Part 4. Windows 10 導入時の検討の流れ
[導入計画立案の必要性]
ここまで述べてきたように、Windows 10 の導入では WaaS を見越した検討を行う必要がありますが、特に大企業の場合、WaaS における頻繁なアプリ互換性検証の実施が課題になりやすい、という特徴があります。インフラ面では従来の Windows OS のバージョンアップとそれほど大きく変わるわけではないものの、とはいえ保守性の向上(保守コストの削減) や、ネットワーク経由での継続的な FU/SU 配信については課題になるケースも多いでしょう。
こうしたことを考えると、Windows 10 導入では、アプリ/インフラ両側面から対応検討を行うことが望ましいのですが、大企業の場合、インフラを管理する IT 部門と、業務システムを管理している事業部門とが分断されているケースがよくあります。このため、IT 部門と各事業部門とがしっかり連携できる状況を作っておくことも重要です。
また Part 5 以降では実際の検討ポイントを解説していきますが、特にレガシーな業務アプリは一朝一夕に改善できないケースが多いため、直近での「とりあえずの」対応と、中長期的な「抜本的な」改善とを分けて考える必要があります。Part 5, 6 を確認していただいたら、下図のような絵を整理していただき、やるべきこと(対応施策)を 「インフラ/アプリ」「短期/中長期」 に分類していただくことをオススメします。
[特に検討を必要とするポイントについて]
特に、企業内の IT インフラを管理している IT 部門の方からすると、「Windows 10 への移行は、従来の OS バージョンアップと何が違うのか? どこの考え方を特に変える必要があるのか?」という点が気になると思いますので、簡単に下図に整理してみました。
ざっと要点を解説すると、以下の通りです。
- インフラ系
- クライアント設計やハードウェア選定などの作業は従来と全く変わりがありませんが、今後は「よりセキュアな環境」を「低コストで維持し続ける」ことが今まで以上に重要になってきます。このため、① セキュリティに関する検討と 、② 従来手作業で実施していてかなりコストがかかっているポイントの改善、はぜひ実施すべきです。
- ②に関しては皆様個々に懸念点が異なると思いますが、多くのお客様で実施されている、パラメータシート管理と手作業でのマスタイメージ作成の 2 点については、この機会にぜひ見直しをオススメしたいです。
- また、「継続的に進化し続ける IT 基盤」を実現するために、③ FU/SU の配布方法、を検討することも重要になります。この FU/SU の配信方法はアプリ互換性検証と密接な関係を持っており、最終的な結論としては、FU/SU を段階展開(リング配信)する必要があります。
- アプリ系
- なんといっても、① WaaS における頻繁なアプリ互換性検証の実施方法、が最大の課題ですが、これをスムーズに行っていくためには、最終的には、② CI/CD やテスト自動化、DevOps などに代表されるようなシステム開発手法の近代化、を進める必要があります。とはいえ、既存レガシーアプリケーションに対して②を推進しろと言われても、そうそう簡単に行えないことがほとんどでしょう。
- このため実際の対策に関しては、① 塩漬けタイプの業務アプリに対しては可能な範囲でアプリ互換性検証を効率化しつつ、② 新規開発するシステムや再構築するシステムに関しては、開発時に CI/CD やテスト自動化、DevOps などを取り入れながら近代的な開発をする、というアプローチが必要になります。
これらの一連の項目の中で、実は全体を大きく左右しているのが、既存レガシー業務システムのアプリ互換性検証です。互換性検証については旧態依然としたアプローチをしているとコストも莫大になりやすいため、まずはこの部分を抑えてから他の項目について検討していくようにするとよいと思います。このため、本資料では Part 5 でまずアプリ系に関する考え方を、Part 6 でインフラ系に関する改善ポイントを解説していくことにしたいと思います。