Exchange クライアント ネットワーク帯域幅計算ツール (ベータ版) 公開のお知らせ
原文の記事の投稿日: 2012 年 2 月 11 日 (土曜日)
皆さんに、まったく新しい Exchange クライアント ネットワーク帯域幅計算ツール (ベータ版) を提供できることを本当に嬉しく思います!!
ここ 12 か月あまり、我々は Exchange クライアント ネットワークの帯域幅を推計する新たな計算ツールの開発に取り組んできました。この新しい計算ツールは、まったく新しい予測データに基づき、Exchange 社内ノードと Office 365 展開の両方で動作するように設計されています!(お待ちかねのツールをようやくご提供できるわけです!)
このツールの目的
この計算ツールの目的は単純です。特定のユーザー セットに対して、そこで必要とされるクライアント ネットワークの帯域幅を予測できないかと考えたわけです。そのため、社内ノードと Office 365 シナリオの両方で Outlook、OWA およびモバイル デバイスを扱う計算ツールが必要になりました。
このベータ版では以下のクライアントを対象としています。今後、対象クライアントをさらに増やしていく予定です。
- Outlook 2010
- Outlook 2007
- Outlook 2003
- OWA 2010
- OWA 2007
- Windows Mobile
- Windows Phone
このツールの動作
この計算ツールは、各クライアントの挙動を個別に分析することによって得られる新しい予測アルゴリズムに基づいています。この方式はクライアントのシナリオごとに帯域幅モデルを生成できるので、非常に拡張性があり、柔軟性に富んでいます。
入力データは既存のユーザー プロファイル指標 (たとえば、1 日にユーザー 1 人が送受信するメッセージ数、平均メッセージ サイズなど) に基づいて作られます。これらのパラメーターが提供されると、この計算ツールは各クライアントの適切な動作に必要とされる帯域幅を予測します。
このツールが提供する予測は、稼働日の最も忙しい 2 時間の間の要件を表しています。
ベータ版として公開する理由
新しい予測アルゴリズムをゼロから開発し、社内でその正確さを検証してきましたが、我々はもっと多くの遠隔測定データを現実世界のシナリオから収集して計算ツールの予測公式を微調整したいと考えています。ベータ版の公開期間中、この計算ツールに関するご意見ご感想や提案をお寄せください。現実の予測データと観測データを比較したものを提供していただければ、より幸いです。
提案やご意見は、netcalc@microsoft.com 宛にお送りください。
2012 年中ごろまでにベータ版公開を終える予定です。
このツールの使い方
この計算ツールは、Excel の 2 つのメイン シートに分かれています。
- Input – ここに組織の情報と使用プロファイル情報を入力します。
- Client Mix – ここに各サイトのクライアント情報を種類およびプロファイルごとに入力します。
詳細は付属のマニュアルで説明しているので、ここでは概要を簡単に示すだけにします。
Input シート
Input シートは、次の 5 つのセクションに分かれています。
- 組織データ (Organization Data)
- ユーザー プロファイル 1
- ユーザー プロファイル 2
- ユーザー プロファイル 3
- ユーザー プロファイル 4
組織データ セクションは、組織全体に適用されるグローバルな設定を表します。また、ユーザー プロファイルはライト ユーザーから超ヘビー ユーザーまでの各ユーザー負荷段階のユーザー セットを表す事前に定義されたプロファイルです。これらのユーザー プロフィルはカスタマイズ可能で、正確な予測のためにこれを編修してそれぞれの固有な環境を反映するようにしてください。
Client Mix シート
Input シートが完成したら Client Mix シートの作業に移ります。ここに各クライアントの値を入力してサイトを定義します。このシートは次の 3 つのセクションで構成されます。
- サイト定義 (Site Definition)
- クライアント定義
- ネットワーク予測 (Network Predictions)
サイト定義セクションでは、物理ネットワークのサイト トポロジの代表モデルを構成します。これで物理サイトとそのサイトの予想ユーザー プロファイルを表現します。クライアント定義セクションでは、各サイトのユーザー数と、ユーザーが使用する Exchange クライアントの種類を構成します。ネットワーク予測セクションには、定義した各サイトの予測ネットワーク要件が示されます。
使用例
話を簡単にするため、ごく簡単な例で使い方を説明します。
この例では、ある顧客が Office 365 に移行しようとしてます。彼らは、移行後に Exchange クライアントをサポートするためにどれだけのインターネット帯域幅は必要になるかを知りたいと考えています。
組織情報
- 3 つのメイン サイト (ユーザー数 3650 人)
- ロンドン:
- Outlook 2007 ユーザー 1500 人 (ミディアム プロファイル)
- Outlook Web Access ユーザー 300 人 (ライト プロファイル)
- マンチェスター:
- Outlook 2007 ユーザー 600 人 (ヘビー プロファイル)
- Outlook Web Access ユーザー 150 人 (ライト プロファイル)
- パリ:
- Outlook Web Access ユーザー 1100 人 (ライト プロファイル)
- ロンドン:
ロンドとマンチェスターは同じインターネット接続を共有していますが、パリには独自のローカルな内訳があります。
注意: この例では、話を簡単にするために組み込み済みのユーザー プロファイル データを使用していますが、実際に使用しているメッセージング ソリューションを調査し、その結果に基づいて独自のユーザー プロファイル データを定義することを強くお勧めします。
最初に Input シートを構成する必要があります。この例では概ね既定値をそのまま使うことができますが、OAB サイズは実際には 100 MB ではなく 10 MB なので、オフライン アドレス帳のサイズ (Offline Address Book Size) を 10 MB に設定します。
