回復用ストレージ グループについて
適用先: Exchange Server 2007 SP3, Exchange Server 2007 SP2, Exchange Server 2007 SP1, Exchange Server 2007
トピックの最終更新日: 2006-06-20
回復用ストレージ グループ (RSG) とは、メールボックス データベースをマウントし、そのマウントしたデータベースからデータを抽出した後で、抽出したデータを既存のメールボックスのフォルダにコピーしたり、既存のメールボックスと結合したりすることができる、特殊な管理ストレージ グループです。以前のバージョンの Microsoft Exchange Server では、RSG 内にマウントされているメールボックス データベースからデータを抽出する作業は、Microsoft Exchange Server Mailbox Merge Wizard (ExMerge) ツールを使用して実行されていました。Exchange Server 2007 では、データの抽出は Exchange 管理シェルの Restore-Mailbox コマンドレット、または Exchange Disaster Recovery Analyzer (ExDRA) Tool を使用して実行されます。
ここでは、以下の内容について説明します。
- RSG とストレージ グループの相違点
- RSG を使用できる場合
- RSG を使用しない場合
- RSG を使用するために必要なアクセス許可
- RSG 内にマウントされているデータベースから回復可能なデータ
- RSG を使用してデータを回復する方法
- メールボックスを運用データベースのユーザーに対応付ける方法
- RSG の制限事項
RSG は、さまざまなシナリオで使用できます。ここでは、以下のシナリオで RSG を使用する場合について説明します。
- 同一サーバーのダイヤル トーン回復 ダイヤル トーン データベースをセットアップし、元のデータベースが回復された後で RSG から回復を実行します。
- 代替サーバーのダイヤル トーン回復 ダイヤル トーン データベースの代替サーバーを使用し、元のデータベースが回復された後で RSG からデータを回復します。
- メールボックスの回復 バックアップからメールボックスを回復します。次に、削除済みメールボックスからデータを抽出し、それをアクティブなデータベース内の移動先のフォルダまたはメールボックスにコピーします。
- 特定のアイテムの回復 現在のアクティブなメールボックスから削除または破棄されたために消失したが、バックアップ内には存在する情報を検索します。たとえば、法的な照会を受けているときのメッセージの回復があります。
回復用ストレージ グループとストレージ グループの相違点
RSG はストレージ グループと似ていますが、大きな違いがいくつか存在します。RSG では、ストレージ グループのいくつかの機能が無効になっています。RSG とストレージ グループの相違点を以下に示します。
MAPI (Messaging Application Programming Interface) 以外のすべてのプロトコルが無効になっています。SMTP (簡易メール転送プロトコル)、POP3 (Post Office Protocol Version 3)、および IMAP4 (インターネット メッセージ アクセス プロトコル 4) は、いずれも RSG 内のメールボックス データベースでは使用できません。したがって、RSG 内のデータベースとの間でメールを送受信することはできません。この設計により、RSG によって Exchange システムにメールが挿入されたり削除されたりすることを防止できます。
MAPI アクセスは RSG でサポートされていますが、Microsoft Outlook または Outlook Web Access を介してメールボックスにアクセスすることはできません。
RSG 内にマウントされたデータベースに存在するメールボックスは、Active Directory ディレクトリ サービス アカウントには接続できません。これらのメールボックスは、既存のメールボックスに結合するか、または既存のメールボックス内のフォルダにコピーする必要があります。
システムおよびメールボックス管理ポリシーは適用されません。この設計により、RSG 内のアイテムを復旧しようとしているときに、それらのアイテムがシステムによって削除されることを防止できます。
オンライン保守は、RSG 内のデータベースに対しては実行されません。これにより、サーバーのパフォーマンスがこのような負荷の高い操作の影響を受けなくなります。
RSG 内のデータベースは、Exchange Information Store サービスの開始時に自動的にマウントされるように設定することはできません。これらのデータベースは、常に手動で起動する必要があります。クラスタ フェールオーバーの時点でデータベースがマウントされていた場合も、フェールオーバーの完了時に自動的にマウントされることはありません。
RSG を最初に作成した後でデータ パスを変更したり、データ ファイルを移動したりすることはできません。パスを変更するには、RSG を削除してから再作成する必要があります。また、ファイルは目的の場所に手動で移動する必要があります。
パブリック フォルダ データベースは、RSG 内にマウントできません。
通常のストレージ グループはサーバーあたり最大 50 までサポートされていますが、RSG はサーバーあたり 1 つしかサポートされていません。
注 : Exchange のバージョンによって、マウント可能なストレージ グループの最大数は異なりますが、どのバージョンでも 50 を超えることはありません。 クラスタ連続レプリケーションまたはローカル連続レプリケーションを使用してレプリケーション用に RSG を構成することはできません。
RSG は、データベースの復元先としては使用できますが、バックアップすることはできません。
回復用ストレージ グループを使用できる場合
RSG は、以下の条件とシナリオでメールボックス データベースを回復するように設計されています。
- ストレージ グループ、データベース、およびデータベース内のメールボックスに関する論理的な情報が Active Directory 内に元のまま残され、変更されていない場合。
- 単一のメールボックス、単一のデータベース、または単一のストレージ グループ内にあるデータベースのグループを回復する必要がある場合。回復シナリオには以下のものがあります。
- 別のコピーを運用環境に置いたまま、データベースの代替コピーを回復または修復し、最終的にこの 2 つのデータベースを結合する。
- データベースを、そのデータベースの元のサーバー以外のサーバーに回復する。必要な場合は、回復されたデータを後で元のサーバーに結合することができます。
