デバイスの DHCP の設定
トピックの最終更新日: 2012-06-21
内部通信を行うには、組織の DHCP サーバーで以下のオプションが設定されていることを確認します。詳細については、「展開」のドキュメントの「IP 電話へのサインインを有効にするための DHCP オプションの構成」を参照してください。
DHCP プロトコル (詳細については RFC 2131 を参照) では、さまざまなオプションを使用して情報をやりとりします。Lync Server の接続で使用されるオプションは次のとおりです。
オプション 120 (SIP サーバー) は RFC 3361 で定義されています。このオプションは、SIP サーバーのリストを返すために使用されます。
オプション 55 は、デバイスが DHCP サーバーに特定のオプション (ここでは 120 と 43) の値を要求するために使用されます。
オプション 60 は、オプション 43 が要求されているベンダーをクライアントが指定するために使用されます。
オプション 43 は、複雑なオプションです。このオプションには多くのサブオプションがあり、さまざまな値を設定できます。オプション 43 の有効な値、言い換えると DHCP サーバーがクライアントに送信する値は、ベンダー クラス ID によって異なります。したがって、ある意味でオプション 60 とオプション 43 の間には <キー, 値> の関係が存在します。オプション 60 で指定されたベンダーに対して、オプション 43 はそのベンダー用に構成された一連のサブオプションを提供します。
DHCP サーバーを使用する場合、次の 2 つの選択肢があります。
エンタープライズ DHCP サーバー
企業内で既に使用されていて、IP ディスカバリやその他のサービスを提供している DHCP サーバーです。これらは Windows DHCP サーバー (Windows Server の一部) の場合もあれば、Cisco などの他のベンダーの製品の場合もあります。このドキュメントでは、Windows DHCP サーバーの構成についてのみ説明します。
セントラル サイトを構成するときは、次の理由からエンタープライズ DHCP サーバーを使用することをお勧めします。
すべての Bootp リレー エージェントを再構成してパケットを新しいサーバーに中継する必要がありません。
Lync Server レジストラーに付属する DHCP サーバーを使用すると、不必要なパケットが追加の DHCP サーバーに送信されます。DHCP はアドレス取得プロセスに参加せず、この種のパケットは無視されます。
レジストラーを使用して DHCP サーバーを有効にすると、フロント エンド サーバーまたはディレクターの役割に対する負担が 1 つ増えます。これによって、パフォーマンスや中核となる機能に影響が生じる可能性があります。
レジストラーと DHCP サーバー
レジストラーには組み込みの DHCP コンポーネントがあり、DHCP ブロードキャストをリッスンして適切な DHCP INFORM パケットに応答できます。このコンポーネントの使用対象は、DHCP サーバーがなく、最小限のサーバー管理しか行わない非常に小規模なブランチです。DHCP コンポーネントは企業内の IP 取得プロセスに参加することも影響を与えることもなく、既存の DHCP サーバーと併用できます。このコンポーネントは、次の条件に当てはまる DHCP INFORM メッセージにのみ応答します。
ベンダー クラス ID = MS-UC-Client
オプション 120 または 43 を要求 (オプション 55 – パラメーター要求リストを使用)
ブランチ オフィスで、エンタープライズ DHCP サーバーがブランチ内にない場合は、次の理由から DHCP サーバーを実行するレジストラーが必要になります。
エンタープライズ DHCP サーバーがないと、ブランチではルーターの DHCP 機能を利用することになります。これらのルーターで DHCP オプションを構成することはまずできません。
ブランチの規模によっては、すべての統合コミュニケーション (UC) デバイスを同じサブネットに収めることができます。この場合は、中継を再構成する必要はありません。複数のサブネットがある場合でも、数はあまり多くないはずで、再構成にもそれほど手間はかからないと考えられます。
ベンダー固有の Lync Server DHCP オプションに合わせてエンタープライズ DHCP サーバーを構成し、展開するよりも、レジストラーの DHCP を有効にする方がはるかに容易です。
レジストラーの DHCP サーバーと静的 DNS を使用する
レジストラーの DHCP サーバーは、IP リースを付与しません。代わりに、Web サービス URL とレジストラーの完全修飾ドメイン名 (FQDN) のみを提供します。
レジストラーの DHCP サーバーは、Lync Server を実行するコンピューターが配置されているサブネットに展開することを強くお勧めします。これは、レジストラーの DHCP サーバーは IP アドレスを提供しませんが、前述の DHCP オプションを提供するからです。Lync Server を実行するコンピューターはこれらのオプションを利用する必要があるので、Lync Server ホスト コンピューターに静的 DNS を使用する場合は、Lync DHCP とエンタープライズ DHCP サーバーも展開する必要があります。
