PII セキュリティ ロックダウン
このサンプルでは、次の機能を使用して、Windows Communication Foundation (WCF) サービスの複数のセキュリティ関連機能を制御する方法を示します。
サービスの構成ファイル内の機密情報を暗号化します。
入れ子になったサービス サブディレクトリが設定をオーバーライドできないように、構成ファイル内の要素をロックします。
トレースおよびメッセージ ログで、個人を特定できる情報 (PII) のログ記録を制御します。
これらの各機能を単独または組み合わせて使用することにより、サービスのさまざまなセキュリティを制御できます。ただし、ここでの記述は WCF サービスのセキュリティ保護について完全に説明するものではありません。
.NET Framework の構成ファイルには、データベースに接続するための接続文字列などの機密情報を格納できます。共有の Web ホストのシナリオでは、この情報をサービスの構成ファイル内で暗号化して、構成ファイル内に含まれるデータを偶発的に表示されないようにすることが望ましい場合があります。NET Framework 2.0 以降のバージョンでは、Windows データ保護アプリケーション プログラミング インターフェイス (DPAPI) または RSA 暗号化プロバイダを使用して、構成ファイルの一部を暗号化できます。DPAPI または RSA を使用して aspnet_regiis.exe を実行すると、構成ファイルの選択部分を暗号化できます。
Web ホストのシナリオでは、他のサービスのサブディレクトリにサービスを設定できます。構成値を決定する既定の意味的方法によると、入れ子になったディレクトリ内の構成ファイルで親ディレクトリの構成値をオーバーライドできます。特定の状況では、さまざまな理由でこれが望ましくない場合があります。WCF サービス構成では、オーバーライドされた構成値を使用して入れ子になったサービスを実行する場合、入れ子になった構成が例外を生成できるように、構成値をロックすることができます。
このサンプルでは、トレースおよびメッセージ ログによる、ユーザー名やパスワードなどの個人を特定できる既知の情報 (PII) のログ記録を制御する方法を示します。既定では、既知の PII のログ記録は無効です。ただし特定の状況では、PII のログ記録はアプリケーションをデバック処理する際に重要になる場合があります。このサンプルは、「入門サンプル」に基づいています。さらに、このサンプルではトレースとメッセージ ログを使用します。詳細については、「トレースとメッセージ ログ」のサンプルを参照してください。
構成ファイルの要素の暗号化
共有 Web ホストの環境をセキュリティ保護するには、機密情報が含まれる可能性のあるデータベース接続文字列など、特定の構成要素を暗号化することが望ましい場合があります。構成要素は、.NET Framework フォルダ (%WINDIR%\Micrsoft.NET\Framework\v2.0.50727 など) にある aspnet_regiis.exe ツールを使用して暗号化できます。
サンプルの Web.config で appSettings セクションの値を暗号化するには
[スタート] > [ファイル名を指定して実行…] を使用してコマンド プロンプトを開き、「cmd」と入力して [OK] をクリックします。
コマンド「
cd %WINDIR%\Micrsoft.NET\Framework\v2.0.50727
」を実行して、現在の .NET Framework ディレクトリに移動します。コマンド「
aspnet_regiis -pe "appSettings" -app "/servicemodelsamples" -prov "DataProtectionConfigurationProvider"
」を実行して、Web.config フォルダの appSettings 構成設定を暗号化します。
構成ファイルのセクションを暗号化する方法の詳細については、ASP.NET 構成での DPAPI の使用方法 (「セキュリティで保護された ASP.NET アプリケーションの構築 : 認証、承認、セキュリティで保護された通信」) および ASP.NET 構成での RSA の使用方法 (「方法 : RSA を使用して ASP.NET 2.0 で構成セクションを暗号化する」) を参照してください。
構成ファイルの要素のロック
Web ホストのシナリオでは、サービスのサブディレクトリにサービスを設定できます。こうした状況で、サブディレクトリ内のサービスの構成値を計算するには、Machine.config 内の値を調べ、続いて親ディレクトリの任意の Web.config ファイルとマージしてディレクトリ ツリーの下層に移動します。そして最後に、サービスが含まれるディレクトリ内の Web.config ファイルをマージします。ほとんどの構成要素での既定の動作は、サブディレクトリ内の構成ファイルが、親ディレクトリに設定されている値をオーバーライドできるようにすることです。特定の状況では、サブディレクトリ内の構成ファイルが、親ディレクトリの構成に設定されている値をオーバーライドしないようにするのが望ましい場合があります。
.NET Framework では、構成ファイルの要素をロックして、ロックされた構成要素をオーバーライドする構成が実行時例外をスローするように設定できます。
構成要素をロックするには、構成ファイルのノードに対して lockItem 属性を指定します。たとえば、入れ子になった構成ファイル内の電卓サービスが動作を変更できないように構成ファイルの CalculatorServiceBehavior ノードをロックするには、次の構成を使用できます。
<configuration>
<system.serviceModel>
<behaviors>
<serviceBehaviors>
