パブリック フォルダーと Exchange Online
(この記事は 2013 年 5 月 2 日にThe Exchange Team Blog に投稿された記事の翻訳に手を加えたものです)
2013 年 6 月 5 日更新 : この記事は、ハイブリッド展開のシナリオでのパブリック フォルダーに関する最初の TechNet ドキュメントへのリンクを追加するために更新しました。 |
まだご存知ない方へ
2012 年 11 月の記事 (英語) で、新しい Exchange のパブリック フォルダーについて簡単に紹介しました。この記事では、パブリック フォルダーのアーキテクチャが最新のものになったとして大きく注目を集めていること、そしてこの取り組みの結果として、数年間を費やして Exchange のメールボックス データベースに導入された優れた技術をパブリック フォルダーでも活用できるようになったことを説明しました。これまで多くのユーザーの方々に、Exchange Online およびオンプレミス環境の Exchange Server 2013 で新しいパブリック フォルダーをお試しいただきましたが、今回の記事では、Exchange Online のパブリック フォルダーの機能セットに関する詳細をご説明します。お客様の環境でどのようなメリットがあるかを検討する際にお役立てください。パブリック フォルダーは、Exchange Online で既に提供されています。
Exchange Online にパブリック フォルダーを移行する方法
マイクロソフトは、現在、オンプレミスの Exchange Server 環境から Exchange Online への移行作業に関するドキュメントの最終仕上げを進めています。このドキュメントは多くの方にご興味をいただいているため、可能な限りわかりやすくなるように努めています。TechNet にドキュメントが追加された際には、該当するコンテンツへのリンクを記事に追加して更新します。現時点では、次の記事をご覧いただけます。
> 以前のバージョンから Exchange 2013 にパブリック フォルダーを移行する
> オンプレミス環境同士での移行について説明しています。
> 従来のパブリック フォルダーを Exchange Online に移行する
> 一括移行または段階的な移行について説明しています。
> ハイブリッド環境のシナリオ
> ハイブリッド展開用に従来の社内パブリック フォルダーを構成する
> ハイブリッド展開用に社内 Exchange 2013 のパブリック フォルダーを構成する
> ハイブリッド展開用に Exchange Online のパブリック フォルダーを構成する
重要事項
移行プロセスを概要レベルで説明する (詳細は TechNet の記事を参照ください) 前に、ユーザーの皆様に下記のいくつかの重要事項を明確にお伝えしたいと考えています。 |
Exchange Online へのパブリック フォルダーの移行は、すべてのユーザーが Exchange Online に配置されている場合か、オンプレミスのユーザーがすべて Exchange Server 2013 に配置されている場合のいずれか、またはその両方の場合にのみ実施することを推奨します。 パブリック フォルダーの移行は一括移行です。パブリック フォルダーの一部をオンプレミスに、一部を Exchange Online にそれぞれ配置することはできません。また、すべてのパブリック フォルダーをオンプレミスから Exchange Online に移行し接続が完了するまでに、短時間ですが、パブリック フォルダーへのアクセスが停止するダウンタイムが発生します。 現時点では、パブリック フォルダーの移行は完全に PowerShell ベースで実行します。移行完了後は、パブリック フォルダーの管理に使用するツールを EAC または PowerShell のいずれかから選択できます。 |
一連の移行手順について
