最新オフィスと進化するワーク スタイル
(この記事は 2012 年 2 月 7 日に here it is online に掲載された記事のクロスポストです。)
I. オフィス移転と共に進化した、 マイクロソフトの新しいワーク スタイル
2011 年 2 月、日本マイクロソフトは「日本に根付き、信頼される企業」へと進化するため、東京都内 5 拠点 (新宿、初台、代田橋、赤坂、霞が関) のオフィスを統合し、品川の新オフィスへと移転しました。オフィス移転と同時に目指したのは、社員がおのおのの仕事に最も適した仕事環境を選択し、個人の可能性を最大限に発揮させ、業務効率を向上させるよう、ワーク スタイルを進化させること。そのためには、社員どうしの情報共有と連携の質を高める「コミュニケーションの進化」と、セキュリティを確保しながら業務効率性を向上させる、また、あらゆる無駄を省き電力やコストの削減を実現するといった社会的要請に対応する「ファシリティの進化」が必要でした。
移転からおよそ 1 年がたち、移転による実際の効果や、社員たち現場の生の声も集まってきました。そこで本特集では、新オフィスで目指したワーク スタイルの進化の効果と、それを実現したファシリティのさまざまな工夫、そしてこれらを支えた ICT とは何かをご紹介しましょう。
コミュニケーションの進化
コミュニケーションとコラボレーションを加速するワークスタイルの変革
品川オフィスの重要なコンセプトの 1 つが「Workplace Advantage (WPA)」 &「 New World of Work (NWoW)」─おのおののビジネスに適した理想の職場環境を実現し、社員の業務効率を向上させる考え方です。新オフィスでは、従業員の約 60% が固定席を持たないフレキシブル シートで働いています。
これにより、社員間のコミュニケーションやコラボレーションが加速され、生産性と創造性を引き出すことに成功しました。また、フレキシブル シートで共用スペースを大きく増やすことが可能になった点も重要です。集中作業やプライバシーを必要とする作業に使える個室から、グループで自由にコミュニケーションしながら作業できるスペースまで、従業員は仕事に合わせて、最適な場所で、最適な方法で働く選択をすることが可能になりました。
いつでもどこでも質の高いコミュニケーション環境を確保
自由に席を選べるフレキシブル シートをはじめ、社員のさまざまな働き方を支援および実現するには、社員がいつでもどこにいても、適切なデバイスで必要な人と効率的なコミュニケーションがとれるしくみが不可欠です。マイクロソフトでは、Microsoft® Lync® によりユニファイド コミュニケーション環境を完備。相手の状況に合わせてチャット、ビデオを含めた電話、メール、電話もしくはビデオ会議など、最適なコミュニケーション手段を選択できます。外線の発着信も統合されているため、同じインターフェイスでお客様との電話も可能です。また、社員 1 人ひとりにはノート PC はもちろん、最新のスマートフォンである Windows® Phone も貸与。社外からも社内システムにアクセスできるようネットワーク環境を整えているので、場所とデバイスを選ばずに、どこにいても、いつもと変わらないコミュニケーションがとれるのです。
ファシリティの進化
アポイントから受付、入退館までスムーズな自動受付システム
入退館のシステムは、空港のカウンターをイメージして設計されました。お客様がマイクロソフト社員とアポイントを取ると、バーコードの記された電子メールが送られてきます。それを印刷し、受付のバーコード リーダーで読み取ると入館証が発行されます (同時に発行される入館 ID 番号を入力して手続きすることも可能) 。後は、入館証をセキュリティ ゲートにかざせば入館できるしくみです。
バーコードを印刷した紙を忘れたり、入館 ID 番号がわからないときは、受付スタッフに直接問い合わせることもできます。さらに、お客様が入館するとアポイントを取った担当者に自動で連絡が届き、スムーズに対応できるしくみになっています。
印刷のムダを省いて情報漏えいリスクも低減
フレキシブル シートに伴って、印刷システムも再設計。社員がどこにいても近くのプリンターで印刷できるように、プリンターの前で Active Directory® により認証された ID カードをかざすだけで印刷できる「どこでもプリント」というしくみが導入されました。
これにより印刷のムダがなくなり、印刷した文書を置き忘れるミスもほぼゼロに。情報漏えいのリスク低減にもつながりました。コスト削減への寄与も大きく、紙の使用量は 28.1% の削減に成功。
またプリンターの総台数を減らして最新機種に置き換えたことで、消費電力は 47.2% 削減できました。
省エネと環境に配慮したエコ オフィス
