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サポート担当者の協力を得て Exchange 環境での Outlook の予定表に関する問題をトラブルシューティングする

更新日: 2010年5月

適用対象: Office Resource Kit

 

トピックの最終更新日: 2010-05-06

この記事の内容 :

  • 概要

  • 収集する準備データと有効にするログ

  • 問題が再発生した後に分析用に提供するデータ

ここでは、予定表に問題が発生し、原因が不明であるか文書化されていない場合に、Microsoft のサポート エンジニアの協力を得て原因を特定し問題を解決するための必要な手順とデータについて説明します。

予定表の問題としてよく起こる現象には次のものがあります。

  • 会議が予期せず予定表から削除される

  • 重複する会議が予定表に表示される

  • 会議の開催者がいなくなる

Outlook の予定表に関する既知の問題のトラブルシューティングについては、Microsoft サポート技術情報の記事 899704 「予定表情報が予定表から削除されたり不正確になったりする一般的な事例について」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=125850\&clcid=0x411) と、Microsoft サポート技術情報の記事 890436 「[OL2003] Outlook で予定が失われたり重複したりする問題のトラブルシューティング方法」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=125852\&clcid=0x411) を参照してください。ただし、この 2 つの記事は、Outlook の予定表データに問題が発生するときの原因になりうる既知の問題に関する情報だけを提供するものです。

Microsoft Exchange Server のメールボックスを使用している場合に、Microsoft Office Outlook の予定表の機能に関連して発生するいくつかの一般的な問題に対して、Microsoft のサポート エンジニアは高度な方法を使用して問題を分析し原因を特定します。予定表に関する問題を効率的にトラブルシューティングするためには、使用環境に関する多くの情報が必要になります。以下では、この手順の概要と、サポートの各段階で必要になる情報およびログの構成について説明します。

概要

予定表に関する問題は再現が容易ではないことが多く、Microsoft のサポート エンジニアが問題を効率的にトラブルシューティングできるようにするためには、多くのデータを収集して提供する必要があります。再現が容易ではない理由は、主に、Office Outlook と Exchange Server の予定表の機能セットが複雑であり、予定表データが関係するシナリオと製品が多様なためです。たとえば、予定表データが関係する項目としては次のものがあります (これだけではありません)。

  • 委任と管理のシナリオ

  • Exchange キャッシュ モードかオンライン モードかの選択

  • サードパーティとの連携 (BlackBerry、iPhone、GoodLink など)

  • Outlook Web Access (OWA) との連携

  • Entourage との連携

Outlook の予定表に関する問題をトラブルシューティングするために必要となる各種ツールとデータを確認する前に、この問題についていくつかの重要なポイントを認識し理解しておくことが大切です。

  • 失われた会議や破損した会議は、復元できないことが多くあります。そのような会議は、削除して再作成してみることをお勧めします。

  • 必要なデータがすべて揃わない場合、サポート エンジニアは会議アイテムに発生した問題の原因をはっきりと特定できません。

  • Microsoft のサポート エンジニアにとって最も有用な情報は、問題発生までの具体的かつ再現可能な手順です。たとえば、次のような情報が推奨されます。

    1. User1 が User2 に会議出席依頼を送信した

    2. User2 が依頼を承諾した

    3. User1 が予定表をハンドヘルド デバイスと同期した

    4. User1 が会議を更新し、更新内容を User2 に送信した

    5. User2 が会議の更新を承諾しようとするとエラー メッセージが返された

    このような情報があれば、Microsoft ではここで紹介するツールや手順の多くを使用することなく問題を診断できます。ただし、常に再現できる手順であっても、サポート エンジニアは問題を分析するためにログ ファイル、構成設定、サードパーティ ソフトウェアの情報など、相当量のデータを必要とします。

  • 使用しているサーバー (Exchange、BlackBerry、GoodLink など) とクライアントからのデータも必要です。組織がクライアントおよびサーバーのグループに分化されている場合、各グループの代表者が参加してサポート案件にあたるのが最も効率的です。各サーバーおよびクライアントからは、ログ、構成設定、修正プログラムのインストール履歴、その他の関連詳細情報が必要になる可能性があります。

  • 最も影響を受けるのは、多くの会議を予定している多忙なユーザーです。必要になるデータのいくつかは、影響を受けるユーザーのワークステーションからしか取得できません。サポートを依頼した後は、できるだけ早い段階でこの必要情報を取得することをお勧めします。

