カスタマイズ シナリオ
この記事の内容 :
企業エクストラネット サイト : 作成者中心のシナリオ
企業インターネット プレゼンス サイト : 開発者中心のシナリオ
「方法を決定する」で説明したように、Web サイトの目的、使用できるリソース、対応可能な担当者のスキルに応じて、さまざまな手法で Microsoft Office SharePoint Server 2007 に基づくカスタム Web サイトを開発できます。企業のインターネット プレゼンス サイト、企業全体のポータル サイト、または金融サービスのダッシュボード サイトなどの特異なビジネス機能を備えたサイトなど、広範に利用されるサイトやミッション クリティカルなサイトのために企業が最もよく使用するのが、高度なカスタマイズによる方法です。
この記事では、高度なカスタマイズ方法を使用する以下の 2 つのシナリオについて説明します。
**企業エクストラネット ポータル サイト **このシナリオでは、コンサルティング サービスを提供する企業で、顧客とコンサルタントの双方がアクセスできるエクストラネット ポータルを開発します。顧客はサイトにサインオンすることで、コンサルタントの作成したデータやレポートを表示できます。顧客とコンサルタントのどちらもリモートからサイトにアクセスします。
**企業インターネット プレゼンス サイト **このシナリオでは、ブランド化と独自機能の提供のためにカスタマイズした企業インターネット プレゼンス サイトを開発し、展開します。
企業エクストラネット サイト : 作成者中心のシナリオ
Contoso, Ltd. は、米国の中西部と西海岸地方において企業向けの市場調査コンサルティング サービスを提供しています。Contoso, Ltd. の本社、および全米に点在する支社には、1,000 人以上の従業員がいます。Contoso の Market Research Group (MRG) には、フルタイム勤務のチーム メンバが 75 名所属しており、さらにプロジェクトに応じて外部コンサルタントと契約しています。MRG の IT チームに与えられた課題は、Office SharePoint Server 2007 をベースとする次の 2 つの主要 Web サイトを再設計し、カスタマイズすることです。
**オーサリング ポータル サイト **このサイトは、市場調査レポートの調査と作成、および顧客との契約のための新しい提案書の調査、草案作成、承認に使用されます。また、顧客ポータル サイトのコンテンツの作成とカスタマイズにも使用されます。このサイトには、組織のナレッジ ベースとなる大規模なドキュメント センターも含まれています。
**顧客ポータル サイト **このサイトは、顧客に表示されるサービスです。これには、Contoso のサービスに関する概要情報が含まれる公開サイトと、顧客がサービスにログオンするためのページが含まれます。顧客がログオンすると、その顧客が契約した固有のデータやレポートが表示される専用コラボレーション サイトにリダイレクトされます。
カスタマイズ作業
Contoso プロジェクトでは、次の 2 種類のカスタマイズを行います。
カスタム アーティファクト
カスタム開発サイト要素
Contoso プロジェクト用に開発されたカスタム アーティファクトによって、Contoso の顧客ポータル サイトを作成します。カスタム マスタ ページでは、ナビゲーション要素やブランド化の情報を含むサイトの外郭を定義します。各カスタム レイアウト ページでは、サイト内の特定の種類のページが表示される領域を定義します。CSS (Cascading Style Sheet) によって、サイトの配色、フォント、配置情報などのスタイルを指定することで、Contoso のイメージを想起するような独自の外観を作成します。
Contoso プロジェクトに必要なカスタム開発のサイト要素には、次のようなものがあります。
**ワークフロー **たとえば、次のような作業を管理する際に、ワークフローが必要となります。
顧客レポートを承認する。
顧客レポートを発行する。
プロジェクトで作成した資料を内部ナレッジ ベースに入力する。
**Web パーツ **レポート データの対話型ビューなど、顧客向けポータル サイトの機能を実現します。
**ドキュメント コンバータ **さまざまな形式のレポートの生成に使用されます。
**IFilter **Contoso ナレッジ ベース内の特別なドキュメントにインデックスを付けます。
Contoso が採用する方法
Contoso プロジェクトは、顧客向けポータル サイトおよびミッション クリティカルなオーサリング ポータル サイトを対象とする、中規模~大規模のカスタマイズ プロジェクトです。そのため、プロジェクトを担当する Contoso の IT チームは、次のような慎重な方法を採用することを決定しました。
統合ファームで、開発した要素をテストする。
ソフトウェア構成管理システムを使用してソース コードを維持する。
試験プロジェクトを使用して、顧客向けポータル サイトが顧客のニーズに適合していることを確認する。
顧客ポータル サイトは数種類のページと 1 つのマスタ ページのみで構成された小さなサイトなので、開発環境ではなく、オーサリング環境でアーティファクトを開発することに決定しました。これは、作成者中心の方法によるサイトのカスタマイズ例です。この方法の概要については、「方法を決定する」を参照してください。
