ファントムを含んだ製品の工程番号について
この記事では、ファントム BOM を含む製品の場合、 BOM マスタ (製品に設定する BOM) と製造 BOM (製造オーダー実施時に使用される BOM) の工程番号が異なる現象について解説いたします。
事象例 : BOM マスタに含まれるファントム BOM の工程番号が 20 だった場合、製造 BOM では工程番号が 10 になっている。
回答 : ファントム BOM の工程番号は製造 BOM の時に繰り上げられる。
説明 :
次の図を使い説明します。
(a) は製品 H と部品 F, G を含む BOM を表しています。
(b) は製品 H と F の工順を表しています。
製品 H は、機械アセンブリの製品です。
この機械アセンブリは、以下の2つの部品を含んでいます。
・ 2つの材料 (A と B) をもつ電子ユニット (F)
・ 2つの材料 (C と D) をもつパッケージ材料 (G)
(E) は、この機械の一般アセンブリの中で部材として使用されます。
この構造図は全機械アセンブリの部品やコンポーネントの概観をよく表しています。
しかし、この構造図 (BOM マスタ) は、製品の設計者にはよいかもしれませんが、
作業現場で機械がどのように組み立てられるか正しく表現できていない可能性があります。
例えば、BOM マスタでは電子ユニット (F) が別の作業指示書で別部品として組み立てられることを示しています。
しかし、作業現場では、別個の作業指示ではなく、全体の機械アセンブリの中の一部としてこの電子ユニットを組み立てる方が最適となる可能性があります。
また BOM マスタでは部品 G が別の部品であるかのように示されていますが、
ここで部品 G が物理的な部品ではなく、材料のパッケージを表しています。
従って、 BOM マスタは製品の設計と設計保守には効果的ですが、
製品の製造実行過程を管理するには最適ではない可能性があります。
一方、製造 BOM は製品を実際に製造する時には最適です。
次の図で BOM マスタから製造 BOM にどのように遷移するかを示します。
(a) は製品 H の BOM、 (b) は製造 H の工順です。
製造 BOM になると部品 F および G の概念はなく、実際の作業に従い、
部品 F と G の材料の BOM レベルは引き上げられます。
複数の工程をもった BOM マスタとは異なり、製造 BOM では 1 つにまとめられます。
部品 G の工程も引き上げられ製品 H の工程の一部になっています。
材料 A および B で電子ユニットを組み立てた後、アッセンブリが行われれ、
材料 C と D をパッケージングする流れになるため理にかなっています。
Microsoft Dynamics 365 for Finance and Operations では BOM マスタから製造 BOM への移行は
ファントム BOM のタイプを通じて有効になります。
「ファントム」という用語が表すように、部品 F と G は、 BOM マスタから製造 BOM へ移行する間になくなります。
この例では、ファントムが BOM マスタの部品 F と G の BOM の行に適用されます。
製造オーダーまたはバッチオーダーが作られる時に、 BOM マスタが製造オーダーまたはバッチオーダーにコピーされます。
次に、その順序が作られ、前図に示すように、 BOM マスタから製造 BOM への移行が行われます。
[複数レベルのファントム BOM]
上記の前提のもと、複数レベルのファントム BOM を持つことができます。
次の図の (a) は製品 G の BOM マスタ、 (b) は部品 E と F 、製品 G の工順を表しています。
これが製造 BOM になると以下のように工順がまとめられます。
[ファントムと工順ネットワーク]
ファンム BOM は工順ネットワークを持つ BOM にも使用できます。
工順ネットワークでは、1つ以上の操作が並行して実行されます。
次の図は、複数レベルの BOM で使用される工順ネットワークの例を表しています。
この図では、 (a) は製品 G と部品 F の BOM マスタで、 (b) は工順ネットワークを持つ製品 G と F の工順を表しています。
これが製造 BOM になると以下のように工順がまとめられます。
このように Microsoft Dynamics 365 for Finance and Operations では
ファントム BOM の工程番号は製造 BOM の時に繰り上げられる動作をします。