C++ AMP の概要
Note
C++ AMP ヘッダーは、Visual Studio 2022 バージョン 17.0 以降では非推奨です。
AMP ヘッダーを含めると、ビルド エラーが発生します。 警告をサイレント状態にするには、AMP ヘッダーを含める前に _SILENCE_AMP_DEPRECATION_WARNINGS
を定義します。
C++ Accelerated Massive Parallelism (C++ AMP) は、独立したグラフィックス カードの GPU (graphics processing unit) などのデータ並列ハードウェアを活用して、C++ コードの実行を高速化します。 C++ AMP を使用することによって、並列化と異種ハードウェアを使用して実行を高速化できるように、多次元データ アルゴリズムをコーディングすることができます。 C++ AMP のプログラミング モデルには、多次元配列、インデックス作成、メモリ転送、タイル、数学関数ライブラリが含まれています。 C++ AMP の言語拡張機能を使用して、データを CPU から GPU へ、また GPU から CPU へどのように移動するかを制御でき、パフォーマンスを向上させることができます。
システム要件
Windows 7 以降
Windows Server 2008 R2 から Visual Studio 2019。
DirectX 11 機能レベル 11.0 以降のハードウェア
ソフトウェア エミュレーターでのデバッグの場合、Windows 8 または Windows Server 2012 が必要です。 ハードウェアでデバッグするには、使用するグラフィックス カードのドライバーをインストールする必要があります。 詳しくは、「GPU コードのデバッグ」をご覧ください。
注: 現在、AMP は ARM64 ではサポートされていません。
はじめに
次の 2 つの例は、C++ AMP の主要コンポーネントを示しています。 2 個の 1 次元配列の対応する要素を加算するとします。 たとえば、{1, 2, 3, 4, 5}
と {6, 7, 8, 9, 10}
を加算して {7, 9, 11, 13, 15}
を取得するとします。 C++ AMP を使用しない場合、数値を加算し、結果を表示するために、次のようなコードを記述します。
#include <iostream>
void StandardMethod() {
int aCPP[] = {1, 2, 3, 4, 5};
int bCPP[] = {6, 7, 8, 9, 10};
int sumCPP[5];
for (int idx = 0; idx < 5; idx++)
{
sumCPP[idx] = aCPP[idx] + bCPP[idx];
}
for (int idx = 0; idx < 5; idx++)
{
std::cout << sumCPP[idx] << "\n";
}
}
コードの重要な部分は次のとおりです。
データ: データは 3 個の配列で構成されています。 すべてランク (1) と長さ (5) が同じです。
:イテレーション: 最初の
for
ループは配列の要素を反復処理するメカニズムを提供します。 合計を計算するために実行するコードは、最初のfor
ブロックに含まれています。インデックス:
idx
変数は、配列の各要素にアクセスします。
C++ AMP を使用する場合は、代わりに次のようにコードを記述できます。
#include <amp.h>
#include <iostream>
using namespace concurrency;
const int size = 5;
void CppAmpMethod() {
int aCPP[] = {1, 2, 3, 4, 5};
int bCPP[] = {6, 7, 8, 9, 10};
int sumCPP[size];
// Create C++ AMP objects.
array_view<const int, 1> a(size, aCPP);
array_view<const int, 1> b(size, bCPP);
array_view<int, 1> sum(size, sumCPP);
sum.discard_data();
parallel_for_each(
// Define the compute domain, which is the set of threads that are created.
sum.extent,
// Define the code to run on each thread on the accelerator.
[=](index<1> idx) restrict(amp) {
sum[idx] = a[idx] + b[idx];
}
);
// Print the results. The expected output is "7, 9, 11, 13, 15".