Contoso が採用した方法では、次の 3 つの環境が必要です。
**開発環境 **これには、開発ワークステーション、ソフトウェア構成管理システム、統合ファームが含まれます。展開された開発ワークステーションでは、Microsoft Visual Studio 2005 開発システム、Microsoft .NET Framework 3.0、Team Foundation Server などのツールが実行されます。統合ファームでは Office SharePoint Server 2007 が実行されており、サンプル サイトのアーティファクトおよびコンテンツを使用して、複数の開発ワークステーションで開発された要素がテストされます。チームでは Microsoft Visual Studio Team System を使用してソフトウェア構成を管理します。
**オーサリング環境 **これには、Office SharePoint Server 2007 が実行されるサーバー ファーム、サイトの作成者と設計者が使用するクライアント ワークステーション、さらに提案書とレポートの調査と作成を行うコンサルタントが使用するクライアント ワークステーションが含まれます。
**実稼働環境と試験環境 **これには、Office SharePoint Server 2007 が動作する 2 つのサーバー ファームが含まれます。実稼働ファームでは、十分にテストしてから展開された顧客向けポータル サイトと、各顧客アカウント専用のグループ作業サイトがホストされます。試験ファームは実稼働ファームとまったく同じソフトウェアですが、より小規模で同種のハードウェア構造となっています。試験ファームを使用することで、規模は小さいものの現実的な環境で典型的なユーザーによるサイトのテストを実行できます。チームはまず試験ファームを使用してサイトの機能と使いやすさをテストします。実稼働ファームに展開する前に、サイトのカスタマイズに対するメジャー リビジョンをテストするために、試験ファームを維持します。
次の図に、Contoso チームの方法を示します。
この図では、番号付きの矢印が展開パスを表しており、コード化され作成されたサイト要素が、さまざまな方法によって 1 つの環境から別の環境へ展開される様子を示しています。
開発者は、Stsadm コマンドライン ツールを使用して、コード化された完成済みのサイト要素を統合ファームに展開し、サンプル サイト データのコンテキストでデバッグや機能テストを実施します。
開発者は Visual Studio 2005 Team System ソフトウェア構成管理システム内やそれ以外の環境で、ソース コード、コンパイル済み DLL、ソリューション パッケージをチェックします。
オーサリング ファームでは、ソース顧客ポータル サイト コレクションのトップレベル サイトに、設計者によって顧客向けポータル サイトのマスタ ページ、レイアウト ページ、およびカスケード スタイル シートが作成されます。ファイルのチェックイン、チェックアウト、承認には、Office SharePoint Server 2007 のドキュメント管理機能とワークフロー機能が使用されます。
設計者は、開発したサイト要素をテストするためのフレームワークを準備するために、コンテンツ移行用のプログラム可能なインターフェイスに基づくカスタム スクリプトを使用して、アーティファクトとサンプル コンテンツを統合ファームに移行します。
統合ファーム上で、開発者がサイト要素をソリューション パッケージとしてバンドルし、stsadm コマンドライン ユーティリティを使用して、それをオーサリング ファーム、試験ファーム、実稼働ファームに展開します。
ポータル管理者は、作成した顧客向けポータル サイト (上の図では "オーサリング サイト コレクション" となっています) が品質管理のためにステージング サイト コレクションに展開されるように、Office SharePoint Server 2007 のコンテンツ展開機能を設定します。
また、ポータル管理者は、承認された顧客向けポータル サイトをステージング サイト コレクションから試験サーバー ファームや実稼働サーバー ファームに展開するように、Office SharePoint Server 2007 のコンテンツ展開機能を設定します。
企業インターネット プレゼンス サイト : 開発者中心のシナリオ
Blue Yonder Airlines は急速に成長しつつある地方航空会社であり、定期便とチャーター便を運行しています。20,000 人を超える従業員を抱え、450 機以上の航空機を所有しています。常連顧客を増やし続ける Blue Yonder の存在感は業界でますます大きくなっているため、Blue Yonder の経営陣は企業イメージを刷新するための全社的取り組みを行っており、その一環として企業 Web サイトを再設計することになりました。同時に、Blue Yonder の IT 部門では、雑多なテクノロジやサーバーが混在している状態のインターネット プレゼンス インフラストラクチャの単純化と合理化に取り組んでいます。Blue Yonder の IT 部門のビジネス アナリストとシステム設計者は、サービス、機能、高い拡張性から、Office SharePoint Server 2007 の統合セットが、この会社のインターネット プレゼンスを統一して再設計するために最適なプラットフォームであると判断しました。Office SharePoint Server 2007 に基づいて、インターネット プレゼンス インフラストラクチャと Web サイトを再構築することに決定しました。
