ハードウェア仮想化環境内の Exchange Server に対するマイクロソフトのサポート ポリシーおよび推奨事項
トピックの最終更新日: 2012-06-06
ここでは、ハードウェア仮想化環境の運用環境で現在サポートされているバージョンの Microsoft Exchange Server を実行する場合のマイクロソフトのサポート ポリシーについて説明します。ハードウェア仮想化環境の運用環境で Exchange Server を実行する場合の推奨事項についても説明します。
ハードウェア仮想化ソフトウェアにより、単一の物理マシン上で複数の別のオペレーティング システムを同時に実行することができます。マイクロソフトでは、以下のソフトウェアによってハードウェア仮想化機能を提供しています。
Windows Server 2008 Hyper-V テクノロジ/Microsoft Hyper-V Server Windows Server 2008 は Hyper-V と呼ばれる 64 ビットの仮想化テクノロジを提供します。Hyper-V (ハイパーバイザ) とは、ハードウェアのすぐ上に位置し 1 つ以上のオペレーティング システムの下にあるソフトウェア層です。Hyper-V の詳細については、「Virtualization and Consolidation with Hyper-V」を参照してください (このサイトは英語の場合があります)。
Windows Server 2008 R2 Hyper-V テクノロジ/Microsoft Hyper-V Server Windows Server 2008 R2 Hyper-V は、Windows Server 2008 Hyper-V のアーキテクチャと機能を基盤としており、製品の柔軟性を強化する複数の新機能が追加されています。Windows Server 2008 R2 Hyper-V の主な機能やシナリオの詳細については、「Virtualization with Hyper-V: Overview」を参照してください。
Microsoft Virtual Server Virtual Server は、Windows Server System プラットフォーム (Windows Server 2003 および Windows Server 2003 R2) 向けに設計されたサーバー仮想化テクノロジを提供するソフトウェアです。Microsoft Virtual Server の詳細については、「Virtual Server 2005 R2 SP1 Product Overview」を参照してください (このサイトは英語の場合があります)。
Microsoft Virtual PC Virtual PC は、Microsoft Windows デスクトップ上に個別の仮想マシンを作成できるようにするソフトウェアです。各仮想マシンは物理コンピュータのハードウェアを仮想化します。Virtual PC の詳細については、「Microsoft Virtual PC 2007 Product Information」を参照してください (このサイトは英語の場合があります)。
サード パーティもハードウェア仮想化機能を提供しています。サード パーティのハードウェア仮想化ソフトウェアに対するマイクロソフトのサポート ポリシーの詳細については、以下を参照してください。
サポートされているマイクロソフト以外のハードウェア仮想化環境の運用環境で Exchange Server を実行する場合における、設計とサイジングの情報、推奨事項、およびベスト プラクティスについては、仮想化ソフトウェアの製造元にお問い合わせください。
このトピックで使用される用語
以下の用語は、このトピック全体で使用されます。
- ハイパーバイザ
ハードウェアのすぐ上に位置し 1 つ以上のオペレーティング システムの下にあるソフトウェア層です。
- ルート
ハードウェア仮想化ソフトウェアが実行されている物理マシンです。一部のハードウェア仮想化環境では、このコンピュータは "親" または "ホスト" マシンとも呼ばれます。
- ゲスト
ハードウェア仮想化環境の "子" マシンとして実行されている仮想マシンです。通常、仮想マシンは、ホスト マシン内のハードウェア上の第 2 または第 3 レベルで実行されます。
Exchange Server 2007 に対するサポート ポリシーおよび推奨事項
マイクロソフトは、以下の条件がすべて満たされる場合にのみ、ハードウェア仮想化ソフトウェアの運用環境で Exchange Server 2007 をサポートします。
ハードウェア仮想化ソフトウェアが、「Windows Server Virtualization Validation Program」(このサイトは英語の場合があります) に基づいた検証済みの Windows Server 2008 Hyper-V テクノロジ、Microsoft Hyper-V Server、またはサード パーティのハイパーバイザである。
Exchange Server ゲスト仮想マシンには、以下のような状況にあります。
Microsoft Exchange Server 2007 Service Pack 1 (SP1) 以降のバージョンを実行している。
Windows Server 2008 64 ビット オペレーティング システム上に展開されている。
