「プログラミング初体験の学生のために導入。開発を身近に感じられるVisual Studio」学校法人 岩崎学園 情報科学専門学校インタビュー
今回、取材にご協力頂いた学校法人 岩崎学園 情報科学専門学校 は、神奈川県では初めての情報系専門学校で、30年もの歴史があります。現在の情報科学系の学科は「情報セキュリティ学科」、「情報処理科」、「情報工学科」、「Web技術科」、そして「先端ITシステム科」の5つ。情報科学専門学校では、社会的なニーズを捉えた人材の育成に力を入れており、「先端ITシステム科」は、スマート家電に代表されるネットワーク型の新しい社会を支えるエンジニアを育成すべく、今年から新設されました。 そんな情報科学専門学校では、どのようにVisual Studioを活用しているのか、そして、なぜ利用しているのか。MSPの松原・萩谷・梶山が、先生と学生のみなさんにインタビューしてきました。
取材にご協力頂いた先生お2方をご紹介します。
武藤幸一 先生
プログラミングの授業を担当されており、教師歴は18年。授業以外にも、学校内システムの開発も担当され、学生が自分の出欠を見られたり、就職活動を管理できるWebシステムの開発をされています。
小野寺栄吉 先生
プログラミングの授業を担当されています。加えて、学外とのコラボレーションの企画・活動をされており、Androidの開発者コミュニティ「日本Androidの会」横浜支部の運営委員を務められています。個人的にも、アプリを作られており、以前制作したAndroidアプリは10数万ダウンロードを記録したこともあるそうです。
■学生がプログラミングに興味を持ち、やりたいことを実行できる環境を作りたい。
まず、私たちが取材したときに強く印象に残ったのが、取材が行われた部屋そのものです。
さまざまなデバイスが置かれており、その部屋のお名前を伺うと、嬉しそうに答えてくださいました。
―こちらの部屋に名前はありますか?
小野寺先生:
「よくぞ聞いてくれました!ISCラボっていうんです。ISCは情報科学専門学校の英語表記の頭文字ですね。学生は単に『ラボ』って呼んでます。ISCラボにはいくつかのデバイスを用意していて、学生が目にしただけで『あ!使ってみたい』と感じて欲しいものを取りそろえています。例えばKinectがあったら、Kinectを見て、『Kinect使ってみたいな』って。放課後などの空き時間も自由に使えるようになっていて、ブースもあるので、学生はそこでチームで開発をしたりなんかしますね。」
ISCラボには、Kinectなどのセンサーに加えて、ヘッドマウントディスプレイやロボットなどがあり、学生がプログラミングに興味を持てるようなデバイスを用意されているそうです。開発機材も充実していて、何かをやろうと思った際にすぐに実行できそうな環境でした。
■プログラミングを初めてする学生のためにVisual Studioを導入
アプリケーションや、Webサイトをより効率的に開発できる統合開発環境「Visual Studio」。情報科学専門学校で導入を決めた理由は、初めてプログラミングを行う学生に、開発を身近に感じてもらいたいためだそうです。
―授業では、Visual Studioをどのように利用されていますか?
小野寺先生:
「学生が入学したばかりの『プログラミングって何?』という段階で、Visual Studioを使っています。実際にこんなアプリを作れるということを最初に見せて、自分達が最終的にこんなことをできるんだってことをまずは教えます。」
小野寺先生:
「本校の場合は、メーカーさんにお願いしてVisual Studioをインストールした状態で、学生に配布するPCを納品していただいています。その場ですぐに開発が始められ、自分が考えたものが動くってところが、開発を一番身近に体験できるんじゃないかなと。そう思っています。」
入学してくる学生のほとんどが高校から入っている学生で、プログラミングをまったく知らない状態。いきなり本格的にプログラミングを教えると挫折してしまう可能性が高いため、最初から環境が整っていて、初めてでもある程度のものを開発できるVisual Studioを利用されているそうです。
―学生にとって、Visual Studioの便利な点はなんでしょう?
