Outlook 診断ログによる OAB ダウンロードの問題のトラブルシューティング
適用先: Exchange Server 2007 SP1, Exchange Server 2007
トピックの最終更新日: 2007-09-05
ここでは、Microsoft Office Outlook クライアント診断ログを使用し、イベント ログ エントリを調べて、オフライン アドレス帳 (OAB) のダウンロードに関連する問題を解決する方法について説明します。イベント ログ エントリを調べる方法に加えて、OAB のダウンロードに関連する以下の問題の詳細についても説明します。
- オフライン アドレス帳のシーケンス
- サーバー側のアドレス一覧名
- OAB GUID
Microsoft Office 2003 Service Pack 1 (SP1) および Outlook 2003 Service Pack 2 (SP2) では、Outlook が OAB の完全ダウンロードを実行すると、常にアプリケーション イベント ログにイベントが生成されます。何かの理由でこのダウンロードでエラーが発生すると、Outlook は、イベント ID 27 と、エラーというイベントの種類およびエラーに関する情報を含む説明をログに記録します。この場合、ログに記録されたイベントには、問題を特定するために使用できる結果のエラー コードも含まれます。
OAB のダウンロードの問題を解決するには、イベント ログ エントリを調べて、エラー コードおよび OAB シーケンス番号を確認する必要があります。次に、Exchange サーバー上のアドレス一覧の名前を、Outlook クライアントと比較します。
イベント ログ エントリの調査
ユーザーが最初に Exchange キャッシュ モードで Outlook 2003 を起動した場合にログに記録されたイベント ログ エントリの 16 進データ部分の例を、以下に示します。
0000: 01 00 00 00 00 00 00 00 |
0008: 00 00 00 00 75 00 00 00 |
0010: 75 00 00 00 00 00 00 00 |
0018: 00 00 00 00 00 00 00 00 |
0020: e9 fd 00 00 02 a3 48 9b |
0028: ba 12 c4 01 00 00 00 00 |
0030: 00 00 00 00 00 00 00 00 |
0038: 00 00 00 00 00 00 00 00 |
0040: 00 00 00 00 00 00 00 00 |
0048: 00 00 00 00 00 00 00 00 |
0050: 00 00 00 00 00 00 00 00 |
0058: 00 00 00 00 00 00 00 00 |
0060: 00 00 00 00 00 00 00 00 |
0068: 00 00 00 00 00 00 00 00 |
0070: 00 00 00 00 00 00 00 00 |
0078: 00 00 00 00 00 00 00 00 |
0080: 00 00 00 00 00 00 00 00 |
0088: 00 00 00 00 00 00 00 00 |
0090: 5c 00 47 00 6c 00 6f 00 |
0098: 62 00 61 00 6c 00 20 00 |
00a0: 41 00 64 00 64 00 72 00 |
00a8: 65 00 73 00 73 00 20 00 |
00b0: 4c 00 69 00 73 00 74 00 |
00b8: 00 00 00 00 65 38 31 30 |
00c0: 35 35 61 38 2d 62 64 38 |
00c8: 38 2d 34 33 34 62 2d 39 |
00d0: 37 31 37 2d 64 34 33 37 |
00d8: 61 62 34 35 31 35 36 39 |
00e0: 00 65 38 31 30 35 35 61 |
00e8: 38 2d 62 64 38 38 2d 34 |
00f0: 33 34 62 2d 39 37 31 37 |
00f8: 2d 64 34 33 37 61 62 34 |
0100: 35 31 35 36 39 00 |
ずべての OAB イベント ログ エントリで、データの最初のバイトに 16 進形式でエラー コードが格納されます。エラー コードは、完全ダウンロードの原因を示します。前の例では、データの最初のバイトは次のように格納されています。
0000: 01 00 00 00 00 00 00 00
この例では、最初のバイトは 01 です。
次の表に、エラー コードの説明を示します。
オフライン アドレス帳のエラー コード
エラー コード | 説明 |
---|---|
1 |
コンピュータ上に OAB ファイルが存在しないか、OAB ファイルを開くことができませんでした。 |
2 |
手動で強制的に完全ダウンロードを実行しました。 |
3 |
OAB の名前をクライアントで取得できませんでした。この動作は新しいプロファイルを作成したときに発生します。 |
4 |
OAB の GUID をクライアントで取得できませんでした。 |
5 |
OAB の名前がサーバーに存在しませんでした。完全ダウンロードの開始または続行は予期されていませんが、ログに記録されます。 |
6 |
OAB の GUID がサーバーに存在しませんでした。完全ダウンロードの開始または続行は予期されていませんが、ログに記録されます。 |
7 |
サーバーの OAB 名とクライアントの OAB 名が異なります。 |
8 |