ユニファイド メッセージング サーバーの役割がインストールされていない。ユニファイド メッセージングの役割以外の Exchange 2007 サーバーの役割のすべては、仮想化環境でサポートされます。
「Exchange 2007 のシステム要件」のすべての要件を満たしている。
Exchange データを格納するために Exchange Server ゲスト マシンによって使用される記憶域 (メールボックス データベースやハブ トランスポート キューなど) は、固定サイズの仮想ストレージ (Hyper-V 環境の固定仮想ハード ドライブ (VHD) など)、SCSI パススルー記憶域、またはインターネット SCSI (iSCSI) 記憶域です。パススルー記憶域は、ホスト レベルで構成される、ゲスト マシン専用の記憶域です。Exchange データを格納するために Exchange ゲスト マシンで使用される記憶域はすべて、ブロック レベルのストレージである必要があります。Exchange 2010 では、Network Attached Storage (NAS) のボリュームの使用はサポートしていません。ハイパーバイザを使用することによってブロック レベルのストレージとしてゲストに提示される NAS ストレージは、サポートされていません。パススルーのボリュームは、ハードウェア仮想化ソフトウェアにブロック レベルのストレージとして提示される必要があります。これは、Exchange 2010 では、Network Attached Storage (NAS) のボリュームの使用がサポートされていないためです。Exchange データの格納に使用されるボリュームに適用される仮想ディスク要件は以下のとおりです。
注 : Hyper-V 環境では、各固定 VHD を 2,040 GB 未満にする必要があります。サポートされているサード パーティのハイパーバイザの場合は、製造元に問い合わせてディスク サイズの制限が存在するかどうかを確認してください。 動的に拡張する仮想ディスクは Exchange によってサポートされていません。
差分またはデルタ メカニズム (Hyper-V の差分 VHD またはスナップショットなど) を使用する仮想ディスクはサポートされていません。
管理ソフトウェア (ウイルス対策ソフトウェア、バックアップ ソフトウェア、仮想マシン管理ソフトウェアなど) のみ物理ルート マシン上に展開できます。その他のサーバーベースのアプリケーション (Exchange Server、SQL Server、Active Directory、SAP など) はルート マシンにインストールしないでください。ルート マシンはゲスト仮想マシンの実行専用にする必要があります。
マイクロソフトは、ハードウェア仮想化環境での Exchange クラスタ連続レプリケーション (CCR) およびシングル コピー クラスタ (SCC) をサポートしています。ただし、仮想化環境にハイパーバイザ ベースのクラスタ化ソリューションまたは移行ソリューション (Hyper-V の Quick Migration や VMware ESX vMotion など) が含まれていないことが条件です。これらのソリューションは、ゲスト マシンとして実行されているクラスタ化メールボックス サーバーをルート サーバー間で自動的にフェイルオーバーまたは移動するように構成されています。
一部のハイパーバイザには、仮想マシン用のスナップショットを撮る機能が含まれています。仮想マシンのスナップショットは、実行中の仮想マシンの状態をキャプチャします。この機能により、仮想マシンの複数のスナップショットを撮り、スナップショットを仮想マシンに適用することで仮想マシンを以前の状態に戻すことができます。ただし、仮想マシンのスナップショットはアプリケーション対応ではなく、スナップショットの使用により、Exchange Server などの状態データを保持するサーバー アプリケーションで意図せず予期しない結果が発生する可能性があります。このため、Exchange ゲスト仮想マシンの仮想マシン スナップショットの作成はサポートされていません。
多くのハードウェア仮想化製品では、各ゲスト仮想マシンに割り当てられる仮想プロセッサの数を指定できます。ゲスト仮想マシン内の仮想プロセッサは、物理システム内の固定数の論理プロセッサを共有します。Exchange がサポートする仮想プロセッサと論理プロセッサの比率は 2:1 以下です。たとえば、クアッド コア プロセッサを使用するデュアル プロセッサ システムでは、ホスト システムに合計 8 個の論理プロセッサが含まれます。この構成のシステムでは、すべてのゲスト仮想マシンで合わせて合計 16 を超える仮想プロセッサを割り当てないでください。
パフォーマンスとスケーラビリティに関する考慮事項
ゲスト仮想マシンでの Exchange 2007 SP1 の実行は、アプリケーションの観点から Exchange Server の設計要件を変えるものではありません。負荷を処理するために Exchange Server ゲスト仮想マシンを適切にサイジングする必要があります。仮想化された Exchange サーバーのサイジングには、仮想化されていない Exchange サーバーをサイジングする場合と同じ手法を使用します。メールボックスの役割、クライアント アクセスの役割、およびトランスポート サーバーの役割にも、パフォーマンス、容量、および信頼性を考慮して設計する必要があります。さらに、システムの使用状況プロファイルに基づいて、システム上の負荷を処理するために十分なリソースが割り当てられる必要があります。Exchange サーバーの役割のサイジングに関する詳細およびガイダンスについては、以下を参照してください。