for (int i = 0; i < size; i++) {
std::cout << sum[i] << "\n";
}
}
基本的な要素は同じですが、C++ AMP のコンストラクトが使用されています。
データ: C++ 配列を使用して、3 個の C++ AMP array_view オブジェクトを構築します。 4 個の値を指定して
array_view
オブジェクトを構築します。すなわち、各次元のarray_view
オブジェクトのデータ値、ランク、要素の型、および長さです。 ランクと型は型パラメーターとして渡されます。 データと長さは、コンストラクターのパラメーターとして渡されます。 この例では、コンストラクターに渡される C++ 配列は 1 次元です。 ランクと長さはarray_view
オブジェクト内のデータの四角形を構築するために使用され、データ値は配列の値を設定するために使用されます。 ランタイム ライブラリには、array クラスが含まれています。このクラスには、array_view
クラスに似たインターフェイスがあります。これについては後で説明します。イテレーション: parallel_for_each 関数 (C++ AMP) は、データ要素、つまり計算ドメインを反復処理するメカニズムを提供します。 この例では、計算のドメインは
sum.extent
によって指定されます。 実行するコードは、ラムダ式、つまりカーネル関数に含まれています。restrict(amp)
は、C++ AMP で高速化できる C++ 言語のサブセットのみが使用されることを示します。インデックス: index クラス変数
idx
は、array_view
オブジェクトのランクと一致するように、ランク 1 を使用して宣言されます。 インデックスを使用することによって、array_view
オブジェクトの個々の要素にアクセスできます。
データを構造化してインデックスを作成する: index と extent
カーネル コードを実行する前に、データ値を定義し、データの形式を宣言する必要があります。 すべてのデータは配列 (四角形) として定義され、任意のランク (次元数) を持つように配列を定義できます。 データは、任意の次元で任意のサイズにすることができます。
index クラス
index クラスは、1 個のオブジェクトに各次元の原点からのオフセットをカプセル化することによって、array
または array_view
オブジェクト内の位置を指定します。 配列内の位置にアクセスする場合、整数のインデックスのリストの代わりに、index
オブジェクトを、インデックス作成演算子 []
に渡します。 各ディメンションの要素には、array::operator() 演算子または array_view::operator() 演算子を使用してアクセスできます。
次の例では、1 次元の array_view
オブジェクト内の 3 番目の要素を指定する 1 次元インデックスを作成します。 このインデックスを使用して、array_view
オブジェクトの 3 番目の要素を出力します。 出力は 3 になります。
int aCPP[] = {1, 2, 3, 4, 5};
array_view<int, 1> a(5, aCPP);
index<1> idx(2);
std::cout << a[idx] << "\n";
// Output: 3
次の例では、2 次元の array_view
オブジェクト内で、行 = 1、列 = 2 にある要素を指定する 2 次元インデックスを作成します。 index
コンストラクターの最初のパラメーターは行コンポーネントで、2 番目のパラメーターは列コンポーネントです。 出力は、6 になります。
int aCPP[] = {1, 2, 3, 4, 5, 6};
array_view<int, 2> a(2, 3, aCPP);
index<2> idx(1, 2);
std::cout <<a[idx] << "\n";
// Output: 6
次の例では、3 次元の array_view
オブジェクト内で、奥行 = 0、行 = 1、列 = 3 にある要素を指定する 3 次元インデックスを作成します。 最初のパラメーターが奥行コンポーネント、2 番目のパラメーターが行コンポーネント、3 番目のパラメーターが列コンポーネントであることに注意してください。 出力は、8 になります。
int aCPP[] = {
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12,
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12};
array_view<int, 3> a(2, 3, 4, aCPP);
// Specifies the element at 3, 1, 0.
index<3> idx(0, 1, 3);
std::cout << a[idx] << "\n";
// Output: 8
extent クラス
extent クラスは array
または array_view
オブジェクトの各次元のデータの長さを指定します。 範囲を作成し、範囲を使用して array
または array_view
オブジェクトを作成できます。 また、既存の array
または array_view
オブジェクトの範囲を取得することもできます。 次の例では、array_view
オブジェクトの各次元の範囲の長さを出力します。
int aCPP[] = {
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12,
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12};
// There are 3 rows and 4 columns, and the depth is two.
