Outlook 2016: Exchange 管理者向けの情報
(この記事は 2015 年 11 月 19 日に Exchange Team Blog に投稿された記事 Outlook 2016: What Exchange admins need to know の翻訳です。最新情報については、翻訳元の記事をご参照ください。)
9 月末にリリースされた Office 2016 には、新しいバージョンの Outlook デスクトップ クライアントが含まれています。Outlook 2016 のエンド ユーザー向けの変更点についてこちらの記事で概要を説明していますので、まだお読みでない方はぜひご確認ください。今回の記事では、Exchange 管理者に関係する Outlook 2016 の変更点について詳しく説明します。企業での展開計画にお役立てください。
MAPI-HTTP と自動検出機能
他のすべての Outlook のリリースと同様に、今回も複数の更新が実装されており、パフォーマンスの向上や、アカウント接続時やメールの同期時に発生する一般的な問題の減少が可能です。今回の更新により、メッセージのダウンロード、メッセージ リストの表示、休止状態から再開後の新規メールの表示などにかかる時間が短縮されています。過去 2 回のリリースを通じて、下記のように Outlook がメール アカウントに接続し Exchange と同期する方法が大幅に変更されています。
- Outlook 2016 では自動検出機能が必須に : Outlook 2016 では、自動検出機能が構成されていないと Exchange Server に接続できなくなります。Outlook 2016 は Exchange の接続設定をレジストリではなく自動検出機能から直接取得するため、プロファイルの信頼性が向上しますが、同時に自動検出機能が必須となっています。自動検出機能の構成がまだ済んでいない場合は、Outlook 2016 を展開する前に構成を行う必要があります。詳細については、アカウントの自動構成プロセス (自動検出) に関するページを参照してください。
- 新しい MAPI-HTTP プロトコル : Exchange 2013 SP1 および Outlook 2013 SP1 から、RPC ベースの同期に代わってインターネットとの親和性が高い MAPI-HTTP プロトコルが新たに導入され、Exchange および Outlook の接続性が改良されました。このアーキテクチャの変更、およびお客様のメリットの詳細については、昨年公開されたこちらの Exchange ブログの記事を参照してください。
- フォアグラウンドでのネットワーク呼び出しのサポートを終了 : Outlook では、フォアグラウンドでのネットワーク呼び出しを廃止したため、不安定なネットワークにおける Outlook の応答性が向上します。
Outlook 2016 から Exchange Server 2007 への接続が不可能に
Outlook 2016 では Exchange 2010 以降でのみサポートされているテクノロジ (同期、検索、自動検出など) が必須であるため、Outlook 2016 から Exchange 2007 には接続しません。Exchange 2007 をご使用中で Exchange Server と Office クライアントのアップグレード サイクルを計画されているお客様は、スムーズな移行を行うためにこの点にご注意ください。
Office 365 ProPlus に含まれている Office 2013 アプリと Exchange 2007 を組み合わせて使用する際に問題が発生しないように、マイクロソフトでは、現在 Exchange 2007 に接続しているお客様の自動検出機能を一時的に無効化しています。Office 365 ProPlus の Office 2013 アプリは 2016 年 9 月までサポートが継続され更新プログラムが配信されます。サポート終了日までに Exchange Server の更新をお願いいたします。この一時的な措置および Office 2013 の更新プログラムの受信についての詳細は、「Office 365 ProPlus を Office 2016 バージョンに更新するための準備」をお読みください。
新しい同期スライダー オプション
Outlook 2013 では、同期スライダーが導入され、ローカル デバイスで同期する過去のメールの数を制限することにより、OST ファイルのサイズを制限します。Exchange アカウントではメールの保存期間は既定で過去 12 か月間に設定されており、必要に応じて過去 1 か月間から過去すべてのメールに至るまで、設定の変更が可能です。2016 バージョンではこの同期オプションが拡張され、デバイス上でメールを保存する期間を 3 日間、7 日間、14 日間の中からも選択できるようになり、ストレージ管理性が向上します。この設定はグループ ポリシーでも調整できます。
新しい検索機能の動作
