Azure SDK 2.8 for .NET を発表
このポストは、11 月 18 日に投稿された Announcing the Azure SDK 2.8 for .NET の翻訳です。
このたび、マイクロソフトは Visual Studio 2013 および Visual Studio 2015 向けの Azure SDK 2.8 を発表しました。今回の記事では、更新内容の概要と、新しくなったツールによって Azure での開発エクスペリエンスがどのように改善されるかについて説明します。
Azure SDK 2.8 for .NET
[ダウンロード: VS 2015 用 | VS 2013 用]
- Azure Resource Manager: 新しいリソース プロバイダーとテンプレート言語関数に対する IntelliSense のサポートが強化され、Visual Studio でのデプロイメント テンプレートの作成が簡単になりました。Visual Studio のテンプレートで使用される新しい関数では、プラットフォーム機能を活用してリソース名を簡単に指定できるため、デプロイメント時のエラーが減少します。
- Azure Diagnostics のデータを Application Insights に送信 : 重要なログ トレースやメトリックを直接 Application Insights に送信するように Azure Diagnostics を構成できるようになりました。Application Insights の検索機能と視覚化機能を使用して、問題の根本原因を簡単に特定できます。
- Docker のサポートの追加 : Docker Tools for Visual Studio のプレビュー版のサポートは継続しており、新たに Windows コンテナーのサポートが追加されました。
- Mobile Apps テンプレートの更新 : 新たに OWIN スタートアップ クラスが導入され、アプリのスタートアップ時の制御性が向上しました。
- Microsoft Azure Storage Explorer のプレビュー版を発表 : Windows マシン以外でのストレージ BLOB の利用を検討されているお客様に向けて、ストレージ ツールを大幅に見直し、Azure Storage Explorer をリリースしました
- Azure Service Fabric ツール : Visual Studio 2015 向けの Azure Service Fabric ツールがリリースされました。Visual Studio で新しいツールを使用して Azure Service Fabric プロジェクトの作成、デバッグ、デプロイ、アップグレードを行うことができます。また、新しい Service Fabric Explorer では、ローカルおよびリモートの Azure Service Fabric クラスターの監視、確認、管理を実行できます。
- Azure HDInsight Tools for Visual Studio: 今回の更新により、クラスター内から Hive クエリを HiveServer2 経由で実行できるようになり、オーバーヘッドがほとんど発生しなくなったほか、ジョブのログをリアルタイムで確認できるようになりました。また、新しくなった Hive のタスク実行ビューでは、ジョブの詳細を確認し、潜在的な問題を特定できます。
- Azure Data Factory ツール : Azure Data Factory ツールを Visual Studio 2015 でも使用できるようになりました (英語)。これにより、Azure Data Factory のオーサリング エクスペリエンスが簡素化され、展開やデプロイメントの問題が解消されます。
Azure Resource Manager の更新
今回、IntelliSense のサポートが強化されたことで新しいリソース プロバイダーが使いやすくなり、Azure Resource Manager のテンプレート言語で最新のテンプレート言語の式を使用できるようになったため、テンプレートの作成とデバッグが簡単になりました。スキーマは自動的にキャッシュされますが、すぐに新しいスキーマに更新したい場合は、テンプレートのドキュメント ウィンドウを右クリックして [Reload Schemas] (Ctrl+Shift+J) を選択します。
サンプル テンプレートが更新され、初回デプロイメント時のエラーの減少を目的とした新しいプラットフォーム機能を使用するようになりました。たとえば、リソース名は新しい uniqueString() 関数を使用して自動的に作成されるため、各デプロイメントのリソース グループ内のリソースで一貫したハッシュが生成されます。その結果、グローバルに一意なリソース名に関する命名エラー (競合や正規表現の要件など) が減少するほか、各リソースにパラメーター値を指定する必要がなくなるため、デプロイメントが簡単になります。
Azure Resource Manager テンプレートのデプロイメントに使用される PowerShell スクリプトが更新され、新しい Azure PowerShell コマンドレット (バージョン 1.0 以降) に対応しました。これは、Web Platform Installer または PowerShell Gallery からインストールできます。なお、これらは SDK により自動的にインストールされます。この変更により、スクリプトを簡素化できると共に、モジュールの使用を必要とする基本的な PowerShell コンストラクトを使用できるようになります。さらに、複数のデプロイメントを同一のリソース グループに保存できるようになり、これを使用してデプロイメントの履歴を表示できます。
Azure Diagnostics のデータを Application Insights に送信
