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Exchange Online でのアイテムの保持機能と削除された場合のアイテムの動き

こんにちは、Exchange サポートの小林です。

今回は、Exchange 2013 や Exchange Online にて、メールボックスに訴訟ホールド (またはインプレース保持) が有効になっている場合のアイテムの動きを追ってみたいと思います。

まず本題に入る前に、混乱しやすい "訴訟ホールド"、"インプレース保持"、"インプレース アーカイブ"、”ジャーナル” という機能について振り返ってみましょう。

訴訟ホールド
メールボックス単位で有効にするアイテム保持の機能で、メールボックス内のすべてのデータを LitigationHoldDuration にて指定された期間保持します。Set-Mailbox コマンド (LitigationHoldEnabled) にて有効化します。

インプレース保持
クエリ ベースの保持機能で、メールボックス内の一部のデータ (例: A 社から受信したメールだけなど) を ItemHoldDuration にて指定された期間保持します。Set-MailboxSearch コマンド (InPlaceHoldEnabled) にて有効化します。

インプレース アーカイブ
アーカイブ メールボックスにアイテムを保存できるようにする機能で、手動またはアイテム保持ポリシーによってアイテムをアーカイブ メールボックスに保存することが可能です。Enable-Mailbox コマンド (Archive パラメーターを指定) にて有効化することで、アーカイブ メールボックスが作成されます。(既定では存在しません。)

ジャーナル
Exchange 組織を経由して送受信されたメッセージを含むジャーナル レポートを、任意のメールボックスに配信することで、その記録を保存することが可能です。一般的には Third-party 製のアーカイブ ソフトウェアに取り込むために、ジャーナル メールボックスに一時的に送受信されたメールを保存する目的で使用されます。New-JournalRule コマンドにてルールを作成する (プレミアム ジャーナル) か、オンプレミスであれば Set-MailboxDatabase コマンドを使用してデータベース毎に有効化することができます。

特に訴訟ホールドとインプレース保持の機能は似ているので、どちらを使えば良いか分からない場合には、以下のブログを参照いただければと思います。

  Title: Exchange 2013 および Exchange Online での訴訟ホールドおよびインプレース保持
  URL: https://blogs.technet.com/b/exchangeteamjp/archive/2013/12/12/litigation-hold-and-in-place-hold-in-exchange-2013-and-exchange-online.aspx
  項目: お客様のニーズに最適な保持機能の使用

上記の中で、監査などに備えて個人のメールボックスのアイテムをホールドする (削除させない) といった意味では、"訴訟ホールド" または "インプレース保持" が有効です。ただしこの場合、プライマリ メールボックスの容量が無尽蔵に大きくなりすぎてしまうため、それを避けるためにインプレース アーカイブを組み合わせて利用するシナリオも少なくないでしょう。このようなシナリオにおいて、具体的にこれらの機能が有効化されていると、アイテムが削除された場合にどのフォルダーに移動するのか、というお問い合わせをいただくことがございます。
設定の組み合わせなどにより、動作が若干異なる可能性はあるのですが、ここでは一般的なアイテムの動きを整理してみました。

  

移動フローの概要
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(1) メールが配信されると、受信トレイ (または、任意で作成したフォルダー) に格納されます。
(2) メールが受信トレイから削除されると、削除済みアイテム フォルダー (Deleted Items フォルダー) に移動します。
(3) 削除済みアイテム フォルダーから、アイテム保持ポリシー、または、手動にてメールが削除された場合には、回復可能なフォルダーのうち [Deletions] にアイテムが移動します。
(4) さらに回復可能フォルダーの [Deletions] からアイテムが削除された場合には、各条件により以下の通り動作が異なります。
 
    条件 1. インプレース保持が有効なアイテムは、[DiscoveryHolds] へ移動します。
    条件 2. 訴訟ホールドのみが有効な場合は、[Purges] へ移動します。
    条件 3. 両方が有効な場合は、訴訟ホールドのみが有効な場合と同様に [Purges] へ移動します。
    条件 4. 両方が無効な場合には、完全に削除され復元ができない状態となります。

(5) メールボックス単位で設定されている RetainDeletedItemsFor (削除済みアイテムを保持する期間) を超過した場合には、[Deletions] または [Purges] に格納されているアイテムが [DiscoveryHolds] へ移動します。
(6) さらに、該当のメールボックスに対してアーカイブが有効化されており (アーカイブ メールボックスが存在する)、かつ、アイテム保持ポリシーが適用されている場合には、構成に応じて回復可能なフォルダー領域上の各フォルダーから対応するアーカイブ メールボックス側のフォルダーへアイテムが移動します。
(7) アイテム移動後に、アーカイブ メールボックス上の [Deletions] からアイテムが削除された場合には、プライマリー メールボックスの際と同様に各条件に応じて [DiscoveryHolds] または [Purges] へ移動します。

なお、具体例として、訴訟ホールドとアーカイブが有効になっているメールボックスの場合を考えます。その他は、既定の設定値であることを前提にすると、アイテムは以下のように移動します。

具体例
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1. 受信トレイにメールが格納されます。
2. ユーザーが手動で該当アイテムを削除すると、該当アイテムは削除済みフォルダーに移動します。
3. さらに、ユーザーが手動で削除すると、該当アイテムは Deletions に移動します。
4. さらに、ユーザーが手動で削除すると、該当アイテムは Purges に移動します。
5. 削除済みアイテムを保持する期間 (RetainDeletedItemsFor = 14 日) が経過した後、DiscoveryHolds に移動します。
6. アイテム保持ポリシーの "Recoverable Items 14 days move to archive" に従って、アーカイブ メールボックスの DiscoveryHolds フォルダーに移動します。

- 参考情報
Title: [回復可能なアイテム] フォルダー
URL: https://technet.microsoft.com/ja-jp/library/ee364755(v=exchg.150).aspx

Title: 保存期間の計算方法
URL: https://technet.microsoft.com/ja-jp/library/bb430780(v=exchg.150).aspx

Title: Exchange 2010 での保存機能と訴訟ホールド
URL: https://blogs.technet.com/b/exchange_jp/archive/2011/11/28/retention-hold-and-litigation-hold-in-exchange-2010.aspx

Title: Exchange 2010 SP2 RU3、回復可能なアイテムのバージョン管理に驚きの変更
URL: https://blogs.technet.com/b/exchange_jp/archive/2012/06/25/exchange-2010-sp2-ru3.aspx

以上になります。今後も当ブログおよびサポート チームをよろしくお願いいたします。