop.Excel.Worksheet クラスに相当します。

VBA リファレンスには、次のようなメリットがあります。