TechNet の記事では、PowerShell と、製品グループ提供によるいくつかのスクリプトを使用する方法を細かく説明しています。これを利用することで、Exchange 2013 または Exchange Online で解析やコンテンツの場所のマッピングを自動で実行できます。移行作業は、オンプレミス環境どうしの場合でも、オンプレミスから Exchange Online への場合でもあまり違いはありませんが、後者の場合には多少工程が増えます。どちらのシナリオでも、従来のパブリック フォルダー インフラストラクチャを移行するために必要な大まかな手順がいくつかあります。以下では、この概要を説明します。完全な詳細については、TechNet のドキュメントに手順を追って説明してあります。この記事が移行を検討するきっかけとなり、また予期される問題がお客様の環境に悪影響を与えるかどうかを判断する参考となれば幸いです。以下に示す情報は Exchange Online への移行に基づいたものですが、オンプレミス環境のお客様にも、手順や考慮事項について参考にしていただける部分が多々あるかと思います。
環境の準備
- オンプレミスのサーバーに対して必要なレベルの修正プログラムを適用済みか。
o Exchange 2007 SP3 RU10 以降
o Exchange 2010 SP3 以降
o Exchange 2013 RTM CU1 以降
現時点では、Exchange 2013 には Service Pack がリリースされておらず、RTM CU1 がこれに当たるため、2013 年 4 月 2 日にリリースされた CU1 (英語) が必須です。
- クライアント バージョンの Windows Outlook ユーザーが必要なレベルの修正プログラムを適用済みか。
o Outlook 2007、12.0.6665.5000 以降
o Outlook 2010、14.0.6126.5000 以降
o Outlook 2013、15.0.4420.1017 以降 - オンプレミスのユーザーがすべて Exchange Server 2013 に配置されているか、または Exchange Online に移動済みか。
現在のパブリック フォルダーとコンテンツの解析
(Exchange Online に関するサイズ制限)
- 現在のパブリック フォルダーのインフラストラクチャはどのようなものか。
o 誰がどの情報にアクセスしているか。
o コンテンツの全容量はどのくらいか。
Get-PublicFolderStatistics を実行して、Exchange 2007/2010 のパブリック フォルダーのコンテンツの総容量が 950 GB を超えているか (理由は後述)
Get-PublicFolderStatistics を実行して Exchange 2013 のパブリック フォルダーのコンテンツの総容量が 1.25 TB を超えているか。
o コンテンツの全容量はどのくらいか。
単一のパブリック フォルダーのサイズが 15GB を超えていないか。超えている場合は、最初に容量を減らす必要があります (理由は後述)。
- パブリック フォルダー メールボックスのレイアウトはどうなっているか。
o コンテンツがパブリック フォルダー メールボックスおよびクォータの最大容量以内に収まっているか。
o 各パブリック フォルダーをどのパブリック フォルダー メールボックスに含めるか。
初期パブリック フォルダー メールボックスの作成
- パブリック フォルダー メールボックスは管理者が作成するため、ユーザーのコンテンツ用のスペースが Exchange Online に必要です。コンテンツの総容量が 25GB 以下の場合は、開始時のパブリック フォルダー メールボックスは 1 つのみで構いませんが、スクリプトを使用すると、実行結果に基づいて開始時のレイアウトを決定できます。さらにバックエンドの自動プロセスによって、今後パブリック フォルダー メールボックスがさらに必要になるかどうか判定されます。オンプレミスのユーザーは、自身の展開に適したクォータの値を使用します。
移行要求と初期のデータ同期の開始
- 初期コピーとして、オンプレミスから Exchange Online にパブリック フォルダーのコンテンツがコピーされます。この処理には、コンテンツの量に応じた時間を要します。さまざまな要素が絡むため、この所要時間を予測することは簡単にはできませんが、PowerShell で進捗状況を監視するのは可能です。処理中は、ユーザーは引き続きオンプレミスのパブリック フォルダー インフラストラクチャを使用できます。したがって、オンプレミス環境への影響はありません。
変更されたコンテンツの差分同期の実行
- 管理者がコンテンツの差分同期を実行すると、初期の移行要求でコピーを実行した後に変更されたデータのみがコピーされるため、終了処理に伴うサービス停止時間を短縮できます。多数のパブリック フォルダー サーバーが存在する大規模環境では、多数の差分同期が必要となります。