新オフィスでは、照明や空調、複合機、仮想環境の推進などにより、省エネや環境対策にも積極的に取り組んでいます。特に企業の消費電力の多くを占める照明では、LED 化やベース照明の明るさを落とすといった対策を実践。一般的な貸しビルでは、机上面の照度は約 1000 ルクスと言われますが、品川の新オフィスのベース照明はおよそ 3 分の 1 となる約 350 ルクスに設定。震災後はさらに明るさを落とし、現在は 200 ~ 300 ルクスとしています。
もちろん、この明るさでは作業によっては不便に感じることもあります。そこで、色調を自由に変更できる LED の補助照明を各デスクに設置し、手元の明るさを調整できるようにしました。社員の机上は作業に必要な明るさを確保しながら、全体としては大きな省電力効果を得ることに成功しています。
II. マイクロソフトの新しいワーク スタイルを支えるテクノロジとは
品川新オフィスへの移転によってワーク スタイルが大きく進化したマイクロソフトですが、その土台にはさまざまな ICT ソリューションと、高いセキュリティの基盤があります。通常、利便性の向上を目指すとセキュリティおよびコンプライアンスは低下しがちで、この二律背反は多くの経営層や CIO の悩みの種となっています。ではマイクロソフトは、両者をどのようにして両立しているのでしょうか。
1. ワークスタイルの進化を支える強固なセキュリティ
セキュリティといってもさまざまな切り口やレイヤーがありますが、ここでは「データ」「ネットワーク」「デバイス」の 3 つに分類して、それぞれをどのように守っているのか紹介しましょう。
データは保存場所と IRM によるアクセス制御で保護
マイクロソフトにおいて「データ」は、重要度によって 3 つのレベルに分類されています。個人情報をはじめとする機密性の高いデータは、Microsoft® SharePoint® Server の決められたフォルダーに保存するルールを徹底。そこに保存されたファイルには、Information Rights Management (IRM) によるアクセス制御がポリシーに応じて設定され、ファイルを持ち出すときに、自動的に暗号化されるため、万が一ファイルが社外に漏れても、第三者に閲覧されたり印刷されることはありません。
社内からも社外からも、セキュアかつシームレスにネットワークへ接続
「ネットワーク」をコントロールしているのは Microsoft® Forefront® Unified Access Gateway です。この製品は、インターネットを介してデバイスを社内につなぐときのゲートウェイの役割を果たします。ネットワークへは、Windows® 7 Enterprise と Windows Server® 2008 R2 以降の組み合わせで利用できる DirectAccess を利用して、VPN を使わずシームレスに接続。社外からのリモート アクセスを実現すると共に、ポリシーに適合しないデバイスのアクセスをブロックしてセキュリティを守ります。これにより、どこからでも安全にネットワークへ接続できる環境を実現しています。
各種暗号化で行うデバイスのセキュリティ
「デバイス」のセキュリティは、複数の暗号化技術を組み合わせ、確保します。Windows® システムやデータが格納されているドライブ全体を暗号化する Windows 7 Enterprise のBitLocker® に加え、前述の IRM によるアクセス制御を組み合わせてデータを守っています。たとえば PC が盗難に遭った場合、紛失してしまった場合でも、セキュリティは担保されます。ちなみに、Windows Phone であれば IRM に対応しているため、権限さえあれば Windows Phone から IRM で保護されたファイルを閲覧することが可能です。
シングル サインオンを実現する認証基盤 Active Directory
こうしたしくみの土台となるのが、認証基盤の Active Directory です。リモート アクセスを利用するとき、IRM で保護されたデータを表示するときなど、さまざまなシーンの裏側で自動的に ID 認証が行われます。もちろん、ユーザーの負荷を最小限に抑えるため、1 つのログイン パスワードですべてのシステムを使うことができます。違うサービスを使うごとにいちいち ID やパスワードを入力する必要はありません。ユーザーの利便性もさることながら、管理面での負担も少なく、運用コスト削減に大きく寄与しています。
2. ワークスタイルの進化を支える統合化されたコミュニケーション
コミュニケーションの入口としてLync が定着
新しいオフィスに移ってから、コミュニケーションの入口は Lync となっています。相手の在席情報がひとめでわかるので、相手が不在であればメール、在籍していれば電話やチャットといったリアルタイムなコミュニケーションを選択しています。さらに多くの人数との会議の場合は、ビデオ会議を使い、アプリケーション共有を活用するなど、すべての社員が状況に合わせた最適なコミュニケーション手段を使い分けるようになりました。