array_view<int, 3> a(2, 3, 4, aCPP);
std::cout << "The number of columns is " << a.extent[2] << "\n";
std::cout << "The number of rows is " << a.extent[1] << "\n";
std::cout << "The depth is " << a.extent[0] << "\n";
std::cout << "Length in most significant dimension is " << a.extent[0] << "\n";
次の例では、前の例のオブジェクトと同じ次元を持つ array_view
オブジェクトを作成しますが、この例では、extent
コンストラクターで明示的なパラメーターを使用する代わりに、array_view
オブジェクトを使用します。
int aCPP[] = {1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 24};
extent<3> e(2, 3, 4);
array_view<int, 3> a(e, aCPP);
std::cout << "The number of columns is " << a.extent[2] << "\n";
std::cout << "The number of rows is " << a.extent[1] << "\n";
std::cout << "The depth is " << a.extent[0] << "\n";
アクセラレータにデータを移動する: array と array_view
アクセラレータにデータを移動するために使用される 2 つのデータ コンテナーがランタイム ライブラリで定義されています。 これらは、array クラスと array_view クラスです。 array
クラスは、オブジェクトの構築時にデータの詳細コピーを作成するコンテナー クラスです。 array_view
クラスは、カーネル関数がデータにアクセスするときにデータをコピーするラッパー クラスです。 ソース デバイスでデータが必要になったときは、データがコピーして戻されます。
array クラス
array
オブジェクトを構築するときに、データ セットへのポインターを含むコンストラクターを使用している場合、アクセラレータでデータの詳細コピーが作成されます。 カーネル関数は、アクセラレータ上のコピーを変更します。 カーネル関数の実行が終了すると、ソースのデータ構造にデータをコピーして戻す必要があります。 次の例では、ベクター内の各要素に 10 を乗算します。 カーネル関数が終了した後、vector conversion operator
を使用して、データのコピーをベクター オブジェクトにコピーして戻します。
std::vector<int> data(5);
for (int count = 0; count <5; count++)
{
data[count] = count;
}
array<int, 1> a(5, data.begin(), data.end());
parallel_for_each(
a.extent,
[=, &a](index<1> idx) restrict(amp) {
a[idx] = a[idx]* 10;
});
data = a;
for (int i = 0; i < 5; i++)
{
std::cout << data[i] << "\n";
}
array_view クラス
array_view
のメンバーは array
クラスとほとんど同じですが、基になる動作は同じではありません。 array_view
コンストラクターに渡されるデータは、array
コンストラクターの場合とは異なり、GPU に複製されません。 代わりに、カーネル関数が実行されたときに、データはアクセラレータにコピーされます。 したがって、同じデータを使用する array_view
オブジェクトを 2 つ作成する場合、両方の array_view
オブジェクトは同じメモリ空間を参照します。 この場合、マルチスレッド アクセスを同期する必要があります。 array_view
クラスを使用する主な利点は、必要な場合にのみデータが移動されることです。
array と array_view の比較
次の表は、array
クラスと array_view
クラスの類似点と相違点をまとめたものです。
説明 | array クラス | array_view クラス |
---|---|---|
ランクが決定されるとき | コンパイル時。 | コンパイル時。 |
範囲が決定されるとき | 実行時。 | 実行時。 |
図形 | 長方形。 | 長方形。 |
データ ストレージ | データ コンテナーである。 | データ ラッパーである。 |
コピー | 定義時の明示的な詳細コピー。 | カーネル関数を使用してアクセスされた場合の暗黙のコピー。 |
データの取得 | 配列データを CPU スレッド上のオブジェクトにコピーして戻すことによる。 | array_view オブジェクトに直接アクセスするか、array_view::synchronize メソッドを呼び出して、元のコンテナーのデータにアクセスし続けることによる。 |
共有メモリと配列および array_view
共有メモリは、CPU とアクセラレータの両方からアクセスできるメモリです。 共有メモリの使用は CPU とアクセラレータ間でのデータのコピーによるオーバーヘッドを排除するか、大幅に低下させます。 メモリは共有されますが、CPU とアクセラレータの両方から同時にアクセスすることはできず、同時にアクセスすると未定義の動作が発生します。
関連するアクセラレータがサポートする場合、array
オブジェクトを使用して、共有メモリの使用のきめ細かな制御を指定できます。 アクセラレータが共有メモリをサポートするかどうかは、アクセラレータの supports_cpu_shared_memory プロパティによって決まります。これは、共有メモリがサポートされている場合に返されます true
。 共有メモリがサポートされている場合、アクセラレータのメモリ割り当ての既定 access_type 列挙型は default_cpu_access_type
プロパティによって決定されます。 既定では、array
オブジェクトと array_view
のオブジェクトはプライマリに関連する access_type
と同じ accelerator
を取得します。
明示的に array::cpu_access_type Data Member プロパティを array
設定することで、共有メモリの使用方法をきめ細かく制御できるため、計算カーネルのメモリ アクセス パターンに基づいて、ハードウェアのパフォーマンス特性に合わせてアプリを最適化できます。 An はarray_view
、関連付けられている環境と同じものcpu_access_type
array
を反映します。または、array_viewがデータ ソースなしで構築されている場合は、access_type
最初にストレージを割り当てる環境が反映されます。 つまり、ホスト (CPU) によって最初にアクセスされた場合は、CPU データ ソース経由で作成されたかのように動作し、キャプチャによって関連付けられたデータを共有access_type
accelerator_view
します。ただし、それが最初にアクセスされたaccelerator_view
場合は、その上で作成された上でaccelerator_view
作成array
されたかのように動作し、's access_type
を共有array
します。
次のコード例では、既定のアクセラレータが共有メモリをサポートし、異なる cpu_access_type 構成を持つ複数の配列を作成するかどうかを確認する方法を説明します。
#include <amp.h>
#include <iostream>
using namespace Concurrency;
int main()
{
accelerator acc = accelerator(accelerator::default_accelerator);
// Early out if the default accelerator doesn't support shared memory.