オンプレミスのパブリック フォルダーのロックと移行要求の終了処理
- オンプレミス環境のパブリック フォルダーへのアクセスがブロックされ、変更されたデータの最終的な差分同期が実行されます。この段階が完了すると、ユーザーが Exchange Online のパブリック フォルダーにアクセスできるようになります。ここでアクセスをブロックするのは、Exchange Online のパブリック フォルダーの環境にユーザー接続が移行される直前にオンプレミスでコンテンツが変更されることを防ぐために必要な措置です。
Exchange Online のパブリック フォルダーの環境の検証
- 新しいコンテンツおよびアクセス許可のレポートを作成し、移行前に作成したレポートと比較します。
o 問題がないことを管理者が確認したら、新しい Exchange Online のパブリック フォルダーに対するユーザー接続のブロックを解除します。
o 移行処理で問題が発生している場合は、オンプレミスのパブリック フォルダー インフラストラクチャへのロールバックが開始できます。ただし、ロールバックの開始前に Exchange Online のパブリック フォルダーに対して実行されたコンテンやアクセス許可の変更、および作成/削除されたフォルダーは、オンプレミスのインフラストラクチャへの複製には反映されません。
従来のパブリック フォルダーのコンテンツの削除
- 管理者がオンプレミスのインフラトラクチャからパブリック フォルダー データベースを削除します。
Exchange Online でできることとできないこと
ここまでは、移行処理の概要について説明しました。ここからは、機能自体について紹介します。新しい Office 365 で使用を開始した場合、Exchange Online ユーザーがクラウド使用できる無料のパブリック フォルダーの容量は、約 1.25 TB です。単位が TB (テラバイト) であることにご注意ください。テナントで最大 50 個のパブリック フォルダー メールボックスを作成できますので、その場合それぞれが 25 GB のクォータを持つことになります。ただし、ハイブリッド環境で運用する場合は、パブリック フォルダーはオンプレミスか Exchange Online のいずれかにしか配置できません。
パブリック フォルダーを Exchange Online に移行する処理が完了したら、オンプレミスのパブリック フォルダー インフラストラクチャでは階層がロックされ、ユーザー接続がブロックされると同時に、この時点からのコンテンツの変更が禁止されます。オンプレミスのコンテンツがロックされるため、必要な場合には Exchange Online からのロールバックを行うことができます。ただし、既に説明したとおり、Exchange Online のパブリック フォルダー インフラストラクチャがオンプレミスにコピーされ直すときに変更が適用されないため、データの損失が発生する場合があります。
マイクロソフトは、オンプレミスの Exchange Server 2013 ユーザーからの Exchange Online パブリック フォルダーへのアクセスをサポートする予定です。また、パブリック フォルダーのインフラストラクチャをローカルに保持する場合に、Exchange Online ユーザーがオンプレミスのパブリック フォルダーへアクセスできるようにする予定です。下の表に、ユーザーがアクセスできるパブリック フォルダー インフラストラクチャをまとめました。ハイブリッド展開のオンプレミス ユーザーが Exchange Online パブリック フォルダーにアクセスするには、ユーザーが Exchange 2013 に配置されている必要がありますので、ご注意ください。また、繰り返しになりますが、パブリック フォルダーはオンプレミスか Exchange Online のいずれかにしか配置できません。同時に複数の異なるパブリック フォルダー インフラストラクチャを使用することはできません。
パブリック フォルダーの場所 | 2007 (オンプレミス) | 2010 (オンプレミス) | 2013 (オンプレミス) | Exchange Online |
メールボックスのバージョン | ||||
Exchange 2007 | ○ |
○ |
× |
× |
Exchange 2010 | ○ |
○ |
× |
× |
Exchange 2013 | ○ |
○ |
○ |
○ |
新しい Exchange Online | ○ |