  • サポートを依頼すると、実行が必要なツールと収集が必要なデータの一覧が提供されます。サポート エンジニアには、問題のトラブルシューティングに必要なすべての準備項目をいつまでに用意できるかを伝える必要があります。

  • すべての準備データを提供後は、サポート エンジニアと相談して、問題が再発生しなければ案件をいったん解決とする日を決めます。案件をいったん解決とした後で問題が再発生した場合、サポート エンジニアはもう一度解決にあたるためにすべての必要項目を依頼します。提供した項目が古くなって使用できない場合は、新しい情報とログ データを収集する必要がある可能性もあります。

収集する準備データと有効にするログ

Microsoft にサポートを依頼したら、予定表に関する問題がもう一度発生する前に、以下の一連の対策を実行する必要があります。

  1. 調査の対象を絞るために、予定表に関する問題が最も多く発生しているユーザーを 1 人選びます。

  2. 影響を受けるユーザーが BlackBerry、iPhone、GoodLink のいずれかのデバイスを使用している場合 :

    a. デバイスに応じて、Research in Motion (RIM)、Apple、または Motorola Good Technology にサポートを依頼することをお勧めします。早い段階からサードパーティ ベンダの協力を得ることで、そうではない場合に比べて予定表の問題の解決が円滑に進むことがわかっています。

    b. サポートを依頼するときは、RIM、Apple、または Motorola のサポート エンジニアに次のことを尋ねます。

    • サーバーまたはデバイスに対するサービス パックまたは修正プログラムの適用レベルが最新かどうか

    • 既知の問題かどうか

    • サポートされている最新バージョンの Cdo.dll がサーバー (BlackBerry または GoodLink のみ) 上にあるかどうか

    サポート エンジニアが問題の発生後にログを確認できるように、ログを有効にします。

    c. BlackBerry、iPhone、GoodLink、またはハンドヘルド デバイスの同期と Cdo.dll に関する情報を収集し、サポート エンジニアに提供します。

    • BES、iPhone、または GoodLink のバージョン

    • サービス パックのレベル

    • BES または GoodLink のサーバー上にある Cdo.dll のバージョン

    • クライアントの同期ソフトウェアの名前とバージョン (該当する場合)

  3. 別のサードパーティ デバイスまたはサードパーティ ソフトウェアを使用して Outlook と Exchange の予定表データを管理している場合は、サポート エンジニアに製品の詳細を伝えます。製品で利用可能なログを有効にするために、サードパーティ ベンダにサポートを依頼することもお勧めします。

  4. ユーザーのコンピュータとすべての代理人のコンピュータから、Process Explorer のダンプを収集します。Process Explorer では、Outlook.exe プロセスの下で動作する DLL の一覧が生成されます。Outlook.exe プロセスの下で動作しているサードパーティ DLL が存在し、ログからその DLL が問題の原因である可能性が読み取れる場合は、該当 DLL の一部または全部を無効にすることを要請される可能性があります。Process Explorer の詳細については、「Process Explorer」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=125853\&clcid=0x411) を参照してください。Process Explorer の使用方法については、Microsoft サポート技術情報の記事 970920 「Using Process Explorer to List dlls Running Under the Outlook.exe Process (英語)」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=153876\&clcid=0x411) を参照してください。

  5. インストールされているアドインの一覧を提供します。ここには次のレジストリ ハイブからの情報を含めます。

    HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Office\Outlook\addins

    HKEY_LOCAL_MACHINE\Software\Microsoft\Exchange\client\extensions

    HKEY_LOCAL_MACHINE\Software\Microsoft\Office\Outlook\addins

  6. このユーザーの代理人設定を示すスクリーン ショットを少なくとも 2 つ提供します。次のそれぞれのスクリーン ショットを 1 つずつ含めます。

    a. ユーザーのすべての代理人が一覧表示された Outlook の [代理人] タブ

    b. [代理人] タブの代理人ごとに表示される [アクセス権] ダイアログ ボックス

    Outlook の代理人にはいくつかの構成が可能なため、管理者の代わりに代理人が会議を受信し処理するときの構成がどのようになっているかを理解しておくことが重要です。ログ データの分析の際、適切なコンテキストでデータを分析するためには、代理人の構成に関する情報が必要になります。

