クエリ式の基本 (C# プログラミングガイド)

[アーティクル]
10/10/2008

更新 : 2007 年 11 月

クエリの機能と処理内容

クエリは、特定のデータソースから取得するデータ、および返されるデータの形状と構成を記述する一連の命令です。クエリは、生成される結果とは区別されるものです。

通常、ソースデータは同じ種類の要素のシーケンスとして論理的に編成されます。SQL データベーステーブルには行のシーケンスが格納されます。同様に、ADO.NETDataTable には DataRow オブジェクトのシーケンスが格納されます。XML ファイルには、XML 要素の "シーケンス" があります (ただし、これらの XML 要素はツリー構造で階層として編成されます)。インメモリコレクションにはオブジェクトのシーケンスが格納されます。

アプリケーションの視点からは、元のソースデータの種類と構成は重要ではありません。アプリケーションは、常にソースデータを IEnumerable<T> コレクションまたは IQueryable<T> コレクションと見なします。LINQ to XML では、ソースデータは IEnumerable<XElement> として表示されます。LINQ to DataSet では、IEnumerable<DataRow> になります。LINQ to SQL では、SQL テーブル内のデータを表すために定義したカスタムオブジェクトの IEnumerable または IQueryable になります。

このソースシーケンスにより、クエリは次の 3 つのいずれかの処理を実行できます。

要素のサブセットを取得し、個別の要素を変更せずに新しいシーケンスを生成します。次の例に示すように、クエリは返されたシーケンスをさまざまな方法で並べ替えまたはグループ化できます (scores は int[] であると想定しています)。
```
IEnumerable<int> highScoresQuery =
    from score in scores
    where score > 80
    orderby score descending
    select score;
```
前の例のように要素のシーケンスを取得しますが、それらを新しい種類のオブジェクトに変換します。たとえば、クエリはデータソース内の特定の顧客レコードから姓だけを取得できます。完全なレコードを取得し、そのレコードを使用して別のインメモリオブジェクトの種類を作成したり、最終的な結果シーケンスを生成する前に XML データを作成したりすることもできます。int から string への変換の例を次に示します。新しい種類の highScoresQuery に注意してください。
```
IEnumerable<string> highScoresQuery2 =
    from score in scores
    where score > 80
    orderby score descending
    select String.Format("The score is {0}", score);
```
次のような、ソースデータに関するシングルトン値を取得します。
- 特定の条件に一致する要素の数。
- 最大値または最小値を持つ要素。
- 条件に一致する最初の要素、または指定した一連の要素内の特定の値の合計。たとえば、次のクエリは scores 整数配列から 80 を超える得点の数を返します。
```
int highScoreCount =
    (from score in scores
     where score > 80
     select score)
     .Count();
```
前の例では、Count メソッドの呼び出しの前に、クエリ式をかっこで囲んでいました。これは、具体的な結果を格納する新しい変数を使用して表すこともできます。この方法は、クエリを格納する変数と結果を格納するクエリを区別できるため、読みやすくなります。
```
IEnumerable<int> highScoresQuery3 =
    from score in scores
    where score > 80
    select score;

int scoreCount = highScoresQuery3.Count();
```

前の例では、クエリは Count の呼び出しで実行されます。これは、highScoresQuery で返される要素の数を判断するために、Count は結果を反復処理する必要があるためです。

クエリ式とは

クエリ式は、クエリ構文で表されるクエリです。クエリ式は最上位の言語構成要素です。クエリ式は他の式と同じであり、C# 式が有効なすべてのコンテキストで使用できます。クエリ式は、SQL または XQuery に似た宣言構文で記述された一連の句で構成されます。各句には 1 つ以上の C# 式が含まれ、これらの式自体がクエリ式になるか、クエリ式を含みます。

クエリ式は from 句で始まり、最後には select 句または group 句を指定する必要があります。最初の from 句と最後の select 句または group 句の間には、1 つ以上のオプションの句として、where、orderby、join、let、および追加の from の各句を含めることができます。into キーワードを使用して、join 句または group 句の結果を有効にし、同じクエリ式内の別のクエリ句のソースとして使用することもできます。