動的メモリ割り当てに関する考慮事項
多くのハイパーバイザには、1 つ以上の仮想マシンが使用できる RAM の容量を動的に調整する機能が搭載されています。この機能により、ハイパーバイザは特定の仮想マシンの現在の RAM 要件に基づいて仮想マシンに RAM を割り当てることができます。
この機能は、一般に短期間に大量のメモリを使用してから通常の動作に戻るような負荷の仮想マシンに適しています。このシナリオでは、ハイパーバイザは、特定の負荷のニーズを満たすためにメモリを割り当て、その後に他の仮想マシンのためにメモリを再確保できます。ただし、この機能は、継続的に特定のメモリ プールを使用するように設計されている負荷には適さない場合があります。
Exchange の最近のバージョンにおけるパフォーマンス向上の多くの部分は、適切なサイズの RAM の割り当てによる使用の効率化に基づいています。これは、I/O 操作の軽減によるパフォーマンスの向上において特に顕著です。パフォーマンスの最適化は、Exchange の RAM にデータをキャッシュする機能に依存します。RAM が動的に縮小される場合、システムで期待されるパフォーマンスを実現することはできません。このシナリオでは、Exchange のパフォーマンスが低下する場合があり、エンド ユーザーが Exchange に接続する際にパフォーマンスの低下を経験する場合があります。そのため、運用環境で Exchange を実行している仮想マシンでは、メモリのオーバーサブスクリプションや動的メモリ割り当てを無効にするのが最良の方法です。代わりに、Exchange 2007 に適した値に基づいた静的メモリ サイズを構成してください。
メモリに関する考慮事項の詳細については、「メモリの構成の計画」を参照してください。動的メモリ割り当ての詳細については、Hyper-V チームのホワイトペーパー「Implementing and Configuring Dynamic Memory」の「Application Considerations」を参照してください。
仮想マシンに関する考慮事項
以下は、Exchange ゲスト仮想マシンに関する考慮事項です。
割り当てられる仮想プロセッサの合計数を計算するときは、ルート オペレーティング システムの要件を含める必要があります。多くのハードウェア仮想化製品 (Hyper-V など) は、仮想プロセッサをルート マシンのオペレーティング システムに割り当てます。ルート マシンに割り当てられる使用可能な仮想プロセッサの数は、ルート マシンの物理プロセッサとコアの数およびその他の構成設定に基づいて変わります。Hyper-V の場合、ルート マシンに割り当てられる仮想プロセッサの数は、ルート マシンの物理プロセッサ コアの数と等しくなります。この数は、多くの場合、ほとんどの Exchange 構成で通常必要になる値を上回ります。
ルート マシンによって必要になる仮想プロセッサの合計数を計算する場合には、I/O とオペレーティング システムの両方の要件も考慮する必要があります。ほとんどの場合、Exchange 仮想マシンをホストするシステムのルート オペレーティング システムで必要となる仮想プロセッサに相当する数は 2 です。この値は、物理コアと仮想プロセッサの全体の比率を計算する際に、ルート オペレーティング システムの仮想プロセッサのベースラインとして使用されます。ルート オペレーティング システムのパフォーマンスの監視で、2 プロセッサに相当する以上の使用率でプロセッサを消費していることが示された場合は、ゲスト仮想マシンに割り当てられる仮想プロセッサの数を減らし、仮想プロセッサと物理コアの比率が 2:1 以下であることを確認する必要があります。
Exchange サーバー ゲスト マシンの記憶域およびネットワーク設計では、ルート マシンに関してその他の考慮が必要です。特に、ルート マシンの CPU への影響について考慮する必要があります。一部のハードウェア仮想化環境 (Hyper-V など) では、ゲスト仮想マシンによって行われる I/O 要求はすべて、ルート マシンを通じて処理されます。これらの環境では、Exchange サーバー ゲスト マシンと同じルート マシン上にホストされているゲスト マシンに、その他の I/O を集中的に使用するアプリケーション (Microsoft SQL Server など) を展開しないことをお勧めします。
Exchange サーバーへの仮想化層の追加 (Exchange はゲスト仮想マシンで実行されます) は、パフォーマンスと可用性を監視する必要があるコンポーネントが増えることを意味します。仮想環境で Exchange を監視するときのその他の考慮事項は次のとおりです。