サーバーの GUID とクライアントの GUID が異なります。この動作は、サーバーが新しい OAB を同じ名前で再生成する必要があり、古い OAB ファイルを破棄した場合に発生することがあります。また、Outlook クライアントが、異なる Active Directory ディレクトリ サービス フォレスト間で移動された場合にも発生する可能性があります。 |
9 |
このクライアントのシーケンス番号がサーバーのシーケンス番号よりも大きい値です。 |
0a (10) |
OAB 内の詳細情報が必要ですが、対応する OAB ファイルがクライアントに存在しません。この動作は、手動で強制的に OAB をダウンロードした後、[前回の送受信以降の変更をダウンロードする] チェック ボックスをオフにした場合に発生する可能性があります。 |
0b (11) |
少なくとも 1 つの増分 OAB ファイルがサーバーに存在していませんでした。 |
0c (12) |
ダウンロードする増分ファイルの合計が、OAB ファイル全体の 1/8 以下である可能性があります。 |
0d (13) |
Allow SRS Full OAB Download レジストリ キーを 1 に設定し、[送受信] 設定が常に完全ダウンロードを実行するように設定されています。 |
0e (14) |
OAB のロケールがシステムにインストールされておらず、手動で完全ダウンロードを実行しました。通常、Outlook は 1 か月に 1 回、または手動でダウンロードするときに、アドレス帳を更新します。Outlook では、以下の方法でアドレス帳を更新して、完全ダウンロードが毎日実行される原因になるような条件を回避します。 |
0f (15) |
何かの理由で、OAB ファイルへの増分ファイルの適用に失敗しました。 |
エラー コードを使用して、0f エラーが発生した理由を特定できます。根本原因を識別した後、問題を解決するための手順を進めることができます。そのためには、以下の手順を実行します。
- アプリケーション イベント ログで、Description セクションが "Starting OAB Download" であるイベント ID 27 を探します。
- 以下のいずれかまたはすべてのアサートを含むイベントの Description セキュリティで理由コードを見つけます。
- 0050: 7a 65 61 7a 61 74 61 7a zeazataz
- 0058: 70 69 61 7a 7a 65 61 7a piazzeaz
- 0060: 61 74 61 7a 70 69 61 7a atazpiaz
- 以下を使用して、これらの理由コードを解釈します。
- "zaez" は "署名の不一致" のアサートです。
- "zata" MAPI_E_UNEXPECTED_ID のアサートです。
- "zaip" は "HrApplyOABDiffs が失敗しました。全体をダウンロードする必要があります" を意味します。
- イベント ログのデータによっては、Exchange の修正プログラムのインストールが必要になる場合があります。この修正プログラムの詳細については、Microsoft サポート技術情報の文書番号 895476「Outlook が Exchange Server 2003 でのオフライン アドレス帳をダウンロードすると、Outlook は、増分ダウンロードの代わりの完全ダウンロードを受信することがあります。」を参照してください。
次の表示に、これらのイベントに表示される可能性がある説明の例を示します。
Outlook 2003 イベント ログのサンプルの説明
イベント ログ エントリの説明フィールド | 説明 |
---|---|
"OAB ModDif が失敗しました。(イベント データの詳細レコード)" "OAB (オフライン アドレス帳) ファイルが無効です。スタブに置き換えられました。(イベント データの最後のエラー)" |
Outlook が OAB の増分ダウンロードを実行できなかったことを示します。この場合、Outlook では OAB の完全ダウンロードが試行されます。 |
"OAB のダウンロードを開始しています" |
OAB の完全ダウンロードが開始されたことが示され、ダウンロードの原因も示されます。 |
"OAB のダウンロードが成功しました" |
OAB の完全ダウンロードが正常に完了したことを示します。 |
結果のエラー コードに加えて、アプリケーション イベント ログ データから次の情報を収集できます。
- OAB シーケンス番号
- オフライン アドレス一覧を設定するために使用されるサーバー側のアドレス一覧名
- OAB ファイル全体のダウンロードの GUID
この情報を使用して、OAB の差分ダウンロードと完全ダウンロードに関して、特定の動作が発生する理由を識別することができます。
オフライン アドレス帳のシーケンス番号
Outlook および Exchange Server は、いずれも OAB シーケンス番号を使用して、Outlook にダウンロードする OAB ファイルを特定します。クライアントで検出されたシーケンス番号と、差分ファイルの累積サイズに応じて、OAB の差分ダウンロードまたは完全ダウンロードが実行されます。ログに記録されたイベントのデータ部分を調べることによって、シーケンス番号を検証できます。
OAB エラー コードは、イベント データの最初の行にあります (オフセット 0001)。クライアントおよびサーバーの OAB シーケンス番号は、イベント ログ データの 2 行目にあります (オフセット 0008)。このようなデータの例を次に示します。
- 0000: 09 00 00 00 00 00 00 00 ........
