[今月の技術トピック]『次の Windows Server はこうなる!?』来年登場予定の次期サーバー OS をスムーズに理解するために
Windows Server 2003 サポート終了の時期が刻々と迫ってくる中、マイクロソフトの社内では次のサーバー OS の開発が進んでいます。
Windows Server Technical Preview (開発途中の次期サーバー OS) の Hyper-V の新機能を見てみると・・・
- 静的メモリのオンライン リサイズ
- ネットワーク アダプターのホットアド/ホットリムーブ
- Hyper-V ホスト クラスターのローリング アップグレード
- Linux Secure Boot のサポート
- プロダクション チェックポイント
- RemoteFX による OpenGL, OpenCL のサポート
- ・・・・
などがあります。たとえば、管理者の意図通りに仮想マシンのメモリ管理ができるようになれば、ダイナミックメモリ (システムが自動的にメモリ量を調整する仕組み) を使わなくても、必要な時にメモリを増やしたり減らしたりできるようになります。プロダクション チェックポイントという新機能を使えば、アプリケーションの整合性を取りつつ仮想マシンのスナップショットを取れるため、いつでも好きな状態に戻せるようになります。
現時点で試せるものだけでも触ってみる価値はあると思いますが、これらは次期 Windows Server の進化のごく一部でしかありません。せっかくなので、次期サーバー OS のポテンシャルの片鱗を見てみましょう。
- 解説動画と資料でWindows Server Technical Preview をチェックする
- Tech Fielders セミナー「次期 Windows Server はどうなる?~年末年始を無駄にしないために~」に参加する
次期 Windows Serverは、「クラウドファースト」を語り始めたマイクロソフトにとって、2 世代目のクラウド指向なサーバー OS となります。そのため、Windows Server 2012 R2 の時よりもはるかに Microsoft Azure を意識して開発されたテクノロジが組み込まれたものになる予定です。
この記事では、2014 年 10 月末にバルセルナで開いた TechEd Europe で語られた内容と、私がエバンジェリストとしてこれまで積み上げてきた経験から見ている世界について、簡単に方向性を書いておくことにします。
まず、次期 Windows Server には、系統の違う 4 つの視点があると考えています。
1. OS コアの進化とマイクロソフトのハードウェア戦略
2. データセンター技術 (Software Defined Datacenter) としての進化
3. アプリケーション プラットフォームとしての進化
4. (ユーザーへの) 直接的なサービスを提供する機能
たとえば 1 ですが、最新のサーバー ハードウェアを活かすためにサーバー OS が進化します。その中には CPU やメモリ、ストレージやネットワークに関するものもあるでしょう。また、マイクロソフト自身がデータセンター事業者として自社設計したサーバーの仕様を公開したり、Dell 様のハードウェアをベースにスタートした垂直統合型 Cloud Platform System を発表したりと、これまでのようにソフトウェア ベンダーとしての動き以外にも注目していただければと思います。
2 のデータセンター技術ですが、ストレージとしての Windows Server は更に柔軟な設計に対応しますし QoS もよくなります。SDN については Microsoft Azure と同様のネットワーク環境が作れるような仕組みの提供と、マイクロソフト以外のテクノロジを使って導入されてしまった SDN 環境の一部としても利用できるようになる予定です。NFV (Network Function Virtualization) やサービス チェイニング、NVGRE/VXLAN などの言葉がわからないと、話についていけなくなるかもしれません。
3 のアプリケーション プラットフォームは、まだまだ未知数の多い分野ではありますが、先日発表をした Docker の Windows Server サポートがどこまで組み込まれるは非常に注目されていますし、Microsoft Azure で実現できているような、アプリケーション実行環境の構成の自動化はオンプレミスでも行われるようになるでしょう。また、.NET Framework のオープンソース化や Linux/Mac での実行、一部の Visual Studio の無償化、そして次期 ASP.NET の可搬性の高さなども相まって、アプリケーション サーバーとしての Windows Server からは目が離せません。
最後の 4 はユーザーへのサービスについてです。認証サービスを提供する Active Directory やリモート アクセス、ファイル サーバーや VDI などは、Windows Server 単体で進化をしていくよりもハイブリッドなクラウドを意識したものになっていくでしょう。たとえば、社内と Azure の両方の Active Directory を連携する手法として、これまでの同期やフェデレーションに加えて、Microsoft Identity Manager (MIM ミム)という Identity 管理ソリューションも登場します。Identity と言えば、先日買収した Aorato のセキュリティ ソリューションがどのように組み込まれるのかも気にしておくとよいでしょう。
このように、次期サーバー OS では、単なる新機能の羅列では表現できないような時代になりつつあります。明らかにこれまでとは違う用語に戸惑う方も少なくないでしょうが、パブリックなクラウドやオープンソース、ネットワーク業界では日頃から語られているものも少なくありませんので、是非とも一緒に勉強をしながら次期サーバー OS を気持ちよく使いこなせる準備を進めていきましょう!
日本マイクロソフト株式会社
エバンジェリスト
高添 修<Blog>