クエリ変数

LINQ では、クエリ変数は、クエリの結果ではなくクエリを格納する変数です。具体的には、クエリ変数は常に列挙型で、foreach ステートメントまたは IEnumerator.MoveNext メソッドの直接呼び出しで反復処理されるときに要素のシーケンスを生成します。

1 つのデータソース、1 つのフィルタ処理句、および 1 つの並べ替え句があり、ソース要素の変換は行われない単純なクエリを次のコード例に示します。select 句によりクエリが終了します。

static void Main()
{
    // Data source.
    int[] scores = { 90, 71, 82, 93, 75, 82 };

    // Query Expression.
    IEnumerable<int> scoreQuery = //query variable
        from score in scores //required
        where score > 80 // optional
        orderby score descending // optional
        select score; //must end with select or group

    // Execute the query to produce the results
    foreach (int testScore in scoreQuery)
    {
        Console.WriteLine(testScore);
    }                  
}
// Outputs: 90 82 93 82

前の例では、scoreQuery はクエリ変数です。単にクエリと呼ばれることもあります。クエリ変数には、foreach ループで生成される実際の結果データは格納されません。foreach ステートメントを実行すると、クエリ変数 scoreQuery ではクエリ結果は返されません。クエリ結果は反復変数 testScore で返されます。scoreQuery 変数は、2 番目の foreach ループで反復処理できます。変数またはデータソースが変更されない限り、同じ結果が生成されます。

クエリ変数には、クエリ構文またはメソッド構文で表されるクエリ、またはその 2 つの組み合わせを格納できます。次の例では、queryMajorCities と queryMajorCities2 はどちらもクエリ変数です。

//Query syntax
IEnumerable<City> queryMajorCities =
    from city in cities
    where city.Population > 100000
    select city;


// Method-based syntax
IEnumerable<City> queryMajorCities2 = cities.Where(c => c.Population > 100000);

一方、クエリで初期化されても、クエリ変数ではない変数を次の 2 つの例に示します。これらの変数は結果を格納するため、クエリ変数ではありません。

int highestScore =
    (from score in scores
     select score)
    .Max();

// or split the expression
IEnumerable<int> scoreQuery =
    from score in scores
    select score;

int highScore = scoreQuery.Max();

IEnumerable<City> largeCityList =
    (from country in countries
     from city in country.Cities
        where city.Population > 10000
        select city)
       .ToList();

// or split the expression
IEnumerable<City> largeCityList2 =
    from country in countries
     from city in country.Cities
     where city.Population > 10000
     select city;

List<City> largeCities = largeCityList2.ToList();

メモ :
LINQ のマニュアルでは、クエリを格納する変数にはその名前の一部として "query" という単語が含まれています。実際の結果を格納する変数には、名前に "query" はありません。

クエリを表すさまざまな方法の詳細については、「クエリ構文とメソッド構文 (LINQ)」を参照してください。

クエリ変数の明示的および暗黙的な型指定

通常、このドキュメントでは、クエリ変数と select 句の間の型の関係を示すために、明示的な型のクエリ変数を使用します。ただし、var キーワードを使用して、コンパイル時にクエリ変数 (またはその他のローカル変数) の型を推論するようにコンパイラに指示することもできます。たとえば、このトピックで示したクエリの例を、暗黙的な型指定を使用して表すこともできます。

// Use of var is optional here and in all queries.
// queryCities is an IEnumerable<City> just as 
// when it is explicitly typed.
var queryCities =
    from city in cities
    where city.Population > 100000
    select city;

詳細については、「暗黙的に型指定されるローカル変数 (C# プログラミングガイド)」および「クエリ操作での型の関係 (LINQ)」を参照してください。

クエリ式の開始

クエリ式は、from 句で始める必要があります。クエリ式は、範囲変数と共にデータソースを指定します。範囲変数は、ソースシーケンスが走査されているときに、ソースシーケンス内の後続の各要素を表します。範囲変数は、データソース内の要素の型に基づいて厳密に型指定されます。次の例では、countries は Country オブジェクトの配列であるため、範囲変数は Country としても型指定されます。範囲変数は厳密に型指定されるため、ドット演算子を使用して型の使用可能なメンバにアクセスできます。