if (!acc.supports_cpu_shared_memory)
{
std::cout << "The default accelerator does not support shared memory" << std::endl;
return 1;
}
// Override the default CPU access type.
acc.default_cpu_access_type = access_type_read_write
// Create an accelerator_view from the default accelerator. The
// accelerator_view inherits its default_cpu_access_type from acc.
accelerator_view acc_v = acc.default_view;
// Create an extent object to size the arrays.
extent<1> ex(10);
// Input array that can be written on the CPU.
array<int, 1> arr_w(ex, acc_v, access_type_write);
// Output array that can be read on the CPU.
array<int, 1> arr_r(ex, acc_v, access_type_read);
// Read-write array that can be both written to and read from on the CPU.
array<int, 1> arr_rw(ex, acc_v, access_type_read_write);
}
データに対してコードを実行する: parallel_for_each
parallel_for_each 関数は、array
または array_view
オブジェクトのデータに対してアクセラレータで実行するコードを定義します。 このトピックの概要で示した次のコードを考えてます。
#include <amp.h>
#include <iostream>
using namespace concurrency;
void AddArrays() {
int aCPP[] = {1, 2, 3, 4, 5};
int bCPP[] = {6, 7, 8, 9, 10};
int sumCPP[5] = {0, 0, 0, 0, 0};
array_view<int, 1> a(5, aCPP);
array_view<int, 1> b(5, bCPP);
array_view<int, 1> sum(5, sumCPP);
parallel_for_each(
sum.extent,
[=](index<1> idx) restrict(amp)
{
sum[idx] = a[idx] + b[idx];
}
);
for (int i = 0; i < 5; i++) {
std::cout << sum[i] << "\n";
}
}
parallel_for_each
メソッドは、計算ドメインとラムダ式の 2 個の引数を使用します。
計算ドメインは、並列実行用に作成するスレッドのセットを定義する extent
オブジェクトまたは tiled_extent
オブジェクトです。 計算ドメインの各要素について、1 つのスレッドが生成されます。 この場合、extent
オブジェクトは 1 次元で、5 個の要素があります。 したがって、5 個のスレッドが開始されます。
ラムダ式は、各スレッドで実行するコードを定義します。 キャプチャ句 [=]
は、ラムダ式の本体が、キャプチャされたすべての変数に値によってアクセスすることを指定します。この例の場合、a
、b
、および sum
です。 この例では、パラメーター リストは index
という名前の 1 次元の idx
変数を作成します。 idx[0]
の値は、最初のスレッドでは 0、それ以降の各スレッドでは 1 ずつ増加します。 restrict(amp)
は、C++ AMP で高速化できる C++ 言語のサブセットのみが使用されることを示します。 restrict 修飾子を持つ関数の制限事項については、「restrict (C++ AMP)」で説明します。 詳細については、「ラムダ式の構文」を参照してください。
ラムダ式では、実行するコードを含めることも、別のカーネル関数を呼び出すこともできます。 カーネル関数には restrict(amp)
修飾子を含める必要があります。 次の例は前の例と同じですが、別のカーネル関数を呼び出します。
#include <amp.h>
#include <iostream>
using namespace concurrency;
void AddElements(
index<1> idx,
array_view<int, 1> sum,
array_view<int, 1> a,
array_view<int, 1> b) restrict(amp) {