こうした手段がすべて Lync クライアントに統合されており、在籍情報を示すマークからクリックだけで実行できるため、いちいち別のツールを起動したり、電話番号を検索して数字ボタンを押したりする必要はありません。たとえば、Microsoft® Exchange と連動した Microsoft® Outlook®、Microsoft® SharePoint® と Lync が統合されており、Outlook メールの「To」、「From」、「CC」などに表示される名前や、SharePoint のポータル サイト上のドキュメントの作成者や更新者など、人の名前が表示されるところには常に在席情報が表示されます。そのため、Outlook、SharePoint からクリック 1 つで電話やチャットをすぐに行え、「今、話をしたい」、「今、確認をしたい」を実現します。さらに、人の在籍情報は、Outlook との連携やその人が PC を使っているかどうかを判別し、会議中なら赤色、退席中なら黄色、在籍中なら緑色に自動的に変更されます。
こうした統合化されたコミュニケーションにより、状況に応じて、どこからでも、最適なコミュニケーションを行うことが可能になりました。その結果、社員間の日常的なコミュニケーションの質が大きく向上。コミュニケーション不足や行き違い、齟齬が低減し、組織の生産性が大幅にアップしました。
もちろん、Lync は外線の発着信にも対応しています。インターネットにさえつながれば、どこにいても電話をかけ、受けることができるので、お客様とのコミュニケーションもよりタイムリーになりました。
段階的な導入も可能で コスト効果も高い
Exchange、Outlook、また SharePoint といった他のコミュニケーション、コラボレーション製品とのシームレスな連携や、統合化されたコミュニケーション環境での活用で、Lync 利用の効果は最も発揮されます。しかし、最初からすべての製品を揃え、Lync においても、最初から外線電話を含めフル機能を利用できる環境を導入することは容易ではありません。段階的な導入が可能で低コストなのも Lync の特徴で、プレゼンスやチャット、Web 会議などから段階的に Lync を導入し、統合的なコミュニケーション基盤まで段階を追って導入することができます。Active Directory の認証基盤が整備されていれば、あとは Lync サーバーと Lync クライアントを導入することで開始できます。
ちなみに、かつて米 Microsoft における統合化されたコミュニケーション基盤の導入効果を第三者機関に試算してもらったところ、投資対効果で 240%、年間のコスト削減は 212 億円以上にも上るという結果が出ています。
日常的に利用していたツールが災害時にも活躍するツールに
また、オフィス移転直後に発生した東日本大震災は、コミュニケーション、業務効率性向上のために使っていた Lync が、緊急時においても非常に有効であるということを証明することになりました。震災当時、携帯電話や固定電話がつながりにくい中、インターネットだけはつながり、Lync は社員同士の安否確認、連絡といった点で活躍しました。震災後の数日間、社員の出勤が難しい環境の中、Lync はマイクロソフト社員どうしをつなぎ、お客様とマイクロソフトをつなぎ、社員の在宅勤務を支えるコミュニケーション ツールの 1 つとして活躍したのです。このような、大震災などの緊急時のコミュニケーションに必要なツールは、実は平常時のビジネスで活躍するツールと何ら違いはありませんでした。日本マイクロソフトにとって、Lync を導入していたことがビジネスを止めない大きな支えとなりました。
すべてのサービスはオンプレミスもクラウドも選択可能今回ご紹介した Lync や Share Point をはじめとするマイクロソフトのソリューションのほとんどは、オンプレミス (社内設置型) だけでなく、クラウドでも利用できます。たとえば、海外でのスピーディな展開が必要な場合は、初期コストを抑えてすぐに開始できるクラウド。これまで投資してきた既存システムを最大限に活かすならオンプレミスというように、目的やシステム環境に合わせて柔軟に選択でき、後々の移行もスムーズです。 もちろん、オンプレミスとクラウドのハイブリッドな運用も可能。じっくりと腰を据えてクラウドへ移行したり、既存システムをオンプレミスでさらに充実させ、必要な機能だけをクラウドで実現したりするなど、お客様の課題と状況に応じて、柔軟にソリューションをご提供させていただくことが可能です。 ※一部オンプレミスとクラウドにおいて利用いただける機能差がございます。 |
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