○ |
○ |
○ |
Exchange Online でパブリック フォルダーを管理する方法
パブリック フォルダーのコンテンツの移行が完了するか、新規にパブリック フォルダーを作成した場合、Exchange Online では、パブリック フォルダーのさまざまな管理業務を心配する必要はありません。既にご紹介した記事 (英語) にもあるように、Exchange Server 2013 および Exchange Online のパブリック フォルダーは、メールボックス データベースの新しい種類のメールボックスに格納されます。オンプレミスのユーザーの場合は、コンテンツが増加するにつれて、パブリック フォルダー メールボックスの作成、使用率の監視、必要に応じたパブリック フォルダー メールボックスの新規作成、コンテンツを異なるパブリック フォルダー メールボックスに振り分ける作業などを行う必要があります。一方、Exchange Online ではパブリック フォルダー メールボックスの管理が自動的に実行されるため、管理者は実際のパブリック フォルダーとそのコンテンツの管理に集中できます。Exchange Online の内部では次の 2 つの自動プロセスが常に実行されており、すべての処理を担当しています。
1. パブリック フォルダーのメールボックスのクォータ使用率に応じて自動的にパブリック フォルダーを移動
2. アクティブな階層接続数に応じて自動的にパブリック フォルダー メールボックスを作成
以降では、各機能を個別に説明していきます。
1. パブリック フォルダーのメールボックスのクォータ使用率に応じて自動的にパブリック フォルダーを移動
このプロセスは、パブリック フォルダー メールボックスのクォータ使用率をアクティブに監視します。これにより、パブリック フォルダー メールボックスが予期せずいっぱいになり、新しいコンテンツを任意のパブリック フォルダーに追加できなくなる事態を防げます。
パブリック フォルダー メールボックスの容量が警告表示クォータの値である 24.5 GB に達すると、このプロセスが自動的にトリガーされ、パブリック フォルダーが現在配置されている場所の再割り当てが実行されます。このとき、Exchange Online は容量の上限に近づいているパブリック フォルダー メールボックスから、容量に余裕のある既存のパブリック フォルダー メールボックスへ、一部のパブリック フォルダーを移動します。ただし、パブリック フォルダーを移動するだけの十分な余裕のあるパブリック フォルダー メールボックスが存在しない場合、Exchange Online は自動的にパブリック フォルダー メールボックスを新規作成し、一部のパブリック フォルダーを新たに作成したパブリック フォルダー メールボックスに移動します。これにより、最終的にはすべてのパブリック フォルダー メールボックスが警告表示クォータ以下になります。
任意のパブリック フォルダー メールボックスから他のパブリック フォルダー メールボックスへパブリック フォルダーを移動する処理は、通常のメールボックスの移動と同様に、オンラインの移動処理で実行されます。移動処理はオンラインで行われるため、ユーザーがオンライン移動処理の終了段階で 1 つまたは複数のパブリック フォルダーにアクセスした場合、短時間の通信途絶が発生する場合があります。電子メールが有効化されているパブリック フォルダーのうち移動中のものに宛てられた電子メールは、一時的にキューで待機し、移動要求の完了後に配信されます。
パブリック フォルダー メールボックスのクォータ値は、特に理由がなくても小さくすることはできますが、逆にクォータの容量が 25 GB を超えるように構成することはできません。
文章での説明は難しいので、このプロセスを図で説明します。下図で説明する 1 つめのシナリオは、ユーザーが現時点で PFMBX-001 と PFMBX-002 の 2 つのパブリック フォルダー メールボックスを保持している場合です。PFMBX-001 にはパブリック フォルダーが 3 つあり、PFMBX-002 にはパブリック フォルダーが 1 つだけあります。PFMBX-001 は警告表示クォータの設定値である 24.5 GB を超過し、現在、コンテンツの容量が 24.6 GB であるとします。この環境の自動分割プロセスでは、実行時に、PFMBX-002 に十分な空き容量があることが確認され、パブリック フォルダーが PFMBX-001 から PFMBX-002 に移動されます。この例では、最終的に、ほぼ同じ容量のデータを含むパブリック フォルダー メールボックスが 2 つ存在することになります。フォルダーのサイズによって、このプロセスで移動するフォルダーを単一の大容量のものにするか、または多数の小規模なパブリック フォルダーにするかが決定されます。この例では、単一のフォルダーが移動されます。