開発者にとって重大な課題の 1 つとして、運用環境で実行されている Azure アプリケーションの診断とトラブルシューティングがあります。特に、起動のエラーやロールのリサイクルなど、アプリケーションとシステム情報の両方に関係する問題についてはトラブルシューティングが困難です。多くの場合、ゲスト OS レベルのエラー情報は Windows イベント ログから確認できます。このログは、Azure Diagnostics 拡張機能が収集してストレージに転送することができます。しかし、テーブル ストレージに格納されると、問題の原因であるエラーのログを正確に特定することは容易ではありません。
Azure Diagnostics のデータを Application Insights に送信すれば、アプリケーションの Application Insights SDK と Azure Diagnostics のシステムおよびインフラストラクチャ データの両方から生成されるメトリックやログの情報をすべて 1 か所でまとめて取得し、アプリケーションの問題に関連するすべてのデータを表示できます。詳細については、こちらのページ (英語) を参照してください。
Microsoft Azure Storage Explorer のプレビュー版を発表
今回、ストレージ ツールを大幅に見直し、Azure Storage Explorer (プレビュー) をリリースしました。これは、Azure SDK ツールセットの完成を希望する開発者の皆様から多数のご意見やご要望をいただいていたものです。Storage Explorer は、ストレージを使用するアプリケーションの開発や診断を支援する無料のスタンドアロン ツールです。アプリケーションを開発する場合にこのツールを使用すると、Microsoft アカウントや組織アカウント (2FA を含む) を使用してサインインするか、ストレージ アカウント名とストレージ アカウント キーを直接入力するだけでストレージ アカウントに接続し、全サブスクリプションのすべてのアカウントを簡単に閲覧できます。
現時点では、コンテナーの作成、ファイルの内容のコンテナーへのアップロード、ファイルのダウンロード、プロパティやメタデータの設定、アクセス制御に使用する SAS キーの作成や入手などの作業を迅速に行うことができます。アプリケーションを診断する場合には、コンテナーおよび個々の BLOB を迅速に検索し、コンテンツ自体から BLOB のメタデータやプロパティまで、さまざまなものを調査することが可能です。これにより、アプリケーションやスクリプトと連携するストレージの間で問題の切り分けを行うことができます。このツールは軽量でスタンドアロン型であるため、多数の環境に迅速にコピーして、対応やトラブルシューティングを行うことが可能です。大規模なサブスクリプションでの作業や大量のコンテンツの処理を特に重視しているため、Storage Explorer は拡大するニーズに対応するものとなっています。
Storage Explorer には重要な機能がいくつかあります。まず、従来のアカウントの他に、新しい ARM ベースのサブスクリプションおよびストレージ アカウントが完全にサポートされ、Azure のすべてのストレージ アカウントに完全にアクセスできるようになりました。次に、あらゆる形式のサインインに対応し、すばやく接続できるようになりました。また、特に重要な点として、Windows と Mac の両方で軽量なスタンドアロン バージョンを使用できるため、このツールの活用範囲が広がりました。現在、このプレビュー版ではストレージの BLOB サービスへの対応に重点が置かれており、機能の大部分は BLOB を中心としたものです。テーブルやキューの作成と削除のサポートについては最低限にとどまっていますが、今回のプレビュー版に関するフィードバックを反映してサポートが強化される予定です。
Windows および Mac 向けの Azure Storage Explorer (プレビュー) は storageexplorer.com (英語) からダウンロードできます。ぜひご利用のうえ、[Send-a-Smile] からご意見をお寄せください。
Docker のサポートの追加
Docker Tools for Visual Studio のプレビュー版のサポートは継続しており、新たに Windows 2016 コンテナーのサポートが追加されました。また Windows 2016 Nano コンテナーのサポートも近日中に予定されています。さらに、先日リリースされた yo docker (英語) では、皆様からのご意見を反映して ASP.NET、Node.js、GO (英語) のコンテナー化を行うスクリプト ベースのツールが強化されています。
Azure Mobile Apps の機能強化
App Service の Mobile Apps のプロジェクト テンプレートが更新され、OWIN スタートアップ クラスが導入されました。これは、NuGet パッケージの Microsoft.Azure.Mobile.Server (英語) バージョン 0.2.575 で実施された大幅な変更を反映したもので、スタートアップ時の制御を完全に行えるようになりました。これらの変更の詳細については、SDK の該当バージョンのリリース ノート (英語) を参照してください。また、テンプレートは OWIN のセルフホスト機能を使用するために移動されています。
Azure Service Fabric ツール
Azure Service Fabric と Visual Studio を使用してマイクロサービスの構築を開始する際に、Microsoft Azure Service Fabric SDK のプレビュー版をダウンロードして使用できるようになりました。これには Azure Service Fabric のランタイムと SDK、Visual Studio ツールが含まれていて、Service Fabric の使用を簡単に開始することができます。これらのツールにより、さまざまなサービス テンプレートを使用して新しい Service Fabric アプリケーションを作成できます。その後、Service Fabric アプリケーションのデバッグやデプロイ、バージョン管理、アップグレードも簡単に行うことができます。