ユーザー プロファイルは、普通なら編修するところですが、この例では既定値のまま編修しないで、Client Mix シートの作業に移ります。Client Mix シートでは集計値が提供されるので、一般に、同じインターネット接続を共有するサイトをひとまとめにします。この例で言うと、ロンドンとマンチェスターのデータは同じシートに入力できるが、パリのデータには新しいシートが必要なことを意味します。シートのコピーを作成するには、一番下にあるタブを右クリックし、[移動またはコピー] (Move or Copy) を選択します。[シートの移動またはコピー] (Move or Copy) ダイアログ ボックスで、Client Mix シートを強調表示し、[コピーを作成する] (Create a copy) チェック ボックスをオンにして [OK] をクリックします。
こうして Excel ブックに“Client Mix (2)”と“Client Mix”の 2 つのタブが作られます。たいてい、これらの名前は何か意味のあるものに変更します。この例では、一方を UK Sites、もう一方を FR Sites に変更します。
最初に UK Sites シートのサイトを定義します。上記の情報から、ロンドンとマンチェスターの 2 つのサイトが存在し、各サイトに 2 種類のユーザー プロファイルがあることがわかります。単一のユーザー プロファイルを持つサイトしか使用できないので、これは 4 つのサイト エントリが必要なことを意味します。
次に、各サイトのクライアントの種類を定義します。データを読みやすくするために、必要のない行と列は非表示にしてあります。クライアントの種類ごとの値がシートに入力してあります。Outlook 2007 の OA キャッシュが必要なのは Office 365 だけが Outlook Anywhere 接続を提供しているからで、また OWA が 2010 なのは Office 365 が Exchange Server 2010 をベースにしているからです。
さらに別のセルも非表示にすれば、予測値がもっと見やすくなります。
まず第一に、たいてい“Exchange to Client”列の要件に関心が向かうのは、それらの値がより大きく、またほとんどのリンクでアップロードおよびダウンロード能力がまだ同じだからです。非同期回線がある場合は“Client to Exchange”列の帯域幅にも目を向ける必要があります。この例の顧客は同期接続を持っています。
ロンドンには 2 つのユーザー セットが定義されていて、計算ツールの予測によれば、Outlook ユーザーの必要な帯域幅は 3.66Mbits/sec で、OWA ユーザーがさらに 0.93Mbits/sec の帯域幅を必要としています。ロンドンの合計は 4.59Mbits/sec になります (この例では手動でこれを行う必要があります)。
マンチェスターにも 2 つのユーザー セットが定義されていて、計算ツールの予測によれば、合計は 3.53Mbits/sec になります。
マンチェスターとロンドンは同じインターネット接続を共有しているので、計算ツールの予測によれば、顧客がこのワークロードをサポートするために確保すべきネットワーク帯域幅は 8.12Mbits/sec で、ネットワークの最大リンク遅延は 320ms 以下となります。
これを FR Sites タブでも繰り返すと、次の結果が得られます。
計算ツールの予測によれば、パリのインターネット接続で 1100 人の Office 365 OWA ユーザーをサポートするために必要なネットワーク帯域幅は 1.88Mbits/sec となります。
言うまでもなくこれはかなり単純化した例なので、実際には組織に即したモデル化を行ったうえで、この計算ツールの感触をつかみ、ツールの使い勝手に関するご意見をお寄せください。
このツールが対応していないこと
この計算ツールでは、以下の情報は提供されません。
- マイクロソフト以外のクライアント: 個々のベンダーにクライアントの帯域幅情報を提供するよう申し入れる必要があります。
- BlackBerry: これはマイクロソフト以外のクライアントなのに皆さんが質問してきます!BlackBerry にデータの提供を申し入れる必要があります。
- サーバー側の帯域幅データ: SMTP、DAG レプリケーション、ADFS 2.0、認証などのデータは、いずれもこの計算ツールの対象外です。
- Outlook 2011 / Entourage EWS: これらのクライアントは目下分析中で、ベータ版の公開期間中に追加される予定です。
- 移行トラフィック: この計算ツールでは定常状態のトラフィックに関する要件が予測されます。
- Outlook 2000 およびそれ以前のバージョン: この計算ツールがサポートしている最も古いバージョンは Outlook 2003 です。
ご意見ご感想
我々は TechNet で他にもネットワーク帯域幅ガイドを公開しており、特によく使われるガイドは「White Paper: Outlook Anywhere Scalability with Outlook 2007, Outlook 2003 and Exchange 2007 (英語)」にあります。このガイドは、CAS スケーラビリティのラボ テストで Loadgen を使用して生成したものです。このテストによる予測は、ケースごとのデータ収集方法の違いにより、新しい計算ツールの予測と若干異なったものになります。ネットワーク帯域幅の予測を有効なものとするためにより新しいテスト データを収集して分析しているので、新しい値ほど正確になります。新しい計算ツールでは「Outlook 2007 White Paper」のガイドよりも多くの変数やユーザー プロファイルも考慮しているので、この面でもより正確な予測が得られます。
ベータ版の公開期間中は、以前のホワイト ペーパーと新しい計算ツールの両方を使用して要件を決定することをお勧めします。
この投稿 (最初に考えたものよりもかなり長くなりましたが!) の冒頭で述べたように、この計算ツールを使用して感じたご意見ご感想や提案を是非お寄せください。以下宛でよろしくお願いいたします。
現在、この計算ツールに関して別の記事を執筆しています。何か月かのうちに、より多くの例を記載し、予測データの生成のしくみを詳細に説明した記事を投稿する予定です。
この記事をお読みいただき、ありがとうございます。この新しいツールが皆さんのお役に立てば幸いです。
Neil Johnson
MCS UK 上級顧問
これはローカライズされたブログ投稿です。原文の記事は、「Announcing the Exchange Client Network Bandwidth Calculator Beta」をご覧ください。