IEnumerable<Country> countryAreaQuery =
    from country in countries
    where country.Area > 500000 //sq km
    select country;

範囲変数は、クエリがセミコロンまたは継続句で終了するまでスコープ内に存在します。

クエリ式には複数の from 句を含めることもできます。ソースシーケンス内の各要素自体がコレクションの場合、またはコレクションを含む場合、追加の from 句を使用します。たとえば、Country オブジェクトのコレクションがあり、それぞれに Cities という名前の City オブジェクトのコレクションが含まれるとします。各 Country 内の City オブジェクトを照会するには、次に示すように 2 つの from 句を使用します。

IEnumerable<City> cityQuery =
    from country in countries
    from city in country.Cities
    where city.Population > 10000
    select city;

詳細については、「from 句 (C# リファレンス)」を参照してください。

クエリ式の終了

クエリ式の末尾は select 句または group 句とする必要があります。

group 句

指定したキー別に構成されるグループのシーケンスを生成するには、group 句を使用します。キーには任意のデータ型を指定できます。たとえば、次のクエリは 1 つ以上の Country オブジェクトを含み、キーが文字列値のグループのシーケンスを作成します。

var queryCountryGroups =
    from country in countries
    group country by country.Name[0];

グループ化の詳細については、「group 句 (C# リファレンス)」を参照してください。

select 句

その他のすべての種類のシーケンスを生成するには、select 句を使用します。単純な select 句は、データソースに含まれるオブジェクトと同じ種類のオブジェクトのシーケンスを生成します。この例では、データソースには Country オブジェクトが含まれます。orderby 句は要素を新しい順序に並べ替え、select 句は並べ替えられた Country オブジェクトのシーケンスを生成します。

IEnumerable<Country> sortedQuery =
    from country in countries
    orderby country.Area
    select country;

select 句を使用すると、ソースデータを新しい種類のシーケンスに変換できます。この変換は射影と呼ばれることもあります。次の例では、select 句は、元の要素内のフィールドのサブセットのみを含む匿名型のシーケンスを射影します。新しいオブジェクトは、オブジェクト初期化子を使用して初期化されます。

// Here var is required because the query
// produces an anonymous type.
var queryNameAndPop =
    from country in countries
    select new { Name = country.Name, Pop = country.Population };

select 句を使用してソースデータを変換するすべての方法の詳細については、「select 句 (C# リファレンス)」を参照してください。

"into" を使用した継続

select 句または group 句で into キーワードを使用すると、クエリを格納する一時識別子を作成できます。これは、グループ化または選択操作の後に、クエリで追加のクエリ操作を実行する必要がある場合に行います。次の例では、1000 万の範囲内の人口に従って countries がグループ化されます。これらのグループが作成された後、追加の句を使用して一部のグループを除外し、グループを昇順で並べ替えます。この追加操作を実行するには、countryGroup で表される継続が必要です。

// percentileQuery is an IEnumerable<IGrouping<int, Country>>
var percentileQuery =
    from country in countries
    let percentile = (int) country.Population / 10000000
    group country by percentile into countryGroup
    where countryGroup.Key >= 20
    orderby countryGroup.Key
    select countryGroup;

// grouping is an IGrouping<int, Country>
foreach (var grouping in percentileQuery)
{
    Console.WriteLine(grouping.Key);
    foreach (var country in grouping)
        Console.WriteLine(country.Name + ":" + country.Population);
}

詳細については、「into (C# リファレンス)」を参照してください。

フィルタ処理、並べ替え、および結合

先頭の from 句と末尾の select 句または group 句の間では、その他の句 (where、join、orderby、from、let) はすべて省略可能です。省略可能な句は、クエリ本文でゼロ回または複数回使用できます。

where 句

1 つ以上の述語式に基づいてソースデータから要素を除外するには、where 句を使用します。次の例の where 句には、2 つの述語があります。

IEnumerable<City> queryCityPop =
    from city in cities
    where city.Population < 200000 && city.Population > 100000
    select city;