ゲスト仮想マシン内部の CPU サイクルは、ルート マシンの CPU タイム スライスに相対して発生します。この動作により、ゲスト仮想マシン内部の CPU 関連のパフォーマンス カウンタの値とは異なる値がルート マシンによって報告されます。ただし、各システムによって報告される値はシステムからの視点とプロセッサ リソースがルート マシンとゲスト マシン間で共有される方法に基づいているため、どちらも正しい値です。Hyper-V 環境でのこの問題の詳細については、Microsoft TechNet のトピック「Hyper-V: Clocks lie... which performance counters can you trust?」を参照してください。
注 : UNRESOLVED_TOKEN_VAL(exBlog) Exchange 固有のパフォーマンス カウンタは、ゲスト マシンでのみ使用可能です。ルート マシンは、直接使用しているリソースのパフォーマンス データおよびホスト環境に固有のカウンタ (Hyper-V のパフォーマンス カウンタ) のみを発行します。ルート マシンは、Exchange 固有のパフォーマンス データを発行しません。
一部のハイパーバイザのゲスト仮想マシンは、物理マシンによって示されるプロセッサ スケーラビリティ傾向とは異なるプロセッサ コア スケーラビリティ傾向を示します。運用環境に移す前に構成済みのゲスト仮想マシンに徹底的なストレス テストを実行することが重要です。
一部のハイパーバイザには、ゲスト マシン間でリソースを分散することができるリソース制御機能が含まれています。たとえば、Hyper-V 環境では、各ゲスト マシンに対して予約されるプロセッサ リソースの割合を指定できます。これを "仮想マシン予約" と呼びます。各ゲスト マシンが使用できるプロセッサ リソースの最大比率を指定することもできます。これを "仮想マシンの上限" と呼びます。さらに、各ゲスト マシンに相対的な重みを割り当てて、複数のゲスト マシンが実行され、リソースの競合が発生している場合のリソースの割り当て方法を指示することもできます。ほとんどの環境では、ハイパーバイザのリソース制御設定は既定の設定から変更する必要はありません。構成と調整に関する情報については、ハイパーバイザの製造元に確認することをお勧めします。
大きなメールボックス (1 GB 以上など) のサポートには、クラスタ連続レプリケーションまたはハードウェア ベースの VSS ソリューションの使用が必要です。ハードウェア ベースの VSS は、ハードウェア仮想化環境では使用できません。
高可用性と障害回復に関する考慮事項
Exchange 2007 には、ローカル連続レプリケーション (LCR)、クラスタ連続レプリケーション (CCR)、スタンバイ連続レプリケーション (SCR)、シングル コピー クラスタ (SCC) など、多数の高可用性および障害回復の機能が含まれています。4 つのすべての構成は、仮想化環境でサポートされます。
一部のハードウェア仮想化ソフトウェアには、複数の物理ルート マシン間でのゲスト仮想マシンのクラスタ化または移植性をサポートする機能が含まれています。たとえば、Hyper-V には、Hyper-V ホスト マシンを Windows のフェールオーバー クラスタと組み合わせる、Quick Migration (クイック移行) というクラスタ化ソリューションが含まれています。Quick Migration の詳細については、「Quick Migration with Hyper-V White Paper」をダウンロードできます (このサイトは英語の場合があります)。Windows Server 2008 Enterprise オペレーティング システムおよび Windows Server 2008 Datacenter オペレーティング システムでは、クライアント サービスを提供する各サーバーを物理サーバー上でゲスト仮想マシンとして実行し、物理サーバーをフェールオーバー クラスタ (連携動作してサービスに対する冗長性を提供する、接続済みコンピュータのグループ) 内のノードとして構成することができます。この構成では、クラスタ内のその他の物理サーバーは、Quick Migration を通じて必要に応じてゲスト仮想マシンをサポートする準備ができています。ゲスト マシン上での Quick Migration の影響は、停止の性質によって異なります。
スケジュールされた停止 スケジュールされた停止は、管理者がクラスタ化リソースをクラスタ内の別のノードに手動で移動する場合に発生します。このシナリオでは、ゲスト マシンの状態は中断されて保存され、リソースは指定されたノードに転送され、ゲスト マシンは指定されたノード上で保存状態から再開されます。Exchange の観点から見ると、サーバーでは通常、TCP 接続の切断のみが発生します。クライアントでは、移行処理中にサービスが中断します。Exchange ActiveSync クライアント同様、Exchange キャッシュ モードの Microsoft Office Outlook ユーザーは少しの間オフラインになり、オンライン モードの Outlook ユーザーと Office Outlook Web Access、POP3、および IMAP4 のユーザーは移行処理中メールボックスにアクセスできなくなります。停止の長さは、仮想マシンの中断、移動、および再開にかかる時間によって異なり、仮想マシンの記憶域の接続およびメモリ サイズによって大きな影響を受けます。