Exchange 2016 および Office 365 (Exchange Online) ではサーバー側の検索エンジンが統合され、この検索機能が既定の Outlook の検索インデックスとして使用されるようになり、Outlook の検索機能の信頼性とパフォーマンスが向上しました。既定では、Outlook はメールボックス全体を検索し、OST ファイルに同期されているものに対する検索結果を返します。このため、古いメールが検索できないというユーザーの不満を解消し、またサーバー上に存在するメールの検索時に [Click here to view more on Microsoft Exchange] オプションを使用する必要もなくなります。Outlook 2016 や Exchange 2016 では、ユーザーや管理者が追加構成を行わなくても、ユーザーが期待したとおりの検索結果が得られます。
当然ながら、この Exchange を基盤とする検索機能ではインターネット接続が必要となります。オフライン検索では引き続き Windows の検索インデックスが使用されます。こちらもエラー処理および再試行ロジックが改良され、また検索結果の上限数が 30 から 250 に引き上げられています。
Outlook Social Connector が無効化されたため既定では [People] ウィンドウが非表示に
Outlook 2016 では、[People] ウィンドウが既定では非表示になっています。これまで、[People] ウィンドウでは Outlook Social Connector から送られる各ユーザーのソーシャル ネットワーク関連情報が表示されていました。しかし、サード パーティのサービスの API の一部が変更されたため、ソーシャル ネットワークのアクティビティが使用できなくなっていました。引き続きメールに含まれているユーザーからのメール、添付ファイル、および予定表のイベントを表示することはできますが、マイクロソフトでは、既定でこのウィンドウを非表示にして、閲覧ウィンドウのスペースを広げることにしました。
[People] ウィンドウは、[View]、[People Pane]、[Normal] の順に選択すると再度有効化することができます。
Outlook 2016 の特定の機能で Exchange Server の特定のバージョンまたは Office 365 が必要に
Outlook 2016 の一部の新機能では、特定のバージョンの Exchange Server または Office 365 が必要です。この要件が適用される主な機能には、次のようなものがあります。
- 前述の Exchange を基盤とする検索機能では、Exchange 2016 または Office 365 の基盤となっているテクノロジが必要です。
- クラウド ベースの添付ファイルを使用するには、Exchange 2016、SharePoint 2016、Office Online Server 2016 (後者 2 つは現在プレビューとして提供中)、または Office 365 が必要です。
- 低優先メール機能および Office 365 グループへのアクセスには Exchange Online のメールボックスへの接続が必要です。詳細については、「Exchange Server の各バージョンでサポートされている Outlook 2016 の機能」の記事をお読みください。
新しい認証オプション (Office 365 ユーザーのみ使用可能 )
Outlook は基本的な認証方法から Active Directory Authentication Library (ADAL) ベースの認証に移行しています。この認証方法は先進認証という名前でも呼ばれていて、Office 365 (Exchange Online) のメールボックスで使用できます。
先進認証を使用すると、Outlook 2016 では下記のようなメリットが得られます。
- シングル サインオン (SSO): Outlook と他の Office アプリケーションとの間でのシングル サインオンがサポートされます。
- 多要素認証 : Outlook で多要素認証 (MFA) がサポートされます。MFA では、ユーザーがサインインする際に単一のパスワードを使用する場合よりも安全性が高くなります。この機能が有効化されると、パスワードを正しく入力した後にスマートフォンでの通話、テキスト メッセージ、またはアプリの通知による確認が必要となります。この 2 つめの認証要素が確認されないとユーザーはサインインできません。
- 基本的な認証の廃止 : 先進認証が使用される前は、Outlook は HTTPS プロトコルで基本的な認証を使用して Exchange Online に接続していました。このため、Exchange Online への接続を確立するためには、毎回ユーザー名とパスワードを入力する必要がありました。先進認証のフローでは、このような基本的な認証が不要になります。また、Outlook クライアントがお客様の ID プロバイダーと直接通信するため、ユーザー認証を行うために Exchange Online とユーザー パスワードを共有する必要もなくなります。
先進認証のワークフローの詳細については、こちらの記事 (英語) およびこちらの記事をご覧ください。
まとめ
今回は、管理者の視点から見た Outlook 2016 の変更の概要をお伝えしました。この記事を企業での展開の準備にお役立ていただけますと幸いです。ご不明な点がありましたら、ページ下部のコメント欄までお寄せください。また、TechNet の Office 2016 展開ガイドもお読みいただき、Office 2016 の実装にお役立てください。
Exchange チーム
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