詳細については、「where 句 (C# リファレンス)」を参照してください。

orderby 句

結果を昇順または降順で並べ替えるには、orderby 句を使用します。2 番目の並べ替えを指定することもできます。Area プロパティを使用して country オブジェクトで 1 番目の並べ替えを実行する例を次に示します。次に、Population プロパティを使用して 2 番目の並べ替えを実行します。

IEnumerable<Country> querySortedCountries =
    from country in countries
    orderby country.Area > 500000, country.Population descending
    select country;

ascending キーワードは省略可能です。順序を指定しないと、昇順が既定の並べ替え順序になります。詳細については、「orderby 句 (C# リファレンス)」を参照してください。

join 句

各要素内の指定されたキーの間の等価比較に基づいて、あるデータソースの要素と別のデータソースの要素を関連付けるか、または結合するには、join 句を使用します。LINQ では、結合操作は要素の型が異なるオブジェクトのシーケンスで実行されます。2 つのシーケンスを結合した後、select ステートメントまたは group ステートメントを使用して、出力シーケンスに格納される要素を指定する必要があります。匿名型を使用して、関連する要素の各セットのプロパティを出力シーケンスの新しい型に結合することもできます。Category プロパティが categories 文字列配列内のカテゴリの 1 つと一致する prod オブジェクトを関連付ける例を次に示します。Category が categories 内の文字列と一致しない製品は除外されます。select ステートメントは、プロパティが cat と prod の両方から取得される新しい型を射影します。

var categoryQuery =
    from cat in categories
    join prod in products on cat equals prod.Category
    select new { Category = cat, Name = prod.Name };

into キーワードを使用して、join 操作の結果を一時変数に格納することで、グループ結合を実行することもできます。詳細については、「join 句 (C# リファレンス)」を参照してください。

let 句

新しい範囲変数でのメソッド呼び出しなど、式の結果を格納するには let 句を使用します。次の例では、範囲変数 s には、Split によって返される文字列配列の最初の要素が格納されます。

string[] names = { "Svetlana Omelchenko", "Claire O'Donnell", "Sven Mortensen", "Cesar Garcia" };
IEnumerable<string> queryFirstNames =
    from name in names
    let firstName = name.Split(new char[] { ' ' })[0]
    select firstName;

foreach (string s in queryFirstNames)
    Console.Write(s + " ");
//Output: Svetlana Claire Sven Cesar

詳細については、「let 句 (C# リファレンス)」を参照してください。

クエリ式内のサブクエリ

クエリ式自体にクエリ式を含めることができます。これは、サブクエリとも呼ばれます。各サブクエリは独自の from 句で始まります。これは、必ずしも最初の from 句の同じデータソースを指すとは限りません。たとえば、次のクエリは、グループ化操作の結果を取得するために select ステートメントで使用されるクエリ式を示しています。

var queryGroupMax =
    from student in students
    group student by student.GradeLevel into studentGroup
    select new
    {
        Level = studentGroup.Key,
        HighestScore =
            (from student2 in studentGroup
             select student2.Scores.Average())
             .Max()
    };

詳細については、「方法 : グループ化操作でサブクエリを実行する (C# プログラミングガイド)」を参照してください。

参照

次の方法で共有

クエリ式の基本 (C# プログラミングガイド)

クエリの機能と処理内容

クエリ式とは

クエリ変数

クエリ変数の明示的および暗黙的な型指定

クエリ式の開始

クエリ式の終了

group 句

select 句

"into" を使用した継続

フィルタ処理、並べ替え、および結合

where 句

orderby 句

join 句

let 句

クエリ式内のサブクエリ

参照

概念

参照

その他の技術情報

その他のリソース

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クエリ式とは

クエリ変数

クエリ変数の明示的および暗黙的な型指定

クエリ式の開始

クエリ式の終了

group 句

select 句

"into" を使用した継続

フィルタ処理、並べ替え、および結合

where 句

orderby 句

join 句

let 句

クエリ式内のサブクエリ

参照

概念

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