スケジュールされていない停止 スケジュールされていない停止は、障害がクラスタ フェールオーバー ポリシーをトリガする程度までアクティブ ノードに影響を及ぼす場合に発生します。たとえば、アクティブ ノードが電源を失ったり、致命的なソフトウェアまたはハードウェア障害が発生した場合です。このシナリオでは、ゲスト マシンでは予期しない電源損失が発生します。メールボックス サーバーの役割をホストする Exchange ゲスト マシンでは、予期しないシャットダウンによってデータベースはダーティ シャットダウン状態になります。Exchange ゲストが再起動されると、Exchange は組み込みのクラッシュ回復プロセスを実行し、すべてのデータベースに対してすべてのログを再生します。回復が完了するまでの時間は、再生する必要があるログ ファイルの数によって異なります。チェックポイント以降に生成されたすべてのログ ファイルを再生する必要があります。通常、少なくとも 1 秒間に 2 つのログ ファイルを再生する速度を実現します。
仮想化された Exchange Server 用の高可用性ソリューションの選択
仮想化された Exchange サーバーには、ハイパーバイザが提供するクラスタ化ソリューションまたは移植性ソリューション (Hyper-V の Quick Migration 機能など) ではなく、組み込みの Exchange Server 高可用性ソリューションを使用することをお勧めします。Exchange Server の機能 (特に、クラスタ連続レプリケーション (CCR)) は、物理ルート マシン間で仮想マシンを移動するハイパーバイザ ソリューションの機能よりも優れた利点を提供します。
Exchange に組み込まれているデータ レプリケーション メカニズム (連続レプリケーション) は、CCR と呼ばれる構成で Windows フェールオーバー クラスタと組み合わせることができます。CCR をハードウェア仮想化環境に展開し、それによって仮想化された環境で Exchange 2007 用のサービスおよびデータ可用性ソリューションを提供することができます。仮想化された CCR (または SCC) 環境で、真の冗長性と高可用性を実現するには、クラスタ内のノードである各ゲスト マシンを個別の物理ルート マシンにホストする必要があります。
注 : |
---|
物理ノードと仮想ノードを組み合わせて使用して CCR または SCC を展開する方法はサポートされています。すべての Exchange 高可用性構成の場合と同様、スケジュールされた停止またはスケジュールされていない停止時に全負荷を処理するようにすべてのノードが適切にサイジングされていることを確認する必要があります。 |
仮想化された Exchange サーバーにハイパーバイザ ベースの仮想マシン移行 (Hyper-V の Quick Migration など) を使用することはお勧めしません。仮想マシン移行構成では、スケジュールされていない停止によりデータ損失が発生する可能性があります。CCR 環境では、この種類のデータ損失は "トランスポート収集" という機能によって大幅に軽減されます。トランスポート収集は、環境の冗長性を利用して、フェールオーバーの影響を受けたデータの一部を再利用します。詳細については、「クラスタ連続レプリケーション」を参照してください。
(ハードウェア仮想化環境に展開される場合の) 仮想マシン移行ソリューションと CCR の違いを次の表に示します。
仮想マシン移行とクラスタ連続レプリケーションの比較
仮想マシン移行 | クラスタ連続レプリケーション | |
---|---|---|
オペレーティング システム ハートビート検出 |
可 |
可 |
Exchange サーバー ハートビート検出 |
不可 |
可 |
Exchange データのコピー数 |
1 |
2 |
共有記憶域の必要性 |
可 |
不可 |
パッシブ ノードからの Exchange 対応バックアップのサポート |
不可 |
可 |
バックアップと復元に関する考慮事項
Exchange Server には大きな I/O 要件があります。ゲスト仮想マシンに大きな Exchange サーバーを展開するときは、データ記憶域にパススルー ディスクを使用することをお勧めします。Hyper-V での VSS の現在の実装は、ゲスト仮想マシン内部の iSCSI イニシエータに接続されているパススルー ディスクまたは iSCSI ディスクのルート ベースのバックアップをサポートしません。その結果、ルート マシン内部で実行される Exchange ゲスト仮想マシンの VSS バックアップは、ゲスト仮想マシン内で接続されているパススルーまたは iSCSI ディスクではサポートされません。
これらの記憶域の種類のいずれかを使用して、仮想化された Exchange サーバーのサポートされているバックアップを実行するには、ゲスト仮想マシン内からバックアップを実行する必要があります。ESE ストリーミング バックアップ API をサポートするバックアップ ソフトウェアまたは Exchange 対応のソフトウェア ベースの VSS ソリューション (Microsoft System Center Data Protection Manager など) を使用できます。