sum[idx] = a[idx] + b[idx];
}
void AddArraysWithFunction() {
int aCPP[] = {1, 2, 3, 4, 5};
int bCPP[] = {6, 7, 8, 9, 10};
int sumCPP[5] = {0, 0, 0, 0, 0};
array_view<int, 1> a(5, aCPP);
array_view<int, 1> b(5, bCPP);
array_view<int, 1> sum(5, sumCPP);
parallel_for_each(
sum.extent,
[=](index<1> idx) restrict(amp) {
AddElements(idx, sum, a, b);
}
);
for (int i = 0; i < 5; i++) {
std::cout << sum[i] << "\n";
}
}
コードの加速化: タイルとバリア
タイルを使用することによって、さらに高速化を実現できます。 タイルでは、スレッドを等しい四角形のサブセット、つまりタイルに分割します。 データ セットと、コーディングしているアルゴリズムに基づいて、適切なタイトルのサイズを決定します。 スレッドごとに、array
または array_view
全体を基準としたデータ要素のグローバルな位置と、タイルを基準としたローカルな位置にアクセスできます。 ローカル インデックス値を使用すると、インデックス値をグローバルからローカルに変換するコードを記述する必要がないため、コードは簡略化されます。 タイルを使用するには、parallel_for_each
メソッドで、計算ドメインについて extent::tile メソッドを呼び出し、tiled_index オブジェクトをラムダ式で使用します。
一般的なアプリケーションでは、タイルの要素はなんらかの方法で関連付けられており、コードではタイル全体で値にアクセスして追跡する必要があります。 これを行うには、tile_static キーワードと tile_barrier::wait メソッドを使用します。 tile_static キーワードを持つ変数のスコープはタイル全体であり、各タイルについて、この変数のインスタンスが作成されます。 タイル スレッドの変数に対するアクセスの同期を処理する必要があります。 tile_barrier::wait メソッドは、タイル内のすべてのスレッドが tile_barrier::wait
の呼び出しに到達するまで、現在のスレッドの実行を停止します。 したがって、tile_static 変数を使用することによって、タイル全体で値を累積できます。 次に、すべての値にアクセスする必要がある計算を終了できます。
次の図は、タイルに配置されたサンプリング データの 2 次元配列を表します。
次のコード例では、前の図のサンプリング データを使用します。 このコードは、タイル内の各値を、タイル内の値の平均に置き換えます。
// Sample data:
int sampledata[] = {
2, 2, 9, 7, 1, 4,
4, 4, 8, 8, 3, 4,
1, 5, 1, 2, 5, 2,
6, 8, 3, 2, 7, 2};
// The tiles:
// 2 2 9 7 1 4
// 4 4 8 8 3 4
//
// 1 5 1 2 5 2
// 6 8 3 2 7 2
// Averages:
int averagedata[] = {
0, 0, 0, 0, 0, 0,
0, 0, 0, 0, 0, 0,
0, 0, 0, 0, 0, 0,
0, 0, 0, 0, 0, 0,
};
array_view<int, 2> sample(4, 6, sampledata);
array_view<int, 2> average(4, 6, averagedata);
parallel_for_each(
// Create threads for sample.extent and divide the extent into 2 x 2 tiles.
sample.extent.tile<2,2>(),
[=](tiled_index<2,2> idx) restrict(amp) {
// Create a 2 x 2 array to hold the values in this tile.
tile_static int nums[2][2];
// Copy the values for the tile into the 2 x 2 array.
nums[idx.local[1]][idx.local[0]] = sample[idx.global];
// When all the threads have executed and the 2 x 2 array is complete, find the average.
idx.barrier.wait();
int sum = nums[0][0] + nums[0][1] + nums[1][0] + nums[1][1];
// Copy the average into the array_view.