このアプリケーションを初めて実行するときには、デバッグ作業をローカルで実施できるようにローカル クラスターが作成されます。Cloud Explorer を使用すると、ローカル クラスターまたはリモート クラスターのアプリケーションやノードを表示したり、新しい Service Fabric Explorer を起動したりできます。Service Fabric Explorer は、Service Fabric のデプロイメントとアップグレードの監視するための最新の Web ベースのツールです。また、Service Fabric のノード、アプリケーション、サービス、パーティション、レプリカのすべての詳細を確認することもできます。Service Fabric Explorer では、アプリケーションの削除やノードの無効化など、クラスターの各種不具合に対処する操作を実行できます。
Azure Service Fabric ツールの 1 つに診断イベント ビューアーがあります。このツールでは、アプリケーションの起動時に、Service Fabric のランタイムから生成された ETW イベント、組み込みのプログラミング モデル、アプリケーション コードが Visual Studio に直接自動的にストリーミングされます。これにより、生成元のプロバイダーにかかわらず、マイクロサービスに影響する可能性のあるすべてのイベントを 1 か所から確認できます。
このほか、提供されている JSON テンプレートを使用して、Azure でホストされる Service Fabric クラスターを Azure リソース グループ プロジェクトで作成できるようになりました。このテンプレートは、ニーズに合わせて変更することができます。
Azure Data Factory ツール
Azure Data Factory ツールを Visual Studio 2015 でも使用できるようになりました。マイクロソフトは、Azure Data Factory のオーサリング エクスペリエンスを簡素化し、展開やデプロイの問題を解消することを目標としています。Azure Data Factory ツールでは、カスタマイズされたエクスペリエンスと充実したツールが提供され、新規ユーザーと上級ユーザーの両方の生産性と効率が向上します。今回のリリースでは、リッチな Visual Studio インターフェイスを使用してデータ パイプラインの作成やデプロイを対話形式で行うことができます。このツールの詳細については、Azure Data Factory のブログ記事 (英語) を参照してください。
Azure HDInsight Tools for Visual Studio
HDInsight チームは、Visual Studio を使用している HDInsight 開発者向けにいくつかの更新を実装しました。このセクションでは、HDInsight 開発者に向けた Visual Studio の機能強化について説明します。
HiveServer2 経由の Hive の実行の高速化
現在、HDInsight Tools for Visual Studio で提示される情報は非常に限定的で、取得に長い時間がかかります。たとえば、Hive ジョブを送信した後に表示されるのは「進行率」のみで、それ以外は送信した Hive ジョブに関する詳細情報を確認することはできません。また、既存の送信メカニズムでは、送信時に追加のオーバーヘッドが発生するため、非常に簡単なエラーの検出にも 1 分以上を要します。これは、ジョブが WebHCat (別名 Templeton) 経由で送信されることが原因です。この問題を解決するために、新たに導入された機能ではクラスター内から直接 Hive ジョブを HiveServer2 経由で実行できるようになり、オーバーヘッドがほとんど発生しなくなったほか、RDP/SSH を使用しなくても Windows または Linux クラスターに対するクエリ実行時に情報を完全に確認できるようになりました。さらに、HDInsight Tools for Visual Studio の優れたエクスペリエンスにより、Hive on Tez のグラフやタスクの詳細を表示することもできます。
[注: この機能は HDInsight クラスター 3.2 以降でのみ使用できます。]
Hive on Tez ジョブのタスク実行ビュー
これまで、Hive ジョブの情報を構造化または視覚化する方法はなく、ジョブの詳細な情報を得ることは困難でした。そこで、マイクロソフトは Hive on Tez ジョブのタスク実行ビューを開発し、ユーザーがジョブに関する詳細な情報を得て、ジョブのパフォーマンスに関する問題が発生した場合にはそのジョブのさらに詳細な情報を確認できるようにしました。
基本的に、ユーザーは各タスクの動作と詳細情報 (データの読み取り/書き込み、スケジュールの開始時刻/終了時刻など) を確認できます。これにより、提供される視覚化された情報に従って、ジョブやシステム アーキテクチャの構成を調整できます。
まとめ
Azure アカウントをお持ちでないお客様は、無料評価版にサインアップして、上記のすべての機能を今すぐお試しいただけます。これらの機能を使用したアプリケーションの構築方法の詳細については、Azure デベロッパー センターをご覧ください。不具合を発見した場合には、Connect までお知らせください。また、ご要望、ご提案、アイデアは UserVoice (英語) や Visual Studio IDE の [Send-a-Smile] からお寄せください。
謝辞
このブログ記事の執筆にあたっては、多くの方々にご協力いただきました。Jason R. Shaver、Matthew Henderson、Vijay Paruchuri に感謝の意を表します。