ルート マシン内からの Exchange ゲスト仮想マシンの VSS バックアップは、Hyper-V 仮想ハード ディスク (VHD) が使用される場合にサポートされます。
一部の記憶域ソリューションには、記憶域ボリュームのハードウェア ベースの VSS バックアップを直接作成するための記憶域ベンダがサポートする方法も含まれています。これらのバックアップ方法のサポートは、マイクロソフトではなく記憶域ベンダが提供します。
記憶域に関する考慮事項
ホスト オペレーティング システム、各ゲスト オペレーティング システム ディスク、およびすべての仮想マシン記憶域には、RAID (Redundant Array of Independent Disks) アレイを使用して保護された個別の LUN を使用することをお勧めします。Exchange 2007 の記憶域に関するベスト プラクティスに従い、データベースおよびログ ファイル用の LUN は分離する必要があります。Exchange 2007 の記憶域に関するすべての要件およびベスト プラクティスが、ハードウェア仮想化環境で実行される Exchange サーバーに適用されます。Exchange 2007 での記憶域に関する要件、推奨事項、およびベスト プラクティスの詳細については、「ディスク記憶域の計画」を参照してください。
次の図は、Hyper-V 環境での Exchange 2007 の記憶域構成を示しています。
Hyper-V 環境での Exchange 2007 の記憶域構成
ゲスト仮想マシンの記憶域要件
Exchange ゲスト マシンのオペレーティング システムは、15 GB 以上のサイズに加えてゲスト マシンに割り当てられる仮想メモリのサイズを備えたディスクを使用する必要があります。この要件は、オペレーティング システムおよびページング ファイルのディスク要件に対応するために必要です。たとえば、ゲスト マシンに 16 GB のメモリが割り当てられる場合、ゲスト オペレーティング システムに必要な最小ディスク領域は 31 GB です。
さらに、ゲスト仮想マシンがルート マシンにインストールされているファイバ チャネルまたは SCSI ホスト バス アダプタ (HBA) と直接通信できない場合があります。このイベントでは、ルート マシンのオペレーティング システムでアダプタを構成し、ゲスト仮想マシンへの LUN を仮想ディスクまたはパススルー ディスクとして提示する必要があります。
ルート マシンの記憶域要件
各ルート マシンが満たす必要があるディスク領域の最低要件は次のとおりです。
一部のハードウェア仮想化アプリケーションのルート マシンは、オペレーティング システムとそのコンポーネント用の記憶域領域を必要とする場合があります。たとえば、Windows Server 2008 Hyper-V を実行するときは、Windows Server 2008 システム要件を満たすためにオペレーティング システムに 10 GB 以上が必要になります (このサイトは英語の場合があります)。オペレーティング システムのページング ファイル、管理ソフトウェア、およびクラッシュ回復 (ダンプ) ファイルをサポートするには、追加の記憶域領域が必要となります。
一部のハイパーバイザは、各ゲスト仮想マシンに固有のファイルをルート マシンに保持します。たとえば、Hyper-V 環境では、ゲスト マシンごとに一時メモリ格納ファイル (BIN ファイル) が作成され、保持されます。各 BIN ファイルのサイズは、ゲスト マシンに割り当てられるメモリの容量に等しくなります。さらに、各ゲスト マシンにその他のファイルが作成され、ホスト マシンに保持される場合もあります。
Exchange Server のストレージ要件および推奨事項
以下は、仮想化された Exchange サーバーに接続される記憶域に関する要件および推奨事項です。
各 Exchange Server ゲスト マシンには、ゲストのオペレーティング システム、使用中の一時メモリ格納ファイル、およびホスト マシンにホストされる関連仮想マシン ファイルを含むディスクのための十分な記憶域領域をルート マシン上で割り当てる必要があります。さらに、Exchange ゲスト マシンごとに、ハブ トランスポートおよびエッジ トランスポート サーバー上でメッセージ キュー用の十分な記憶域、およびメールボックス サーバー上でデータベース ファイルとログ ファイル用の十分な記憶域を割り当てる必要もあります。
Exchange によって使用される記憶域は、ゲスト仮想マシンのオペレーティング システムをホストしている記憶域とは別のディスク スピンドルにホストする必要があります。
仮想ディスクのパフォーマンスがその他のディスクの種類ほど適切でない場合があります。さまざまな記憶域オプションの使用によって Exchange I/O がどのような影響を受ける可能性があるかを理解するには、ハイパーバイザの製造元が提供するパフォーマンスとスケーラビリティに関するドキュメントを参照してください。
トランスポート データベースとメールボックス データベースおよびトランザクション ログ ファイルをホストするには SCSI パススルー記憶域を使用することをお勧めします。パススルー ディスクを使用すると仮想マシンの移植性が制限されますが、この構成は、仮想化された Exchange サーバーのすべての記憶域オプションの中で最適なパフォーマンスを実現することを示しました。