レジストラーの DHCP とエンタープライズ DHCP サーバーを使用する
レジストラーの DHCP サーバーは、Web サービス URL とレジストラーの FQDN をクライアントに提供します。この DHCP サーバーは既定では無効になっており、Lync Server 管理シェルで次のコマンドレットを実行して有効にすることができます。
set-CsRegistrarConfiguration –EnableDHCPServer $true
さらに、クライアントからのブロードキャスト パケットがレジストラーの DHCP サーバーに到達できるようにします。場合によっては、レジストラーの DHCP サーバーに DHCP パケットを転送するように DHCP リレー エージェントを構成する必要があります。
Lync デバイスに適切な値を割り当てるようにエンタープライズ DHCP サーバーを構成することもできます。これには、Lync Server ツールの DHCPUtil.exe が役立ちます。
DHCPUtil を使用して DHCP オプションを構成する
DHCPUtil.exe では、2 種類の DHCP サーバーがサポートされています。1 つは Windows Server で提供される Windows DHCP サーバーで、もう 1 つはレジストラーの DHCP サーバーです。
代わりに、それ以外の DHCP サーバーを使用して、Lync Server で必要なオプションを構成することもできますが、それらのサーバーでは DHCPUtil.exe を使用できません。その DHCP サーバーに付属する管理ツールを使用してオプションを構成する必要があります。
DHCPUtil では次のことができます。
オプション 120 および 43 の値を生成します。
DHCPConfigScript バッチ ファイルに加えて、Windows DHCP サーバーにオプション 120 および 43 を構成します。
DHCP サーバーの構成をテストします。
Lync Server に関連する Windows DHCP サーバー上の構成をクリーンアップします。
Lync Server には、64 ビット版の DHCPUtil のみが付属します。
ヒント: |
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32 ビット版の DHCP サーバーで DHCPUtil を使用するには、次の操作を行います。
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オプション 120 および 43 の値を生成するには、次の構文を使用します。
DHCPUtil –SipServer <フロント エンド サーバーの FQDN> [-WebServer <Web サーバーの FQDN> | -CertProvUrl <証明書配布サービスの URL>]
次の表で、各パラメーターとそれぞれの使用方法について説明します。
パラメーター | 値 | 使用方法 |
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SipServer |
特定のサイト内のメイン ディレクターまたはメイン フロント エンド プールの FQDN |
DHCP オプション 120 の値の生成に使用されます。たとえば、米国とシンガポールの 2 つのサイトがある企業では、米国のオプション 120 は米国サイトのディレクターまたはフロント エンド プールの FQDN である必要があります。シンガポール サイトのオプション 120 は、シンガポールのディレクターまたはフロント エンド プールの FQDN に設定されます。 |
WebServer |
Web サーバーの FQDN |
次のように DHCP オプション 43 の Web サーバーの URL の計算に使用されます。https://<FQDN>:443/CertProv/CertProvisioningService.svc これは Lync Server Web サーバーがサイトのメイン ディレクターと共に配置されていないか、フロント エンド プール内に配置されていないときに必要となります。Web トラフィックが SIP トラフィックとは別に負荷分散されているために、SIP サーバーと Web サーバーの FQDN が異なるロードバランサー構成でこのような配置になる場合があります。このパラメーターを指定しない場合は、–SipServer で指定した FQDN を使用してオプション 43 の値が計算されます。 このパラメーターは省略可能で、SipServer が指定されている場合にのみ使用されます。 |
CertProvUrl |
Lync Server 証明書サーバーの URL |
このパラメーターを WebServer パラメーターの代わりに使用して、証明書配布 Web サービスの完全な URL を指定できます。WebServer で使用される計算では適切な URL が得られないときに役立ちます。 このパラメーターは省略可能で、SipServer が指定されている場合にのみ使用されます。 |