シナリオ 1: 自動分割プロセスにより、パブリック フォルダーが任意のパブリック フォルダー メールボックスから他のパブリック フォルダー メールボックスに移動されます。
次に説明する 2 つめのシナリオは、ユーザーが PFMBX-001 という名前のパブリック フォルダー メールボックスを 1 つだけ保持し、その中に 3 つのパブリック フォルダーがある場合です。PFMBX-001 は警告表示クォータの設定値である 24.5 GB を超過し、コンテンツの容量が 24.6 GB であるとします。この環境の自動分割プロセスでは、実行時に、パブリック フォルダーの移動先として使用可能なパブリック フォルダー メールボックスが他に存在しないことが確認されます。このため、このプロセスでは PFMBX-002 という空のパブリック フォルダー メールボックスが新規作成され、この新しいパブリック フォルダー メールボックスに一部のパブリック フォルダーが移動されます。最終的には、似た容量のデータを含むパブリック フォルダー メールボックスが 2 つ存在することになります。この例でもまた、単一のパブリック フォルダーが移動されていますが、多数の小規模なパブリック フォルダーが移動される場合もあります。
シナリオ 2: 自動分割プロセスによって、パブリック フォルダーの移動の前に、空のパブリック フォルダー メールボックスが新規作成される。
ここで、注意が必要な Exchange Online の制限事項について説明します。Exchange Online では、パブリック フォルダー メールボックスのクォータが 25 GB に制限されているため、単一のパブリック フォルダーのサイズは必ず 25 GB 以下である必要があります。参考として、25 GB のデータは、75 KB のサイズのアイテムでおよそ 35 万個分、50 KB のサイズのアイテムでおよそ 52 万 5,000 個分です。ほとんどの場合、このサイズのデータは簡単に複数のパブリック フォルダーに分割することが可能なため、単一のパブリック フォルダーで 25 GB の制限を超えないようにすることができます。
移行に関するドキュメントでは、現時点で 1 つで 15 GB を超えるサイズのパブリック フォルダーが存在する場合、古いコンテンツを削除したり、複数の小規模なパブリック フォルダーに分割したりして、移行作業の前に該当するパブリック フォルダーのサイズを 15 GB 未満まで小さくすることを推奨しています。ここで、1 つで 15 GB を超えるパブリック フォルダーとは文字通りの意味で、これには子フォルダーは含まれません。子パブリック フォルダーは必要に応じて別のパブリック フォルダー メールボックスに存在することができるため、親フォルダーに属する子フォルダーは、すべて 15 GB のサイズ制限には含まれません。この推奨事項の理由には 2 つの側面があります。その 1 つは、オンプレミスから非常に大きなパブリック フォルダーを移行し、移行開始後すぐに自動分割プロセスがトリガーされることを防ぐためです。もう 1 つは、Exchange 2007/2010 から Exchange Online に移行されたコンテンツは、単一のパブリック フォルダーで使用するスペースが、解析結果で 30% ほど大きくレポートされる場合があるためです。Exchange Server 2013 ではそれ以前のバージョンの Exchange Server よりも正確にメールボックス データベース内のスペースを計算する手法が導入されたため、このような現象が発生します。オンプレミスの Exchange Server 2007/2010 から Exchange Online に単一の大きなパブリック フォルダーを移行する場合、この容量再計算により 25 GB の容量制限を 1 つのパブリック フォルダーで超過する場合があります。移行のためにデータをコピーする準備を完全に終えてからこのことに気が付いた場合、手順を最初からやり直して時間を大幅に無駄にすることになるため、あらかじめご注意ください。