  7. 管理者と代理人のどちらかが Office Outlook 2007 を使用している場合は、必ず両方が Office Outlook 2007 Service Pack 2 以降を使用するようにしてください。この推奨事項については、Microsoft サポート技術情報の記事 924470 「Outlook 2007 で代理人機能を使用する場合、代理人および管理者は全員が Outlook 2007 を使用する必要がある」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=167917\&clcid=0x411) を参照してください。

  8. Office Outlook 2003 または Office Outlook 2007 の場合は、予定表の所有者のコンピュータとすべての代理人のコンピュータで Outlook のログを有効にし、Outlook を再起動します。クライアント側のログ データからは、会議の変更が代理人によって行われたかサードパーティ ソフトウェアによって行われたかを知ることができます。また、このログ データは、他のログ データのコンテキストを把握するのにも役立ちます。予定表のログを有効にする方法については、Microsoft サポート技術情報の記事 841615 「Outlook 2003 Service Pack 1 (SP1) の予定表のログ機能について」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=125854\&clcid=0x411) を参照してください。

    Outlook 2000 または Outlook 2002 を使用している場合は、クライアント側での Outlook のログを有効にするために、影響を受けるユーザーのコンピュータを Outlook 2003 以上にアップグレードすることをお勧めします。

  9. Entourage が関連するシナリオの場合は、次の情報を収集します。

    a. Entourage のバージョンとビルド番号 ([Entourage] メニューの [Entourage について] をクリックします)

    b. 5 つのタブすべてのスクリーン ショット (Entourage の [ツール]、[アカウント]、[メール]、[Exchange アカウント設定] の順にクリックします)

    以上の情報から、Microsoft では、Exchange のフロントエンドとバックエンドのどちらのサーバーに接続しているかと、必要な場合にクライアント側のトレースを取得できるかどうかを判断し、問題のトラブルシューティングを進めます。

  10. 影響を受けるユーザーと代理人に、[受信トレイ]、[削除済みアイテム]、[送信済みアイテム]、[予定表]、[同期の失敗]、[競合] の各フォルダから、会議、出席依頼、または予定表に関連するアイテムを一切削除しないように指示します。

    予定表のログ データの分析結果では、通常、アイテムを操作したユーザーと操作の日時がわかります。したがって、会議に関連する実際のアイテムのログ情報を確認しておくことが重要です。

  11. Outlook 2003 以下の場合は、レジストリ値 DumpsterAlwaysOn を有効にします。レジストリ値 DumpsterAlwaysOn を 1 に設定しておくと、Outlook では各フォルダ内の完全削除されたアイテムが、Exchange Server コンピュータに指定された保存期間が終わるまで保持されます。このレジストリ値を有効にする方法については、Microsoft サポート技術情報の記事 246153 「Outlook で "完全削除" したアイテムを復元する方法」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=125856\&clcid=0x411) を参照してください。

  12. Exchange Server コンピュータの [削除済みアイテムの保存期間] の構成で、削除アイテムの復元に適切な期間を指定していることを確認します。

  13. Exchange ストア上のユーザーのメールボックスに対し、ストアのトレースを有効にします。Exchange ストアのトレースは、予定表に関する問題をトラブルシューティングする際の有効化、収集、分析の項目として最も重要なものの 1 つです。ただし、他のログ データを取得したら、Exchange ストアのログから読み取った内容を他の収集データと照合する必要があります。

    ログを有効にする手順は、使用している Exchange Server のバージョンによって異なります。Exchange Server 2007 の場合は、Microsoft サポート技術情報の記事 971878「Steps to enable Exchange 2007 store tracing for calendar issues (英語)」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=153878\&clcid=0x411) を参照してください。Exchange Server 2000 または Exchange Server 2003 の場合は、Microsoft サポート技術情報の記事 971435「Steps to enable Exchange 2000 and Exchange 2003 Calendar Store tracing (英語)」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=153879\&clcid=0x411) を参照してください。この処理については、サポート エンジニアから支援を受けることができます。

  14. ストアのログが動作していることを確認します。ストアのログを有効にし、ログに実際にデータが追加されていることを確認します。

問題が再発生した後に分析用に提供するデータ

問題の影響を受けていたユーザーが予定表に関する問題の再発生を報告した場合は、次の項目または詳細情報を収集し、Microsoft のサポート案件の所有者に連絡します。

  1. 問題が発生した会議の詳細 :