Blue Yonder Airlines サイトには、次のものを含める必要があります。
会社の沿革、求人情報、投資関連情報、および一般の連絡先情報など、Blue Yonder Airlines の概要情報。
Blue Yonder の目標、サービス、および特別プロモーションの説明。
フライト予約、フライト追跡、オンライン チェックインなど、フライト関連の作業を行うためのインターフェイス。このようなインターフェイスは、バックエンド データベースに接続する必要があります。
マイル ポイント、パッケージ ツアーなど、Blue Yonder メンバに対するプロモーションや独自サービス。
これはインターネット プレゼンス サイトなので、IT 部門では Blue Yonder サイトの基盤を Office SharePoint Server 2007 発行モデルにすることを決定しました。このモデルでは、外部に公開されるサイトが独立したファーム内にホストされ、サイト訪問者には隔離された環境で匿名アクセスが許可されます。サイトの作成は、Blue Yonder のイントラネット ポータル サイトもホストされている独立したファームで実行されます。設計し作成する必要がある主要なサイトは、以下の 2 つです。
**オーサリング ポータル サイト **Blue Yonder サイトの作成を担当するチームが使用するサイトです。オーサリング ポータルには、インターネット プレゼンス サイトに関連する 2 つのサイト コレクションが含まれます。それは、Blue Yonder サイトが作成されるサイト コレクションと、公開前に Blue Yonder サイトがステージングされるサイト コレクションです。
**インターネット プレゼンス サイト **公開されるインターネット サイト コレクションです。一般情報、サービスの説明、フライト追跡、特別プロモーションのサブサイトを含みます。Blue Yonder のインターネット プレゼンス サイトには、100 を超える数のサブサイトが含まれます。
カスタマイズ作業
Blue Yonder Airlines プロジェクトでは、次の 2 種類のカスタマイズを行います。
カスタム アーティファクト
カスタム開発サイト要素
Blue Yonder Airlines サイト向けに開発されるカスタム アーティファクトには、マスタ ページ、レイアウト ページ、カスケード スタイル シートが含まれます。ほとんどのサブサイトで同じマスタ ページが使用されますが、一部の特殊なサブサイトには特殊なマスタ ページも必要になります。サイト内の数百種類のコンテンツ ページそれぞれに、一意のレイアウト ページが必要です。サイトの配色、フォント、配置情報などのスタイルを指定するカスケード スタイル シートにより、Blue Yonder Airlines のイメージを想起するような独自の外観を実現します。
Blue Yonder Airlines プロジェクトでは、次のような多数のカスタム開発のサイト要素が必要となります。
**Web パーツ **サイトのユーザーがサイト (およびバックエンド データベース) に対して行う操作のほとんどに、カスタム Web パーツが必要となります。これには、フライト予約、オンライン チェックイン、マイル ポイントの管理などを行うための Web パーツが含まれます。
**フォーム **サイトのユーザーによる操作の多くには、ワークフローや他のカスタム ロジックと統合された対話型のカスタム フォームが必要となります。
**ワークフロー **サイトで管理されるタスクの多くでは、カスタム ワークフローを起動することで、Blue Yonder Airlines の業務を管理します。たとえば、ロスト バゲージのフォームでは、従業員による一連の対応を開始するワークフローが起動されます。
**タイマ ジョブ **Blue Yonder Airlines サイトでは、サイトで収集したデータに対して、定期的にスケジュール設定された特別なメンテナンス関連処理およびセキュリティ関連処理を実行する必要があります。カスタム タイマ ジョブにより、さまざまな処理を実装します。
Blue Yonder Airlines が採用する方法
Blue Yonder プロジェクトは、豊富な機能を備え、高度にカスタマイズされた顧客向けインターネット プレゼンス サイトを構築する大規模なプロジェクトです。この業界のサイトでは、非常に高いパフォーマンスがきわめて重要となります。そのため、Blue Yonder IT チームでは非常に慎重な方法を採用し、大規模なソフトウェア開発プロジェクトと同様の厳格さでプロジェクトを進めます。これには、次のことが必要となります。
開発した要素をテストするための統合ファームを展開する。
ソース コードとサイト アーティファクトを維持するためのソフトウェア構成管理を実装する。