average[idx.global] = sum / 4;
});
for (int i = 0; i <4; i++) {
for (int j = 0; j <6; j++) {
std::cout << average(i,j) << " ";
}
std::cout << "\n";
}
// Output:
// 3 3 8 8 3 3
// 3 3 8 8 3 3
// 5 5 2 2 4 4
// 5 5 2 2 4 4
数値演算ライブラリ
C++ AMP には 2 つの数値演算ライブラリが含まれます。 Concurrency::precise_math 名前空間の倍精度ライブラリは、倍精度関数をサポートします。 また、ハードウェアでの倍精度サポートは必要ですが、単精度関数もサポートします。 これは、C99 仕様 (ISO/IEC 9899) に準拠しています。 アクセラレータは倍精度を完全にサポートしている必要があります。 サポートしているかどうかは、accelerator::supports_double_precision データ メンバーの値を確認することで判断できます。 Concurrency::fast_math 名前空間の高速数値演算ライブラリには、数値演算関数の別のセットが含まれます。 オペランドのみを float
サポートするこれらの関数は、より迅速に実行されますが、倍精度数学ライブラリの関数ほど正確ではありません。 関数は <amp_math.h> ヘッダー ファイルに含まれており、すべて restrict(amp)
で宣言されます。 <cmath> ヘッダー ファイルに含まれる関数は、fast_math
と precise_math
の両方の名前空間にインポートされます。 restrict
キーワードが <cmath> のバージョンおよび C++ AMP のバージョンを区別するために使用されます。 次のコードは、計算のドメインにある各値の高速メソッドを使用して、10 を底とする対数を計算します。
#include <amp.h>
#include <amp_math.h>
#include <iostream>
using namespace concurrency;
void MathExample() {
double numbers[] = { 1.0, 10.0, 60.0, 100.0, 600.0, 1000.0 };
array_view<double, 1> logs(6, numbers);
parallel_for_each(
logs.extent,
[=] (index<1> idx) restrict(amp) {
logs[idx] = concurrency::fast_math::log10(numbers[idx]);
}
);
for (int i = 0; i < 6; i++) {
std::cout << logs[i] << "\n";
}
}
グラフィックス ライブラリ
C++ AMP には、アクセラレータ機能を使用するグラフィックスのプログラミング用に設計されたグラフィックス ライブラリが含まれます。 このライブラリは、ネイティブ グラフィックス機能をサポートするデバイスでのみ使用されます。 メソッドは Concurrency::graphics 名前空間にあり、<amp_graphics.h> ヘッダー ファイルに含まれています。 グラフィックス ライブラリの主要コンポーネントは次のとおりです。
texture クラス: texture クラスを使用して、メモリまたはファイルからのテクスチャを作成できます。 テクスチャは、データを格納するという点で配列に似ており、代入とコピーの構築の点では C++ 標準ライブラリのコンテナーに似ています。 詳細については、「C++ 標準ライブラリ コンテナー」を参照してください。
texture
クラスのテンプレート パラメーターは、要素型とランクです。 ランクには 1、2、または 3 を指定できます。 要素型には、後で説明する short ベクター型のいずれかを指定できます。writeonly_texture_view クラス: すべてのテクスチャへの書き込み専用アクセスを提供します。
short ベクター ライブラリ:
int
、uint
、float
、double
、norm、または unorm に基づく、長さが 2、3、および 4 の一連の short ベクター型を定義します。
ユニバーサル Windows プラットフォーム (UWP) アプリ
他の C++ ライブラリと同様に、UWP アプリで C++ AMP を使用できます。 C++、C#、Visual Basic、または JavaScript を使用して作成されたアプリに C++ AMP コードを含める方法については、次の記事を参照してください。
チュートリアル: C++ での基本 Windows ランタイム コンポーネントの作成および JavaScript による呼び出し
JavaScript および C++ での Windows ストア アプリ (Bing Maps Trip Optimizer) の開発
How to use C++ AMP from C# using the Windows Runtime (Windows ランタイムを使用して、C# から C++ AMP を使用する方法)
C++ AMP とコンカレンシー ビジュアライザー
コンカレンシー ビジュアライザーには、C++ AMP コードのパフォーマンスを分析するためのサポートが含まれます。 これらの機能については、次の記事を参照してください。
パフォーマンスに関する推奨事項
符号なし整数の剰余と除算のパフォーマンスは、符号付き整数の剰余と除算のパフォーマンスよりも優れています。 できる限り、符号なし整数を使用することをお勧めします。
関連項目
C++ AMP (C++ Accelerated Massive Parallelism)
ラムダ式の構文
リファレンス (C++ AMP)
Parallel Programming in Native Code blog (ネイティブ コードでの並行プログラミング ブログ)