iSCSI 記憶域を使用するとき、最適なパフォーマンスは、iSCSI イニシエータ コンポーネントがホスト マシン上で構成され、ディスクがパススルー ディスクとしてゲスト マシンに提示されている場合に実現されます。iSCSI 記憶域にはギガビット イーサネット速度以上を使用し、iSCSI 記憶域ネットワークをその他のすべてのトラフィックから分離することをお勧めします。iSCSI ネットワーク トラフィック用に専用の物理ネットワーク インターフェイス カードを使用することもお勧めします。さらに、Hyper-V 環境では、Jumbo Frame を使用し、仮想ネットワーク スイッチにバインドされないように、専用物理 iSCSI ネットワーク カードを構成することをお勧めします。
Exchange ゲスト仮想マシン内部で iSCSI イニシエータを使用するように iSCSI 記憶域を構成することはサポートされています。ただし、仮想マシン内部のネットワーク スタックは仮想化されていないネットワーク スタックほど完全機能を備えていない (仮想ネットワーク スタックは Jumbo Frame をサポートしないなど) ため、この構成ではパフォーマンスが低下します。しかし、iSCSI 記憶域はゲストの iSCSI イニシエータに直接接続され、パススルー ディスクとして構成されないため、仮想マシンの移植性は高くなります。
ネットワークに関する考慮事項
ハードウェア仮想化環境で Exchange 2007 を実行するときは、特定のネットワーク構成を使用することをお勧めします。このような構成は、Exchange が高可用性向けに展開されているかどうかによって異なります。
高可用性向けに展開されてない環境 (たとえば、CCR なし、SCC なし、Quick Migration なし) の場合、ハイパーバイザ ベンダが提供する計画および展開のガイダンスに従うことをお勧めします。たとえば、Hyper-V の場合、「Hyper-V Planning and Deployment Guide」(このサイトは英語の場合があります) および「Microsoft Hyper-V Server 2008 Configuration Guide」(このサイトは英語の場合があります) に示されているガイダンスに従うことをお勧めします。
高可用性向けに展開されている環境 (たとえば、CCR または SCC) の場合、ルート マシンに少なくとも 2 枚の物理ネットワーク インターフェイス カード (NIC) を取り付けることをお勧めします。一方の NIC はハイパーバイザ ルート マシン専用にし、他方の NIC はゲスト仮想マシン専用にします。ルート マシンまたはゲスト マシンで使用する iSCSI 記憶域には、さらに追加した異なる NIC を使用してください。
注 : |
---|
ネットワーク負荷分散 (NLB) を使用して、高可用性向けにも構成された Hyper-V のクライアント アクセスまたはハブ トランスポート ゲスト マシンを展開する場合、マイクロソフト サポート技術情報の記事 953828「Windows Server 2008 Hyper-V virtual machines on expected as the NLB host does not converge します。」に記載されている修正プログラムをインストールする必要があります。NLB をインストールし構成する方法の詳細については、「Network Load Balancing Deployment Guide」 (英語) を参照してください。 |
Exchange Server 2003 に対するサポート ポリシーおよび推奨事項
マイクロソフトは、以下の条件がすべて満たされる場合にのみ、ハードウェア仮想化ソフトウェアの運用環境で Exchange Server 2003 をサポートします。
ハードウェア仮想化ソフトウェアが Microsoft Virtual Server 2005 R2 またはそれ以降のバージョンの Microsoft Virtual Server である。
仮想マシンで実行されている Exchange Server のバージョンが Microsoft Exchange Server 2003 Service Pack 2 (SP2) またはそれ以降である。
Microsoft Virtual Server 2005 R2 バーチャル マシンの追加機能がゲスト オペレーティング システムにインストールされている。
Exchange Server 2003 が Windows フェールオーバー クラスタの一部ではなく、スタンドアロン サーバーとして構成されている。
ゲスト オペレーティング システムにインストールされている SCSI ドライバが Microsoft Virtual Machine PCI SCSI コントローラ ドライバである。
仮想ハード ディスクの復元機能が Exchange 仮想マシンで有効になっていない。
注 : バーチャル マシンの追加機能がインストールされた後で仮想マシンに Microsoft Virtual Server SCSI アダプタが追加されると、ゲスト オペレーティング システムは汎用の Adaptec SCSI ドライバを検出してインストールします。この場合、正しい SCSI ドライバがゲスト オペレーティング システムにインストールされるようにするには、バーチャル マシンの追加機能を削除し、再インストールする必要があります。