EmulateClient |
クライアントとして実行: DHCP サーバーにパケットを送信して応答を受信 |
このパラメーターを指定すると、DHCPUtil はクライアントとして機能し、パケットを DHCP サーバーに送信して Lync Server のオプションを要求します。このコマンドは、DHCP サーバーと同じコンピューターでは実行できません。 |
RunConfigScript |
スクリプトを使用して DHCPUtil を実行 |
このオプションを指定すると、DHCPUtil はオプション 120 および 43 の値を生成し、それらの値を構成スクリプトに渡します。パスを指定せずに "-RunConfigScript" を使用した場合は、DHCPUtil.exe を実行したのと同じフォルダーから DHCPConfigScript.bat が実行されます。有効なファイル パスを指定した場合は、そのファイルが実行されます。ファイルの種類は問わず、スクリプトでも実行可能ファイルでもかまいません。 |
CleanDHCPConfig |
Lync Server のオプションを削除 |
ローカル DHCP サーバーでオプション 43 および 120 を削除します。DHCPConfigScript.bat は、DHCPUtil.exe と同じフォルダーに置く必要があります。 |
たとえば、SIP サーバーの値と Web サーバーの値を設定するには、次のコマンドを実行します。
DHCPUtil.exe -SipServer sip.contoso.com -WebServer web. contoso.com
このコマンドの出力は次のようになります。
Sip Server FQDN: sip.contoso.com
Certificate Provisioning Service URL: https://web.contoso.com:443/CertProv/CertProvisioningService.svc
Option 120: 0003736970076578616D706C6503636F6D00
Vendor Class Identifier: MS-UC-Client
Option 43 (for vendor=MS-UC-Client):
sub-option 1 <UC Identifier>: 4D532D55432D436C69656E74
sub-option 2 <URL Scheme>: 6874747073
sub-option 3 <Web Server FQDN>: 7765622E6578616D706C652E636F6D
sub-option 4 <Port>: 343433
sub-option 5 <Relative Path for Cert Prov>: 2F4365727450726F762F4365727450726F766973696F6E696E67536572766963652E737663
適切な値を使用して DHCP サーバーを構成するには、次の操作を行います。
DHCP サーバーで、'-RunConfigScript' スイッチを使用して DHCPUtil を実行します。
次のコマンドを使用して、DHCPConfigScript バッチ ファイルを実行します。"DHCPConfigScript.bat" Configure MS-UC-Client 0003736970076578616D706C6503636F6D00 4D532D55432D436C69656E74 6874747073 7765622E6578616D706C652E636F6D 343433 2F4365727450726F762F4365727450726F766973696F6E696E67536572766963652E737663
DHCP サーバーで入力および設定された値が出力され、その後にオプション 120 の値が出力されます。ベンダー クラス識別子は、DHCP サーバーへの要求に何が含まれているかを表します。これによって DHCP サーバーは応答でこれらのオプションを提供することを認識し、ID は常に MS-UC-Client になります。
次に、Lync Server ベンダー クラス ID に対応するオプション 43 のサブ オプションが出力されます。これらは、DHCP サーバーが期待する 16 進エンコードのバイナリ文字列の形式になっています。サブ オプションは次のとおりです。
"識別子" の値は MS-UC-Client になります。
"URL スキーム" は、HTTP と HTTPS のどちらを使用するかを示します。
Web サーバー FQDN は、Web サーバーに設定される値です。
Web サーバー FQDN は、Web サーバーに設定される値です。
"証明書配布の相対パス" は、証明書配布 Web サービスの相対パスです。
これらのオプションが組み合わさって、次のように証明書配布サーバーの完全な URL になります。 <URL スキーム>://<Web サーバー FQDN>:<ポート><相対パス>