- ユーザーがメールボックスから削除したが、その後必要になった削除済みアイテムを回復する。
- 複数のデータベースを一度に回復する場合は、それらの元のストレージ グループがすべて同じである限り、複数のデータベースを RSG に追加できます。最初のデータベースを追加した後は、そのデータベースのストレージ グループのデータベースしか追加できません。各サーバーがホストできる RSG は 1 つだけであるため、それ以外の場合は複数のサーバーを使用する必要があります。
回復用ストレージ グループを使用しない場合
RSG は、以下の条件での使用には適していません。
- パブリック フォルダのコンテンツを回復する必要がある。メールボックス データベースのみがサポートされています。
- ストレージ グループを一度に 1 つずつ復元して、サーバー全体を復元する必要がある。
- 複数のストレージ グループからデータベースを復元する必要がある。
- Active Directory トポロジの変更または再構築が必要な緊急事態にある。
回復用ストレージ グループを使用するために必要なアクセス許可
コンテンツを移動先のメールボックスにエクスポートするには、移行を実行するアカウントに、RSG がマウントされているサーバー、移動先のサーバー、および移動先のメールボックスが存在するサーバーに対するアクセス許可が必要です。
RSG からコンテンツを回復するには、Restore-Mailbox タスクを実行するために使用するアカウントに、次のいずれかのアクセス許可が必要です。Exchange 管理者 (完全) (組織全体) または Exchange サーバー管理者 (移動元のサーバー)。
移動先のメールボックスが存在するサーバーでは、アカウントに次のいずれかのアクセス許可が必要です。Exchange 管理者 (完全) (組織全体) または Exchange Recipient Administrators (移動先のサーバー)。
回復用ストレージ グループを使用して復旧可能なデータ
RSG 内にマウントされたデータベースからは、すべてのアイテムの種類、通常のフォルダ、および特別なフォルダのコンテンツ (隠しフォルダやメモなど) を含む、メールボックス全体を抽出することができます。コンテンツの形式、名前、および値は保持されます。メールボックスには以下のアイテムが含まれており、これらを抽出できます。
- 表示および非表示を含むすべてのフォルダと、フォルダ構造。
- すべてのメッセージの種類 (メッセージ、予定表アイテム、連絡先、配布リスト、ジャーナル、仕事、メモ、およびドキュメントを含む)。
特別なフォルダのコンテンツは、メールボックス内に存在する既存の特別なフォルダに結合されます。特別なフォルダがまだ存在していない場合は、メールボックスの内容に基づいてフォルダが作成されます。コンテンツがメールボックス内のサブフォルダにコピーされる場合、特別なフォルダは無視されます。
特別なコンテンツ (検索フォルダ、削除済みアイテム、および予定表アイテム) は、機能の重複や消失を避けるために特別に処理されます。
回復用ストレージ グループを使用してデータを回復する方法
RSG 内にマウントされたデータベースからデータを回復する場合は、データベースから抽出するデータに関して次の 2 つのオプションがあります。
- メールボックスと結合する 回復したメールボックス全体、または回復したメールボックスのデータのフィルタを適用したサブセットを、アクティブなメールボックスと結合できます。このオプションでは、アクティブなメールボックス内のデータが追加されますが、上書きは行われません。
- サブフォルダにコピーする 回復したメールボックス全体、または回復したメールボックスのデータのフィルタを適用したサブセットを、アクティブなメールボックス内のサブフォルダにコピーできます。
回復したデータがメールボックスと結合される場合は、ルール、検索フォルダ、およびメールボックス内に既に存在するアイテムを除くすべてのデータが結合されます。
- 結合とは、各アイテムが RSG 内にマウントされたメールボックス データベースから通常のストレージ グループ内の 1 つ以上のメールボックスにコピーされた後で、移動先のメールボックス内に既に存在する可能性のある既存のメールと比較されることです。移動先のメールボックスの現在の内容は最適なコピーと見なされ、保持されます。結合では、データへのフィルタの適用、特定のデータのみの回復、および回復したデータの既存のメールボックスへの結合が可能です。
メールボックスを運用ユーザーに対応付ける方法
Restore-Mailbox コマンドレットには、次の 2 つのパラメータ セットがあります。
- **結合モード ** 移動先のメールボックスとして、ユーザー メールボックスの ID を指定できます。この場合は、RSG データベース内のメールボックスと対応付けるために、移動先のメールボックスの GUID が使用されます。
- フォルダへのコピー モード 移動先のメールボックス内のユーザー フォルダの ID を指定できます。移動元の RSG メールボックスは、パラメータ RsgMailbox で識別されます。このパラメータは、データを対応付けるために次のユーザー属性を受け付けます。
- MailboxGuid 回復するメールボックスの Exchange メールボックス GUID
- **LegacyExchangeDN ** 回復するメールボックスの完全な LegacyDN ('/O=First Organization/OU=First Admin Group/Cn=Recipients/CN=Jim' など)
回復用ストレージ グループの制限事項
RSG を使用する前に、以下の制限事項に注意してください。
- Exchange 2007 RSG は、以前のバージョンの Exchange Server からのメールボックス データベースのマウントをサポートしていません。
- 移動先のメールボックスは、RSG 内にマウントされているメールボックス データベースと同じフォレストに存在している必要があります。
- RSG 内にパブリック フォルダ データベースをマウントすることはできません。
- 1 つのサーバーに同時に存在できる RSG は 1 つだけです。
- コンテンツをアクティブなメールボックスに回復したとき、フォルダのアクセス制御リスト (ACL) は保持されません。RSG の処理は、メールボックス データベースを回復し、新しいコンテンツを元のデータベースに結合することであるため、ACL をコピーする必要はありません。
参照している情報が最新であることを確認したり、他の Exchange Server 2007 ドキュメントを見つけたりするには、Exchange Server TechCenter を参照してください。