- 0008: 9b 00 00 00 9a 00 00 00 ........
この例では、アドレス帳のエラー コードは 09、または単純に 9 です。このトピックの最初の表に示されているように、このエラー コードは、クライアントのシーケンス番号がサーバーのシーケンス番号よりも大きいことを示します。クライアントのシーケンス番号は最初の 4 バイト (この例では 9b) に格納され、サーバーのシーケンス番号は 2 番目の 4 バイト (この例では 9a) に格納されます。
サーバー側のアドレス一覧名
クライアントの OAB と Exchange サーバーのオフライン アドレス一覧名が一致しないか、または存在しない場合、OAB の完全ダウンロードが実行されます。この場合、生成される結果のエラー コードは 3、5、または 7 です。ログに記録されたイベントのデータ部分を調べることによって、OAB (およびオフライン アドレス一覧) 名を検証できます。
Exchange Server がサーバー上のオフライン アドレス一覧を設定するために使用する一覧の名前は、イベント データの 19 行目以降にあります (オフセット 0090)。Outlook が使用している一覧の名前は、イベント データの 24 行目以降にあります (オフセット 00b8)。このようなデータの例を次に示します。
0090: 5c 00 47 00 6c 00 6f 00 \.G.l.o.
0098: 62 00 61 00 6c 00 20 00 b.a.l. .
00a0:41 00 64 00 64 00 72 00 A.d.d.r.
00a8:65 00 73 00 73 00 20 00 e.s.s. .
00b0:4c 00 69 00 73 00 74 00 L.i.s.t.
00b8:00 00 5c 00 47 00 6c 00 .\.G.l.
00c0:6f 00 62 00 61 00 6c 00 o.b.a.l.
00c8:20 00 41 00 64 00 64 00 .A.d.d.
00d0:72 00 65 00 73 00 73 00 r.e.s.s.
00d8:20 00 4c 00 69 00 73 00 .L.i.s.
00e0:74 00 00 00 38 62 32 61 t...e810
この例では、既定のグローバル アドレス一覧 (GAL) が、オフライン アドレス一覧として使用されます。
オフライン アドレス帳の GUID
同期を保つためには、一致するアドレス一覧名を使用することに加えて、Exchange と Outlook で一致する GUID を使用します。Outlook OAB の GUID が Exchange サーバーで使用される GUID と一致していない場合、OAB の完全ダウンロードが実行されます。生成される結果の OAB エラー コードは 4、6、または 8 です。イベント データを調べることによって、OAB GUID を検証できます。
Exchange Server で使用される GUID はオフセット 00b8 から始まります。Outlook で使用される GUID はオフセット 00e0 から始まります。このようなデータの例を次に示します。
00b8:00 00 00 00 65 38 31 30 ....e810
00c0:35 35 61 38 2d 62 64 38 55a8-bd8
00c8:38 2d 34 33 34 62 2d 39 8-434b-9
00d0:37 31 37 2d 64 34 33 37 717-d437
00d8:61 62 34 35 31 35 36 39 ab451569
00e0:00 65 38 31 30 35 35 61 .e81055a
00e8:38 2d 62 64 38 38 2d 34 8-bd88-4
00f0:33 34 62 2d 39 37 31 37 34b-9717
00f8:2d 64 34 33 37 61 62 34 -d437ab4
0100: 35 31 35 36 39 00 51569
Outlook OAB の GUID と Exchange コンピュータの GUID が一致しない場合、既存の OAB ファイルを削除して、OAB の完全ダウンロードを実行する必要があります。
詳細情報
OAB の詳細については、「オフライン アドレス帳の管理」を参照してください。
参照している情報が最新であることを確認したり、他の Exchange Server 2007 ドキュメントを見つけたりするには、Exchange Server TechCenter を参照してください。