お客様のビジネス要件により、ここまでに説明した方法で単一の大きなパブリック フォルダーのサイズを小さくできない場合は、パブリック フォルダー メールボックスの 25 GB のクォータ制限を拡大することはできないため、Exchange Online への移行は行わず、パブリック フォルダー全体をオンプレミスのまま保持することを推奨します。
2. アクティブな階層接続数に応じて自動的にパブリック フォルダー メールボックスを作成
2 つめの自動プロセスは、Exchange Online のパブリック フォルダーにアクセスする際のユーザー エクスペリエンスを最適な状態に維持するためのものです。Exchange Online では、ユーザーの全パブリック フォルダー メールボックスに対して展開されている階層接続数をアクティブに監視します。この値が事前定義された数値を超えると、自動的にパブリック フォルダー メールボックスが新規作成されます。パブリック フォルダー メールボックスが追加で作成されることで、ユーザー接続が多くのパブリック フォルダー メールボックスにスケール アウトされ、各パブリック フォルダー メールボックスへの階層接続数が減少します。Exchange Online のパブリック フォルダーのコンテンツ容量が少なくても、アクティブなユーザーの数が非常に多い場合は、コンテンツの容量にかかわらず、パブリック フォルダー メールボックスが自動的に追加作成される場合があります。
別の例でご説明します。こちらの例では、わかりやすいように小さな値を使用します。ここでは、Exchange Online でパブリック フォルダー メールボックス 1 つあたりのアクティブな階層接続数を 200 以下に設定していると仮定します。下図は、900 人のユーザーが 4 つのパブリック フォルダー メールボックスに対して 900 のアクティブな階層接続を確立している場合を示しています。このシナリオでは、ユーザーの環境内で使用可能なパブリック フォルダー メールボックスすべてに対してクライアント アクセス サーバーが階層接続を展開する際に、それぞれのパブリック フォルダー メールボックスで約 225 のアクティブな階層接続が処理されることになります。パブリック フォルダー メールボックス 1 つあたりの望ましいアクティブな階層接続数は 200 とされているため、接続を監視している Exchange Online はこれを超過していると判断し、PFMBX-005 が自動的に作成されます。PFMBX-005 が作成された直後に Exchange Online は PFMBX-005 に対して階層の同期を強制的に実行し、クライアントの階層接続を受け入れる前に、パブリック フォルダーの構造とアクセス許可に関する最新の情報を反映させます。この例では、最終的には 5 つのパブリック フォルダー メールボックスが 900 のアクティブな階層接続を処理し、パブリック フォルダー メールボックス 1 つあたりの平均接続数は 180 になります。これにより、すべてのアクティブ ユーザーに最適な接続環境が保障されます。
シナリオ 3: 自動分割プロセスによりパブリック フォルダー メールボックスが新規作成され、アクティブな階層接続がスケール アウトされます。
Exchange Online のパブリック フォルダー インフラストラクチャの使用開始後は、マイクロソフトが自信を持って提供するこの組み込み済みの自動プロセスによって、ユーザーの皆様は、本来の業務に集中できるようになります。インフラストラクチャの保守はマイクロソフトが担当しますので、お客様はそれぞれのプロジェクトにより多くの時間を割り当てることが可能です。
まとめ
新しい Exchange Online でパブリック フォルダーを皆様にご利用いただけることを非常に嬉しく思っております。今回の記事では、オンプレミスから Exchange Online への移行プロセスが非常に簡単なものであり、またバックエンドの自動プロセスによりさまざまな機能の管理に伴う負担が軽減されていることをご紹介しました。Exchange Online のパブリック フォルダーを皆様にご活用いただけますと幸いです。
パブリック フォルダー機能担当の全員、Nino Bilic、Tim Heeney、Ross Smith IV、Andrea Fowler に、データの提供と検証での協力を感謝します。
Brian Day
Exchange カスタマー エクスペリエンス担当
シニア プログラム マネージャー