<behavior name="CalculatorServiceBehavior" lockItem="true">
<serviceMetadata httpGetEnabled="True"/>
<serviceDebug includeExceptionDetailInFaults="False" />
</behavior>
</serviceBehaviors>
</behaviors>
</system.serviceModel>
</configuration>
構成要素はより細かい単位でロックできます。要素の一覧は、サブ要素のコレクション内にある一連の要素をロックするための lockElements に対する値として指定できます。属性の一覧は、要素内にある一連の属性をロックするための lockAttributes に対する値として指定できます。要素または属性のコレクション全体をロックすることもできます。ただし、ノードで lockAllElementsExcept 属性または lockAllAttributesExcept 属性が指定されている一覧は除きます。
PII ログの構成
PII のログ記録は 2 つのスイッチで制御されます。1 つは Machine.config にあるコンピュータ全体の設定で、コンピュータの管理者がこれを使用することにより、PII のログ記録を許可または拒否できます。もう 1 つはアプリケーション設定で、アプリケーションの管理者がこれを使用することにより、Web.config または App.config ファイル内の各ソースで PII のログ記録の有効/無効を切り替えることができます。
コンピュータ全体の設定は、Machine.config の machineSettings 要素で、enableLoggingKnownPii を true または false に設定することによって制御されます。たとえば、次の例ではアプリケーションで PII のログ記録が有効になります。
<configuration>
<system.serviceModel>
<machineSettings enableLoggingKnownPii="true" />
</system.serviceModel>
</configuration>
メモ : |
---|
Machine.config ファイルの既定の場所は %WINDIR%\Microsoft.NET\Framework\v2.0.50727\CONFIG です。 |
enableLoggingKnownPii 属性が Machine.config にない場合、PII のログ記録は許可されません。
アプリケーションで PII のログ記録を有効にするには、Web.config または App.config ファイルで、ソース要素の logKnownPii 属性を true または false に設定します。たとえば次の例では、メッセージ ログとトレース ログの両方に対して PII のログ記録が有効になります。
<configuration>
<system.diagnostics>
<sources>
<source name="System.ServiceModel.MessageLogging" logKnownPii="true">
<listeners>
...
</listeners>
</source>
<source name="System.ServiceModel" switchValue="Verbose, ActivityTracing">
<listeners>
...
</listeners>
</source>
</sources>
</system.diagnostics>
</configuration>
logKnownPii 属性が指定されていない場合は、PII はログ記録されません。
PII がログ記録されるのは、enableLoggingKnownPii が true に設定されていると共に、logKnownPii が true に設定されている場合だけです。
メモ : |
---|
System.Diagnostics は、構成ファイルの最初に表示されているソース以外の、すべてのソースのすべての属性を無視します。logKnownPii 属性を構成ファイル内の 2 番目のソースに追加しても、結果は変わりません。 |
メモ : |
---|
このサンプルを実行する際には、Machine.config を手動で変更します。Machine.config を変更する際は注意してください。値または構文が正しくない場合、すべての .NET Framework アプリケーションが実行できなくなる可能性があります。 |
また、DPAPI や RSA を使用して構成ファイルの要素を暗号化することもできます。詳細については、次のリンクを参照してください。
サンプルを設定、ビルド、および実行するには
「Windows Communication Foundation サンプルの 1 回限りのセットアップの手順」が実行済みであることを確認します。
Machine.config を編集して enableLoggingKnownPii 属性を true に設定し、必要に応じて親ノードを追加します。
ソリューションの C# 版または Visual Basic .NET 版をビルドするには、「Windows Communication Foundation サンプルのビルド」の手順に従います。
サンプルを単一コンピュータ構成または複数コンピュータ構成で実行するには、「Windows Communication Foundation サンプルの実行」の手順に従います。
サンプルをクリーンアップするには
- Machine.config を編集して enableLoggingKnownPii 属性を false に設定します。
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