サイトがセキュリティ保護されていて、利便性が高く、サイトのユーザーにとって使いやすいことを確認するための試験版プロジェクトを実施する。
マスタ ページとレイアウト ページを開発することは、サイトが適切に機能するために欠かせないと考えられるため、開発チームでは開発環境でサイト アーティファクトを開発し、そのアーティファクトをソリューション パッケージとしてパッケージ化して、オーサリング環境および実稼働環境にインストールできるようにしました。これが、開発者中心のサイトのカスタマイズ方法の例です。この方法の概要については、「方法を決定する」を参照してください。
Blue Yonder Airlines が採用した方法では、次の 3 つの環境が必要です。
**開発環境 **これには、開発ワークステーション、設計ワークステーション、ソフトウェア構成管理システム、統合ファームが含まれます。開発ワークステーションでは、Microsoft Visual Studio 2005、Microsoft .NET Framework 3.0、Microsoft Visual Studio Team System 2005、Team Foundation Server などのツールが動作します。設計ワークステーションでは、Office SharePoint Designer 2007 や、サイトの意匠設計のためのグラフィック アプリケーションが動作します。統合ファームでは Office SharePoint Server 2007 が実行されており、複数の開発ワークステーションで開発した要素がテストされ、カスタム サイト アーティファクトと統合されます。ソフトウェア構成管理システムは、Microsoft Visual Team System です。
**オーサリング環境 **これには、Office SharePoint Server 2007 が動作するサーバー ファームと、Blue Yonder Airlines Web サイトのコンテンツを開発するサイト作成者が使用するクライアント ワークステーションが含まれます。
**実稼働環境と試験環境 **これには、Office SharePoint Server 2007 が動作する 2 つのサーバー ファームが含まれます。実稼働ファームでは、十分にテストされて展開されたサイトをホストします。試験ファームは実稼働ファームとまったく同じソフトウェアですが、より小規模で同種のハードウェア構造となっています。試験ファームを使用することで、規模は小さいものの現実的な環境で典型的なユーザーによるサイトのテストを実行できます。最初はサイトの機能と使い心地を試験するために使用されますが、サイトのカスタマイズに対するメジャー リビジョンを実稼働ファームに展開する前にテストするために、以降も維持されます。
次の図に、Blue Yonder Airlines チームが採用した方法を示します。
この図では、番号付きの矢印が展開パスを表しており、コード化され作成されたサイト要素が、さまざまな方法によって 1 つの環境から別の環境へ展開される様子を示しています。
開発者は、Stsadm コマンドライン ツールを使用して、コード化された完成済みのサイト要素を Office SharePoint Server 2007 が動作する統合ファームに展開し、サイト アーティファクトおよびサンプル コンテンツのコンテキストでデバッグや機能テストを実施します。
サイト設計者は Office SharePoint Designer 2007 などのアプリケーションを使用して、サイト アーティファクト (マスタ ページ、レイアウト、カスケード スタイル シート) を統合ファームに作成します。
開発者は Visual Studio 2005 Team System ソフトウェア構成管理システム内やそれ以外の環境で、ソース コード、コンパイル済み DLL、ソリューション パッケージをチェックします。サイト作成者は、同じソフトウェア構成管理システムやそれ以外の環境で、アーティファクトをチェックします。
統合ファーム上で、開発者が開発済みのサイト要素をサイト アーティファクトと共にソリューション パッケージとしてバンドルし、Stsadm コマンドライン ユーティリティを使用して、それをオーサリング ファーム、試験ファーム、実稼働ファームに展開します。
サイト作成者がオーサリング ファーム上のサイト コレクションにサイトのコンテンツを作成します。このサイト コレクションは、インターネットに公開されるサイトの完全な複製です。
ポータル管理者は、サイトが品質管理のためにステージング サイト コレクションに展開されるように、Office SharePoint Server 2007 のコンテンツ展開機能を設定します。
ポータル管理者は、承認されたサイトをステージング サイト コレクションから試験サーバー ファームや実稼働サーバー ファームに展開するように、Office SharePoint Server 2007 のコンテンツ展開機能を設定します。
設計者は開発したサイト要素およびアーティファクトをテストするためのフレームワークを準備するために、コンテンツ移行用のプログラム可能なインターフェイスに基づくカスタム スクリプトを使用して、サイト コンテンツを統合ファームに移行します。
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