    開催者の名前

    件名

    開始時刻と終了時刻

    定期開催の情報 - 定期的な会議の場合、問題が会議のたびに発生するのか、それとも特定の会議にだけ発生したのか

    会議を更新したか、それとも新しい会議を作成したか

    予定表にアイテムが正しく表示されていることを最後に確認したのはいつか

    問題が発生していることに気付いたのはいつか

  2. 影響を受けるユーザーとその代理人の名前および別名

  3. だれかが何らかの対策を実行した場合は、その内容 (更新、承諾、BlackBerry、iPhone、または GoodLink へのアクセスなど)

  4. 会議が失われた問題の場合 :

    a. ユーザーの [予定表] フォルダのビューを表形式のビューに変更したときに、アイテムが表示されるかどうかを確認します。

    たとえば Office Outlook 2007 では、[表示]、[現在のビュー]、[カテゴリ別] の順にクリックすると表形式のビューに切り替えることができます。

    b. 該当するすべてのユーザーの [削除済みアイテム] フォルダで、関連するアイテムがないかどうかを確認します。

    関連するアイテムが見つかった場合 :

    i. アイテムを新しい .pst ファイルにコピーします。

    ii. [削除済みアイテム] フォルダ内のアイテムはそのままにします。

    c. [予定表] フォルダを選択した状態で、[ツール] メニューの [削除済みアイテムを復元] をクリックし、会議が削除済みアイテム収集機能に表示されるかどうかを確認します。

    削除済みアイテム収集機能に会議が表示された場合 :

    i. アイテムを復元します。

    ii. アイテムを新しい .pst ファイルにコピーします。

    iii. [予定表] フォルダ内の復元されたアイテムはそのままにします。

  5. 所有者と代理人のコンピュータのクライアントから送信された競合解決メッセージ (ある場合)

    a. ナビゲーション ウィンドウで [フォルダー一覧] モジュールに切り替えます。

    b. [同期の失敗] フォルダを選択します。

    c. 件名に "変更の解決" とあるメッセージを探します。

    d. 件名に "変更の解決" とあるメッセージが見つかった場合は、そのメッセージを .pst ファイルにコピーします。

  6. 所有者と代理人のコンピュータのクライアントから送信された競合メッセージ (ある場合)

    a. ナビゲーション ウィンドウで [フォルダー一覧] モジュールに切り替えます。

    b. [競合] フォルダを選択します。

    c. [競合] フォルダ内に会議に関連するアイテムがある場合は、そのアイテムを .pst ファイルにコピーします。

  7. 所有者と代理人のコンピュータからのクライアント ログ ファイル

    Outlook 2003 および Outlook 2007 SP1 の予定表のログ ファイルは、Logcalb# (# は 2 を開始番号とするインデックス番号) という名前でユーザーのコンピュータ上の %temp% フォルダに格納されています。

    Logcalb ファイルは Outlook を起動するたびに新しく生成されるので、数多く存在することが考えられます。したがって、問題が発生した日の前後の Logcalb ファイルだけを収集するようにします。たとえば、問題が水曜日に発生した場合は、火曜日と水曜日の Logcalb ファイルをすべて収集します。Outlook 2007 SP2 以降を使用している場合、Outlook では、改善された予定表ログ ファイルも %temp%\OLKCalLogs フォルダに生成されます。新しいファイルの名前は OLKCalLog_<日時>.etl となります。<日時> は、ファイルを最後に保存した時点のタイム スタンプです。したがって、Outlook 2007 SP2 以降を使用している場合は、次のファイルを収集します。

    • %Temp%\Logcalb#

    • %Temp%\OlkCalLogs\OLKCalLog_<日時>.etl

  8. Exchange Server ストアのログ

    Exchange Server 2000 または Exchange Server 2003 の場合は、Exchange Server コンピュータで [Enable Tracing] の値を 0 にしてログを停止した後、\Exchsrvr\Bin フォルダから Store.log ファイルを収集します。

    Microsoft Exchange Server 2007 の場合は、EXTRA.exe を実行したときにトレース ファイルの名前と場所が構成されます。既定では、Documents and Settings\administrator\ExchangeDebugTraces.etl になります。

  9. 追加データ

    MAPI Editor ツールを使用してアイテムのプロパティの出力を収集するなど、追加データの収集については、サポート エンジニアが支援します。この記事の前のセクションに挙げたすべてのログ ファイルとスクリーン ショットの収集についても、不明点はサポート エンジニアにお尋ねください。