武藤先生:
「Visual Studioがいいのは、最初にプロジェクトを作る時にテンプレートがあるので、テンプレートを使えば、そのまま進めるだけでそれなりのものができる。まずはプログラミングを経験できることが学生にとって良いのかもしれないですね。」
「機能面では、Intellisenseがプログラミングの効率化だけではなく、学習という点でもとても役にやっています。」
はじめてプログラミングを行う学生にとってVisual Studioが優しい点は、テンプレートを利用すればすぐ簡単にプログラミングができることと、初心者によくあるタイピングミスなどを補助してくれる点とのこと。テンプレートとは、文字通り何かを開発したいときにひな形として使えるもので、簡易な操作である程度のアプリケーションを作ることができるものです。また、Intellisense(インテリセンス)とは、Visual Studioの入力補助機能で、ミスタイプした際や、プログラムとして不完全な部分があるときに、自動的に補完してくれる機能です。
■「プログラミングを学ぶこと」と「プログラミングで何かを作ること」は違う
1年生の授業では、ほとんどの学生がVisual Studioを利用されるそうですが、2年生以上になると、Visual Studioを使わない授業も増えてくるとのこと。先生方に、その理由を伺ったところ、2年生以上では専門的な内容を学ぶため、デザインパターンや設計技法をきちんと理解する必要があり、詳細を理解していなくてもある程度プログラミングをできてしまうことが、逆にデメリットになることがあると仰っていました。
―2年生以上の学生は、Visual Studioを授業で使う機会があまりないのでしょうか?
武藤先生:「2年次以上になると、Javaを学び始めること、また、それに伴って、デザインパターンや設計技法を学ぶ機会が増えてくるので、Visual Studioを使う機会は少なくなります。ただ、卒業する学年の後期に卒業研究を作っているのですが、ここではVisual Studioを使う学生が多いですよ。実際に、ファッションの学校の学生向けに画面上で服が着られる仮想試着アプリを作った学生がいましたが、やっぱりVisual Studioを使っています。作りやすさではVisual Studioの方がいいので。Javaの開発環境でそんなことをやろうと思ったら大変なことになってしまいます。学生もそこはうまく使い分けられているかなって思いますね。」
―「プログラミングを学ぶということ」と「プログラミングで何かを作るとういこと」は違うということでしょうか?
武藤先生:
「まさにそうで、モノを作るってなるとVisual Studioの方が良いですね。」
「卒業研究で使うのであれば、サンプルが豊富なVisual C++が使いやすいと思います。新しいヘッドマウントディスプレイのような外部デバイスが出てきたときに、そのサンプルを学生が調べてみると、Visual C++が使われていて必然的に勉強するといった感じですね。」
■マイクロソフトへのメッセージ
―最後に、マイクロソフトへ要望はありますか?
武藤先生:
「マイクロソフトのDreamSparkやVisual Studioにはとても助かっています。学生がWindows Serverを自由にダウンロードして卒業研究に利用するようなことができますし。
ただ、学校で導入するときにプラスαになるような機能が欲しくて、その1つはチーム開発かもしれないと考えています。チーム開発って、学生は全然やってないんですね。1人1人で開発してあとでマージして、訳わかんないプログラムになるとか起きるわけですけど。でも、Visual Studioには、Team Foundation Serverというチーム開発の支援環境が用意されているので、ゆくゆくはこの仕組みを導入していきたいですし、そのときにはご支援頂きたいと思っています。」
小野寺先生:
「僕は今まで通り、DreamSparkをはじめとして、学生が学習しやすい環境やプログラムを継続して提供いただけるとありがたいです。Digital Youth ProjectやImagine Cupのような取り組みもそうですね。今後もいろんな活動に期待しています。」
■実際に、授業でどのようにVisual Studioが活用されているのかを見学させて頂きました。
学生の皆さんは学内のプログラミング・コンテストに向けて、精力的に取り組まれています。ここでは5つの学科の学生が領域を跨いで3~4人で1チームを組み、アプリ開発が進められています。Visual Studioを使って開発が進められているとのことで、学生の立場からは下記のようなメリットやデメリットが伺えました。
メリット :
−扱いやすい
−サクッと作れるため便利
−配置も簡単にできる
−何を行っているか目に見えてわかる
デメリット:
−細かいところで融通が利かない
Visual Studioの特徴である「容易さ」および「速さ」を、学生の皆さんは体感されているようです。皆さんがVisual Studioを用いて作成されているアプリをいくつかご紹介します。
1) 会議で役に立つこと間違いなし!
会議参加者とホワイトボードを共有しているかのように画面を共有し、書き込みができるアプリ。タッチパネルで力を発揮するWindows 8での利用が楽しみになるものでした。
2) 通過するだけで身長測定!
Kinectの前に立つだけで自動的に身長が測定されるアプリです。未来の健康診断が一気に時間短縮化されるかもしれませんね。
3) これでゲームは攻略できる!
心理戦のゲームで情報量が増えると「覚えきれない!」と頭を抱える経験はないでしょうか。こういった情報を管理してくれるゲームです。どのプレイヤーがどういった役割を担っているかなど、推測するのをサポートしてくれます。これで白星が増えるはず!
最先端のツールやデバイスを用いての発想に驚きばかりでした。また、一年前までは高校生だったとは思えない想像力および技術力で課題に取り組まれている姿が印象的でした。Windowsストアアプリとのことで、今後のリリースが楽しみですね。