ゲスト オペレーティング システムにインストールされている SCSI ドライバを確認するには、以下の手順を実行します。
ゲスト オペレーティング システムで、[マイ コンピュータ] を右クリックし、[管理] をクリックします。
[システム ツール] の下の [デバイス マネージャ] をクリックします。
[SCSI と RAID コントローラ] の下で、[Microsoft Virtual Machine PCI SCSI Controller] が一覧に表示されていることを確認します。異なるドライバが表示されている場合は、バーチャル マシンの追加機能を再インストールする必要があります。たとえば、Adaptec が表示されている場合は、バーチャル マシンの追加機能を再インストールする必要があります。
注 : 仮想マシンが IDE コントローラのみを使用するように構成されている場合は、操作は必要ありません。
パフォーマンスとスケーラビリティに関する考慮事項
仮想化された環境への Exchange Server 2003 SP2 の展開を計画する場合、Exchange Server 2003 用の各仮想マシンのサイジングについては「Exchange Server 2003 パフォーマンスとスケーラビリティ ガイド」に記載されているパフォーマンスとスケーラビリティに関する考慮事項が適用されます。
ただし、一部の考慮事項は、Virtual Server 2005 R2 上で実行されるときの Exchange Server 2003 のパフォーマンスとスケーラビリティに直接影響します。ホスト構成とゲスト構成の両方をサイジングするときに、これらの要素を考慮する必要があります。
以下は、仮想マシン構成に関して考慮する必要がある要素です。
各仮想マシンに搭載できる CPU は 1 つだけです。これにより、仮想化された Exchange インストールの処理能力が制限されます。サーバーは、サーバーでの見積もり負荷を単一 CPU で処理できるような方法でサイジングする必要があります。また、ホスト コンピュータ上で同じ時点で実行される仮想マシンの数は、システム全体の全体的なパフォーマンスに影響します。
仮想マシンのディスク容量をサイジングするときは、ネットワーク経由での Exchange Server データの完全なオンライン バックアップを実行するために必要な時間を考慮する必要があります。Exchange Server バックアップ用の専用仮想ネットワーク アダプタの追加を検討してください。
注 : ホスト レベルで仮想ハード ディスク (.VHD) ファイルのオフライン バックアップを実行することができますが、これにより、定期的な Exchange Server バックアップを実行する必要がなくなるわけではありません。Exchange Server のバックアップ プロセスおよび復元プロセスの詳細については、「Exchange Server 2003 障害回復ガイド」を参照してください。 Exchange Server データベースおよびログ ファイル用の個別の固定サイズの仮想ディスクを作成し、ホスト サーバー上の個別の物理ドライブに格納します。
運用前に、Exchange Server 2003 パフォーマンス ツールを使用して Exchange Server のパフォーマンスを検証する必要があります。これらのツールの詳細については、「Exchange Server 2003 パフォーマンスとスケーラビリティ ガイド」を参照してください。
以下は、ホスト構成に関して考慮する必要がある要素です。
Virtual Server 2005 R2 を実行しているサーバーが、展開を計画している仮想マシンの数を処理するように正しくサイジングされていることを確認します。この見積もりには、CPU、メモリ、ネットワーク アダプタ、およびディスク構成を含める必要があります。
高速アクセスを可能にするハード ディスク ソリューションを使用します。SCSI ハード ディスク、RAID (Redundant Array of Independent Disks)、またはストレージ エリア ネットワーク (SAN) を使用して、Exchange Server データによって使用される .VHD ファイルを格納できます。
ホストにウイルス対策プログラムがインストールされている場合は, .VHD ファイルをスキャンしないようにウイルス対策プログラムを構成する必要があります。
Exchange Server 2003 よりも前のバージョンの Exchange Server に対するサポート ポリシー
マイクロソフトは、ハードウェア仮想化環境で Exchange Server 2003 よりも前のバージョンの Microsoft Exchange Server を運用環境で実行することをサポートしません。このポリシーは、Exchange 2000 Server、Exchange 2000 Conferencing Server、Exchange Server 5.5、およびすべての以前のバージョンの Exchange Server に適用されます。